夜間照明が心疾患リスク上昇に影響

提供元:ケアネット

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公開日:2025/11/14

 

 夜間の光曝露は概日リズムの乱れを引き起こし、心血管疾患における予後不良の危険因子として知られている。今回、オーストラリア・フリンダース大学のDaniel P. Windred氏らの研究で、夜間の光曝露は40歳以上の心血管疾患発症の有意な危険因子であることが示唆された。JAMA Network Open誌2025年10月23日号掲載の報告。

 研究者らは、昼夜の光曝露による心血管疾患発症の関連、および光曝露と心血管疾患関連に影響する因子(遺伝的感受性、性別、年齢など)を評価するため、前向きコホート研究を実施。UKバイオバンク参加者の心血管疾患の記録を9.5年間(2013年6月~2022年11月)にわたり追跡調査し、2024年9月~2025年7月にデータ解析を行った。

 光センサーは手首に装着するタイプで、約1,300万時間(各参加者の1週間分)から得られたデータを基に、光曝露環境をパーセンタイルで4グループに分類した(最も暗い:0~50、やや明るい:51~70、比較的明るい:71~90、非常に明るい:91~100)。また、各疾患(冠動脈疾患、心筋梗塞、心不全、心房細動、脳卒中)の発症率データは、英国・国民保健サービス(NHS)より得たもので、疾患リスクをCox比例ハザードモデルで評価し、ハザード比(HR)を算出した。

 主な結果は以下のとおり。

・研究参加者は、40代以上の成人8万8,905人(平均年齢±SD:62.4±7.8歳、女性:5万577例[56.9%])であった。
・夜間照明が非常に明るい環境の人(91~100パーセンタイル)は、最も暗い人(0~50パーセンタイル)と比較して、さまざまな疾患発症リスクが有意に高かった。
 ●冠動脈疾患…調整ハザード比(aHR):1.32、95%信頼区間(CI):1.18~1.46
 ●心筋梗塞…aHR:1.47、95%CI:1.26~1.71
 ●心不全…aHR:1.56、95%CI:1.34~1.81
 ●心房細動…aHR:1.32、95%CI:1.18~1.46
 ●脳卒中…aHR:1.28、95%CI:1.06~1.55
・これらの関連性は、既存の心血管リスク因子(身体活動、喫煙、アルコール、食事、睡眠時間、社会経済的地位、多遺伝子リスク)調整後も有意であった。
・夜間の光曝露と心不全(交互作用のp=0.006)および冠動脈疾患(交互作用のp=0.02)リスクとの関連は女性でより大きかった。また、参加者のうち若年者では、夜間の光曝露と心不全(交互作用のp=0.04)および心房細動(交互作用のp=0.02)リスクとの関連が大きかった。

 同氏らは「既存の予防対策に加え、夜間の光曝露を避けることが心血管疾患リスクを低減するための有用な戦略となる可能性がある」としている。

 なお、11月7~10日に米国・ニューオリンズで開催されたAmerican Heart Association Scientific Sessions 2025(AHA2025、米国心臓学会)でも米国・ハーバード大学のShady Abohashem氏らにより同様の報告がなされた。

(ケアネット 土井 舞子)