PARP阻害薬による維持療法を受け、卓越奏効(exceptional response)を示したプラチナ感受性再発卵巣がん(PS-ROC)患者を対象とした国際コホート研究の結果、卓越奏効者ではPARP阻害薬を中止しても無増悪生存期間(PFS)は悪化せず、長期的な骨髄系腫瘍の発症も低頻度であると報告された。本研究はオーストラリア・Prince of Wales Hospital and Royal Hospital for WomenのLucy Haggstrom氏らによるもので、JAMA Oncology誌オンライン版に2026年6月25日付で発表されている。
PARP阻害薬の臨床試験が設計された当時、PS-ROC患者の長期生存は期待できないと考えられていた。そのため、PARP阻害薬の維持療法は、病勢進行または許容できない毒性が現れるまで継続することとされ、それが現在の保険承認にも反映されている。そのような中、一部の患者でPFSが5年以上という卓越奏効が確認されるようになった。いつまでPARP阻害薬を飲み続けるべきか、同薬による骨髄異形成症候群(MDS)や急性骨髄性白血病(AML)などの晩期発症リスクはどの程度か、といった臨床的な疑問が浮上することとなる。そこで、Haggstrom氏らの研究グループは、卓越奏効例の長期予後の結果と遺伝子および表現型の関連を検討した。
・研究デザイン:国際共同後方視的コホート研究
・対象:PARP阻害薬維持療法で卓越奏効したPS-ROC患者(PARP阻害薬開始から5年以上無増悪)
・評価項目:
[主要評価項目]PFS
[副次評価項目]全生存期間(OS)、毒性、減量割合など
主な結果は以下のとおり。
・2023年1月11日~2025年11月10日の間に、14ヵ国、41施設から320例が登録された。
・卓越奏効例の平均年齢は56.4歳、追跡期間中央値は6.8年、PARP阻害薬投与期間中央値は75.0ヵ月であった。
・全体集団の7.5年PFS率は88.8%、10年PFS率は78.7%であった。
・320例中211例(65.9%)がPARP阻害薬を継続、109例(34.1%)はPARP阻害薬を中止した。
・中止例の内訳は、医師の判断34例、毒性22例、患者の希望17例、その他12例、5年経過後の病勢進行2例であった。
・病勢進行以外のPARP阻害薬中止例(85例)における10年PFS率は90.1%であった。一方、PARP阻害薬継続患者の10年PFS率は72.5%であった。
・有害事象として晩期発症のMDSおよびAMLは5例(1.6%)であった。
・卓越奏効例では、BRCA1のRINGドメインおよびBRCA2のDNA結合ドメインにおける異常が多くみられた。
同研究において、PARP阻害薬による卓越奏効例の多くは長期にわたり無増悪状態を維持していた。晩期の骨髄腫瘍発症リスクも限定されている。筆者らはこれらの結果から一部の患者では機能的治癒(functional cure)の可能性が示唆されるとしている。今後、卓越奏効を予測するバイオマーカーや、投与中止のタイミングを検証する前向き研究が求められる。
(ケアネット 細田 雅之)