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第205回 アドレナリンを「打てない、打たない」医者たちを減らすには(後編) 「ここで使わなきゃいけない」というタイミングで適切に使えていないケースがある

インタビュー: 海老澤 元宏氏(国立病院機構相模原病院 臨床研究センター長)昨年11月8日掲載の、本連載「第186回 エピペンを打てない、打たない医師たち……愛西市コロナワクチン投与事故で感じた、地域の“かかりつけ医”たちの医学知識、診療レベルに対する不安」は、2023年に公開されたケアネットのコンテンツの中で最も読まれた記事でした。同記事が読まれた理由の一つには、この事故を他人事とは思えなかった医師が少なからずいたためと考えられます。そこで、前回に引き続き、この記事に関連して行った、日本アレルギー学会理事長である海老澤 元宏氏(国立病院機構相模原病院 臨床研究センター長)へのインタビューを掲載します。愛西市コロナワクチン投与事故の背景には何があったと考えられるのか、「エピペンを打てない、打たない医師たち」はなぜ存在するのか、「アナフィラキシーガイドライン2022」のポイントなどについて、海老澤氏にお聞きしました。(聞き手:萬田 桃)造影剤、抗がん剤、抗生物質製剤などなんでも起こり得る(前回からの続き)――「薬剤の場合にこうした呼吸器症状、循環器症状単独のアナフィラキシーが起こりやすく、かつ症状が進行するスピードも早い」とのことですが、どういった薬剤で起こりやすいですか。海老澤造影剤、抗がん剤、抗生物質製剤などなんでも起こり得ます。とくにIV (静脈注射)のケースでよく起こり得るので、呼吸器単独でも起こり得るという知識がないとアナフィラキシーを見逃し、アドレナリンの筋注の遅れにつながります。ちなみに、2015年10月1日〜17年9月30日の2年間に、医療事故調査・支援センターに報告された院内調査結果報告書476件のうち、死因をアナフィラキシーと確定または推定したのは12例で、誘引はすべて注射剤でした。造影剤4例、抗生物質製剤4例、筋弛緩剤2例などとなっていました。――病院でも死亡例があるのですね。海老澤IV(静脈注射)で起きたときは症状の進行がとても速く、時間的な余裕があまりないケースが多いです。また、心臓カテーテルで造影剤を投与している場合は動脈なので、もっと速い。薬剤ではないですが、ハチに刺されたときのアナフィラキシーも比較的進行が速いです。こうしたケースで致死的なアナフィラキシーが起こりやすいのです。2001~20年の厚労省の人口動態統計では、アナフィラキシーショックの死亡例は1,161例で、一番多かったのは医薬品で452例、次いでハチによる刺傷、いわゆるハチ毒で371例、3番目が食品で49例でした。そして、そもそもアナフィラキシーを見逃すことは致命的ですが、対応しても手遅れとなってしまうケースもあります。病院の救急部門などで治療する医師の中には、「ルートを取ってまず抗ヒスタミン薬やステロイドで様子を見よう」という方がまだいるようです。しかし、その過程で「ここでアドレナリンを使わなきゃいけない」というタイミングで適切に使えていないケースがあるのです。先程の死亡例の中にもそうしたケースがあります。点滴静注した後の経過観察が重要――いつでもどこでも起き得るということですね。医療機関として準備しておくことは。海老澤大規模な医療機関ではどこでもそうなっていると思いますが、たとえば当院では、アドレナリン注シリンジは病棟、外来、検査室、処置室などすべてに置いてあります。ただ、アドレナリンだけで軽快しないケースもあるので、その後の体制についても整えておく必要があります。加えて重要なのは、薬剤を点滴静注した後の経過観察です。抗がん剤、抗生物質、輸血などは処置後の10分、20分、30分という経過観察が重要なので、そこは怠らないようにしないといけません。ただ、処方薬の場合、自宅などで服用してアナフィラキシーが起こることになります。たとえば、NSAIDs過敏症の方がNSAIDを間違って服用するとアナフィラキシーが起こり、不幸な転帰となる場合があります。そうした点は、事前の患者さんや家族からのヒアリングに加えて、歯科も含めて医療機関間で患者さんの医療情報を共有することが今後の課題だと言えます。抗ヒスタミン薬とステロイド薬で何とか対応できると考えている医師も一定数いる――先ほど、「僕らの世代から上の医師だと、“心肺蘇生に使う薬”というイメージを抱いている方がまだまだ多い」と話されましたが、アナフィラキシーの場合、「最初からアドレナリン」が定着しているわけでもないのですね。海老澤アナフィラキシーという診断を下したらアドレナリン使っていくべきですが、たとえば皮膚粘膜の症状だけが最初に出てきたりすると、抗ヒスタミン薬をまず使って様子を見る、ということは私たちも時々やることです。もちろん、アドレナリンをきちんと用意したうえでのことですが。一方で、抗ヒスタミン薬とステロイド薬でアナフィラキシーを何とか対応できると考えている医師も、一定数いることは事実です。ルートを確保して、抗ヒスタミン薬とステロイド薬を投与して、なんとか治まったという経験があったりすると、すぐにアドレナリン打とうとは考えないかもしれません。PMDAの事例などを見ると、アナフィラキシーを起こした後、死亡に至るというのは数%程度です。そういった数字からも「すぐにアドレナリン」とならないのかもしれません。アナフィラキシーやアレルギーの診療に慣れている医師だと、「これはアドレナリンを打ったほうが患者さんは楽になるな」と判断して打っています。すごくきつい腹痛とか、皮膚症状が出て呼吸も苦しくなってきている時に打つと、すっと落ち着いていきますから。打てない、打たない医者たちを減らしていくには――打つタイミングで注意すべき点は。海老澤血圧が下がり始める前の段階で使わないと、1回で効果が出ないことがよくあります。「血圧がまだ下がってないからまだ打たない」と考える人もいますが、本来ならば血圧が下がる前にアドレナリンを使うべきだと思います。――「打ち切れない」ということでは、食物アレルギーの患者さんが所持している「エピペン」についても同様のことが指摘されていますね。海老澤文科省の2022年度「アレルギー疾患に関する調査」1)によれば、学校で子供がアナフィラキシーを発症した場合、学校職員がエピペン打ったというのは28.5%に留まっていました。一番多かったのは救急救命士で31.9%、自己注射は23.7%でした。やはり、打つのをためらうという状況は依然としてあるので、そのあたりの啓発、トレーニングはこれからも重要だと考えます。――教師など学校職員もそうですが、今回の事件で浮き彫りになった、アドレナリンを「打てない」「打たない」医師たちを減らしていくにはどうしたらいいでしょうか。海老澤エピペン注射液を患者に処方するには登録が必要なのですが、今回、コロナワクチンの接種を契機にその登録数が増えたと聞いています。登録医はeラーニングなどで事前にその効能・効果や打ち方などを学ぶわけですが、そうした医師が増えてくれば、自らもアドレナリン筋注を躊躇しなくなっていくのではないでしょうか。立位ではなく仰臥位にして、急に立ち上がったり座ったりする動作を行わない――最後に、2022年に改訂した「アナフィラキシーガイドライン」のポイントについて、改めてお話しいただけますか。海老澤診断基準の2番目で、「典型的な皮膚症状を伴わなくてもいきなり単独で血圧が下がる」、「単独で呼吸器系の症状が出る」といったことが起こると明文化した点です。食物によるアナフィラキシーは一番頻度が高いのですが、9割方、皮膚や粘膜に症状が出ます。多くの医師はそういったイメージを持っていると思いますが、ワクチンを含めて、薬物を注射などで投与する場合、循環器系や呼吸器系の症状がいきなり現れることがあるので注意が必要です。――初期対応における注意点はありますか。海老澤ガイドラインにも記載してあるのですが、診療経験のない医師や、学校職員など一般の人がアナフィラキシーの患者に対応する際に注意していただきたいポイントの一つは「患者さんの体位」です。アナフィラキシー発症時には体位変換をきっかけに急変する可能性があります。明らかな血圧低下が認められない状態でも、原則として立位ではなく仰臥位にして、急に立ち上がったり座ったりする動作を行わないことが重要です。2012年に東京・調布市の小学校で女子児童が給食に含まれていた食物のアレルギーによるアナフィラキシーで死亡するという事故がありました。このときの容態急変のきっかけは、トイレに行きたいと言った児童を養護教諭がおぶってトイレに連れて行ったことでした。トイレで心肺停止に陥り、その状況でエピペンもAEDも使用されましたが奏効しませんでした2)。アナフィラキシーを起こして血圧が下がっている時に、急激に患者を立位や座位にすると、心室内や大動脈に十分に血液が充満していない”空”の状態に陥ります。こうした状態でアドレナリンを投与しても、心臓は空打ちとなり、心拍出量の低下や心室細動など不整脈の誘発をもたらし、最悪、いきなり心停止ということも起きます。――そもそも動かしてはいけないわけですね。海老澤はい。ですから、仰臥位で安静にしていることが非常に重要です。とにかく医療機関に運び込めば、ほとんどと言っていいほど助けられますから。アナフィラキシーは症状がどんどん進んで状態が悪化していきます。そうした進行をまず現場で少しでも遅らせることができるのが、アドレナリン筋注なのです。(2024年1月23日収録)参考1)令和4年度アレルギー疾患に関する調査報告書/日本学校保健会2)調布市立学校児童死亡事故検証結果報告書概要版/文部科学省

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世界での血管内イメージングデバイス使用率は、日本に追いつくのか?(解説:山地杏平氏)

