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大麻吸引は歯周疾患の危険因子

たばこ喫煙が歯周病の危険因子であることは広く知られているが、たばこだけでなく長期間の大麻吸引も歯周組織に有害で、たばことは独立した危険因子の可能性があるという。ニュージーランド・John Walsh 歯科大学口腔科のW. Murray Thomson氏がまとめ、JAMA誌2008年2月6日号に掲載された。ダニーデン生まれ1,015例の前向きコホート研究本研究は前向きコホート研究で、対象は1972~1973年にダニーデン市(ニュージーランド)で生まれた1,015例。出生後の18、21、26、32歳検診時に大麻吸引有無の確認が取れ、26、32歳時の歯科検診のデータが得られた者(対象の96%)が分析された。被験者32歳時点の最新データは2005年6月に収集されたもの。分析が完全にできたデータは903例(89.0%)だった。歯周病の症状は、26歳からの変化も含めて32歳時点で、1本の歯につき3ヵ所で歯肉付着位置の深さを測定する複合アタッチメント・ロス(combined attachment loss=CAL)を行い判断された。大麻曝露が高度なほど歯周病の症状が進行大麻曝露の状況は、非曝露群32.3%(293例)、中程度曝露群47.4%(428例)、高度曝露群20.2%(182例)だった。CALについては全体の29.3%(265例)にCAL 4mm以上が1ヵ所以上で認められ、12.3%(111例)はCAL 5mm以上が1ヵ所以上に認められた。3mm以上の新しいCALが1ヵ所以上の付随的アタッチメント・ロス(incident attachment loss)が認められたのは、非曝露群6.5%、中程度群11.2%、高度曝露群23.6%だった。たばこ喫煙と性差、不定期に行われた歯科治療と歯垢除去の有無を補正後、高度曝露群は大麻を吸引したことがない群と比較して、CAL 4mm以上が1ヵ所以上できるリスクは1.6(95%の信頼区間:1.2-2.2)、CAL 5mm以上が1ヵ所以上できるリスクは3.1(同1.5-6.4)、付随的アタッチメント・ロスは2.2(同1.2-3.9)だった。Thomson氏らは、「大麻吸引はたばこ喫煙とは独立した歯周疾患の危険因子である可能性があり、大麻吸引の蔓延を抑制する公衆衛生対策が、市民の歯周健康維持に貢献できることを示す」と結論づけている。(朝田哲明:医療ライター)

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認知症発症後の生存期間は4.5年――イングランド/ウェールズの場合

Jing Xie氏(ケンブリッジ大学公衆衛生/プライマリ・ケア科、イギリス)によれば、認知症は死亡リスクを増大させるが、イングランド/ウェールズ地方における認知症患者の生存期間は明らかにされていない。同氏らの研究グループは、認知症発症後の生存期間を推計し、さまざまな背景因子ごとに解析を行った。その結果、フォローアップ期間14年における認知症発症後の推計生存期間中央値は4.5年であり、性別、発症年齢、機能障害が生存期間に有意な影響を及ぼした。BMJ誌2008年2月2日号(オンライン版2008年1月10日号)掲載の報告。65歳以上の1万3,004人の発症状況と生存期間を調査Medical Research Council’s Cognitive Function and Ageing Study (MRC CFAS)は、認知症発症後の生存期間の評価を目的に、1991~2003年にイングランド/ウェールズで実施された地域集団をベースとしたプロスペクティブな多施設共同コホート研究。農村部の2施設および都市部の3施設に65歳以上の1万3,004人登録された。登録後2年、6年、8年、10年に認知症の評価を行い、フォローアップ期間14年(2005年)の時点における生存期間を推計した。死亡の有意な予測因子は「男性」「より高齢で発症」「重度の機能障害」試験期間中に認知症を発症した438人(女性:311人、男性:127人)のうち、2005年12月までに356人(81%)が死亡した。認知症の発症年齢中央値は女性84歳、男性83歳であり(p=0.001)、死亡年齢中央値はそれぞれ90歳、87歳であった(p=0.001)。認知症発症後の推計生存期間中央値は女性が4.6年、男性が4.1年で、全体では4.5年であった。発症年齢別の生存期間中央値は、65~69歳が10.7年、70~79歳が5.4年、80~89歳が4.3年、90歳以上が3.8年であり、65~69歳と90歳以上の間には約7年の差が認められた。多変量解析では、フォローアップ期間中に認知症がみられた患者における死亡の有意な予測因子として、男性(p=0.007)、発症年齢が高齢(p=0.03)、Blessed dementia scaleによる機能障害が重度(p=0.002)が確認された。Xie氏は、「認知症発症後の推計生存期間中央値は4.5年、死亡の有意な予測因子は性別、発症年齢、機能障害であった」と結論し、「これらの知見は、患者、介護者、サービス提供者、政策立案者にとって予後予測や計画立案に有用と考えられる」と指定している。(菅野守:医学ライター)

