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小児喘息リスクは新生児期の細菌定着で増加する

小児喘息では一般に先行して、繰り返す喘息様症状=喘鳴(recurrent wheeze)がみられる。デンマーク・コペンハーゲン大学のHans Bisgaard氏らは、重度の繰り返す喘鳴を呈する幼児の気道に病理学的にみられる細菌定着と、喘息の起因との関連を示唆してきた。その関連を明らかにするスタディを実施。NEJM誌10月11日号に結果が報告された。無症候の新生児下咽頭からの吸引液を培養し5歳児までモニタリング検証が行われたのは、無症候の新生児の下咽頭の細菌定着と、5歳時までの喘鳴・喘息・アレルギー発現との関連。喘息の母親から生まれ、コペンハーゲン小児喘息前向き研究(CPSAC:Copenhagen Prospective Study on Asthma in Childhood)に登録された小児が対象となった。無症候の新生児(生後1ヵ月の乳児)の下咽頭部位から吸引液を採取し、肺炎球菌、インフルエンザ菌、Moraxella catarrhalisと黄色ブドウ球菌を培養。5歳児まで喘鳴の評価が前向きにモニタリングされ、日記に記録。4歳時に血中好酸球算定と総IgE、特異的IgE測定を行い、5歳時に肺機能の評価および喘息の診断が行われた。肺炎球菌、Moraxella catarrhalis、インフルエンザ菌の1つ以上の定着がリスク増加培養されたサンプル数は321例。乳児の21%が、肺炎球菌、Moraxella catarrhalis、インフルエンザ菌、あるいは複数の細菌が定着していた。黄色ブドウ球菌の定着はみられなかった。細菌定着(黄色ブドウ球菌を除く1つ以上の)と持続的な喘鳴とのハザード比は2.40、喘鳴の急性かつ重度の増悪とのハザード比は2.99、喘鳴による入院は3.85で、有意に関連していることが明らかとなった。またこれら細菌定着がみられた小児には、4歳時の好酸球数、総IgE値に有意な増加がみられた。特異的IgE値には有意な影響がみられていない。β2作動薬投与後5歳時の、喘息有病率と気道抵抗性の可逆性は、新生児期に細菌の定着がみられた小児 vs みられなかった小児でそれぞれ33% vs 10%、23% vs 18%と、いずれも細菌定着がみられた小児で有意に高いことが判明した。Bisgaard氏らは、「肺炎球菌、Moraxella catarrhalis、インフルエンザ菌の1つ以上の定着がある新生児は、幼児期に繰り返す喘鳴と喘息のリスクが増加する」と結論づけている。(武藤まき:医療ライター)

10202.

メディケード加入者は医療格差に曝されている

アメリカでは近年、営利保険とは対照的に、管理医療型(マネジドケア)のHMOに加入するメディケード受益者の比率が増加し続けている。マネジドケアHMOでは、重篤あるいは高コストの合併症などを防ぐために予防とルーチンケアを一律に組み込むなど、低所得者や移民が多いメディケード加入者にとってメリットがある半面、必要な医療サービスが制限されるなど“格差”をもたらす可能性も指摘されてきた。 ハーバード・メディカル・スクールのBruce E. Landon氏らは、マネジドケアプランの3パターン間の治療の質を比較。JAMA誌10月10日号で格差の実態について報告した。383のヘルスプランの治療の質を比較治療の質を比較したのは、「メディケード・オンリー・プラン(主にメディケード加入者に供給)」と「営利保険・オンリー・プラン(主に営利保険加入者に供給)」と「メディケード/営利保険適用プラン(実質的に両方の加入者多数に供給)」の3タイプ。比較対象となったのは、2002~2003年にNational Committee for Quality Assuranceで報告された383のヘルスプラン。37が「メディケード・オンリー・プラン」、204が「営利保険・オンリー・プラン」、142が「メディケード/営利保険適用プラン」(メディケード・営利保険加入者データは別々に報告)だった。質の評価には、メディケード集団に適用可能なHEDIS(Healthcare Effectiveness Data and Information Set)の11の指標が用いられた。営利保険加入者のほうが優位メディケード加入者間での11の指標パフォーマンスは、「メディケード・オンリー・プラン」と「メディケード/営利保険適用プラン」で違いはなかった。同様に営利保険加入者間で、「営利保険・オンリー・プラン」と「メディケード/営利保険適用プラン」でパフォーマンスの違いは実質的になかった。全体的に見ると、1つを除く全ての指標で営利保険加入者のパフォーマンスがメディケード加入者より上回っていた。高血圧症コントロールでは4.9%の差(営利保険加入者58.4%対メディケード加入者53.5%、P=0.002)があり、分娩後の適切な治療に関しては24.5%(同77.2%対52.7%、P=0.001)に上る。同程度の格差は、同一のヘルスプランで治療を受けた営利保険加入者とメディケード加入者の間で観察された。Landon氏らは、「メディケード・マネジドケア加入者は、営利保険・マネジドケア加入者より質の低い治療を受けている」と結論。「国家として治療における相違を減らすことが米国ヘルスケアシステムの重要な目的とするのなら、マネジドケアは万能薬でない」と述べ、現状システムの改善を提起した。(武藤まき:医療ライター)

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自由行動下血圧測定(ABPM)は24時間が望ましい:IDACO