 OCTOBER試験は、ILUMIEN IV試験と同時に発表された試験で、それぞれOCT (optical coherence tomography、光干渉断層法)を用いたPCI (percutaneous coronary intervention、経皮的冠動脈形成術)と、通常の血管造影のみで行ったPCIとで比較をしています。近年では、長い病変や、慢性完全閉塞といった複雑病変において、IVUS(intravascular ultrasound、血管内超音波)を用いたPCIのほうが、有意に結果が優れていたという報告が複数なされており、これらのランダム化比較試験の結果を受けて、米国では、血管内イメージングデバイスの使用は5%程度の施行率から、15%程度まで増加していると伺っています。OCTは、IVUSに比較して10倍空間分解能に優れていますが、一方で、造影剤もしくは低分子デキストランなどの使用にて赤血球除去が必要であり、それぞれ一長一短があります。この新たな血管内イメージングデバイスであるOCTを用いたPCIと、通常の血管造影のみで行ったPCIとで比較した試験が、米国と欧州が中心となって行われ、それぞれILUMIEN IV試験、OCTOBER試験としてESC(欧州心臓病学会)2023で報告されています。 OCTOBER試験では、分岐部病変を有する1,200症例が登録されており、OCTを用いたほうが、その後2年の臨床イベントが有意に少なかったという結果でした。その一方で、ILUMIEN IV試験では、OCTを用いたPCIのほうが、ステントの拡張された大きさは大きいものの、臨床イベントでは差はみられませんでした。この臨床イベントでの結果の違いがなぜみられたかと疑問になりますが、OCTOBER試験では左主幹部病変が約19%で、左前下行枝と対角枝の分岐部病変が71%でみられており、登録された病変が大きな冠動脈支配領域であったと予想されます。一方で、ILUMIEN IV試験では、複雑病変を有する症例が登録されていますが、この内訳として、長い病変長を有する病変が多く含まれており、分岐部病変はそれほど多くなかったようです。また、左前下行枝病変は52%であり、そのほかは左回旋枝、右冠動脈病変でした。このような病変背景の違いが、それぞれの試験結果の臨床イベントの差になったのではないでしょうか。ステントのパフォーマンスは、OCTを用いたPCIのほうが良く、さらには、大きな還流域をもつ分岐部病変だと、臨床予後にも影響を与えると理解してよさそうです。 本邦で行われているPCIは、すでに90%近くの症例でOCTやIVUSといった血管内イメージングデバイスを用いて行われています。血管内イメージングデバイスを使えない場合には、より確実に十分なステント留置ができるように、1つサイズの大きいステントや、バルーンを選択することが多いでしょうし、すでに血管内イメージングが広く普及している本邦では、これらのデバイスの有無を比較する試験の遂行は困難と考えられます。OCTOBER試験結果を踏まえて、われわれの日常臨床を変えることはないとは思いますが、少なくとも間違ったことはしていないことが追認されたと理解してよさそうです。

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心筋梗塞における完全血行再建はいつ行うべきか?(解説:上田恭敬氏)

 血行動態が安定しているST上昇型急性心筋梗塞症例において、非責任病変に対するPCIを急性期に同時に行う群(immediate群)が、19〜45日後にstaged PCIとして行う群(staged群)と比べて非劣性であることを検証する、無作為化非劣性試験(MULTISTARS AMI)の結果が報告された。主要エンドポイントは、1年の時点での、死亡・心筋梗塞・脳卒中・予定外の血行再建・心不全入院の複合エンドポイントである。 対象患者はimmediate群418症例とstaged群422症例に割り付けられた。主要エンドポイントの発生頻度は、immediate群で8.5%、staged群で16.3%であり、非劣性のみならず優位性の検定においてもp<0.001と有意であった。心筋梗塞(2.0%対5.3%)、予定外の血行再建(4.1%対9.3%)がstaged群で多くなっている。また、死亡、脳卒中、心不全入院については、群間で差はなさそうである。 本試験の結果から判断すると、血行動態が安定しているST上昇型急性心筋梗塞症例においては、非責任病変に対しても責任病変と同時に急性期にPCIを行うimmediate PCIは、staged PCIに劣らないことが証明されただけでなく、心筋梗塞の発生や予定外の血行再建を予防できる効果がありそうだ。 もちろん、どんな臨床試験についても言えることであるが、試験で設定された条件の範囲内に当てはまる結果である。「血行動態が安定しているST上昇型急性心筋梗塞症例」以外は対象外である。ほかにも、左冠動脈主幹部症例やCTO症例、CABG既往症例が本試験から除外されている。また、「死亡・心筋梗塞・脳卒中・予定外の血行再建・心不全入院の複合エンドポイント」によって評価した結果なので、それ以外のイベントが多いか少ないかは考慮されていない。難易度の高いPCIとなる場合や造影剤量が多くなる場合、患者さんの背部痛のために長時間の手技が困難な場合には、割り付けに反してstaged PCI群へcross-overさせているようであり、この点は実臨床に合った内容である。著者らは他のimmediate PCI のメリットとして、合計の造影剤量や被ばく線量の減少、入院期間の短縮、動脈穿刺回数の減少を指摘している。しかし、immediate PCIの多くは夜間や時間外に行われるため、staged PCIとは異なる医療スタッフや条件下で行われることになる施設もあるだろう。そのような背景の違いも考慮して、本試験の結果を実臨床に適用する必要がある。

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急性脳梗塞、単純CT診断下で血管内血栓除去術vs.薬物治療単独/Lancet

 患者を選定する画像診断に、造影剤を用いない単純CTを用いる環境下では、主幹動脈閉塞の大梗塞が認められた急性虚血性脳卒中患者において、血管内血栓除去術は機能的アウトカムの改善および死亡率低下と関連することが、ドイツ・ハイデルベルク大学病院のMartin Bendszus氏らによる、前向き多施設共同非盲検無作為化試験の結果で示された。最近のエビデンスとして、急性脳梗塞では血管内血栓除去術の有益な効果が示されている。しかしながら、それらの試験はマルチモーダル脳画像に依拠しており、臨床現場で使用されているのは主に単純CTであることから本検討が行われた。Lancet誌オンライン版2023年10月11日号掲載の報告。血管内血栓除去術+薬物治療vs.薬物治療単独を評価 試験は欧州の40病院とカナダの1施設で行われた。被験者は、ASPECTSスコア3~5の脳主幹動脈閉塞および大梗塞が認められた急性虚血性脳卒中の患者で、中央のWebベースシステムを用いて無作為に1対1の割合で、脳卒中発症から12時間以内に、血管内血栓除去術+薬物治療または薬物治療単独(たとえば標準的なケア)を受ける群に割り付けられた。 主要アウトカムは90日時点の機能的アウトカムで、治療割り付けをマスクされた研究者により修正Rankinスケールの全範囲スコアを用いて評価された(ITT集団で解析)。安全性のエンドポイントには、死亡率、症候性頭蓋内出血率などが含まれた(受けた治療に基づき全患者を含めた安全性集団で解析)。90日時点の機能的アウトカム改善および死亡率低下と関連 2018年7月17日~2023年2月21日に253例が無作為化された(血管内血栓除去群125例、薬物治療単独群128例)。両群の人口統計学的特徴および臨床特性は類似しており、両群合わせた被験者の年齢中央値は74歳(四分位範囲[IQR]:65~80)、女性が123/253例(49%)であった。ベースラインのNIHSSスコア中央値は、血管内血栓除去群19(IQR:16~22)、薬物治療単独群18(15~22)、単純CTベースでベースラインASPECTS評価が行われたのは、それぞれ104/125例(83%)、104/128例(81%)であった。登録時にCT画像診断が用いられたのは208/253例(82%)。 試験は、事前に計画された最初の中間解析で有効性が確認され、早期に終了された。 90日時点で、血管内血栓除去群は、修正Rankinスケールのスコア分布がより良好なアウトカムへとシフトしており(補正後共通オッズ比[OR]:2.58、95%信頼区間[CI]:1.60~4.15、p=0.0001)、死亡率の低下とも関連していた(ハザード比[HR]:0.67、95%CI:0.46~0.98、p=0.038)。 症候性頭蓋内出血は、血管内血栓除去群で7例(6%)、薬物治療単独群で6例(5%)報告された。

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多枝病変を有するSTEMIのPCI、即時vs.段階的/NEJM

 ST上昇型心筋梗塞(STEMI)と多枝冠動脈病変を有し、血行動態が安定した患者の治療では、全死因死亡、非致死的心筋梗塞、脳卒中、予定外の虚血による血行再建術、心不全による入院の複合リスクに関して、即時的な多枝経皮的冠動脈インターベンション(PCI)の施行は段階的な(staged)多枝PCIに対して非劣性であるとともに、優越性をも示したことが、スイス・チューリッヒ大学病院のBarbara E. Stahli氏らが実施した「MULTISTARS AMI試験」の結果、報告された。研究の成果は、NEJM誌オンライン版2023年8月27日号に掲載された。欧州37施設の医師主導型無作為化非劣性試験 MULTISTARS AMI試験は、欧州の37施設が参加した医師主導の非盲検無作為化非劣性試験であり、2016年10月~2022年6月に患者のスクリーニングが行われた(Boston Scientificの助成を受けた)。 対象は、症状発現から24時間以内の急性期STEMIで、多枝冠動脈病変を有し、少なくとも1つの冠動脈の非責任病変を持ち、責任動脈へのPCIが成功した後の血行動態が安定した患者であった。 これらの患者を、1回の手技中に、責任病変の血行再建術を行った後、即時に非責任病変に対し多枝PCIを施行する即時完全血行再建術群(即時群)、または責任病変に対しPCIを行った後、19~45日目に非責任病変に対し段階的に多枝PCIを施行するstaged完全血行再建術群(staged群)に無作為に割り付けた。 主要エンドポイントは、1年後の全死因死亡、非致死的心筋梗塞、脳卒中、予定外の虚血による血行再建術、心不全による入院の複合とした。大出血の頻度には差がない 840例を登録し、即時群に418例(年齢中央値66歳[四分位範囲[IQR]:58~74]、男性76.8%、白人97.8%)、staged群に422例(64歳[55~73]、80.8%、98.6%)を割り付けた。 1年の時点で、主要エンドポイントのイベントはstaged群が68例(16.3%)で発生したのに対し、即時群は35例(8.5%)であり、即時群のstaged群に対する非劣性とともに優越性が示された(リスク比:0.52、95%信頼区間[CI]:0.38~0.72、非劣性検定のp<0.001、優越性検定のp<0.001)。 1年後の非致死的心筋梗塞(即時群2.0% vs.staged群5.3%、ハザード比[HR]:0.36[95%CI:0.16~0.80])と予定外の虚血による血行再建術(4.1% vs.9.3%、0.42[0.24~0.74])の発生は即時群で良好であった。一方、全死因死亡(2.9% vs.2.6%、1.10[0.48~2.48])、脳卒中(1.2% vs.1.7%、0.72[0.23~2.26])、心不全による入院(1.2% vs.1.4%、0.84[0.26~2.74])の発生は両群で同程度だった。 大出血(BARC タイプ3または5)は、即時群が13例(3.1%)、staged群は21例(4.8%)で発生した(HR:0.65、95%CI:0.32~1.31)。重篤な有害事象は、即時群が104例、staged群は145例で認められた。 著者は、即時多枝PCIの利点として、「造影剤の総量と放射線被曝を低減し、動脈穿刺の追加、後の段階での血行再建術、2回目の入院の必要性を回避する可能性がある」とし、「非責任病変の治療を遅らせることは患者にとって不安であるため、即時の多枝PCIが好まれる場合もある」と指摘している。