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Caサプリメントで心血管系イベント増加傾向

 健康な閉経後女性がCaサプリメントを常用すると、5年間で心血管系イベントのリスクが50%近く増加する可能性がある。ニュージーランドで行われた無作為化試験を報告したUniversity of AucklandのMark J Bolland氏らによる論文が、BMJ誌オンライン版2008年1月15日号で早期公開、本誌では2008年2月2日号に収載された。骨折予防を目的としたCaサプリメントの推奨に一石 この試験では心血管系疾患履歴のない閉経後女性1,471例(平均74歳)が、Ca(200mg)含有サプリメント(1g)/日群(732名)とプラセボ群(739名)に無作為割り付けされ、単盲検で5年間追跡された。 その結果、「心筋梗塞、脳卒中、または突然死」はCaサプリメント群で増加傾向を示した(相対リスク:1.47、95%信頼区間:0.97~2.23)。ただし心筋梗塞のみで比較するとサプリメント群で有意な増加を認めた(21例 vs 10例、相対リスク:2.12、95%信頼区間:1.01~4.47)。 Bolland氏らは、Caサプリメントによる骨折減少作用は認められないことを、すでに本研究から報告しており [Am J Med 2006; 119: 777] 、今回の解析は「Caサプリメントの心血管系に対する悪影響を示すデータではないが、(骨に対する有用性が明らかになるまでは)Caサプリメントの有効性と危険性を考慮する必要を示唆している」としている。

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救急外来受診例の約半数に深部静脈血栓リスク。予防は不十分

救急外来を受診後入院例で、外科的治療の適応となった患者の6割以上、内科的治療適応例の4割以上が、深部静脈血栓(DVT)のリスクを有しているが、それらのうち深部静脈塞栓(DVE)の予防措置を受けていたのは50.2%だった──とする国際的横断研究の結果がLancet誌2008年2月2日号に掲載された。研究の名称はENDORSE(Epidemiologic International Day for the Evaluation of Patients at Risk for Venous Thromboembolism in the Acute Hospital Care Setting)。King’s College Hospital(英国)のAlexander T Cohen氏らによる論文である。32ヵ国7万例弱で検討本研究には世界32ヵ国の358施設(50床以上)で救急外来を受診し入院した68,183例が登録された。内訳は、内科的治療を受けた40歳以上の37,356例と外科的治療の適応となった18歳以上の30,827例である。入院後、DVTリスクが調べられた。リスク評価には、米国胸部疾患学会(ACCP)が2004年刊行した「静脈血栓塞栓予防」ガイドラインを用いた。予防が行われていたのは外科的治療例58.5%、内科的治療例39.5%その結果、外科的治療例の64.4%、内科的治療例の41.5%にDVTリスクが認められた。東南アジアから唯一参加していたタイのリスクも世界平均と同様で、DVTリスクを認めた患者は、外科62%、内科49%だった。次に、これらのDVTリスクを認める患者において、上記ACCPガイドラインが推奨する深部静脈塞栓(DVE)の予防が行われていた割合を見ると、外科的治療58.5%、内科的治療39.5%だった。これらよりCohen氏らは、DVTリスクを持つ入院患者は多いにもかかわらず、適切な予防措置がとられていないと結論している。なお、上記ACCPガイドラインでは手術後「DVT低リスク」群に対しては、「早期からの“積極的”歩行」を推奨するが特にDVE予防措置をとる必要はないとしているが、本研究では術後「低リスク群」の34%が何らかの「予防措置」を受けていた。(宇津貴史:医学レポーター)

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【トピック】肥満解消が必要と思っても、4割は何もしていない

4月のメタボ健診スタートも近いが、オムロンヘルスケアがまとめた意識調査によると、30―50歳代の7割が肥満解消の必要性を感じているが、このうち4割は特に何もしていないことがわかった。調査によると、メタボリックシンドロームという言葉を知っている人が3年連続増加し80%を突破。しかし、2人にひとりが自身をメタボリックシンドローム(予備軍を含む)と感じているが、それらの人の中には診断基準(ウエスト径)を正しく理解していない人も多いという。さらに、全体の7割が肥満解消(ダイエット)の必要性を感じているが、そのうち4割は特に努力していない。そして、ダイエットが必要と感じて何らかの努力をしている人でも、努力に「たいへん満足している」人は100人に1人だった。また、全体のうち4割の人が過去1年間に健康診断を受けていなかった。詳細はプレスリリースへhttp://www.healthcare.omron.co.jp/corp/news2007/0124.html

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アスピリン抵抗性は心血管系死亡のリスク?

