感染経路が不明なCOVID-19症例は診断が遅れやすい/日本での調査

提供元:ケアネット

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公開日:2020/12/02

 

 新型コロナウイルス感染症(COVID-19)患者の診断の大きな遅れ(long diagnostic delays:LDD)は、その後の患者隔離の効果が減少する可能性がある。わが国では当初、軽症の場合は発症から4日間待機という基準が示されたことから、茨城県土浦保健所の緒方 剛氏らは、曝露経路が不明なCOVID-19症例ではLDDが大幅に増加したと想定し、COVID-19症例のLDDの割合と曝露経路検出の関連を調査し報告した。International Journal of Environmental Research and Public Health誌オンライン版2020年11月21日号に掲載。

 本研究は、2020年3月22日(第12週の終わり)時点で30例を超えるCOVID-19症例が報告された8都道府県から、曝露経路に関するデータを取得できなかった東京と大阪を除外し、北海道、埼玉、千葉、神奈川、愛知、兵庫を対象とした。これらの道県で、症状発現日が2月24日~3月15日(第9~11週)のCOVID-19症例と、PCR検査で確認されたSARS-CoV-2陽性例のうち、無症候性の症例と症状発現日が欠落している症例を除外した。LDDは、症状発現日からPCR検査によるSARS-CoV-2陽性の確認日までの期間が6日以上とした。

 主な結果は以下のとおり。

・364例のCOVID-19症例のうち、男性が190例(52%)、60歳以上が196例(54%)だった。曝露経路がわかっていた症例(経路既知例)は209例(57%)、曝露経路不明な症例(経路不明例)は118例(32%)、他国からの輸入症例(輸入例)は37例(10%)だった。

・COVID-19患者の診断の遅れは平均6.28日(95%CI:5.8~6.8)で、標準偏差(SD)は4.57日(95%CI:4.1~5.0)だった(bootstrap)。

・LDDの割合は、全体で51%、経路既知例で38%、経路不明例で65%、輸入例で73%だった。9週目に症状発現した症例と比較したLDDの調整オッズ比は、10週目に発現した症例で0.31(95%CI:0.170~0.58)、11週目に発現した症例で0.17(95%CI:0.090~0.32)だった。

・経路既知例と比較したLDDの調整オッズ比は、経路不明例で2.38(95%CI:1.354~4.21)、輸入例で3.51(95%CI:1.418-8.75)だった。調整オッズ比は、愛知県の症例よりほかの5道県の症例で有意に高かった。

 著者らは「曝露経路が不明な患者のLDD割合は65%であり、経路既知例よりも有意に高かった。症状発現から早期のPCR検査とPCR検査実施能力の強化が推奨される。また、COVID-19患者数のその後の増加に対するLDDの影響を検討するために、さらなる調査が必要」と結論している。

(ケアネット 堀間 莉穂)