摂食障害の誘発因子としての薬剤の影響は、心理社会的影響に比べ、十分に認識されていないのが現状である。中国・南昌大学のLiyun Zheng氏らは、米国食品医薬品局の有害事象報告システム(FAERS)データベースを用いて、摂食障害と関連する可能性のある薬剤を特定するため、本研究を実施した。Eating Behaviors誌2025年12月号の報告。
2004年1月~2024年12月にFAERSに報告された摂食障害に関連するデータを抽出した。不均衡なシグナルを検出するために報告オッズ比(ROR)を算出し、多重比較の調整にはフィッシャーの正確確率検定とボンフェローニ補正を適用した。100件以上の報告があり、有意な正のシグナル(RORの95%信頼区間下限値が1超、調整済みp値が0.01未満)を示した薬剤をLASSO回帰分析の対象とした。年齢、性別、報告者タイプで調整したロジスティック回帰分析を用いて、誘発因子となる薬剤を特定した。
主な結果は以下のとおり。
・2万145件の報告のうち、女性の割合は62.7%であり、年齢中央値は59歳(四分位範囲:42~71歳)であった。
・30種類の薬剤において有意な正のシグナルが認められた。
・LASSO回帰分析とロジスティック回帰分析により、オクトレオチド、ribociclib、スニチニブ、リバスチグミン、エベロリムス、クエチアピン、パルボシクリブ、エソメプラゾール、プレガバリンを含む9種類の薬剤が潜在的な誘発因子として特定された。
著者らは「これらの薬剤は、とくに中高年層において、潜在的な摂食障害の誘発因子となる可能性が高かった。臨床医は、食欲や体重に影響を与える薬剤、乱用される可能性のある薬剤について、とくに摂食障害患者や高リスク集団においては、有害事象を防ぐためにも注意深くモニタリングする必要がある」と結論付けている。
(鷹野 敦夫)