COVID-19患者の26%に半年後も何らかの症状/国立国際医療研究センター

提供元:ケアネット

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公開日:2021/10/20

 

 新型コロナウイルス感染症(COVID-19)罹患後の遷延症状は、当初から知られており、地域によっては専門外来が設置されるなど、今後のCOVID-19診療のフォローアップとしても注目されている。

 国立国際医療研究センター 国際感染症センターの宮里 悠佑氏らのグループは、COVID-19罹患後の遷延症状に関して、長期的な疫学的情報に加え、遷延症状が出現・遷延するリスクを同定するために、COVID-19罹患後の患者を対象としてアンケート調査を実施し、その結果を「新型コロナウイルス感染症罹患後の遷延症状の記述疫学とその出現・遷延リスク因子に関する報告」として発表した。

 その結果、女性ほど倦怠感、味覚・嗅覚障害、脱毛が出現しやすく、味覚障害が遷延しやすいこと、若年者ややせ型であるほど味覚・嗅覚障害が出現しやすいことが判明した。

457例のCOVID-19患者を調査、400日以上も何らかの症状ありも

【研究の背景】
 国内外の報告からCOVID-19に遷延症状があることが確認され、国内の複数の調査では、中等症以上の患者512例において、退院後3ヵ月の時点で肺機能低下(とくに肺拡散能)が遷延していた。また、軽症者を含む525例において、診断後6ヵ月の時点で約80%は罹患前の健康状態に戻ったと自覚していたが、一部の症状が遷延すると生活の質の低下、不安や抑うつ、睡眠障害の傾向が強まることがわかった。嗅覚・味覚障害を認めた119例において、退院後1ヵ月までの改善率は嗅覚障害60%、味覚障害84%だった。そして、罹患後半年以上追跡した疫学調査報告や遷延症状が出現するリスク調査は少なく、また、遷延のリスク因子に関する報告はこれまでになかったことから調査を実施したものである。

【研究概要】
研究名:新型コロナウイルス感染症の遷延症状出現と遷延リスク因子
方法:2020年2月~2021年3月までに国立国際医療研究センター病院のCOVID-19回復者血漿事業スクリーニングに参加した患者を対象として、アンケート調査を実施。調査項目は、患者背景、COVID-19急性期の重症度や治療内容、遷延症状の各症状の有無とその遷延期間。症状の出現頻度や遷延期間から、各症状を(1)急性期症状、(2)急性期から遷延する症状、(3)回復後に出現する症状の3つに分類した。また、遷延症状である(2)と(3)に関して、症状の出現リスク、症状が出現した患者における遷延リスクを探索的に調査した。

【調査の結果】
 対象の526例のうち457例から回答を得た(回収率86.9%)。回答者の年齢の中央値は47歳、231例(50.5%)が女性で、何らかの基礎疾患を有したのは212例(46.4%)、欠損値9例を除いた448例のうち、重症度は軽症が378例(84.4%)、中等症が57例(12.7%)、重症が13例(2.9%)だった。また、発症日からアンケート調査日までの期間の中央値は248.5日。

 COVID-19の各症状は、(1)急性期症状:発熱、頭痛、食欲低下、関節痛、咽頭痛、筋肉痛、下痢、喀痰、(2)急性期から遷延する症状:倦怠感、味覚障害、嗅覚障害、咳嗽、呼吸困難、(3)回復後に出現する症状:脱毛、集中力低下、記銘力障害、うつに分類された。

 発症時もしくは診断時から6ヵ月経過時点で337例(73.7%)が無症状であり、120例(26.3%)に何らかの症状を認めた。また、発症時もしくは診断時から12ヵ月経過時点で417例(91.2%)が無症状であり、40例(8.8%)に何らかの症状を認めた。

 倦怠感、味覚障害、嗅覚障害、脱毛に関して、その出現リスクと遷延リスクを解析したところ、男性と比較して女性ほど倦怠感、味覚・嗅覚障害、脱毛が出現しやすく、味覚障害が遷延しやすいことがわかった。また、若年者、やせ型であるほど味覚・嗅覚障害が出現しやすいことがわかった。抗ウイルス薬やステロイドなどの急性期治療の有無と遷延症状の出現に関して、明確な相関は見受けられなかった。

【研究結果から判明したこと】
 研究グループは研究結果から次のコメントを述べている。
・女性の方が倦怠感、味覚・嗅覚障害、脱毛が出現しやすいことがわかった。また、味覚・嗅覚障害は若年者で多く、生活の質を著しく低下させる可能性がある。
・約4例に1例(26.3%)が半年間たっても何らかの遷延症状を呈しており、軽症者であっても遷延症状が長引く人がいることが明らかになった。
・最も重要な遷延症状の予防はCOVID-19に罹患しないことであり、基本的な感染対策が重要と考えられる。
・抗ウイルス薬やステロイドなどの急性期治療がCOVID-19遷延症状の出現予防に寄与しないことがわかった。

 なお、この研究では、想起バイアス、アンケート調査、主観的側面、対象者の偏向が生じうること、サンプル数に限界があること、アンケート調査時に症状を有している患者は症状の持続時間を過小評価している可能性があることなど研究限界があると注意を与えている。

(ケアネット 稲川 進)