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多枝病変の高齢心筋梗塞、完全血行再建術vs.責任病変のみ/NEJM

 心筋梗塞と多枝病変を有する75歳以上の患者の治療において、生理学的評価ガイド下(physiology-guided)完全血行再建術は、責任病変のみへの経皮的冠動脈インターベンション(PCI)と比較して、1年後の時点での死亡、心筋梗塞、脳卒中、血行再建術の複合アウトカムのリスクが低下し、安全性アウトカムの指標の発生は同程度であったことが、イタリア・フェラーラ大学病院のSimone Biscaglia氏らが実施した「FIRE試験」で示された。研究の成果は、NEJM誌2023年9月7日号で報告された。欧州3ヵ国の医師主導無作為化臨床試験 FIRE試験は、欧州3ヵ国(イタリア、スペイン、ポーランド)の34施設が参加した医師主導の無作為化臨床試験であり、2019年7月~2021年10月に患者のスクリーニングを行った(イタリア・Consorzio Futuro in Ricercaの助成を受けた)。 対象は、年齢75歳以上、ST上昇型心筋梗塞(STEMI)または非ST上昇型心筋梗塞(NSTEMI)で入院し、責任病変へのPCIが成功し、冠動脈に1つ以上の非責任病変が存在する多枝病変を有する患者であった。 被験者を、責任病変のPCIに加えて生理学的評価ガイド下完全血行再建術を行う(完全血行再建術)群、または責任病変以外への血行再建術は行わない(責任病変のみ血行再建術)群に無作為に割り付けた。完全血行再建術群では、プレッシャーワイヤーまたは血管造影で機能的に重要な非責任病変を特定し、そのすべてにPCIを施行した。 主要アウトカムは、1年時点での死亡、心筋梗塞、脳卒中、虚血による血行再建術の複合とした。完全血行再建術群で予後改善、心血管死と心筋梗塞の複合も良好 1,445例を登録し、完全血行再建術群に720例、責任病変のみ血行再建術群に725例を割り付けた。全体の年齢中央値は80歳(四分位範囲[IQR]:77~84)、528例(36.5%)が女性、509例(35.2%)がSTEMIによる入院患者であった。入院期間中央値は5日(IQR:4~8)で、責任病変のみ血行再建術群(5日[IQR:3~7])に比べ完全血行再建術群(6日[4~8])で長かった。 主要アウトカムのイベントは、責任病変のみ血行再建術群が152例(21.0%)で発現したのに対し、完全血行再建術群は113例(15.7%)と有意に少なかった(ハザード比[HR]:0.73、95%信頼区間[CI]:0.57~0.93、p=0.01)。この有益性は、4つの項目のうち脳卒中を除く3項目の減少によってもたらされた。1つのイベントを防止するための治療必要数(NNT)は19例であった。 主な副次アウトカムである心血管死と心筋梗塞の複合は、責任病変のみ血行再建術群では98例(13.5%)で発現したのに対し、完全血行再建術群は64例(8.9%)と低い値を示した(HR:0.64、95%CI:0.47~0.88)。NNTは22例だった。 安全性のアウトカム(造影剤関連の急性腎障害、脳卒中、出血[BARCタイプ3、4、5]の複合)の発現は、完全血行再建術群では162例(22.5%)、責任病変のみ血行再建術群では148例(20.4%)で認め、両群間に有意な差はなかった(HR:1.11、95%CI:0.89~1.37、p=0.37)。 著者は、「待機的な侵襲性の冠動脈手術は、若年患者に比べ高齢患者では施行される可能性が低いが、今回の試験では、先行試験と一致して、高齢患者における生理学的評価ガイド下完全血行再建術によるリスクの低減を認めた。最初の1年間のKaplan-Meier曲線では経時的に2群間の乖離が進み、完全血行再建術の有益性の増加が観察された」としている。

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新たなCT技術で高リスク患者での冠動脈疾患の診断精度が向上

 超高精細CTによる冠動脈の血管造影検査(UHR CCTA)により、重度の冠動脈石灰化があったりステントを留置している高リスク患者でも冠動脈疾患を正確に診断できることが新たな研究で示された。フライブルク大学(ドイツ)のMuhammad Hagar氏らによるこの研究結果は、「Radiology」に6月20日掲載された。 冠動脈疾患は、狭心症、心筋梗塞の総称であり、冠動脈の内壁にコレステロールなどが蓄積することで血管が狭まって血流が悪くなり、心筋への血液供給が不足したり途絶えたりすることで生じる。静脈から造影剤を注入して、冠動脈内に脂肪やカルシウムの沈着がないかなどをCTで確認する非侵襲的なCCTAは、冠動脈疾患のリスクが低度から中等度の患者では、同疾患の除外診断に極めて有効な手段だ。しかし、冠動脈の石灰化が進んでいたり、すでにステントを留置していることの多い高リスク患者に対するCCTAの場合には、石灰化が実際以上に広範囲に描写されることがあり、それが閉塞やプラークの過大評価、偽陽性判定の多発につながる。「その結果、患者に、本来は不必要で多くの場合は侵襲的な検査が行われることになる。このため、現行のガイドラインでは、高リスク患者に対するCCTAの使用は推奨されていない」とHagar氏は説明する。 今回の研究は、こうしたCCTAの欠点を克服できる可能性が期待されている、フォトンカウンティング検出器を搭載した次世代CTによる冠動脈の血管造影検査(UHR CCTA)の臨床上の有効性を検討したもの。フォトンカウンティング検出器はX線の最小単位であるフォトン(光子)を個々に検出し、そのエネルギーレベルを測定できるため、従来のCTよりも高精細でコントラスト表現の豊かな画像を取得することができる。 研究対象者は、重度の大動脈弁狭窄症を有し、経カテーテル的大動脈弁置換術(TAVR)のためのCT検査が必要な68人(平均年齢81±7歳、男性32人、女性36人)。全対象者に、UHR CCTAが実施された。これらの対象者は、臨床上のルーチンとして侵襲的冠動脈造影(ICA)も受けていた。 その結果、UHR CCTAで取得した画像の総合画質スコアは、1を「非常に優れている」とする5点満点で1.5点(中央値)と高いことが示された。次に、ICAを参照基準として、UHR CCTAによる冠動脈疾患の検出能をROC曲線下面積(AUC)で検討したところ、狭窄が50%以上の冠動脈疾患検出のAUCは、対象者レベルで0.93、血管レベルで0.94、血管セグメントレベルで0.92と算出された。また、UHR CCTAの狭窄が50%以上の冠動脈疾患検出に対する感度、特異度、精度は、対象者レベルで96%、84%、88%、血管レベルで89%、91%、91%、血管セグメントレベルで77%、95%、95%であった。こうした結果から、研究グループは、UHR CCTAは冠動脈疾患の高リスク患者においても同疾患を正確に診断できることが示されたと結論付けている。 Hagar氏は、「フォトンカウンティング検出器の技術開発により、非侵襲的CCTAにより恩恵を受けることができる患者を大幅に増やせる可能性がある」と述べ、「これは、患者や画像診断業界にとって素晴らしいニュースだ」と喜びを表す。 ただし、UHR CCTAは、解像度を向上させるためにより多くの光子を放出するため、従来のCTスキャナーよりも放射線被曝量が増加するという問題がある。とはいえ、この技術はまだまだ初期段階にあり、放射線被曝量を減らすための方法の開発も進められているとHagar氏は説明する。 Hagar氏は、「現状では、この技術による検査を行う対象は、ベネフィットがリスクを上回る冠動脈疾患の高リスク患者に限定すべきだ。だが、この技術は今後10年以内にもっと普及する可能性がある」との期待を示す。そして、「30年前のマルチスライスCTが登場したときと同様に、フォトンカウンティングCTは次世代のCTスキャナーの始まりだと私は確信している。今後の展開が楽しみだ」と話している。