アスピリンによる抗血小板作用が通常ほど見られない「アスピリン抵抗性」の存在が知られているが、20試験2,930例を解析したところ、心血管系疾患患者の28%に「抵抗性」が見られ、それらの患者では「非抵抗性」患者に比べ心血管系イベントリスク、死亡ともにオッズ比が有意に増加しているとの報告がBMJ誌2008年1月26号に掲載された(オンライン版1月17日付)。University Health Network(カナダ)のGeorge Krasopoulos氏らが報告した。解析20試験中アスピリン抵抗性は2,930例中810例(28%)本解析に含まれた20試験はいずれも、心血管系疾患患者に対するアスピリンの予後改善作用を検討したものである。アスピリン抵抗性の有無はそれぞれの試験で定義されている場合それに従い、定義がない場合はKrasopoulos氏らが文献から判定した。また6試験985例では、クロピドグレルやGPIIb/IIIa阻害薬などアスピリン以外の抗血小板薬服用が許されていた。その結果、アスピリン抵抗性は2,930例中810例(28%)に認められた。男性に比べ女性、腎機能正常患者に比べ腎機能低下患者で「抵抗性」は有意に多かった。また「抵抗性」患者では、心血管系イベント発生リスクが有意に高かった。すなわち、「非抵抗性」患者に比べたオッズ比は、全心血管系イベント:3.85(95%信頼区間:3.08~4.80)、急性冠症候群:4.06(95%信頼区間:2.96~5.56)、脳血管障害初発:3.78(95%信頼区間:1.25~11.41)、全死亡:5.99(95%信頼区間:2.28~15.72)だった。アスピリン抵抗性患者における心血管系イベントリスクの増加は、75~100mg/日、100超~325mg/日、いずれの用量でも認められた。本当にアスピリン抵抗性なのか以上などからKrasopoulos氏らは「アスピリン抵抗性患者は心血管系イベントリスクが高い」と結論する。ただし本研究では3試験390例(13.3%)ではアスピリンの服薬コンプライアンスが全く確認されておらず、試験期間中コンプライアンスが繰り返し検討されたのは1試験71例だけだった。またKrasopoulos氏らは、アスピリン抵抗性が見られる患者でも、それ故に処方を中止することのないよう注意を喚起している。なおアスピリン抵抗性患者を対象としたGPIIb/IIIa阻害薬による二次予防作用を賢答化する無作為化試験として、TREND-AR(TiRofiban Evaluation of Surrogate ENDpoints in Prevention of Ischemic Complications During Percutaneous Interventions in Patients With Coronary Disease and Aspirin Resistance)[NCT00398463] が2006年5月に開始されたが、2007年末、対象患者にクロピドグレル抵抗性患者も含まれるよう変更された。終了は2011年の予定だという。(宇津貴史:医学レポーター)

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「こころの病気を学ぶ授業」普及開始

日本イーライリリー株式会社は、精神疾患への理解促進と偏見是正を目的に、中・高生向けに、統合失調症を例に「こころの病気を学ぶ授業」プログラムを開発、2月6日よりウェブサイトで公開、普及開始した。「こころの病気を学ぶ授業」は、2月6日より同社のウェブサイト(www.lilly.co.jp)で概要を公開、指導案・教材CD-Rの申し込みを受け付ける。また「こころの病気を学ぶ授業」指導案・教材CD-Rは、学校の授業でご活用いただくことを目的に、教育関係者の方々に無料で提供するという。詳細はプレスリリースへhttp://www.lilly.co.jp/CACHE/news_2008_07.cfm

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経口避妊薬は、市販後50年で約10万人の卵巣癌死を予防

経口避妊薬の使用により卵巣癌の発生率が低下することが知られている。卵巣癌は若年女性では少なく、加齢とともに増加するため、発生率低下の公衆衛生面への影響は使用中止後のリスク低下効果の持続時間に依存するという。Collaborative Group on Epidemiological Studies of Ovarian Cancerの研究グループは45の疫学研究のデータを解析、経口避妊薬は市販後約50年の間に約20万人の女性の卵巣癌罹患を予防し、約10万人が卵巣癌による死亡から救われたと推計している。Lancet誌2008年1月26日号掲載の報告。使用状況と卵巣癌相対リスクを推計21か国の45の疫学研究から2万3,257人の卵巣癌症例と8万7,303人の非卵巣癌(対照)のデータを収集し解析を行った。経口避妊薬の使用状況と卵巣癌の相対リスクを推計し、さまざまな因子で層別化した。経口避妊薬の使用経験者は症例群が7,308人(31%)、対照群が3万2,717人(37%)であり、平均使用期間はそれぞれ4.4年、5.0年であった。卵巣癌診断年の中央値は1993年、診断時の平均年齢は56歳であった。今後数10年にわたり、年間3万人以上の卵巣癌罹患を予防経口避妊薬の使用期間が長いほど卵巣癌のリスクが低下した(p<0.0001)。また、このリスク低下効果は使用中止後30年以上が経過しても持続していたが、中止後10年までは29%、10~19年では19%、20~29年では15%と漸減した。経口避妊薬のエストロゲン含有量は年代によって異なり、1960年代は1980年代の2倍以上であった。しかし、60年代、70年代、80年代のリスク低下率は使用期間に応じて同等であり、エストロゲン量とは関連しなかった。組織型別の解析では、粘液性癌(全体の12%)は経口避妊薬の影響をほとんど受けていなかったが、他の組織型は同等のリスク低下率を示した。高所得国では、経口避妊薬を10年間使用した場合、75歳までの卵巣癌罹患率は100人当たり1.2から0.8人に、卵巣癌による死亡率は0.7から0.5人に低下すると推計された。これは、5,000人年当たり2人の罹患および1人の死亡が予防されることになる。研究グループは、「経口避妊薬の長期的な卵巣癌予防効果を確認した。市販後約50年で約20万人の卵巣癌罹患および約10万人の卵巣癌死を予防したと推計される」と結論、「卵巣癌罹患予防数は、今後、数10年以上にわたり、少なくとも年間3万人にのぼる」と指摘している。(菅野守:医学ライター)