前向きコホート研究データベースIDACOでは自由行動下血圧と予後の関係を検討しているが、血圧測定は夜間だけでなく24時間行うべきだという。Universidad de la Republica(ウルグアイ)のJose Boggia氏らがLancet誌10月6日号で報告した。 住民研究データを解析IDACO(International Database on Ambulatory blood pressure monitoring in relation to Cardiovascular Outcomes)は国際データベースで、自由行動下24時間血圧と致死性・非致死性予後の相関を検討した前向き住民研究のデータが集積されている。今回の解析対象は平均年齢56.8歳(標準偏差:13.9歳)の7,458例。随時血圧平均値は132.4/80.1mmHg、24時間平均血圧は124.8/74.0mmHgだった。追跡期間中央値は9.6年間だった。 昼間血圧のみでは予後予知力が減弱収縮期血圧(SBP)、拡張期血圧(DBP)は昼間、夜間血圧を問わず1標準偏差上昇により心血管系死亡が有意に増加していた。ただし、非心血管系死亡の有意な増加と相関していたのは夜間血圧の上昇だった(いずれも、コホート、年齢、性別、降圧薬服用の有無などで補正後)。同様にSBP、DBPの夜間/昼間血圧比増加(1標準偏差)も、心血管系・非心血管系死亡を有意に増加させていた。夜間降圧度はさほど予後に影響せず?興味深いのは夜間降圧と心血管系予後の関係だろう。夜間/昼間血圧比「0.8~0.9」を正常、「0.8未満」をいわゆる"extreme dippier"、「0.9~1.0」を"non-dipper"、「1.0以上」を"riser"とすると、正常に比べ"riser"と"non-dipper"では総死亡と非心血管系死亡は有意に増加していたものの、心血管系死亡が有意に増加していたのは"riser"だけだった。心血管系イベント(致死性・非致死性)も同様で、"riser"では正常に比べ「全心血管系イベント」、「脳卒中」のリスクが有意に増加していたが、「冠動脈イベント」、「冠動脈イベント+心不全」は増加傾向にとどまった。また"extreme dippier"と"non-dipper"では正常に比べリスクが有意に増加しているイベントはなかった(年齢等補正後)。上記の通り夜間血圧のみでも予後予知が可能だが筆者らは、夜間/昼間血圧比の増加と心血管系死亡・非心血管系死亡の相関に着目し、「自由行動下血圧は夜間だけではなく24時間測定すべきだ」と結論している。(宇津貴史:医学レポーター)

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アルツハイマー病治療薬ドネペジルは興奮症状に対し効果がない

コリンエステラーゼ阻害薬ドネペジルは、アルツハイマー病患者の認知機能障害を改善するとされるが、行動障害に関する有益性については明らかになっていない。 キングズ・カレッジ・ロンドン附属精神医学研究所のRobert J. Howard氏らは、アルツハイマー病患者に共通してみられる興奮症状に対して、本剤が効果的かどうかを検証した。NEJM誌10月4日号掲載報告より。1日10mgを12週投与、評価はCMAIスケールで臨床的に明らかな興奮症状を呈し、短期の心理社会的な治療プログラムでも改善がみられなかった272例のアルツハイマー病患者を、ドネペジル10mg/日投与群(128例)とプラセボ投与群(131例)にランダムに割り付け行われた。投与期間は12週間。12週時点の結果評価は、CMAIスケール(Cohen-Mansfield Agitation Inventory:スケールスコアは29~203。スコアが高いほどより興奮状態であることを示す)が用いられ、スコアの変化が測られた。プラセボ投与群との有意差なし基線から12週へのCMAIスコアの変化に、ドネペジル投与群とプラセボ群で有意差は見られなかった。変化の推定平均差(ドネペジル値-プラセボ値)は-0.06(95%信頼区間:-4.35~4.22)。CMAIスコアが30%以上改善した患者は、プラセボ投与群で22/108例(20.4%)、ドネペジル投与群で22/113(19.5%)で、むしろプラセボ投与群のほうが0.9ポイント上回っていた(95%信頼区間:-11.4~9.6)。両群スコアには、Neuropsychiatric Inventory、Neuropsychiatric Inventory Caregiver Distress ScaleまたはClinician's Global Impression of Changeの各スケールを用いても有意差はみられなかった。Howard氏らは、この12週試験では、アルツハイマー病患者の興奮症状に対してドネペジルは効果がなかったと結論づけている。(武藤まき:医療ライター)

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植込型除細動器使用は女性で低い

JAMA誌10月3日号に寄せられた本論は、植込型除細動器(ICD)使用の性差に着目した、複数年にわたる患者追跡調査を踏まえた研究報告で、米国デューク医科大学クリニカルリサーチ研究所のLesley H. Curtis氏らによる。一次あるいは二次予防目的使用群ごと複数年にわたって検証Curtis氏らは、心突然死の一次予防もしくは二次予防を目的にICD使用が適用された患者群を追い検証した。連邦機関の一つであるCMMS(Centers for Medicare & Medicaid Services:旧保健医療財政局)から得られた1991年~2005年の間の調査定義可能な5%相当の全国サンプルを解析。メディケアに該当する65歳以上患者で、急性心筋梗塞、心機能不全あるいは心筋症と診断された(心停止、心室頻拍は除く)男性65,917例、女性70,504例を一次予防コホート群として、心停止または心室頻拍と診断された男性52,252例、女性47,411例を二次予防コホート群として解析が行われた。主要評価項目は、1999年から2005年までの1年ごとのICD治療の受療状況と全死亡率。ICD治療群と未治療群との死亡率の有意差が少ないのは性差のせい?2005年時の一次予防コホート群で、コホートエントリー1年以内でICD治療を受けていたのは男性が32.3/1,000例、女性は8.6/1,000例。多変量解析によって、男性のほうが女性よりもICD治療を受けている傾向が強かった(ハザード比3.15、95%信頼区間2.86-3.47)。またコホートエントリー180日時点で存命のICD未治療群とICD治療群との、1年以内の死亡率に有意差はなかった(ハザード比1.01、95%信頼区間0.82-1.23)。一方、2005年時の二次予防コホート群は、男性102.2/1,000例、女性38.4/1,000例がICD治療を受けていた。人口統計学的変数および共存症の有無で調整後、男性のほうが女性よりもICD治療を受けている傾向が強いことが明らかとなった(ハザード比2.44、95%信頼区間2.30-2.59)。またコホートエントリー30日時点で存命だったICD未治療群とICD治療群との、1年以内の死亡率は、治療群のほうが有意に低かった(ハザード比0.65、95%信頼区間0.60-0.71)。Curtis氏らは、メディケア集団においては、一次予防もしくは二次予防目的いずれでも、女性のほうがICD治療を男性よりも受けていないという性差が見いだされたと報告。これまでの報告ではギャップは少ないとされていたが、性差があると認識することが死亡率改善のためにも必要だと述べている。(武藤まき:医療ライター)