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多遺伝子リスクスコアと冠動脈石灰化スコアを比較することは適当なのか?(解説:野間重孝氏)

 pooled cohort equations(PCE)はACC/AHA心血管ガイドラインの一部門であるリスク評価作業部会によって開発されたもので、2013年のガイドラインにおいて、これを使用して一次治療においてアテローム性動脈硬化性心血管病のリスクが高いと判断された患者(7.5%以上)に対する高強度、中強度のスタチンレジメンが推奨され話題となった。現在PCEを計算するためのサイトが公開されているので、興味のある方は開いてみることをお勧めする(https://globalrph.com/medcalcs/pooled-cohort-2018-revised-10-year-risk/)。わが国であまり用いられないのは国情の相違によるものだろうが、米国ではPCE計算に用いられていない付加的指標を組み合わせることにより、精度の向上が議論されることが多く、現在その対象として注目されているのが冠動脈石灰化スコア(CACS)と多遺伝子リスクスコアだと考えて論文を読んでいただけると理解しやすいのではないかと思う。 「多遺伝子リスクスコア」とは一体何なのか、と疑問を持たれている方も多いのではないかと思う。少々極端なたとえになるが、臨床医ならばだれしも初診患者の診察をする際に家族歴を尋ねるのではないだろうか。また、少し年配の方で疫学に関係したことのある方なら、心筋症の家族歴の調査にかなりの時間を費やした経験をお持ちの方もいらっしゃるのではないかと思う。そこに2003年、ヒトゲノムが解読されるという大事件が起こったのである。その発症に遺伝が関係すると考えられる疾患の基礎研究で、研究方法がゲノム解析に向かって大きく舵を切られたことが容易に理解されるだろう。 一部のがんや難病では単一のドライバー遺伝子変異もしくは原因遺伝子によって説明できることがあるが、糖尿病・心筋梗塞・喘息・関節リウマチ・アルツハイマー認知症etc.など多くの問題疾患はいずれも多因子疾患であり、多数の遺伝的バリアントによって構成される多遺伝子モデル(ポリジェニック・モデル)に従うと考えられる。間接的、網羅的ゲノム解析であるSNPアレイを用いたゲノムワイド関連解析(GWAS)により、この15年ほどの間に多くの多因子疾患の遺伝性を明らかにされた。さらに近年、数万人を超える大規模なGWASによって、非常に多数の遺伝因子を用いて多遺伝子モデルに従う予測スコア、すなわちいわゆる多遺伝子スコア(ポリジェニック・スコア)が構築され、医療への応用可能性を論じることが可能となってきた。しかしその一方で問題点や限界も明らかになってきており、直接的な臨床応用にはまだ限界があることを考えておかなければならない。また、GWASは主に欧州系の白人を対象に研究された経緯から、他の人種にどのように応用できるかには検討の余地がある。本研究で取り上げられた2つの大規模臨床モデルがいずれも欧州系白人を対象としているのは、このような理由によるものと考えられる。 一方冠動脈石灰化スコア(CACS)は造影剤を用いない心電図同期CTで計測可能な指標で、冠動脈全体の石灰化プラークの程度について石灰化の量にCT値で重み付けすることにより求められ、現在冠動脈全体の動脈硬化負荷の代替指標として確立しているといえる。しかし心筋梗塞や不安定狭心症は必ずしも高度狭窄から起こるわけではなく、プラークの不安定性を評価する指標も必要となる。CCTAでもプラークの不安定性を示す指標がいくつか知られているが、臨床応用にはまだ研究の余地があるといえる。とはいえ、FFR-CTまで含め、冠動脈CT検査は直接的な臨床応用が可能である点がゲノム解析にはない利点であることは確かだといえる。実際ゲノム解析には大変な手間・費用が掛かり、その将来性を否定するものではないが、現段階においてはその臨床応用範囲が、まだ限定的であることは否定できないだろう。 なお、多遺伝子リスクスコアがPCEに加えられることによって予想確度が上がるか否かについては2020年の段階で意見が分かれており、いずれもジャーナル四天王で取り上げられているのでご参考願いたい (「多遺伝子リスクスコアの追加、CADリスク予測をやや改善/JAMA」、「CHD予測モデルにおける多遺伝子リスクスコアの価値とは/JAMA」)。 今回の研究はさまざまな議論を踏まえ、多遺伝子リスクスコアを加えること、CACSを加えることのいずれがPCE予測値をより改善するかを検討したものである。結果は多遺伝子リスクスコア、CACSそれぞれ単独では冠動脈疾患発生を有意に予測したが、PCEに多遺伝子リスクスコアを加えても予測確度は上昇しなかった。一方CACSを加えることによりPCEの予測確度は有意に上昇した。 この研究の結論はそれ自体としては大変わかりやすいものなのだが、そもそも多遺伝子リスクスコアとCACSを同じ土俵で比較することが適当なのか、という疑問が残る。何故なら多遺伝子リスクスコアは原因・素因というべきであり、CACSはいわば結果であるからだ。素因と現にそこに起こっている現象とでは意味が違うのではないだろうか。こうした批判は関係する後天的な因子の果たす役割の大きい生活習慣病を考える場合、重要な視点なのではないかと思う。普段ゲノム研究を覗く機会の少ないものとしては大変勉強になる論文ではあったが、そんな素朴な疑問が残った。

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Complex PCIにおけるイメージングガイドPCIの有用性(解説:上田恭敬氏)

 韓国の20施設において、約2年間の心臓死・標的血管関連心筋梗塞・TVRの複合エンドポイントを用いて、イメージングガイドPCIとアンジオガイドPCIの成績を比較した無作為化比較試験の結果である。 Complex PCIとして規定される登録対象病変は、1)側枝径2.5mm以上の分岐部病変、2)CTO病変、3)unprotected LM病変、4)必要ステント長38mm以上と予想される病変、5)2枝以上の主要冠動脈枝のPCIを同時に行うもの、6)3本以上のステント使用が必要な病変、7)ステント内再狭窄病変、8)高度石灰化病変、9)主要冠動脈枝の入口部病変である。 イメージングガイド群1,092例、アンジオガイド群547例と、1,639例の対象患者が2:1に割り付けられている。イメージングガイドとしては、術者の選択によってIVUSまたはOCTが使用可能であったが、実際には74.5%でIVUS、25.5%でOCTが使用されていた。複合エンドポイントは7.7%対12.3%(p=0.008)とイメージングガイド群で有意に低値となった。ステント血栓症や造影剤腎症の発生頻度に群間差はなかった。 Complex PCIに限定せず1,448例のAll-comerの対象患者で、イメージングガイドPCIとアンジオガイドPCIの成績を比較した無作為化比較試験であるULTIMATE試験においても同様に、1年間の心臓死・標的血管関連心筋梗塞・TVRの複合エンドポイントが、2.9%対5.4%(p=0.019)とイメージングガイド群で有意に低値となっている。ULTIMATE試験においては、IVUSで定義されるoptimal PCIが達成された場合とそうでない場合で、イメージングガイド群の中でも同エンドポイントが1.6%対4.4%(p=0.029)と大きな差が生じている。 当然のことではあるが、イメージングをただ使うだけではだめで、イメージングを使って種々の手技を実施してoptimal PCIを達成することによって初めて、PCIの成績向上につながっているといえる。多くの試験ではバルーンによるステントの追加拡張を行うか否かの違いしかないようであるが、ロータブレーターやカッティングバルーン等によるステント留置前の病変プレパレーションや各種テクニックによって、よりoptimalな結果が得られれば、PCIの成績はさらに向上することが期待されるだろう。

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急性腎障害、造影剤は腎予後に影響せず

 急性腎障害(AKI)の既往を有する患者における、造影剤使用と腎予後の関係に関するエビデンスは不足しているのが現状である。そこで、米国・ジョンズ・ホプキンス大学のMichael R. Ehmann氏らは、AKI患者に対する造影剤静注とAKI持続の関係を検討し、造影剤は腎予後に影響を及ぼさなかったことを報告した。Intensive Care Medicine誌オンライン版2023年1月30日号掲載の報告。 2017年7月1日~2021年6月30日の間に救急受診し、入院した18歳以上の患者のうち、KDIGO(Kidney Disease Improving Global Outcomes)基準のクレアチニン値に基づいてAKI(血清クレアチニン値が0.3mg/dL以上上昇もしくは1.5倍以上に上昇)と診断された1万4,449例を対象として、後ろ向きに追跡した。評価項目は、退院時のAKI持続、180日以内の透析開始などであった。傾向スコア重み付け法やエントロピーバランス法を用いて、造影剤静注あり群となし群の背景因子を調整して解析した。 主な結果は以下のとおり。・対象患者1万4,449例中、12.8%が集中治療室に入室した。造影剤静注を受けた患者の割合は18.4%、退院前にAKIから回復した患者の割合は69.1%であった。・多変量ロジスティック回帰モデル(オッズ比[OR]:1.00、95%信頼区間[CI]:0.89~1.11)、傾向スコア重み付け法(OR:0.93、95%CI:0.83~1.05)、エントロピーバランス法(OR:0.94、95%CI:0.83~1.05)のいずれの方法を用いても、造影剤静注と退院時のAKI持続に関連は認められなかった。・集中治療室に入室した患者サブグループにおいても、AKI持続に関する結果は同様であった。・180日以内の透析開始は対象患者の5.4%にみられたが、造影剤静注と180日以内の透析開始リスクとの関連は認められなかった。

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褐色細胞腫・パラガングリオーマ〔PPGL:pheochro mocytoma/paraganglioma〕