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多枝冠動脈疾患には依然としてCABGがステントより有利

 多枝冠動脈疾患の競合的な治療法として、冠動脈バイパス術(CABG)と冠動脈ステント留置術はこれまでにも多くの比較研究が行われてきたが、薬剤溶出性ステントが登場してからは、CABGとの比較研究はほとんど耳にしなくなった。ニューヨーク州立大学オールバニー校公衆衛生部門のEdward L. Hannan氏らによる本研究は、CABGと薬剤溶出性ステント留置術を受けた患者の有害転帰を追跡調査したもので、CABGは依然として薬剤溶出性ステント処置より死亡率が低いだけでなく、心筋梗塞発生率や血行再建術の再施行リスクも低いと報告している。NEJM誌2008年1月24日号より。二枝・三枝に分け12~27ヵ月間の有害転帰を比較 対象は2003年10月1日から2004年12月31日までの間にニューヨーク州内で、薬剤溶出性ステント留置術あるいはCABGのいずれかを受けた多枝冠動脈疾患患者。患者間の基線危険因子の相違を補正した後、病変部が二枝の患者と三枝の患者に分け、2005年12月31日までに死亡したか、心筋梗塞を再発したか、血行再建術を再施行したかの有害転帰を比較検討した。死亡率、心筋梗塞再発率、血行再建術再施行率ともCABGが優位 三枝病変患者で、CABG群をステント群と比較すると、死亡に対する補正ハザード比は0.80(95%信頼区間0.65~0.97)で、補正生存率はCABG群の94.0%に対してステント群は92.7%だった(P=0.03)。死亡または心筋梗塞に対する補正ハザード比は0.75(95%信頼区間0.63~0.89)、心筋梗塞から解放された補正生存率はCABG群92.1%に対してステント群は89.7%だった(P

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適応外使用にはベアメタルステントよりは薬剤溶出性ステント

最近、薬剤溶出性ステントの適応外使用と有害事象発生率増加の関係を示唆する報告が見られたが、従来のベアメタルステントとの比較はなかった。そこでピッツバーグ大学心臓血管学部門のOscar C. Marroquin氏らは、ベアメタルステントと薬剤溶出性ステントの適応外使用を受けた患者の1年後を比較。死亡または心筋梗塞のリスクに差はないが、血行再建術の再施行率は有意に低いとして、適応外使用には薬剤溶出性ステントを使うことを支持すると結論付けている。NEJM誌2008年1月24日号より。患者6,551例の心血管イベント・死亡発生率を1年間追跡米国国立心肺血液研究所の大規模動態登録に参加している患者6,551例を用い、薬剤溶出性ステント治療群とベアメタルステント治療群とに割り付け、それぞれ標準的使用だったか適応外使用だったかを分析した。適応外使用の定義は、再狭窄病変、バイパス移植の病変、左冠動脈主幹部疾患または動脈口部・分岐部・完全閉塞部の各病変に対する使用とし、さらに基準血管の直径が2.5mm未満か3.75mm超だったり、病変部の長さが30mm超の患者に対する使用も加えた。その後、心血管イベントの発生と死亡発生率を1年間にわたり追跡した。死亡、心筋梗塞再発は同等、血行再建術再施行リスクで有意差適応外使用だった患者は、ベアメタルステント群54.7%、薬剤溶出性ステント群48.7%だった。薬剤溶出性ステント群はベアメタルステント群より、糖尿病、高血圧、腎疾患、経皮冠動脈インターベンションと冠状動脈バイパス術の施行歴、多枝冠動脈疾患の有病率が高かった。しかし薬剤溶出性ステント群はより困難な病歴の患者が多いにもかかわらず、介入1年後の時点ではベアメタルステント群と比べて、死亡または心筋梗塞の補正リスクに有意な差はなかったものの、血行再建術を再施行するリスクについては、薬剤溶出性ステント群のほうが有意に低かった。このため「適応外使用には薬剤溶出性ステントが支持される」としている。(朝田哲明:医療ライター)