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胸痛治療室の導入は入院率を低減させるか

イングランド/ウェールズでは急性の胸痛に対する救急診療部による治療が年間約70万件に達しており、これは緊急入院全体の約1/4に相当する。胸痛治療室での管理により入院率が低下することが確認されているため、国民医療サービス(NHS)を通じた胸痛治療室の設立によって緊急入院が低減する可能性が示唆されている。 イギリス・シェフィールド大学Medical Care Research UnitのGoodacre氏らは、胸痛治療室におけるケアが、治療後30日以降の救急診療部による再治療や入院を増加させずに緊急入院を低減できるかを検討するクラスター無作為化試験を実施、BMJ誌9月18日付オンライン版、9月30日付本誌にて報告した。14施設を介入群と対照群に無作為に割り付け、介入前後の入院率などを評価2004年10月~2005年6月に14施設が登録され、胸痛治療室におけるケアを実施する介入群に7施設が、ルーチンの治療を行う対照群に7施設が無作為に割り付けられた。全体として、介入の前年には胸痛により37,319例が43,642回の治療を受け、介入後の年には40,951例に47,767回の治療が施行された。入院に至った胸痛治療の割合、治療後30日以降の再治療および入院、全原因による1日の緊急入院数、胸痛による救急診療部の受診率について評価した。胸痛治療室の導入は入院率を低下させず、むしろ救急治療が増大胸痛治療室の導入は、ルーチン治療に比べ胸痛による救急診療部の受診率を増大させる傾向が認められた(p=0.08)。入院に至った胸痛治療の割合は両群間で同等であった(p=0.945)。治療後30日以降の再治療(p=0.083)および入院(p=0.036)は、ともに介入群でわずかに増加する傾向が見られ、後者には有意差を認めた。1日の緊急入院数は介入群で有意に増加する(p<0.001)とのエビデンスが得られたが、この知見は欠測値の処理法に対する感受性が高く、別の方法を用いた場合は結果も変わる可能性がある。Goodacre氏は、「胸痛治療室におけるケアの実施は入院率を低下させず、かえって胸痛に対する救急診療部の治療を増大させる可能性がある」と結論し、「適切な患者を選択すればベネフィットをもたらす可能性が残されているとはいえ、既報とは異なりNHSを通じた胸痛治療室の設立は全体として緊急入院の増大を招く可能性があると指摘せざるをえない」としている。(菅野 守:医学ライター)

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グリタゾン系薬により心不全増加するも心血管系死亡率は不変:メタ解析

AHA・ADAによるコンセンサスガイドライン(2003年)では、「インスリン療法例」と「多リスクファクター例」以外では「心不全発症リスクが極めて低い」とされたグリタゾン系薬剤だが、約20,000例を対象としたメタ解析の結果、プラセボ・他剤に比べ心不全発症リスクの有意な増加が確認された。ただし心血管系死亡の有意な増加は認められていない。Lancet誌9月29日号に米国Lahey Clinic Medical CenterのRodrigo M Lago氏らが報告した。心不全発症は有意に増加対象となったのは前糖尿病・2型糖尿病患者においてグリタゾン系薬剤が検討された無作為化二重盲検試験。7試験、20,191例(rosiglitazone:5試験、14,491例、ピオグリタゾン:2試験、5,700例)で解析が行われた。平均29.7ヵ月の追跡期間中、360例の心不全発症が報告されており、グリタゾン系群における発症リスクは対照群の1.72(95%信頼区間:1.21-2.42)倍と有意に増加していた。Rosiglitazone群、ピオグリタゾン群に分けて解析しても同様で、心不全発症リスクの増加は有意だった。心血管系死亡は減少傾向しかし心血管系死亡のリスクはrosiglitazone、ピオグリタゾン群いずれも、対照群に比べ低下傾向を示していた。このため筆者らは「グリタゾン系により増加する心不全が左室リモデリングを伴う通常の心不全と異なる可能性」を示唆するとともに「心不全から死に至るには追跡期間が短すぎる」点も認めている。なお現在、rosiglitazoneによる心血管系イベントへの影響を検討する大規模試験RECORDが進行中である。(宇津貴史:医学レポーター)

