HPVワクチンで皮膚がんが消失、米症例報告

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HealthDay News

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 皮膚がんの一種である有棘細胞がん(皮膚の扁平上皮がん)の高齢患者に対し、9価のヒトパピローマウイルス(HPV)ワクチンを全身性投与の後に腫瘍内に投与した結果、複数あった腫瘍が完全に消失したことを、治療に当たった米マイアミ大学シルベスター包括的がんセンターのAnna Nichols氏らが「JAMA Dermatology」7月3日オンライン版で報告した。治療開始から2年が経過したが、再発もみられていないという。

 2年前、イアン・マッケンジーさんは有棘細胞がんに罹患した当時97歳の母親に残された命はあとわずかだと感じていた。マッケンジーさんの母親の右足は表面のほとんどが複数の腫瘍で覆われ、病変の数と大きさから化学療法や手術は不可能だと判断されていた。しかし、彼女の主治医であるNichols氏は9価のHPVワクチン(商品名:ガーダシル)を腫瘍に直接投与する画期的な治療法を見出した。

 HPVワクチンには子宮頸がんや性器がん、肛門がん、口腔がんなどのHPVが強く関与するがんの予防に有効とされる。しかし、既に発症したがんの治療薬としての有用性についてはほとんど検討されていなかった。Nichols氏らは以前、このワクチンにより皮膚がんの増殖が抑えられた2人の患者について報告しており、この97歳の女性にもワクチンの適応外使用を試みたという。

 Nichols氏らはまず、女性の上腕に9価HPVワクチンを2回、6週の間隔をあけて接種した。その3週間後には特に直径が大きい腫瘍を3つ選んで腫瘍内にHPVワクチンを直接注射し、その後3回にわたって複数の腫瘍にワクチンを注射した。治療は2016年3月から2017年2月にかけて行われ、その後2018年3月まで観察した。その結果、最初の腫瘍内投与から1年以内に全ての腫瘍が消失した。さらに、治療開始から2年経っても再発はみられていないという。

 「全ての腫瘍が消失したことにわれわれは驚いた。HPVワクチンを直接投与しなかった腫瘍までもが消失するという報告は、今まで聞いたことがない」とNichols氏は話す。ただし、今回は一人の患者の症例報告に過ぎないため、同氏らは今後、有棘細胞がんに対するHPVワクチン治療の有効性を検証する研究の実施を計画しているという。

 身体から完全にがんが消え去ったマッケンジーさんの母親は、今年の秋に100歳の誕生日を迎える。マッケンジーさんは「(HPVワクチンの効果は)期待をはるかに超える効果だった」と振り返る。マッケンジーさんは母親に関する報告をきっかけに、HPVワクチンを用いた皮膚がんの治療について研究が進むことを望んでいるという。

 米国がん協会(ACS)によれば、有棘細胞がんは米国の皮膚がんの約20%を占め、顔や耳、首、唇、手など日光に曝露しやすい部位で発症することが多いという。ACSのLen Lichtenfeld氏は、今回の症例報告で女性の腫瘍が消失した背景について、「HPVワクチンを腫瘍細胞に投与したことで、身体の防御機構が腫瘍だけを攻撃するように反応したのではないか」と推測している。同氏によれば、今後、治療選択肢が限られる患者に対してHPVワクチン治療の詳細な検討が進められると予想されるという。

[2018年7月13日/HealthDayNews]Copyright (c) 2018 HealthDay. All rights reserved.利用規定はこちら

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