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NPPA遺伝子変異型の降圧剤への効果と関連性

 高血圧治療は近年優れた薬剤の登場でコントロールが可能となってきているが、ミネソタ大学薬理学のAmy I. Lynch氏らは「患者個々の遺伝子特性に合わせた治療が可能となれば、心血管疾患(CVD)罹患率および死亡率をもっと低下することができるのではないか」と考えた。その可能性をALLHAT(Antihypertensive and Lipid-Lowering Treatment to Prevent Heart Attack Trial)の高血圧患者のデータを利用し解析。JAMA誌2008年1月23日号に結果が掲載された。ALLHATから高血圧患者38,462例のデータを事後解析Lynch氏らがターゲットとしたのは、一部の降圧剤の効能をコントロールする可能性が示唆される心房性ナトリウム利尿ペプチドの前駆体をコードしているNPPA遺伝子。その変異による降圧剤への効果と関連性を調べた。NPPA T2238CあるいはNPPA G664A変異を有する対象者での心血管疾患率および血圧の変化の違い、利尿剤と他の降圧薬治療との違いについて調査。ALLHATから高血圧患者38,462例のデータによる事後解析の内訳は、利尿剤(クロルサイアザイド)13,860例、Ca拮抗剤(アムロジピン)8,174例、ACE阻害剤(リジノプリル)8,233例、αブロッカー剤(ドキサゾシン)8,195例となっている。遺伝子タイピングの実施期間は2004年2月から2005年1月の間に行われた。平均追跡期間は4.9年。主要評価項目は、致死的CHD・非致死的心筋梗塞と定義された虚血性心疾患(CHD)。副次評価項目は、脳卒中、全死亡、心血管疾患併発、6ヵ月後の収縮期・拡張期血圧の変化。血圧変化(収縮期)はCC遺伝子型で最も大きな変化TT、TCなど各遺伝子型(NPPA T2238C:TT、TC、CC NPPA G664A:GG、GA、AA)の結果から最大・最低値をみると、CHDの最低はAAにおける15.3、最高はTTで19.3、脳卒中は9.6(TT)、15.4(AA)、全死亡は27.4(TT)、30.7(AA)(いずれも/1,000人年)。NPPA T2238C変異群でイベント発症が低いことが明らかとなった。6ヵ月後の血圧変化(収縮期)については、CC遺伝子型で最も大きな変化がみられた(利尿剤:-6.5mmHg、Ca拮抗剤:-3.8mmHg、ACE阻害剤:-2.4mmHg、αブロッカー剤:-3.8mmHg)。TT遺伝子型では、投薬による降圧効果は収縮期、拡張期とも、いずれの薬剤においても低かった。NPPA G664A異型では「遺伝薬理学的な関連性をみいだせなかった」とも報告されている。Lynch氏らは、「NPPA T2238C異型は、心血管疾患、血圧に影響を及ぼす降圧剤との関連が認められた。C遺伝子型を有する場合は、利尿剤投与が最も心血管疾患のアウトカムに有利で、TT遺伝子型の場合は、Ca拮抗剤が最も有利」とまとめている。(武藤まき:医療ライター)

10172.

放出調節性プレドニゾンの就寝前服用が、関節リウマチの朝のこわばりを改善

関節リウマチ患者はサーカディアンリズムに変調をきたしている。新たに開発された放出調節性の薬剤送達法は、投与されたグルココルチコイドの放出を内因性コルチゾールおよび症状発現のサーカディアンリズムに適合させることで、関節リウマチに対するグルココルチコイド治療の効果を改善するという。Frank Buttgereit氏(ドイツ、Chariteベルリン医科大学)らは、新規の放出調節性プレドニゾンの効果および安全性の評価を行い、従来の即放性プレドニゾンに比べ関節の朝のこわばり(morning stiffness)の臨床的低減が得られたことを、Lancet誌2008年1月19日号で報告した。放出調節性プレドニゾン就寝前服用と即放性プレドニゾン朝服用を比較CAPRA-1(Circadian Administration of Prednisone in Rheumatoid Arthritis)試験は、関節リウマチに対する新規の放出調節性プレドニゾン(錠剤)を標準的な即放性プレドニゾン(錠剤)と比較する二重盲検多施設共同無作為化試験。患者は、即放性プレドニゾンは朝に服用し、放出調節性プレドニゾンは経口投与の4時間後に放出されるようデザインされ就寝前に服用した。治療期間はいずれも12週。2004年8月~2006年4月の間にドイツの17施設およびポーランドの12施設から慢性リウマチ患者288例が登録され、放出調節性プレドニゾン群に144例が、即放性プレドニゾン群には144例が無作為に割り付けられた。関節の朝のこわばりの持続時間が約30分間短縮ベースライン時から治療終了時における関節の朝のこわばりの持続時間の相対的変化率は、放出調節性プレドニゾン群が即放性プレドニゾン群に比べ有意に改善された(-22.7% vs. -0.4%、p=0.045)。放出調節性プレドニゾン群の関節の朝のこわばりの持続時間は、ベースラインに比べ治療終了時に平均44分短縮した。治療群間の持続時間の差は29.2分であった(p=0.072)。安全性プロフィールは両治療群間に差を認めなかった。Buttgereit氏は、「放出調節性プレドニゾンは耐用性が良好で、投与法が簡便であり、従来の即放性プレドニゾンの治療効果に加えて関節の朝のこわばりの臨床的な低減が得られた」と結論。さらに、「臨床的な効果を得るには服薬の適切なタイミングについて患者に十分に説明すべきである」と強調し、「リウマチ性多発筋痛や喘息など他の疾患の治療選択肢となる可能性がある」と指摘している。(菅野守:医学ライター)

10173.