1 疾患概要褐色細胞腫・パラガングリオーマ(PPGL)は副腎髄質または傍神経節のクロム親和性細胞から発生するカテコールアミン産生腫瘍で、前者を褐色細胞腫、後者をパラガングリオーマ、総称して「褐色細胞腫・パラガングリオーマ」と呼ぶ。カテコールアミン過剰分泌による症状と腫瘍性病変による症状がある。カテコラミン過剰により、動悸、頭痛などの症状、高血圧、糖代謝異常などの種々の代謝異常、心血管系合併症、さらには各種の緊急症(高血圧クリーゼ、たこつぼ型心筋症による心不全、腫瘍破裂によるショックなど)を呈することがある。すべてのPPGLは潜在的に悪性腫瘍の性格を有し、実際、約10〜15%は悪性・転移性を示す。それ故、早期の適切な診断と治療が極めて重要である。原則として日本内分泌学会「褐色細胞腫・パラガングリオーマ診療ガイドライン2018」1)(図)に基づき、診断と治療を行う。図 褐色細胞腫・パラガングリオーマの診療アルゴリズム画像を拡大する2 診断 (検査・鑑別診断も含む)■ PPGLを疑う所見カテコラミン過剰による頭痛、動悸、発汗、顔面蒼白、体重減少、悪心・嘔吐、心筋梗塞類似の胸痛、不整脈などの多彩な症状を示す。肥満はまれである。高血圧を約85%に認め、持続型、発作型、混合型があるが、特に発作性高血圧が特徴的である。持続型では治療抵抗性高血圧の原因となる。発作型では各種刺激(運動、ストレス、過食、排便、飲酒、腹部触診、メトクロプラミド[商品名:プリンペラン]静注など)で高血圧発作が誘発される(高血圧クリーゼ)。さらに、急性心不全、肺水腫、ショックなどを合併することもある。発作型の非発作時には、まったくの「無症候性」であることも少なくない。また、高血圧をまったく呈さない無症候性や、逆に起立性低血圧を示すこともある。副腎や後腹膜の偶発腫瘍として発見される例も多い。■ スクリーニングの対象PPGLは二次性高血圧の中でも頻度が少なく、希少疾患に位置付けられるため、全高血圧でのスクリーニングは、費用対効果の観点から現実的ではない。PPGLガイドラインでは、特に疑いの強いPPGL高リスク群(表)での積極的なスクリーニングを推奨している。表 PPGL高リスク群1)PPGLの家族歴ないし既往歴(MEN、Von Hippel-Lindau病など)のある例2)特定の条件下の高血圧(発作性、治療抵抗性、糖尿病合併、高血圧クリーゼなど)3)多彩な臨床症状(動悸、発汗、頭痛、胸痛など)4)副腎偶発腫特に近年、副腎偶発腫瘍、無症候例の頻度が増加しているため、慎重な鑑別診断が必須である。スクリーニング方法カテコールアミン過剰の評価に際しては、運動、ストレス、体位、食品、薬剤などの測定値に影響する要因を考慮する必要がある。まず、外来でも実施可能な血中カテコールアミン(CA)分画(正常上限の3倍以上)、随時尿中メタネフリン分画(メタネフリン、ノルメタネフリン)(正常上限の3倍以上または500ng/mg・Cr以上)の増加を確認する。メタネフリン、ノルメタネフリンはカテコールアミンの代謝産物であり、随時尿でも安定であるため、スクリーニングや発作型の診断に有用である。近年、海外で第1選択である血中遊離メタネフリン分画も実施可能となったが、海外とは測定法が異なるため注意を要する。機能診断法上記のスクリーニングが陽性の場合、24時間尿中カテコールアミン分画(≧正常上限の2倍以上)、24時間尿中総メタネフリン分画(正常上限の3倍以上)の増加を確認する。従来実施された誘発試験は著明な高血圧を来すため推奨されない。アドレナリン優位の腫瘍は褐色細胞腫、ノルアドレナリン優位の腫瘍はパラガングリオーマが多い。画像診断臨床的にPPGLが疑われる場合は腫瘍の局在、広がり、転移の有無に関する画像診断(CT、MRI)を行う。約90%は副腎原発で局在診断が容易であり、副腎偶発腫瘍としての発見も多い。約10%はPGLで時に局在診断が困難なため、CT、 MRI、123I-MIBGシンチグラフィなどの複数のモダリティーを組み合わせる。(1)CT副腎腫瘍確認の第1選択。造影剤使用はクリーゼ誘発の可能性があるため、わが国では原則禁忌であり、実施時には患者への説明・同意とフェントラミンの準備が必須となる。(2)MRI副腎皮質腫瘍との鑑別診断、頭頸部病変、転移性病変の診断に有用である。(3)123I-MIBGシンチグラフィ疾患特異性が高いが偽陰性、偽陽性がある。PGLや転移巣の診断にも有用である。ヨウ化カリウムによる甲状腺ブロックを行う。(4)18F-FDG PET多発性病変や転移巣検索に有用である。病理学的診断(1)良・悪性を鑑別する病理組織マーカーは未確立である。組織所見とカテコールアミン分泌パターンを組み合わせたスコアリング(GAPP)が悪性度と予後判定に有用とされる。(2)コハク酸脱水素酵素サブユニットB(SDHB)の免疫染色の欠如はSDHx遺伝子変異の存在を示唆する。遺伝子解析(1)PPGLの30~40%が遺伝性で、19種類の原因遺伝子が報告されている2)。(2)若年発症(35歳未満)、PGL、多発性、両側性、悪性では生殖細胞系列の遺伝子変異が示唆される2)。(3)SDHB遺伝子変異は遠隔転移が多いため悪性度評価の指標となる。(4)全患者において遺伝子変異の頻度と臨床的意義、遺伝子解析の利益と不利益の説明を行うことが推奨されるが、必須ではなく、[1]遺伝カウンセリング、[2]患者の自由意思による判断、[3]質の担保された解析施設での実施が重要である。3 治療 (治験中・研究中のものも含む)過剰カテコールアミンを阻害する薬物治療と手術による腫瘍摘除が治療原則である。1)薬物治療α1遮断薬が第1選択で、効果不十分な場合、Ca拮抗薬を併用する。頻脈・頻脈性不整脈ではβ遮断薬を併用するが、α1遮断薬に先行しての単独投与は禁忌である。循環血漿量減少に対して、術前に高食塩食あるいは生理食塩水点滴を行う。α1遮断薬でのコントロール不十分な場合はカテコールアミン合成阻害薬メチロシン(商品名:デムサー)を使用する。2)外科的治療小さな褐色細胞腫では腹腔鏡下副腎摘除術、悪性度が高い例では開腹手術を施行する。潜在的に悪性であることを考慮して、腫瘍被膜の損傷に注意が必要である。家族性PPGLや対側副腎摘除後の症例では副腎部分切除術を検討する。悪性の可能性があるため、全例で少なくとも術後10年間、悪性度が高いと判断される高リスク群では生涯にわたる経過観察が推奨される。3)悪性PPGL131I-MIBG内照射、CVD化学療法、骨転移に対する外照射などの集学的治療を行う。治癒切除が困難でも、原発巣切除術による予後改善が期待される。■ 診断と治療のアルゴリズム上述の日本内分泌学会診療ガイドラインの診療アルゴリズム(図)を参照されたい。PPGL高リスク群で積極的にスクリーニングを行う。外来にて血中カテコラミン、随時尿中メタネフリン分画などを測定、疑いが強ければ、蓄尿でのCA分画と画像診断を行う。内分泌異常と画像所見が合理的に一致していれば、典型例での診断は容易である。無症候性、カテコールアミン産生能が低い例、腫瘍の局在を確認できない場合の診断は困難で、内分泌検査の反復、異なるモダリティーの画像診断の組み合わせが必要である。単発性病変であれば、α1ブロッカーによる適切な事前治療後、腫瘍摘出術を行う。術後、長期にわたり定期的に経過観察を要する。悪性・転移性の場合は、ガイドラインに準拠して集学的な治療を行う。診断と治療は専門医療施設での実施が推奨される。4 今後の展望今後解決すべき課題は以下の通りである。PPGL疾患概念の変遷:分類、神経内分泌腫瘍との関連診療アルゴリズムの改変診断基準の精緻化機能検査:遊離メタネフリン分画の位置付け画像検査:オクトレオチドスキャンの位置付け、68Ga-DOTATEシンチの応用遺伝子検査の臨床的適応頸部パラガングリオーマの診断と治療内科的治療:デムサの適応と治療効果核医学治療:123I-MIBG、ルテチウムオキソドトレオチド(商品名:ルタテラ)の適応と実態5 主たる診療科初回受診診療科は一般的に代謝・内分泌科、循環器内科、泌尿器科、腎臓内科など多岐にわたるが、以下の場合には専門医療施設への紹介が望ましい。(1)PPGLの家族歴・既往歴のある患者(2)高血圧クリーゼ、治療抵抗性高血圧、発作性高血圧などの患者(3)副腎偶発腫瘍で基礎疾患が不明な場合(4)PPGLの局所再発や遠隔転移のある悪性PPGL(5)遺伝子解析の実施を考慮する場合6 参考になるサイト(公的助成情報、患者会情報など)診療、研究に関する情報難治性副腎疾患プロジェクト(医療従事者向けのまとまった情報)1)成瀬光栄、他. 厚生労働科学研究費補助金難治性疾患克服研究事業「褐色細胞腫の実態調査と診療指針の作成」研究班 平成22年度報告書.2010.2)Lenders JW、 et al. J Clin Endocrinol Metab. 2014;99:1915-1942.3)日本内分泌学会「悪性褐色細胞腫の実態調査と診療指針の作成」委員会(編).褐色細胞腫・パラガングリオーマ診療ガイドライン2018.診断と治療社;2018.公開履歴初回2023年1月5日

