COVID-19、抗体検出は発症2週間後からか/感染研

提供元:ケアネット

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公開日:2020/04/07

 

 新型コロナウイルス感染症(COVID-19)への感染が拡大する中、検査時の二次感染リスクが低い抗体検査への期待が高まっている。しかし、その感度・特異度に関する報告は限られており、臨床現場での利用の仕方や結果の解釈について見解は定まっていない。国立感染症研究所では、市販のイムノクロマト法による抗体検出試薬による、発症後日数ごとの抗体陽性率を調査。その結果をホームページ上で公開した。

<調査概要>
検体:SARS-CoV-2遺伝子増幅法により確定された、COVID-19患者血清の残余検体(37症例・87検体)
使用試薬:市販のイムノクロマト法による抗体検出試薬(A社製)

 発症後日数※1ごとの抗SARS-CoV-2 IgM、IgG抗体陽性率は以下のとおり。
Day1~6
 IgM抗体:検体数14、陽性数0[陽性率0.0%]
 IgG抗体:検体数14、陽性数1※2[陽性率7.1%]
Day7~8
 IgM抗体:検体数20、陽性数2[陽性率10.0%]
 IgG抗体:検体数20、陽性数5[陽性率25.0%]
Day9~12
 IgM抗体:検体数21、陽性数1[陽性率4.8%]
 IgG抗体:検体数21、陽性数11[陽性率52.4%]
Day13~
 IgM抗体:検体数32、陽性数19[陽性率59.4%]
 IgG抗体:検体数32、陽性数31[陽性率96.9%]
※1:発症日をDay1とする
※2:Day1でIgG抗体陽性となる検体が1検体あり、結果の解釈には注意が必要


 本調査で明らかになった点は、以下のようにまとめられている。
・いずれの期間においてもIgM抗体陽性率はIgG抗体陽性率に比べて低く、本調査ではIgM抗体陽性となった血清はすべてIgG抗体陽性であった。
・発症6日後までのCOVID-19患者血清ではウイルス特異的抗体の検出は困難であり、発症1週間後の血清でも検出率は2割程度にとどまる。
・抗体陽性率は経時的に上昇していき、発症13日以降になると、ほとんどの患者で血清中のIgG抗体は陽性となった。
・一方、IgM抗体の検出率が低く、IgG抗体のみ陽性となる症例が多いことから、当該キットを用いたCOVID-19の血清学的診断には発症6日後までの血清と発症13日以降の血清のペア血清による評価が必要と考えられた。
・1症例ではあるが、非特異反応を否定できないIgG抗体の陽性がみられたことから、結果の解釈には、複数の検査結果、臨床症状を総合的に判断した慎重な検討が必要。

 最後に、本報告では、少数例の検討であることや、他の感染症患者検体を用いた評価がなく特異度に関する情報は得られていないことなどから、本結果をもって当該試薬の臨床性能を評価するものではないとしている。また、使用している抗原タンパク質の性質の違いなどにより、市販試薬は感度・特異度が試薬ごとに変わる可能性があり、すべての抗体検出試薬において同様の結果が得られるかは不明とした上で、COVID-19の血清学的診断法の臨床的位置づけを考える参考情報となることを期待すると結んでいる。

(ケアネット 遊佐 なつみ)