オピオイド鎮痛薬の処方増大と処方格差の実態

1990年代後半に全米で推進された質改善の動きによって起きたことの一つに、オピオイド鎮痛薬の処方増が挙げられている。しかしそれに関して、救急部門において疼痛治療のためのオピオイド処方が増えたのか、またオピオイド処方をめぐる人種・民族間の格差に関する状況は明らかにされていなかった。そこでカリフォルニア大学疫学・バイオ統計学部のMark J. Pletcher氏らが調査を実施。JAMA誌2008年1月2日号で報告した。13年間のNHAMCSの記録を対象に調査は、National Hospital Ambulatory Medical Care Survey(NHAMCS)の13年間(1993~2005年)の記録から、救急部門受診の理由が疼痛治療関連だったもの、および診断コードを参照抽出して行われた。検証されたのは、救急部門におけるオピオイド処方件数は増えたのか、白人患者は他の人種・民族集団よりオピオイドを処方されている傾向は見受けられるか、および2000年以降、人種・民族間の処方格差は縮小しているかについて。白人患者の有意性は変わらず検証された期間の、救急部門への疼痛治療関連の受診は42%(156,729/374,891)。オピオイド処方は、1993年は23%だったが、2005年には37%に増えており(傾向のP

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入院を要する新生児疾患を同定する簡便なアルゴリズムを確立

新生児期(生後28日間)の死亡数は全世界で毎年400万人にのぼると推定され、その約75%は生後1週間以内に死亡している。ミレニアム開発目標4(2015年までに5歳未満児の死亡率を1990年の1/3に減少させる)を達成するには、低~中所得国の新生児死亡率を低減する必要がある。Young Infants Clinical Signs Study Groupは、臨床症状や徴候から入院を要する重篤な新生児疾患を検出する簡便なアルゴリズムを開発、Lancet誌2008年1月12日号で報告した。南アジア、南米、アフリカの6ヵ国が参加バングラデシュ、ボリビア、ガーナ、インド、パキスタン、南アフリカの保健医療施設に、疾患を有する2ヵ月未満の幼児が生後0~6日の群と7~59日の群に分けて登録された。トレーニングを受けた保健師が31の症状および徴候を記録し、小児科専門医が個々のケースにつき入院を要する重篤な疾患の評価を行った。個々の症状、徴候の感度、特異度、オッズ比(OR)を算出し、重篤な疾患(黄疸を除く)の予測値を評価するアルゴリズムを確立した。7つの徴候、症状に基づくアルゴリズムの感度は85%、特異度は75%生後0~6日群に3,177例が、生後7~59日群には5,712例が登録された。生後1週間における重篤な疾患を予測する症状、徴候として以下の12の項目が同定された。飲乳困難の既往(OR:10.0)、痙攣の既往(15.4)、虚脱状態(3.5)、刺激時にのみ運動(6.9)、呼吸数60回/分以上(2.7)、うめき声(2.9)、重度の胸部陥凹(8.9)、37.5℃以上の体温(3.4)、35.5℃以下の体温(9.2)、毛細血管再充満時間の延長(10.5)、チアノーゼ(13.7)、四肢の硬直(15.1)。 これらの徴候のうちいずれか1つの発現を求める決定ルールの感度は87%、特異度は74%と高値を示した。おもに個々の徴候、症状の発生率に基づいてアルゴリズムを7つの徴候(飲乳困難の既往、痙攣の既往、刺激時にのみ運動、呼吸数60回/分以上、重度の胸部陥凹、37.5℃以上の体温、35.5℃以下の体温)に絞っても、感度(85%)、特異度(75%)に変化はなかった。また、生後7~59日群においてもこれら7つの徴候は良好な感度(74%)、特異度(79%)を示した。研究グループは、「本アルゴリズムは簡便であり、保健医療施設に運ばれた0~2ヵ月の幼児において入院を要する重篤な疾患を同定する方法として推奨される」と結論し、「定期の家庭訪問時に新生児の疾患をスクリーニングするには、さらなる検討が必要である」と指摘している。(菅野守:医学ライター)

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活動的な両親の子は活動的に育つ?