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メタボと喫煙を因子に結腸直腸腫瘍とCADは強く相関

結腸直腸腫瘍と冠動脈疾患(CAD)は類似した危険因子を共有しており、発症の関連性も疑われている。そこでCADを有する患者の横断研究を行い、結腸直腸腫瘍の出現率を調査するとともに、2つの疾患の共通危険因子を同定する研究が、香港大学のAnnie On On Chan氏らによって行われた。JAMA誌9月26日号より。狭窄率50%以上と結腸直腸腫瘍との関連を調査2004年11月から2006年6月にかけて、CADを疑われ冠動脈造影を受けた香港(中国)の患者の中から、結腸内視鏡検査によるスクリーニングを実施する対象を選び、冠動脈の内1つでも50%以上狭窄している例をCADと定義し(n=206)、それ以外はCAD陰性とみなした(n=208)。対照群(n=207)は、年齢・性別対応で一般の集団から集められた。すでにアスピリンまたはスタチンを服用している患者、結腸疾患の既往がある患者、過去10年間に結腸内視鏡検査を受けた患者は除外されている。主要評価項目は、CAD陽性群、CAD陰性群、一般群それぞれにおける結腸直腸腫瘍の出現率。結腸直腸腫瘍とCADとの関連、そして2つの疾患に共通する危険因子を同定するため、年齢・性調整の上で二変量ロジスティック回帰分析を行った。結腸直腸腫瘍の出現率はCAD陽性群で34%結腸直腸腫瘍の出現率はそれぞれCAD陽性群34.0%、CAD陰性群18.8%、一般群20.8%だった(χ二乗検定によるP<0.001)、進展病巣の出現率は18.4%、8.7%、5.8%(P<0.001)。また、癌の出現率は4.4%、0.5%、1.4%だった(P=0.02)。CAD陽性群の癌の内50%は早期であった。年齢・性調整後の結腸直腸腫瘍とCADの関連オッズ比は1.88(95%信頼区間:1.25-2.70、P=0.002)。高度の病変とCADとの関連オッズ比は2.51(同1.43-4.35、P=0.001)だった。メタボリックシンドロームのオッズ比は5.99(同1.43-27.94、P=0.02)、喫煙歴のオッズ比は4.74(同1.38-18.92、P=0.02)で、Chan氏らは「これらは進行性の結腸病変とCADにおける独立危険因子と認められる」と報告。CAD群における結腸直腸腫瘍の出現率は有意に高く、進行性結腸病変の存在とCADとの関連は、メタボリックシンドロームと喫煙歴があるほど強いことが明らかになったと結論づけた。(朝田哲明:医療ライター)

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出生前コルチコステロイド反復投与の長期予後:ACTORDS研究グループ

 オーストラリアのアデレード大学Caroline A. Crowther氏らACTORDS(Australasian Collaborative Trial of Repeat Doses of Steroids)研究グループは以前、早期産のリスクを有する妊婦へのコルチコステロイド反復投与療法について無作為化対照臨床試験を行い、「新生児における呼吸窮迫症候群や重篤な疾患罹患リスクが減少した」と報告したが、この時のデータは本療法の長期予後に関しては有効ではなかったため、あらためて前向き臨床試験を実施した。NEJM誌9月20日号の報告から。2歳時の感覚神経障害と体格を評価 今回の試験では、コルチコステロイドの初期治療コースを7日間以上受けた妊婦に、コルチコステロイド(ベタメタゾン11.4mg:反復投与群)またはプラセボ(生理食塩水:単回投与群)の筋注がランダムに割り当てられた。妊娠期間が32週未満で早期産の危険がある妊婦には、毎週投与が繰り返された。 評価は年齢調整後の2歳時点における重度感覚神経障害を伴わない生存率および体格。注意力に問題あるも単回投与群と有意差なし 2歳時点で生存していた1,085例の小児の内、1,047例(96.5%)が評価の対象となった(反復投与群521例、単回投与群526例)。 重度障害を伴わない生存率は、反復投与群84.4%、単回投与群81.0%で同程度だった(補正相対危険度1.04、95%信頼区間:0.98-1.10、P = 0.20)。 体格、血圧、保健サービスの利用度、呼吸器系疾患罹患率、また小児行動スコアのいずれも両群間に有意差は認められなかった。ただし注意力の面での問題が、反復投与群で単回投与群より一定の根拠をもって指摘された(P = 0.04)。 これらの結果から研究グループは、出生前コルチコステロイドの反復投与を用いた早期産のおそれのある妊婦の管理は、前回試験で明らかになったように、新生児の罹患率を低下させるとともに、2歳時点においても重度の感覚神経障害または発育不良のどちらも伴わないと報告している。

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出生前コルチコステロイド反復投与の長期予後:MFMU研究グループ

 出生前コルチコステロイドの反復投与は、早期産児の新生児期における一部の疾患罹患や死亡リスクを改善するものの、出生時体重の低下および子宮内胎児の発育遅延のリスクを増すことが、先行研究によって示されている。本論文は、コロンビア大学Ronald J. Wapnerら米国NIHのMFMU(Maternal-Fetal Medicine Units)ネットワークの研究グループによる、出生前コルチコステロイド投与の長期追跡調査の結果報告。NEJM誌9月20日号に掲載された。反復投与群と単回投与群を比較 追跡調査は、コルチコステロイドの初期コース受療後7日目の時点で妊娠が継続していた妊娠23~31週の女性を、反復投与群(ベタメタゾン週1回12mg筋注、24時間後に再投与)と単回投与群(プラセボ投与)に無作為に割り付け、それぞれに生まれた修正年齢2-3歳時の小児が対象とされた。 評価は、ベイリー乳幼児発達検査(Bayley Scales of Infant Development:BSID)スコア、身体測定値、脳性麻痺の有無で行われた。脳性麻痺の発症率が反復投与群で高かった 追跡調査が行われたのは556例。そのうち486例(87.4%)が身体測定を受け、465例(83.6%)がベイリー検査を受けた。平均修正年齢(±SD)は29.3±4.6ヵ月だった。 身体測定およびベイリー検査の結果に関しては両群に有意差は見られなかった。 脳性麻痺に関しては、反復投与群では6例(妊娠全体の2.9%)に認められたのに対し、単回投与群は1例(同0.5%)で、相対リスクは5.7という結果だった(95%信頼区間:0.7-46.7、P=0.12)。 長期予後として神経認知機能や身体の発達度に有意差は認められなかったが、脳性麻痺の発症率が統計学的に有意差は認められなかったとはいえ反復投与群で高かったことを受け、研究グループは「懸念すべきことであり、さらなる研究が必要だ」と結んでいる。

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抗不整脈薬dronedaroneの有効性:EURIDIS & ADONIS試験結果