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ガイドライン改訂ーアナフィラキシーによる悲劇をなくそう

 アナフィラキシーガイドラインが8年ぶりに改訂され、主に「1.定義と診断基準」が変更になった。そこで、この改訂における背景やアナフィラキシー対応における院内での注意点についてAnaphylaxis対策委員会の委員長である海老澤 元宏氏(国立病院機構相模原病院 臨床研究センター長)に話を聞いた。アナフィラキシーガイドライン2022で診断基準が改訂 改訂となったアナフィラキシーガイドライン2022の診断基準では、世界アレルギー機構(WAO)が提唱する項目として3つから2つへ集約された。アナフィラキシーの定義は『重篤な全身性の過敏反応であり、通常は急速に発現し、死に至ることもある。重症のアナフィラキシーは、致死的になり得る気道・呼吸・循環器症状により特徴づけられるが、典型的な皮膚症状や循環性ショックを伴わない場合もある』としている。海老澤氏は「基準はまず皮膚症状の有無で区分されており皮膚症状がなくても、アナフィラキシーを疑う場面では血圧低下または気管支攣縮または喉頭症状のいずれかを発症していれば診断可能」と説明した。◆診断基準[アナフィラキシーガイドライン2022 p.2]※詳細はガイドライン参照 以下の2つの基準のいずれかを満たす場合、アナフィラキシーである可能性が非常に高い。1.皮膚、粘膜、またはその両方の症状(全身性の蕁麻疹、掻痒または紅潮、口唇・下・口蓋垂の腫脹など)が急速に(数分~数時間で)発症した場合。さらに、A~Cのうち少なくとも1つを伴う。  A. 気道/呼吸:呼吸不全(呼吸困難、呼気性喘鳴・気管支攣縮、吸気性喘鳴、PEF低下、低酸素血症など)  B. 循環器:血圧低下または臓器不全に伴う症状(筋緊張低下[虚脱]、失神、失禁など)  C. その他:重度の消化器症状(重度の痙攣性腹痛、反復性嘔吐など[特に食物以外のアレルゲンへの曝露後])2.典型的な皮膚症状を伴わなくても、当該患者にとって既知のアレルゲンまたはアレルゲンの可能性がきわめて高いものに曝露された後、血圧低下または気管支攣縮または喉頭症状が急速に(数分~数時間で)発症した場合。 また、アナフィラキシーガイドライン2022はさまざまな国内の研究結果やWAOアナフィラキシーガイダンス2020に基づいて作成されているが、これについて「国内でもアナフィラキシーに関する疫学的な調査が進み、ようやくアナフィラキシーガイドライン2022に反映させることができた」と、前回よりも国内でのアナフィラキシーの誘因に関する調査や症例解析が進んだことを強調した。アナフィラキシーガイドライン2022に盛り込まれた変更点 今回の取材にて、同氏は「アナフィラキシーに対し、アドレナリン筋注を第一選択にする」ことを強く訴えた。その理由の一つとして、「2015年10月1日~2017年9月30日の2年間に医療事故調査・支援センターに報告された院内調査結果報告書476件のうち、アナフィラキシーが死因となる事例が12件もあった。これらの誘因はすべて注射剤で、造影剤、抗生物質、筋弛緩剤などだった。アドレナリン筋注による治療を迅速に行っていれば死亡を防げた可能性が高いにもかかわらず、このような事例が未だに存在する」と、アドレナリン筋注が必要な事例へ適切に行われていないことに警鐘を鳴らした。 ではなぜ、アナフィラキシーに対しアドレナリン筋注が適切に行われないのか? これについて「アドレナリンと聞くと心肺蘇生に用いるイメージが固定化されている医師が一定数いる。また、アドレナリン筋注を経験したことがない医師の場合は最初に抗ヒスタミン薬やステロイドを用いて経過を見ようとする」と述べ、「アドレナリン筋注をプレホスピタルケアとして患者本人や学校の教員ですら投与していることを考えれば、診断が明確でさえあれば躊躇する必要はない」と話した。 アナフィラキシーを生じやすい造影剤や静脈注射、輸血の場合、症状出現までの時間はおよそ5~10分で時間的猶予はない。上記に述べたような症状が出現した場合には、原因を速やかに排除(投与の中止)しアドレナリン筋注を行った上で集中治療の専門家に委ねる必要がある。 また、アドレナリン筋注と並行して行う処置として併せて読んでおきたいのが“補液”の項目(p.24)である。「これまでは初期対応に力を入れて作成していたが、今回はアナフィラキシーの治療に関しても委員より盛り込むことの提案があった」と話した。 以下にはWAOガイダンスでも述べられ、アナフィラキシーガイドライン2022に盛り込まれた点を抜粋する。◆治療 2.薬物治療:第一選択薬(アドレナリン)[アナフィラキシーガイドライン2022 p.21]・心疾患、コントロール不良の高血圧、大動脈瘤などの既往を有する患者、合併症の多い高齢患者では、アドレナリン投与によるベネフィットと潜在的有害事象のリスクのバランスをとる必要があるものの、アナフィラキシー治療におけるアドレナリン使用の絶対禁忌疾患は存在しない1)・アドレナリンを使用しない場合でもアナフィラキシーの症状として急性冠症候群(狭心症、心筋梗塞、不整脈)をきたすことがある、アドレナリンの使用は、既知または疑いのある心血管疾患患者のアナフィラキシー治療においてもその使用は禁忌とされない1)・経静脈投与は心停止もしくは心停止に近い状態では必要であるが、それ以外では不整脈、高血圧などの有害作用を起こす可能性があるので、推奨されない2)◆治療 2.薬物治療:第二選択薬(アドレナリン以外)[アナフィラキシーガイドライン2022 p.23]・H1およびH2抗ヒスタミン薬は皮膚症状を緩和するが、その他の症状への効果は確認されていない3) このほか、同氏は「食物アレルギーの集積調査が進み、国内でも落花生やクルミなどのナッツ類や果物がソバや甲殻類よりも誘因として高い割合を示すことが明らかになった」と話した。さらに「病歴の聞き取りが不十分なことで起こるNSAIDs不耐症への鎮痛薬処方なども問題になっている」と指摘した。 なお、アナフィラキシーガイドライン2022は小児から成人までのアナフィラキシー患者に対する診断・治療・管理のレベル向上と、患者の生活の質の改善を目的にすべての医師向けに作成されている。日本アレルギー学会のWebからPDFが無料でダウンロードできるのでさまざまな場面でのアナフィラキシー対策に役立てて欲しい。

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うどんと白米の嚥下造影、ガチ比較【Dr. 倉原の“おどろき”医学論文】第219回

【第219回】うどんと白米の嚥下造影、ガチ比較pixabayより使用さて、うどんと白米のどちらの喉越しが良く、飲み込みやすいか、おわかりでしょうか。そりゃうどんやろと思われるかもしれませんが、ちゃんと真面目に研究したものが存在します。Iida Y, et al. Videofluorographic evaluation of mastication and swallowing of Japanese udon noodles and white rice.Dysphagia. 2011 Sep;26(3):246-9.これは、健康なボランティア22人を対象に、日本のうどんと白米の咀嚼・嚥下段階を観察するために、嚥下造影(VF)検査を実施した研究です。研究にあたり、硫酸バリウム造影剤が入ったうどんと白米を準備しました。この結果、うどんは白米と比べて硬いものの、滑らかな触感であることがわかりました。うん、そりゃそうだ。図に示すように、一口分の平均重量は、炊飯した白米が21.0±2.7g、うどんが27.8±4.1gという結果でした。平均咀嚼回数は、白米が19.5回±7.7回、うどんが16.2回±8.2回で、有意にうどんのほうが少ないという結果でした。一口分を食べ終わるまでの所要時間は、白米が24.7±7.5秒、うどんが17.7±5.5秒という結果でした。これも有意差がありました。嚥下回数の平均値については、白米で2.7±0.9回、うどんで2.3±0.8回という結果でしたが、統計学的な有意差はありませんでした。図. うどんと白米の比較(文献より引用)以上のことから、うどんは喉越しがよく、比較的スムーズに食べられるということがわかります。確かに、白米を食べ続けるにはそれなりの水分や努力が必要ですが、うどんは本当にチュルン!と食べられますので、誤嚥がない患者さんであれば、うどんのほうが食べやすいかもしれませんね。食べやすければ何でもいいというわけではなく、たとえばプリンの場合、必ずしも咀嚼運動が現れるとは限りません。咀嚼は食事における最初のステップであり、食べ物を飲み込むための準備と言えます。そのため、食べやすければすべてOKというわけではない点も、われわれは知っておくべきでしょう。とにもかくにも、うどんはなかなか嚥下に優しい食材ということが言えるでしょう。

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教育研修プログラムとして高く評価(解説:野間重孝氏)

 現在ヨード造影剤を用いた検査・治療手技は日常診療で欠かすことのできない存在となっている。その際問題になるのが造影剤による急性腎障害(CIN)であり、ヨード造影剤投与後72時間以内に血清クレアチニン値が前値より0.5mg/dL以上、または前値より25%以上上昇した場合と定義される。CINは院内発症の急性腎障害(AKI)の10~13%に及ぶと考えられ、多くのAKIが不可逆的であるのと同様にCINもその多くが不可逆的であり、その後の治療の大きな障壁となる。検査・治療に当たる医師は最大限の注意を払うことが求められ、裏付けとなる十分な知識・経験と技術が求められるところとなる。 本研究は非緊急冠動脈造影や経皮的冠動脈インターベンションを施行する心臓専門医に対して教育、造影剤投与量および血行力学的に誘導された輸液目標に対するコンピュータによる臨床的意志決定支援、監査とフィードバックを行い、介入前後の成績を比較検討したものである。この一連の報告は、研究というより教育・研修プログラムの効果判定とその報告と考えるべきで、その意味から今回の試みは成功だったと評価されると考えられる。 一連のプログラムの実施と評価にStepped Wedge Cluster Randomized Trial方式を用いたことは的を射ているといえる。この方法にはあまりなじみのない方が多いのではないかと思うので解説させていただくと、地域や施設などの1つのまとまり(この場合はある医師の集団)をクラスターとして、介入時期をランダム化し、介入時期をずらして全クラスターで介入を実施する試験デザインをいう。この方法では介入前後の比較はできるが非介入群vs.介入群の無作為比較はできないため、一般的な比較対照試験というより一種のコホート研究と考えるのが適当である。本試験で重要な点は患者を対象とした無作為試験を行うことなく、参加した全医師が指導プログラムを受講し、受講の効果に対する評価を受けたことである。こうした評価方法は私たちも何か重要な研修プログラムを組んで実施する場合、大いに参考にすべき事例だと考えられよう。 繰り返しになることを恐れずに述べると、本研究をCIN発症予防法の検証と捉える読み方は適当ではない。CINに対しては予防が重要であるが、さまざまな臨床研究が行われているものの、現時点での有効な予防法は、造影剤使用量を最小限にすることと、適切な輸液のみだからである。有効な治療薬は見いだされておらず、緊急の透析も効果がないことが知られている。そうした状況の中、検査・治療前の患者のリスクと病態の把握、造影剤使用時に中止すべき薬剤に対する注意などが重要であることは言うまでもない。 このような講習を受けて検査・治療に当たるアンジオグラファーは何を考えるだろうか。輸液量はチームの計画の問題であるが(パスで決められている場合が多い)、造影剤の使用量は一に掛かって施行医の技量と判断能力に掛かっていることに気付くはずである。それが実際の数字として目の前に提示されるのである。必ず新たな向上心が醸成されるはずである。こうしたプログラムに基づいて自覚を新たにした若手医師たちが育ってくれるとするならば、こんなに頼もしいことはない。本研究を教育・研修プログラムとその報告として高く評価するものである。

