小児期のトラウマ克服に「チームスポーツ」経験が有益?

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HealthDay News

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 幼い頃に虐待などで心に傷を負った子どもは、青年期にチームスポーツを経験すると、経験しなかった場合に比べて、成人後にうつ病や不安障害になるリスクが低減する可能性があることが、米シーダーズ・サイナイ医療センター小児科のMolly Easterlin氏らの研究で示された。研究の詳細は「JAMA Pediatrics」5月28日オンライン版に掲載された。

 小児期に身体的および性的虐待や心理的ネグレクトを受けたり、親がアルコール依存症だったり、一人親家庭だったなどの逆境的体験(adverse childhood experience)がある人は、生涯にわたり身体と精神両方の健康に問題を抱えるケースが多いと考えられている。米国の子どもの約半数はこれらの体験のうち1つを、4人に1人は複数を経験しているという報告もある。

 Easterlin氏によれば、これらの体験で受けたトラウマを治す治療薬はなく、「効果的な介入法を見つけることが不可欠だ」という。しかし、小児期にトラウマを抱えた人の健康を改善するのに重要な要因については明らかになっていない。

 この研究では、米国の青年期から成人期の健康を長期にわたり追跡した縦断研究「National Longitudinal Study of Adolescent to Adult Health」の1994~1995年および2008年のデータを用い、小児期に逆境的体験のある9,668人(平均年齢15.2歳、男性50%)を対象に分析した。参加者を、(日本の中学1年生~高校3年生に当たる)7~12年生の青年期にチームスポーツに参加した経験の有無で分けて、うつ病と不安障害の診断歴、現在の抑うつ症状の有病率を比較した。なお、参加者のうち49.3%(4,888人)は逆境的体験が1つ以上、21.3%(2,084人)は2つ以上あると報告していた。

 その結果、青年期にチームスポーツを経験した人では、経験しなかった人と比べて、24~32歳の若年成人期にうつ病の診断歴がある割合が低かった(16.8%対22.0%)。不安障害の診断歴がある割合(11.8%対16.8%)と現在の抑うつ症状の有病率(21.9%対27.5%)についても同様の結果が得られた。

 Easterlin氏によれば、チームスポーツに参加すると自尊心が高まるほか、多感な若者が社会に受け入れられ、学校や地域とつながっていると感じるのに役立つという。「これらの利点は全て、トラウマからの回復力に良い影響を及ぼすと考えられる」と同氏は付け加えている。

 論文の付随論評を執筆した米ノースウェスタン大学ファインバーグ医学部のAmanda Paluch氏は、今回の研究結果は「理にかなったもので、非常に印象的だ」と評価する。同氏によれば、チームスポーツは子どもの資質を養うだけでなく、コーチやチームメイトの中に手本となる人物を見つけられる場合もあるという。「幼い頃の家庭環境が不遇だった人は、青年に成長した後も周囲に手本となる人物がいないケースが多い。そうした側面からも、チームスポーツに参加することは、逆境から立ち直る一助となる可能性がある」と同氏は説明している。

 また、PaluchとEasterlinの両氏は「精神面への明らかなベネフィットを考慮すれば、家庭の所得によらず、希望する全ての若者がチームスポーツに参加できる環境を整えるべきだ」と述べている。さらに、Easterlin氏は「小児科医と親、地域の人々が協力して、若者に対して、チームスポーツだけでなく、その他の心理的および社会的な支援を行うプログラムへの参加を促していくことも重要だ」と付け加えている。

[2019年5月30日/HealthDayNews]Copyright (c) 2019 HealthDay. All rights reserved.利用規定はこちら

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