アミオダロンは心房細動時の洞調律維持に有効だが、深刻な毒性作用が問題とされる。このアミオダロンの改良タイプとして位置付けられ、副作用リスクを低減するために開発された新しい抗不整脈薬がdronedaroneである(欧米で申請中)。その重篤な心イベントへの有効性と副作用に関する臨床試験結果が NEJM誌9月6日号に公表された。2つのエリアで同一の臨床試験を実施dronedarone の有効性を評価する臨床試験は、多施設共同二重盲検無作為化試験としてヨーロッパ(EURIDIS試験:Clinical Trials.gov番号NCT00259428)、および米国・カナダ・オーストラリア・南アフリカとアルゼンチンの非ヨーロッパ圏(ADONIS試験:同NCT00259376)で実施された。追跡期間は12ヵ月で、この間に律動を、2、3、5日目と3、5、7、10ヵ月目および不整脈再発時は電話による心電図テレメトリーで、また追跡期間中に予定された9回の外来時は心電図でモニターされた。主要エンドポイントは心房細動または粗動の初回再発までの期間。不整脈再発抑制と心室拍動数の減少に効果dronedarone 投与群(400mgを1日2回投与)828例、プラセボ群409例における不整脈再発までの期間中央値は、EURIDIS試験ではプラセボ群41日に対し dronedarone投与群は96日であった(P = 0.01)。ADONIS試験ではそれぞれ59日と158日(P = 0.002)。不整脈再発時の心室拍動数の平均値(±SD)は、EURIDIS試験ではdronedarone投与群で102.3±24.7回/分だったのに対しプラセボ群で117.5±29.1回/分であった(P

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研修医の勤務時間改善で患者死亡率は改善されたか:民間病院での検証結果

米国では卒後医学教育認定委員会(ACGME:Accreditation Council for Graduate Medical Education)によって2003年7月1日より、研修医の勤務時間規則が施行されたが、これによる勤務時間改善と患者死亡率との関連、教育強度の異なる研修病院間での相関については、これまで検証されていなかった。フィラデルフィア退役軍人医療センターのKevin G. Volpp氏らは、その関連性を評価。JAMA誌9月5日号に掲載された本報告は、民間病院のメディケア対象の短期・急性期入院患者を対象とした検証結果である。勤務時間改善の前後で患者死亡率に差があったか政府系を除く民間病院3,321病院に2000年7月1日から2005年6月30日にかけて入院したメディケア患者8,529,595例を、急性心筋梗塞、うっ血性心不全、消化管出血、脳卒中、あるいは全身性の整形外科的、または脈管手術のいずれかの診断関連群に分類し、時系列解析した観察研究。教育強度の多寡によって患者死亡率に違いがあるかを調べるため、勤務時間改善前後の2000~2003学校年度と2003~2005学校年度を対比させ、共存症の有無、期間傾向、病院立地を調整しつつロジスティック回帰分析を行った。主要評価項目は全対象病院の入院30日以内の死亡率とした。勤務時間の改善と死亡率の変化に相関はなかった結果は、内科系・外科系にかかわらず、勤務時間の改善と相対死亡率の増減に有意な相関は認められなかった。教育強度の多寡でも同様で、改善後1年の内科系疾患群との関連オッズ比は1.03(95%信頼区間0.98-1.07)、外科系疾患群とは1.05(同0.98-1.12)、改善後2年でもそれぞれ 1.03(同0.99-1.08)、1.01(同0.95-1.08)だった。唯一、脳卒中について、より教育強度の高い病院で勤務時間改善後に死亡率の上昇がみられたが、この関連は勤務時間改善前からみられたものだった。非研修病院と最も教育強度の高い研修病院とを比較すると、勤務時間改善前1年と改善後2年目との間で、内科系疾患群で0.42パーセンテージ・ポイント(4.4%の相対増加)、外科系疾患群で0.05パーセンテージ・ポイント(2.3%の相対増加)の死亡率の絶対的変化がみられたが、どちらも統計学的に有意ではなかった。これらから研究グループは、ACGMEの勤務時間改善は、少なくとも最初の2年間においてはメディケア患者の病状悪化と死亡率改善のいずれももたらしていないと報告した。なお同日号に、同一執筆者による退役軍人病院を対象に行った検証結果が報告されている。あわせて読むと興味深い。(朝田哲明:医療ライター)

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研修医の勤務時間改善で患者死亡率は改善されたか:退役軍人病院での検証結果

米国の研修医の勤務時間は、卒後医学教育認定委員会(ACGME:Accreditation Council for Graduate Medical Education)によって規定され2003年7月1日に施行されている。しかしこれまでこの制度上の変更と入院患者の死亡率との関連、教育強度の異なる研修病院間での相関はついて検証されていない。JAMA誌9月5日号に掲載された本報告は、フィラデルフィア退役軍人医療センターKevin G. Volpp氏らによる退役軍人病院の患者を対象とした検証結果である。内科系・外科系あわせて約32万例の急性期入院データを時系列解析勤務時間改善以前の2000年7月1日から改善後の2005年6月30日にかけて、急性期退役軍人病院(N=131)に入院した全患者(N= 318,636)のデータを、急性心筋梗塞、うっ血性心不全、消化管出血、脳卒中、あるいは全身性の整形外科的、脈管手術のいずれかの診断関連群に分類し、時系列解析した観察研究。教育強度の多寡によって患者死亡率に違いがあるかを調べるため、勤務時間改善前後の 2000~2003学校年度と2003~2005学校年度を対比させ、共存症の有無、期間傾向、病院立地を調整しつつロジスティック回帰分析を行った。主要評価項目は全対象病院の入院30日以内の死亡率とした。内科系(特に急性心筋梗塞)患者で死亡率が低下改善後1年では、内科系・外科系とも死亡率の有意な変化は観察されなかった。改善後2年目に、研修医の病棟勤務比率が最も高い病院と最も低い非研修病院を比較すると、急性心筋梗塞患者の死亡率オッズ比は0.48(95%信頼区間0.33-0.71)で、4つの内科系疾患の合計オッズ比0.74(同0.61- 0.89)、急性心筋梗塞以外の内科系3疾患の合計オッズ比0.79(同0.63-0.98)と比べて有意に低下した。教育強度が25パーセンタイル値と低い病院と、教育強度の高い75あるいは90パーセンタイル値の病院それぞれの内科系疾患患者の死亡率を比較すると、勤務時間改善前1年と改善後2年目では、それぞれ0.70パーセンテージ・ポイント(11.1%の相対低下)、0.88パーセンテージ・ポイント(13.9%の相対低下)と確実な改善がみられた。ACGMEによる研修医の勤務時間改善は、改善後2年目の時点で、退役軍人病院の中でもより教育強度の高い病院で患者死亡率の顕著な改善と関連していた。ただし改善は一般的な4つの内科系疾患を有する患者においてで、外科系患者における死亡率の低下は確認されていない。本結果に関して同日号に、同一執筆者による民間病院を対象とした検証結果が掲載されている。あわせて読むと興味深い。(朝田哲明:医療ライター)