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冠動脈造影/PCI時、コンピュータ支援で急性腎障害軽減/JAMA

 非緊急冠動脈造影や経皮的冠動脈インターベンション(PCI)を施行する心臓専門医に対し、教育プログラムや造影剤投与量などに関するコンピュータによる監査とフィードバックを伴う臨床意思決定支援の介入を行うことで、これら介入のない場合と比べて施術を受けた患者が急性腎障害(AKI)を発症する可能性は低く、時間調整後絶対リスクは2.3%低下した。また、造影剤の過剰投与について同リスクの低下は12.0%だった。カナダ・カルガリー大学のMatthew T. James氏らが、心臓専門医34人とその患者を対象に行ったクラスター無作為化試験の結果で、JAMA誌2022年9月6日号で発表した。AKIは、冠動脈造影やPCIでは一般的な合併症で、高コストおよび有害長期アウトカムと関連する。今回の結果について著者は、「こうした介入が今回の試験以外の環境下でも有効性を示すかどうか、さらなる検討が必要である」と述べている。患者7,106人を対象にクラスター無作為化試験 研究グループは、カナダ・アルバータ州の心臓カテーテル検査室3ヵ所で侵襲的治療を行う心臓専門医全員を対象に、ステップウェッジ・クラスター無作為化試験を行った。無作為化の開始日は、2018年1月~2019年9月の間。適格患者は、非緊急冠動脈造影またはPCI、もしくはその両方を施行し、透析は行っておらず、AKIリスクが5%超と予測される18歳以上だった。34人の医師が選択基準を満たした患者7,106人に対して7,820件の処置を行った。被験者のフォローアップ終了は2020年11月だった。 介入期間中、心臓専門医は、教育支援プログラム、造影剤投与量や血行力学ガイド下静脈内輸液の目標値に関するコンピュータによる臨床意思決定支援、および監査・フィードバックを受けた。介入期間前(対照期間)は、心臓専門医は通常ケアを提供し、介入は受けなかった。 主要アウトカムはAKIの発生とした。副次アウトカムは12項目で、造影剤投与量、静脈内輸液量、および主要有害心血管・腎イベントなどだった。解析は、時間調整モデルを用いて行われた。AKI発生率、介入群7.2%、対照群8.6% 心臓専門医34人は診療グループや医療センターにより8集団に分けられた。このうち、介入群には医師31人、患者4,032人、4,327件の処置が含まれた(患者の平均年齢:70.3歳[SD 10.7]、女性32.0%)。対照群は医師34人、患者3,251人、3,493件の処置が含まれた(70.2歳[SD 10.8]、33.0%)。 AKI発生率は、介入期間中7.2%(4,327件中310イベント)、対照期間中8.6%(3,493件中299イベント)だった(群間差:-2.3%[95%信頼区間[CI]:-0.6~-4.1、オッズ比[OR]:0.72[95%CI:0.56~0.93]、p=0.01)。 12項目の副次アウトカムのうち、8項目は両群で有意差がみられなかった。造影剤投与量が過剰だった処置の割合は、対照期間中51.7%から介入期間中は38.1%に減少した(群間差:-12.0%[95%CI:-14.4~-9.4]、OR:0.77[95%CI:0.65~0.90]、p=0.002)。静脈内輸液投与が不十分だった処置の割合も、対照期間中の75.1%から介入期間中は60.8%に低下した(群間差:-15.8%[95%CI:-19.7~-12.0]、OR:0.68[95%CI:0.53~0.87]、p=0.002)。 主要有害心血管・腎臓イベントも、両群で有意差はなかった。

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DWIBSは不明熱の診療にも有用?【知って得する!?医療略語】第19回

第19回 DWIBSは不明熱の診療にも有用?PET-CT以外にも全身の腫瘍を検索する方法があると聞きました。2年前に保険収載されたDWIBS法というMRIを使用した全身検査があります。≪医療略語アプリ「ポケットブレイン」より≫【略語】DWIBS【日本語】背景抑制広範囲拡散強調画像・ドゥイブス法【英字】diffusion-weighted whole body imaging with background suppression【分野】腫瘍関連【診療科】全診療科実際のアプリの検索画面はこちら※「ポケットブレイン」は医療略語を読み解くためのもので、略語の使用を促すものではありません。DWIBS(diffusion-weighted whole body imaging with background suppression)は2004年に放射線科医の高原 太郎氏(東海大学工学部医用生体工学科 教授)により開発された画像検査方法で、背景信号を抑制した全身のMRI拡散強調画像を撮影します。全身の拡散強調画像を1回で撮影でき、PET-CTと比較して遜色ないがんの描出ができるとされ、全身の悪性腫瘍の検索やリンパ節転移の検出、他臓器転移の検出への利用で注目を浴びています。DWIBSの利点は、造影剤や放射性医薬品が不要、放射線被爆がなく、繰り返しの検査でも被爆を心配する必要がないことです。また、検査価格もDWIBSはPET-CTの1/3~1/6程度と低価格です。このためDWIBSは経時的フォローに向いていると言えます。従来であれば、化学療法の効果判定は、腫瘍サイズの縮小などの形態変化から判断していましたが、DWIBSを利用すると腫瘍病変の信号強度の変化を捉えることで、抗がん剤の効果を判定することが可能となり、より早く効果判定することができます。DWIBSは2020年に保険収載されました。PET-CTとは異なり、原発不明がんの精査でも保険診療が可能で、造血器腫瘍は悪性リンパ腫のみならず、白血病や多発性骨髄腫にも保険適応があります。メディカル・データ・ビジョン株式会社のデータベース(MDV analyzer)で調べると、2020年4月~2022年6月の期間、全国調査対象の466施設中、18施設が全身MRI撮影加算を算定しており、検診領域のみならず一般診療にもDWIBSが利用され始めていることが分かります。悪性腫瘍の全身スキャンで注目を浴びるDWIBSですが、炎症部位の検出にも有用とされます。不明熱の患者さんで通常のCTやMRIで熱源や炎症フォーカスを特定できない時にPET-CTを行うこともありますが、DWIBSに置きかえられる可能性があり、PET-CTより低価格で簡便に検査が実施できる可能性があります。実際に発熱の熱源精査にDWIBSを使用し皮膚筋炎の診断に繋がった報告もあります。一方で腫瘍の良・悪性の鑑別には利用が難しいとする報告もあります。DWIBSの利用と可能性の限界について知見の集積が進み、より一般診療で活用できることをとても期待しています。1)今井 裕ほか. 日消誌. 2010;107:712-717.2)加藤 愛美ほか. Clin Rheumatol. 2016;28:150-157.3)Komori T,et al. Ann Nucl Med. 2007;21:209-215.4)今野 信宏. 頭頸部外科. 2021;31:85-89.

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高画質・低線量の次世代型CT、東海大学がアジア1号機を導入

次世代型CTであるフォトンカウンティングCT(シーメンスヘルスケア製)が2022年1月に保険承認を受け、アジア地域の1号機が東海大学医学部附属病院に導入された。フォトンカウンティングCT「NAEOTOM Alpha(ネオトム アルファ)」画像を拡大する従来型CTは身体を透過したX線を検出器に当てて可視光に変え、それを電気信号に変換して画像化する。この2段階の変換によってX線の光子エネルギーに関する情報が失われ、コントラストや画像の鮮明さも損なわれていた。これに対し、フォトンカウンティングCTは一つひとつの光子(Photon)をそのまま計測(Counting)する。 X線を直接電気信号に変換することでエネルギー情報の損失がなくなり、精度の高い画像が実現した。これにより従来型CTと比較して大幅な被ばく線量の低減従来型CTでは困難であった微細な構造の鮮明な描出・エネルギー情報によって物質を判別し、特定の物質を強調したり除去したりできるといった利点がもたらされる。導入した東海大学医学部画像診断学・教授の橋本 順氏は、フォトンカウンティングCTの臨床応用にあたっての期待を以下のように述べる。【高画質】中耳や内耳などの頭頚部領域の細かい構造をより鮮明に観察できる→耳鼻科冠動脈ステント内の血栓形成状況(内腔)まで確認できる→循環器内科/心臓血管外科【低線量】放射線感受性が高い小児に使いやすい→小児科【物質選択的な画像解析】画像のカルシウム部分を除去することで、骨のなかの軟部組織を精密に確認できる→整形外科冠動脈の画像では内腔の造影剤と壁の石灰化との判別が困難な場合があるが、石灰化部分だけ除去できる→循環器内科/心臓血管外科造影剤と石灰化が判別しづらい冠動脈の画像(左)を、石灰化部分を選択して除去(右)造影剤と石灰化が判別しづらい冠動脈の画像(上)を、石灰化部分を選択して除去(下) 画像を拡大する 画像を拡大する新型コロナ患者の肺野CT左/従来型CT中/フォトンカウンティングCT右/フォトンカウンティングCTで血流部分を選択して色付け画像を拡大する橋本氏はさらに「現在使われているヨードの造影剤は腎毒性がある。フォトンカウンティングCTはヨード部分を強調することで造影剤の使用量を減らせるほか、ヨード以外の物質を用いた新しい造影剤の開発に期待している。今後は臨床で使いながら適した症例を見つけ、新たな用途を探したい。今後10年ほどでCTはこのタイプに置き換わっていくだろう」とする。シーメンスヘルスケアによると、国内では東海大学のほか、大学病院や研究機関などを中心に導入を図っていく予定で、海外においても欧米の主要大学や病院にプロトタイプを20台ほど導入済みだという。

