がん治療、臨床的に意味のあるQOL改善のエビデンスはほとんど提示なし/JAMA Netw Open

提供元:ケアネット

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公開日:2021/03/12

 

 カナダ・Sunnybrook Research InstituteのVanessa Arciero氏らがシステマティックレビューを行い、がん治療においてQOLの重要性が認識されているにもかかわらず、QOLの改善を示唆するエビデンスが公表されていないことを明らかにした。緩和治療を受けるがん患者にとって、QOLは生存と並び治療意思決定の重要な側面であるが、規制当局はQOL改善のエビデンスがなくても生存期間延長または抗腫瘍効果だけに基づいて承認することがある。著者は、「統計学的な改善に関するエビデンスがある適応症のうち、臨床的に意味のあるQOL改善を示したものはほとんどなかった」と述べている。JAMA Network Open誌2021年2月1日号掲載の報告。

 研究グループは、近年承認されたがん治療が臨床的に意味のあるQOL改善効果を示すかどうかを調査する目的で、2006年1月~2017年12月に米国食品医薬品局(FDA)ならびに欧州医薬品庁(EMA)の承認を得たがん治療の適応症と、それを裏付ける臨床試験(2019年10月までに特定できたQOLに関する公表論文)を特定し、公表されたQOLに関するエビデンスについて評価した。

 QOLに関するエビデンスとは、米国臨床腫瘍学会Value Framework(ASCO-VF)バージョン2.0および欧州臨床腫瘍学会Magnitude of Clinical Benefit Scale(ESMO-MCBS)バージョン1.1のQOL bonus criteriaに従ったQOLの有益性、および臨床的に意義のある最小変化量を超えた臨床的に意味のあるQOL改善とした。

 QOLのエビデンスと承認年との関連を、ロジスティック回帰モデルを用いて解析した。

 主な結果は以下のとおり。

・調査期間に承認されたがん治療の適応症は、FDAで214(血液学的腫瘍77[36%])、EMAで170(同52[31%])であった
・カットオフ日までにQOLに関するエビデンスが公開されていたのは、FDA承認適応症40%、EMA承認適応症58%であった。
・ASCO-VFおよびESMO-MCBSのQOL bonus criteriaを満たしていたのは、FDA承認適応症ではそれぞれ13%および17%、EMA承認適応症では21%および24%であった。
・臨床的に意義のある最小変化量を超えた臨床的に意味のあるQOL改善が認められたのは、FDA承認適応症では6%、EMA承認適応症では11%であった。
・EMAでは経年的に承認時におけるQOLに関するエビデンスの公開が増加したが(オッズ比[OR]:1.13、p=0.03)、FDAでは増加はみられなかった(OR:1.10、p=0.12)。
・QOL bonus の増加や臨床的に意味のあるQOL改善について、経年的な増大は認められなかった。

(ケアネット)