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「正常高値」血圧は中年女性でもリスク:WHSサブ解析

「正常高値」血圧の中年女性は、「正常血圧」の同年代女性に比べ、10年間の心血管系イベントリスクが2倍近く有意に増加することが、米国における約4万人の女性を追跡した結果、明らかになった。Harvard Medical School(米国)のDavid Conen氏らによるWomen’s Health Studyのサブ解析。BMJ誌オンライン版8月19日付で早期公開された。本誌では9月1日号で掲載。「正常高値」群では「正常血圧」群に比べ有意にイベントが増加本解析に含まれたのは。45歳以上で心血管系疾患やその他重篤な疾患を有さない医療従事者の女性39,322例である。平均年齢は約55歳、喫煙者が15%弱、40%前後がホルモン補充療法を受けていた。28,863 例(73.4%)では高血圧を認めなかったが、そのうち17.3%(4,988例)は血圧130~139/85~89mmHgの「正常高値」血圧だった。一方、「正常血圧」(120~129/80~84mmHg)は39.2%(11,326例)、至適血圧(120/75mmHg未満)は43.5%だった(血圧分類は1999年WHO-ISH規準)。次に10.2年間の主要心血管系イベント発生リスクを上記血圧カテゴリー別に、多変量解析で年齢や肥満度などの背景因子を補正して比較した。「正常高値」群では「正常血圧」群に比べ有意にリスクが増加していた。すなわち、「正常高値」群のリスクを1とした場合、「正常血圧」群のリスクは0.61(95%信頼区間:0.48~0.76)だった。「正常血圧」群と「至適血圧」群のリスクには有意差はなかった。なお、主要心血管系イベントとされたのは「心筋梗塞、脳卒中、心血管死、死亡」である。「高血圧」移行後は2年間でイベントリスクが50%上昇観察期間中の「高血圧」への移行リスクも同様で、「正常血圧」群に比べ「正常高値」群では2倍近く、有意に上昇していた。ここで興味深いのは、「至適血圧」群では「正常血圧」群に比べ、高血圧移行リスクが有意に低い点である。「正常高値」群の移行リスクを1とすると、背景因子補正後の「正常血圧」群におけるリスクは0.42(95%信頼区間:0.40~0.44)だったのに対し、「至適血圧」群では0.17(95%信頼区間:0.16~0.18)となっていた。また、ひとたび「高血圧」に移行すると、48ヵ月以内の主要心血管系リスク発生のイベントは「非移行」群の約1.5倍へ有意に増加することも本研究では明らかになっている。筆者らは「正常血圧」と「正常高値」を「preheypertension(前高血圧)」と分類する現在の米国高血圧ガイドライン(JNC7)を批判し、「正常高値」群を特に高リスクとして予防に努める必要があると述べている。(宇津貴史:医学レポーター)

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外傷性脳損傷患者のアルブミン輸液蘇生は死亡率が高い

古くから論争になっているテーマだが、生理食塩水vsアルブミン輸液評価研究グループ(SAFE:Saline versus Albumin Fluid Evaluation)は、SAFEスタディに登録された外傷性脳損傷患者の事後を追跡調査し、その死亡率が、アルブミン輸液で蘇生された患者のほうが生理食塩水で蘇生された患者より高いことが示唆されたと報告した。NEJM誌8月30日号掲載より。460例の外傷性脳損傷患者を追跡調査外傷性脳損傷患者(外傷既往あり、CT断層撮影による頭部外傷の所見あり、かつグラスゴー昏睡尺度(GCS:Glasgow Coma Scale)スコア13以下の患者について、症例報告書、カルテ、CTスキャンからベースライン特性を記録して無作為化し、24ヵ月後に生命予後と身体機能の神経学的転帰を判定した。追跡調査したのは460例。アルブミン投与群231例(50.2%)、生食投与群229例(49.8%)だった。アルブミン投与の重篤な外傷性脳損傷患者ほど死亡率が高い追跡24ヵ月後、死亡例はアルブミン投与群214例の患者のうち71例(33.2%)に対し、生食投与群では206例中42例(20.4%)だった(相対リスク1.63、95%信頼区間1.17-2.26、P = 0.003)。GCS スコア3~8の患者を重篤な脳損傷患者と分類したサブ解析の結果(内訳はアルブミン投与群160例(69.3%)、生食投与群158例(69.0%))、この重篤な脳損傷患者群では、アルブミン投与群146例中61例(41.8%)が死亡したのに対し、生食投与群で死亡したのは144例中32例(22.2%)だった(同1.88、1.31-2.70、P

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連続流タイプの補助人工心臓の有用性について治験グループが報告