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甲状腺クリーゼ〔Thyrotoxic storm or crisis〕

1 疾患概要■ 概念・定義甲状腺クリーゼ(Thyrotoxic storm or crisis)とは、甲状腺中毒症の原因となる未治療ないしコントロール不良の甲状腺基礎疾患が存在し、これに何らかの強いストレスが加わったときに、甲状腺ホルモン作用過剰に対する生体の代償機構の破綻により複数臓器が機能不全に陥った結果、生命の危機に直面した緊急治療を要する病態をいう。■ 疫学甲状腺クリーゼはまれな病態で、入院した甲状腺中毒症の1~2%を超えないと言われている。日本甲状腺学会と日本内分泌学会の共同委員会(赤水班)による2009年の全国調査では、わが国での発生率は入院患者10万人あたり0.2人であり、推計患者数は確実例が約150人/年、疑い例が約40人/年と算出された。致死率は約11%である。■ 病因病因は不明であり、クリーゼの発症は必ずしも甲状腺ホルモンの血中濃度によらない。急激な甲状腺ホルモンの放出や、交感神経系の活性化、重症疾患でみられる甲状腺ホルモンの感受性上昇や蛋白結合能の低下などの関与が考えられている。甲状腺疾患としてバセドウ病が最も頻度が高いが、機能性甲状腺腫瘍、アイソトープ治療、甲状腺手術、破壊性甲状腺疾患などでも報告されている。甲状腺外の誘因としては、感染症、外傷、妊娠・分娩、副腎皮質機能不全、糖尿病ケトアシドーシス、虚血性心疾患、ヨード系造影剤の投与、強いストレスなど多岐にわたる。■ 症状甲状腺クリーゼでは複数臓器の機能不全が起きるが、代表的な症状は以下の通りである。1)甲状腺腫バセドウ病ではびまん性腫大を示すことが多く、結節性の甲状腺機能亢進症では、結節を触知することがある。亜急性甲状腺炎では局所の圧痛を示す。2)中枢神経症状甲状腺クリーゼの中心的な症状であり、意識障害、不穏、譫妄、精神異常、傾眠、痙攣、昏睡がある。3)発熱基礎代謝亢進にともない、発熱(38℃以上)とともに多汗を生じる。4)循環器症状高度の頻脈、心房細動、心不全症状、ショックを起こすことがある。5)消化器症状腸管蠕動運動亢進による下痢、嘔気・嘔吐、肝障害に伴う黄疸を示すことがある。また、肝機能不全による肝障害・黄疸を呈することがある。■ 予後現在においても致死率は高く、10~75%と言われていたが、わが国での全国疫学調査の結果では致死率10%以上であった。死因は、多臓器不全、腎不全、呼吸不全などで、また不可逆的な神経学的障害が残存することもある。予後規定因子として、ショック、播種性血管内凝固症候群(DIC)、多臓器不全があり、入院時に重症度に応じて予後が不良となる。2 診断 (検査・鑑別診断も含む)甲状腺クリーゼの診断には、古くからのBurch-Wartofskyの診断スコアが使用されてきたが、必ずしも科学的エビデンスに裏付けされたものではなかった。より一層科学的根拠に基づく診断基準を求めて、わが国では、赤水らによる甲状腺クリーゼの診断基準が策定された。必須項目は甲状腺中毒症の存在であり、(1)中枢神経症状、(2)発熱、(3)頻脈、(4)心不全症状、(5)消化器症状の5項目が主要な症状・症候として選択された(表1)。表1 甲状腺クリーゼの診断基準画像を拡大する甲状腺中毒症の存在下に、「中枢神経症状+他の症状項目が1つ以上あるもの」か、「中枢神経症状以外の症状項目が3つ以上あるもの」を、甲状腺クリーゼ確実例とする。中枢神経症状以外の症状項目2つ、または夜間・休日など甲状腺中毒症が確認できない状況下で、甲状腺疾患の既往、眼球突出、甲状腺腫の存在があり、確実例の条件を示す者を疑い例とする。3 治療 (治験中・研究中のものも含む)診断基準の確定の後、甲状腺クリーゼの予後改善を目指して、診療ガイドライン2017年版が作成された。甲状腺クリーゼと診断された場合、二次ABCDE評価(Airway, Breathing, Circulation, Dysfunction of central nervous system, and Exposure & environmental control)を行ない、Acute Physiologic Assessment and Chronic Health Evaluation(APACHE)IIスコアに基づき集中治療の要否を判断する。冷却・解熱剤の投与とともに抗甲状腺薬、無機ヨードならびに副腎皮質ステロイドを開始する(図)。また、APACHEIIスコア9以上では集中治療室(ICU)での管理が勧められる。図 甲状腺クリーゼ治療のアルゴリズム画像を拡大する甲状腺クリーゼに至った誘因の除去を行い、感染症などの合併に関しては個別に治療を行なう。中枢神経症状に対する治療は精神科救急医療ガイドラインなどに準じて行うが、器質的疾患(脳血管障害・髄膜炎・代謝異常・中毒など)がクリーゼの誘因となりうるので鑑別診断を必ず行う。心拍数150/分以上の洞性頻脈や頻拍性心房細動を認める場合、β1選択性短時間作動型β遮断薬やジギタリス製剤で心拍数を管理し、必要に応じて電気的除細動も考慮する(表2)。表2 甲状腺クリーゼの各々の病態に対する治療の概要画像を拡大するその他、うっ血性心不全、急性肝不全、播種性血管内凝固症候群(DIC)、急性腎不全、横紋筋融解症、成人型呼吸促拍症候群(ARDS)などがみられる場合があり、予後不良となるので、各々の病態に応じた集学的治療が必要とされる。甲状腺クリーゼにおける治療的血漿交換の絶対的適応は、急性肝不全合併例で、相対的適応はクリーゼに対する治療開始24~48時間後においてもコントロール不能の甲状腺中毒症である。APACHEIIスコアならびにSOFA(Sepsis-related Organ Failure Assessment)スコアが予後と関連する。4 今後の展望今回のガイドライン作成にあたり、国内の多くの施設に症例報告収集の支援をいただいたが、ガイドライン発行後、治療の方法ならびに生存率なども変化しているため、現在日本甲状腺学会により前向きの全国調査が行われている。5 主たる診療科内分泌・代謝内科※ 医療機関によって診療科目の区分は異なることがあります。6 参考になるサイト(公的助成情報、患者会情報など)診療、研究に関する情報日本内分泌学会 甲状腺クリーゼ(一般利用者向けのまとまった情報)難病情報センター 甲状腺中毒クリーゼ(一般利用者向けと医療従事者向けのまとまった情報)日本甲状腺学会 甲状腺クリーゼの診断基準(第2版)(医療従事者向けのまとまった情報)日本甲状腺学会 甲状腺クリーゼ診療ガイドライン2017年版Digest版(医療従事者向けのまとまった情報)1)Akamizu T, et al. Thyroid. 2012;22:661-679.2)Burch HB, et al. Endocrinol Metab Clin North Am. 1993;22:263-277.3)Isozaki O, et al. Clin Endocrinol(Oxf). 2016;84: 912-918.4)Satoh T, et al. Endocr J. 2016;63:1025-1064.5)日本甲状腺学会・日本内分泌学会. 甲状腺クリーゼガイドライン2017.南江堂,2017.公開履歴初回2022年5月26日

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英語で「~だとわかった」は?【1分★医療英語】第21回

第21回 英語で「~だとわかった」は?I’d like to hear about the result of the blood test...(血液検査の結果を聞きたいのですが…) It turned out that you have diabetes.(検査の結果、あなたは糖尿病だとわかりました)《例文1》It turned out that the patient has lung cancer.(その患者は肺がんに罹患しているとわかった)《例文2》The blood test has turned out/come out to be negative.(血液検査の結果は陰性でした)《解説》“turn”という動詞には、単独では「向きを変える」などの意味がありますが、“I’m turning 40 next month.”(私は来月40歳になる)の使い方のように、「ある状態になる」といった意味もあります。“turn out”で、「〜だとわかる」「〜という結果になる」という意味になりますが、ここには「予想していた結果と異なる」というニュアンスが含まれます。同様に、“The patient turned out to be allergic to dye.”(その患者は造影剤にアレルギーがあることがわかった)などのように、対象を主語にして用いることもできます。用例としては、“The chemotherapy turned out to be effective for the patient.”([予測に反して]化学療法はその患者には有効であることがわかった)、“The patient, as it turned out, hadn’t taken his insulin for the last couple of days.”(その患者は[期待に反して]、この数日間インスリンを打っていなかったことがわかった)などもあります。一方、“come out”も「何かが明らかになる」という意味があり、こちらは予測と結果の関係によらずに使うことができます。“The result has just come out.”(ちょうど結果が出たところだ)のように使われます。講師紹介

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造影剤お役立ち情報サイト「Contrast ColleGE」開設【ご案内】

 ケアネットは、オンラインでのエンゲージメントに特化した新プラットフォーム「DXPlus」を用いて、GEヘルスケアファーマ提供のもと、放射線科の医師や医療従事者を対象とした造影剤に関するお役立ち情報サイト「Contrast ColleGE」を公開した。 本サイトは「集まって学び、解決する」をキーワードに、トップランナーの先生方による症例紹介コンテンツなどを掲載するライブラリコーナーや、造影剤に関する疑問やその答えが一覧ですぐに見つかるように工夫されたQ&Aコーナー、GEヘルスケアファーマの講演会などの告知をするイベントコーナーなどを充実させ、造影剤で困ったら「Contrast ColleGE」というブランディングを目的にスタートした。 今後は、提供元の「機器と造影剤のGE」の強みを活かしたシームレスな情報発信や、双方向コミュニケーション機能などの実装を通し、医療現場に寄り添った新しい価値を「Contrast ColleGE」から提供していく。「Contrast ColleGE」はこちらから※Contrast ColleGEは、CareNet.com会員ID(メールアドレス)のみでサイト利用登録が完了します。

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