スタチンは感染症リスクを低減しない

提供元:ケアネット

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公開日:2012/01/13

 



オランダ・ユトレヒト大学のHester L van den Hoek氏らは、「スタチンは感染症リスクを低減する」との仮説を検証するためのメタ解析を行い、これを支持するエビデンスは得られなかったことを、BMJ誌2011年12月17日号(オンライン版2011年11月29日号)で報告した。スタチンは心血管疾患の予防や治療に広く用いられているが、抗炎症作用や免疫調整作用も有することが知られている。スタチン服用者は感染リスクが低下していることが、いくつかの観察試験で報告されているが、これらの試験のデータはバイアスを完全には排除しきれないという。

観察試験データを検証するためのメタ解析




研究グループは、観察試験で報告されているスタチンの感染リスク低下作用を検証するために、プラセボ対照無作為化試験の系統的なレビューとメタ解析を行った。

データベース(Medline、Embase、Cochrane Library)を用いて、2011年3月10日までに報告されたスタチンのプラセボ対照無作為化試験(100例以上を登録、フォローアップ期間1年以上)を検索し、感染および感染症関連死亡に関するデータを抽出した。
感染症罹患および関連死の相対リスクに有意差なし




11試験に参加した3万947例のデータが得られた。治療期間中に4,655例が感染症を発症し、その内訳はスタチン群が2,368例、プラセボ群は2,287例であった。

メタ解析では、スタチンの感染症リスクの抑制効果は認めず(相対リスク:1.00、95%信頼区間:0.96~1.05)、感染症関連死亡の低下効果も確認されなかった(同:0.97、0.83~1.13)。

著者は、「これらの知見は、スタチンが感染症リスクを低減するとの仮説を支持しない」と結論し、「大規模なプラセボ対照試験で良好な効果のエビデンスが得られなかったため、観察試験で報告されたスタチンの感染症抑制効果の可能性は低くなった」と指摘している。

(菅野守:医学ライター)