難治性心不全患者に対する治療法として認められている左心補助人工心臓だが、拍動流タイプの装置は、サイズが大きい、耐久性に限界があるなどの問題から実用性に限界があった。一方、近年開発された連続流タイプの補助人工心臓(Thoratec社製Heartmate II LAVD)は、小型化され、耐久性、静音性などにも優れる。ミネソタ大学のLeslie W. Miller氏ら同製品治験グループが、Heartmate II LAVD利用者の多施設共同観察研究の結果を報告した。NEJM誌8月30日号掲載より。133例の人工心臓移植後6ヵ月時点の血行動態を評価本研究は、対照群を並列しない前向き多施設共同試験で、対象は心臓移植待機リストからHeartmate II LAVDの体内移植を受けた末期心不全患者133例を抽出した。主要評価項目は、人工心臓移植後180日の時点における、心臓移植を受けた患者の比率、心機能改善が見られた患者の比率、心臓移植適格だが補助人工心臓の使用を続けている患者の比率。心機能およびQOLの評価も行われた。3ヵ月時点では心機能およびQOLが有意に改善180日時点で主要評価項目のいずれかに該当した患者は100例(75%)だった。残り33例は死亡(25例)、合併症で心臓移植不適格(5例)、他のLAVDに切り換え(3例)となった。Heartmate II LAVDサポート期間の中央値は126日(範囲、1~600)。サポート期間中の生存率は、6ヵ月時点で75%、12ヵ月時点で68%だった。また3ヵ月時点では、心機能の有意な改善(ニューヨーク心臓協会分類および6分間の歩行試験の結果による)、QOLの有意な改善(Minnesota Living with Heart Failure質問票およびKansas City Cardiomyopathy質問票による)が認められた。重篤な有害事象は、術後出血、脳卒中、右心不全、経皮リード感染。ポンプ血栓症が2例で起きていた。以上の結果を踏まえ治験グループは、心臓移植待機患者に対して少なくとも6ヵ月間は、Heartmate II LAVDによって効果的に血行動態を改善でき、心機能、QOLも改善することができると述べている。(朝田哲明:医療ライター)

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糖尿病患者の急性冠動脈症候群死亡リスク

糖尿病患者の主要な死因とされる心血管疾患だが、急性冠動脈症候群(ACS)後の死亡に関する糖尿病との関連については明確にされていない。そこで米国コーネル大学メディカルセンターのSean M. Donahoe氏らが、ACS後の糖尿病患者の死亡リスクについて検証した。JAMA誌8月15日号の報告から。ACS患者62,036例を検証対象としたのは、1997年~2006年の間にThrombolysis in Myocardial Infarction(TIMI)研究グループによって行われた11の無作為化臨床試験に登録されたACSを呈した患者62,036例。内訳はST上昇心筋梗塞患者46,577例(STEMI症例群)、不安定狭心症/非ST上昇心筋梗塞患者15,459例(UA/NSTEMI症例群)。また糖尿病患者は両群にわたって10,613例(17.1%)いた。主要評価項目は、糖尿病患者 vs 非糖尿病患者のACS後30日および1年死亡率。不安定狭心症/非ST上昇心筋梗塞後の死亡リスクが最も高い糖尿病患者 vs 非糖尿病患者の30日死亡率は、STEMI症例群では8.5% vs 5.4%(P<0.001)、UA/NSTEMI症例群では2.1% vs 1.1%(P<0.001)で、いずれも糖尿病患者で有意に高かった。また多変量モデリング(ACSイベントの基線特徴、所見、処置因子を調整)の結果、UA/NSTEMI症例群で糖尿病とのより高い関連が示された(STEMI vs UA/NSTEMIオッズ比;1.40 vs 1.78)。1年死亡率の対比でも、UA/NSTEMI症例群で糖尿病とのより高い関連が示された(STEMI vs UA/NSTEMIハザード比:1.22 vs 1.65)。なお、UA/NSTEMIを呈した糖尿病患者とSTEMIを呈した非糖尿病患者との1年死亡率の値が非常に接近していることが見て取れた(7.2% vs 8.1%)。Donahoe氏らは、「ACS治療の進展にもかかわらず、糖尿病は予後に悪影響を及ぼすことが明らかとなった。本研究の結果は、このハイリスク集団に対する虚血性心疾患マネジメントの積極的な戦略の重要性を強調するものだ」と結論付けた。(武藤まき:医療ライター)

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小児高血圧症の診断見落としは74%

小児肥満の蔓延に伴って小児高血圧症の有病率が増加している中、診断未確定の高血圧症と高血圧前症の頻度がどれくらいあるのか、また診断見落としはどんな患者因子が原因になっているのかを同定するコホート研究が、米国オハイオ州にあるCase Western Reserve 大学医学部のMatthew L. Hansen氏らによって行われた。JAMA誌8月22日号より。3~18歳児1万4,000例をスクリーニング研究対象は、1999年6月から2006年9月までの間に最低3回、定期健診でオハイオ州北東部の総合医療システム附属クリニックを訪れた3~18歳の14,187例。主要評価項目は定期健診時の血圧測定で、年齢および身長による補正後も高値を3回以上示した小児の割合と、高血圧または高血圧前症と診断され電子カルテに記載された割合。診断に関連する患者因子は多変量ロジスティック回帰分析によって同定された。3回以上の定期健診で高血圧または高血圧前症の判定基準を満たしたとされる小児は、診断リスト、問題リスト、病歴リストにおける高血圧関連のICD9コードとの比率で判定された。早めの適切な診断が重要高血圧症の小児は507例(3.6%)いたが、実際に高血圧症または血圧上昇の診断を受け電子カルテに記録されていたのは131例(26%)だった。高血圧症診断の補正オッズ比を高めた患者因子は、1年ごとの上昇値(3歳以降の)(オッズ比1.09)、血圧上昇の記録が3回を超えた頻度(同1.77)、身長-年齢パーセンタイル値の1%の増加(同1.02)、肥満に関連した疾患の診断(同2.61)、ステージII高血圧症に該当する血圧記録の数(1.68)だった。一方、高血圧前症の小児は485例(3.4%)で、55例(11%)は適切に診断され電子カルテに記載されていたが、それ以外は見落とされていた。高血圧前症診断の補正オッズ比を高めた患者因子は、1年ごとの上昇値(3歳以降の)(オッズ比1.21)、血圧上昇の記録が3回を超えた頻度(同3.07)だった。Hansen 氏らは、「今回の研究対象(平均年齢8.8歳、50%がアフリカ系アメリカ人)では診断見落としが頻繁に起きていた。診断確率の上昇には、年齢、身長、肥満関連の疾病の診断、血圧の異常記録およびその記録頻度とすべてが関係していた」と述べ、小児の血圧の正常値および異常値は年齢、性別、身長によって異なり基準を覚えるのは難しいが、異常血圧の確立された評価ガイドラインおよび効果的治療が存在するので、早めの適切な診断は重要であると結んだ。(朝田哲明:医療ライター)