小児期の身体活動に影響を及ぼす因子が同定されれば、より優れた介入戦略の開発に役立つ可能性がある。しかし、乳幼児期の因子が後年の身体活動にどう影響するかはほとんど知られていない。Calum Mattocks氏(イギリス、ブリストル大学社会医学)らは、5歳までの乳幼児期の因子が後年の11~12歳時の身体活動と相関するか否かについて検討。妊娠中や乳幼児期の両親の身体活動が11~12歳時の身体活動に影響を及ぼすことなどが明らかとなった。BMJ誌2008年1月5日号(オンライン版2007年11月23日号)掲載の報告。イギリスの同時出生コホート研究Avon longitudinal study of parents and children(ALSPAC)は、イギリスで実施されたプロスペクティブな同時出生コホート研究。1991年4月1日~1992年12月31日に出産予定の妊婦14,541人が登録され、14,062人の生児が誕生した。研究グループは、5歳までの乳幼児期の因子が後年の11~12歳時における身体活動と相関するか否かについて検討した。身体活動レベルはcounts per minute(cpm)で評価し、身体活動は11歳時に単軸性アクティグラフ(身体運動記録装置)加速度計を装着してもらい7日間測定することとした。妊娠中の早歩き、水泳が11~12歳時の活動性を高める5,451人の小児から、1日最低10時間の身体活動を少なくとも3日間測定したアクティグラフデータが集められた。回帰係数をカテゴリー変数が“none”のベースラインと比較したところ、「妊娠中の妊婦早歩き」「妊娠中の妊婦水泳」「生後21ヵ月時の両親の身体活動」などが11~12歳時の身体活動に関連していた。Mattocks氏は、「乳幼児期のいくつか因子が後年の11~12歳における身体活動に影響を及ぼすことがわかった」としたうえで、「妊娠中や乳幼児期の両親の身体活動が11~12歳の子どもの身体活動をわずかながら増進させたため、活動的な両親の子どもは活動的に育つ傾向が示唆された。それゆえ、両親が身体活動を増進するよう支援すれば、子どもの活動性が促進される可能性がある」と指摘している。(菅野 守:医学ライター)

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知的障害者の攻撃的挑発行動に対し抗精神病薬は無効

成人の知的障害者は攻撃的な挑発行動をとることが多いとされる。多くの場合は抗精神病薬による治療が行われるが、これを正当化するエビデンスは存在しない。インペリアル・カレッジ・ロンドンPsychological MedicineのPeter Tyrer氏らは、知的障害者の攻撃的挑発行動の治療として2種類の抗精神病薬をプラセボと比較する無作為化試験を実施。その結果、これらの薬剤にはプラセボを上回る効果はないことが明らかとなった。Lancet誌2008年1月5日号掲載の報告。2つの定型抗精神病薬とプラセボに無作為割り付けイングランド/ウェールズの10施設およびオーストラリアのクイーンズランド州の1施設から、攻撃的挑発行動を示す非精神病患者86例が登録された。これらの症例を、第1世代の定型抗精神病薬ハロペリドール(28例)、第2世代の定型抗精神病薬リスペリドン(29例)およびプラセボ(29例)に無作為に割り付けた。治療開始後4週、12週、26週に、臨床評価項目として攻撃性、異常行動、QOL、薬物有害作用、carer uplift(介護士に対する好感)と総コストを含む負担が記録された。主要評価項目は治療4週後における攻撃性の変化とし、modified overt aggression scale(MOAS)を用いて記録した。攻撃性の低下はプラセボ群でもっとも大きい80例が80%以上の服薬順守率を達成した。治療4週までに3つの治療群とも実質的な攻撃性の低下を認めたが、もっとも良好な変化はプラセボ群でみられた。すなわち、4週後のMOASスコア低下の中央値は、プラセボ群が9でベースラインよりも79%低下し、リスペリドン群は7で58%、ハロペリドール群は6.5で65%の低下であった(p=0.06)。さらに、異常行動、QOL、一般的改善効果、介護士への影響、有害作用については治療群間に大きな差はみられなかったが、プラセボ群が2つの抗精神病薬治療群よりも有効性が劣ることを示すエビデンスは4週、12週、26週のどの時点でも確認されなかった。これらの結果により、Tyrer氏は「もはや抗精神病薬は、たとえ少量でも知的障害者の攻撃的挑発行動に対するルーチンの治療法とすべきではない」と結論している。(菅野守:医学ライター)

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肺塞栓症の画像診断でCTPAは本当に有用なのか?