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重篤な精神疾患に対する集中型ケース管理は入院治療を低減させるか

現代の精神健康サービスでは重篤な精神疾患患者の入院期間は最小限にすべきとされており、集中型ケース管理(intensive case management)は重症精神疾患患者の不必要な入院の低減を目的とした患者管理法である。これまでに実施された集中型ケース管理の無作為化対照試験の結果は相反するものであり、入院治療を減少させたとする報告がある一方で無効とする研究もある。 このような矛盾した結果が生じる原因については、試験の実施状況や集中型ケース管理モデルの違いなど諸説がある。イギリス・オックスフォード大学Warneford病院社会精神医学のTom Burns氏らは、これらの仮説の検証を目的に体系的なレビューを行った。BMJ誌7月13日付オンライン版、8月18日付本誌に掲載された報告。2007年1月までのデータから無作為化対照試験を抽出2007年1月までにデータベースに登録されたデータを検索し、地域在住の重篤な精神疾患患者に対する集中型ケース管理を標準治療あるいは低集中型ケース管理と比較した無作為化対照試験を抽出した。積極的コミュニティー治療(ACT)モデルの遵守の評価には適合度評価基準(fidelity scale)を用いた。多施設共同試験は、施設に特異的な適合度データによって個々の施設に分離して解析した。入院治療が多い場合に、集中型ケース管理により入院治療が有意に減少試験前のベースラインあるいは対照群における入院治療が多い試験では、集中型ケース管理により入院治療が有意に減少した。また、ACTモデルに従って組織化されたケース管理チームによって入院治療が有意に減少したが、この知見はsensitivityが低く、ACTで推奨されるスタッフ水準は確認できなかった。Burns氏は、「集中型ケース管理は入院治療が多い場合に最も良好に機能していた。ケース管理チームの有効度はその組織のACTモデルの導入程度が上がるに従って増大したが、スタッフ水準の上昇を示すエビデンスは低かった」と結論している。同氏は、「すでに少ない入院治療が達成されている場合は、集中型ケース管理のベネフィットはわずかであり、またスタッフの質よりもチームの組織化が重要と考えられる。入院治療の低減を達成するには、ACTモデルを全面的に適用する必要はない可能性がある」と指摘している。(菅野 守:医学ライター)

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特定のプロバイオティクスが小児の急性下痢の期間と排便回数を改善

急性下痢は、グルコース電解質を含む水分補給用飲料の経口投与により失われた水分を補うことで管理されるが、この方法では下痢の重症度や持続期間は改善されない。プロバイオティクス(ヒトの健康に良好な作用を及ぼす細菌)はヨーロッパの多くの国で小児の急性下痢の補助的治療法として用いられており、いくつかの製品は重症度や持続期間の改善効果が認められている。 イタリア・ナポリ大学Federico II小児科のRoberto Berni Canani氏らは、5つのプロバイオティクス製品の急性下痢の改善効果を比較する無作為化対照比較試験を実施した。BMJ誌8月9日付オンライン版、8 月18日付本誌に掲載された報告から。患児の親が特定製品の購入説明文書に無作為に割り付けられた対象は、急性下痢で6つの家庭小児科を受診した生後3~36ヵ月の小児とした。患児の親が、以下の特定のプロバイオティクス製品の購入に関する説明文書を受け取る群に無作為に割り付けられた。水分補給用飲料(対照群)、Lactobacillus rhamnosus strain GG、Saccharomyces boulardii、Bacillus clausii、L delbrueckii var bulgaricus/Streptococcus thermophilus/ L acidophilus/ Bifidobacterium bifidumの混合製品、Enterococcus faecium F68。5つの介入群のうち2つのプロバイオティクスで有効性を確認1999年10月~2000年9月の1年間に571例の患児が登録され、対照群と5つの介入群に割り付けられた。下痢の持続期間(中央値)は、対照群(115.0時間)に比べL. rhamnosus strain GG群(78.5時間)および4種の混合群(70.0時間)で有意に短縮していた(p<0.001)。初回プロバイオティクス投与後1日目の排便回数は、L. rhamnosus strain GG群および4種の混合群が他の群に比べ有意に少なかった(p<0.001)。残りの3つの介入群は下痢の持続期間および排便回数に影響を及ぼさなかった。また、嘔吐および発熱の持続期間、入院率についてはいずれの介入群も対照群と同等であった。Canani 氏は、「市販のプロバイオティクス製品の中には小児の急性下痢に有効なものがあるが、すべての製品が効果的なわけではない」とし、「プロバイオティクスは薬剤とみなすべきであり、医師は個々の臨床的病態における各製品の有効性に関するエビデンスに基づいて選択すべきである」と指摘している。(菅野 守:医学ライター)

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