 肺塞栓症が疑われる患者に対して、肺換気・血流シンチグラフィ (V/Q)とCT肺アンギオグラフィ(CTPA)は広く行われている画像診断法だが、多くの医療施設でCTPAが主流となりつつある。Dalhousie University(カナダ)のDavid R. Anderson氏らは、CTPAがV/Qスキャンより有用であるかを検討した。JAMA誌2007年12月19日号にて掲載。カナダ・アメリカ1,417例を対象にCTPAとV/Qを比較 V/QスキャンとCTPAについて正式に比較検討したものは少なく、またCTPAについては感受性が低い(臨床的に重要な肺塞栓見落としの可能性が高い)懸念が言われている。Anderson氏らは、急性肺塞栓症の診断を行う最初の肺画像診断として、CTPAがV/Qスキャンの安全な代替方法かどうかを確認するため、無作為単盲検臨床試験を実施した。 対象は、高度医療を担うカナダ4施設、米国1施設の医療機関で、2001年5月~2005年4月の間にWells clinical model score 4.5以上、Dダイマー検査陽性との結果に基づき急性肺塞栓症とみなされた1,417例の患者。 患者は、V/Q(701例)もしくはCTPA(716例)に無作為に振り分けられ、肺塞栓症と診断された患者は抗凝固療法を受け3ヵ月間フォロー。除外された患者についても、抗凝固療法を受けることなく3ヵ月間追跡調査が行われた。 主要評価項目は、肺塞栓症が除外された患者の症候性肺塞栓症または深在静脈血栓症の発現。CTPAはV/Qスキャンに劣っていない? 肺塞栓症と診断され抗凝固療法を受けたのは、CTPA群133例(19.2%)、V/Q群101例(14.2%)。初回検査による相違は5.0%(95%信頼区間:1.1%~8.9%)だった。肺塞栓症が除外された患者のうち、フォローアップ期間中に静脈血栓塞栓症を呈したのは、CTPA群2/561例(0.4%)、V/Q群6/611例(1.0%)。これには致死性肺塞栓症1例が含まれる。両群相違は-0.6%(95%信頼区間:1.6%~-0.3%)だった。研究者らは、「本研究においてCTPAは肺塞栓症を除外する際、V/Qスキャニングより劣ってはいなかった」としながらも、「CTPAアプローチで肺塞栓症と診断された患者が、かなり上回っていたが、CTPAで見つかった全ての肺塞栓症が抗凝固療法の対象としなければならないかどうか、さらなる調査が必要だ」とまとめている。

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不安があってもED治療薬はネットで買う!?

日本イーライリリーが行ったインターネット調査によると、インターネットで販売しているED治療薬の安全性に多くの人が疑問を持っているにもかかわらず、6割の人がネット経由で購入を希望していることがわかった。調査は2007年11月に自分自身を「EDだと思う」もしくは「EDだと疑ったことがある」全国の男性1,031名を対象に行った。その結果、インターネットで購入するED治療薬(PDE5阻害剤)の半分以上は偽物だと考えている人は約8割おり、安全性に確信を持つ人は少数だった。しかし、半数以上がインターネットで購入を希望していること、またED治療薬は心臓に悪い、興奮作用がある、自分の意思と関係なく勃起する、など、薬剤の安全性と効果について多くの人が誤った理解をしていることがわかった。また、インターネットで購入する理由として、約8割が「人に知られないから」を理由に挙げ、「医師に診察してもらうのは嫌だから」、「病院(クリニック)にでかけるのは面倒だから」などの理由も多く、男性のED治療に対する精神的なバリアが大きいことが浮き彫りになった。詳細はプレスリリースへhttp://www.lilly.co.jp/CACHE/news_2007_35.cfm

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新開発の着用可能な血液透析機の有用性を確認

 透析あるいは腎移植を要する慢性腎不全患者は世界で約130万人に上る。これらの患者は、より頻回の血液透析を行えば生存率およびQOLの双方が改善される可能性があるが、イギリスにはそれを可能にするcapacityがほとんどないという。そこで、Andrew Davenport氏(ロンドン大学、Royal Free and University College Hospital Medical School)らは、新たな透析手段として着用して使用する透析機を開発、その安全性および有効性を評価するパイロット試験を実施した。Lancet誌12月15日号掲載の報告。標準的透析治療を受けている末期腎不全患者が着用透析機を装着 対象は、週に3回の標準的な血液透析を受けている末期腎不全患者8例(男性5例、女性3例、平均年齢51.7歳、平均透析期間17.9年)。これらの患者が新たに開発された着用透析機(重量約5kg)を1日に4~8時間装着し、標準の透析法と同様に抗凝固薬として未分画ヘパリンを投与された。 心血管系への重大な影響や血清電解質、酸塩基のバランスの変化は認めなかった。いずれの症例でも臨床的に有意な溶血のエビデンスは得られなかった。より長時間の装着が可能となるよう改良を重ねるべき 平均血流量は58.6mL/分、透析液流量は47.1mL/分であった。また、平均血漿尿素クリアランスは22.7mL/分、クレアチニンクリアランスは20.7mL/分であった。これらのデータは従来の透析法に比べ低値であるが、透析の時間および期間を延長できれば従来法よりも改善されることが示唆された。 ヘパリン用量が低下した際に2例に血管穿刺部位の血液凝固がみられたが、2例とも部分トロンボプラスチン時間は正常域へと回復した。1例で穿刺針の脱落がみられたが安全装置により失血は防止され、穿刺針を取り換えて治療が継続された。 これらの結果により、Davenport氏は「新開発の着用して使用する透析機器は安全性および有効性ともに有望な結果が得られた」と結論している。また、「これらの知見をより多くの症例で検証する試験が必要である。今後は、有効性を高めるために、より長時間の装着が可能となるよう改良を重ねれば、末期腎不全患者の透析回数をふやす実用的な手段となる可能性がある」と指摘している。

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抗癌剤sunitinibに心毒性か

欧米では進行性腎癌と消化管間質腫瘍(GIST)の治療に用いられるチロシンキナーゼ阻害剤sunitinibに心毒性がある可能性が報告された。Harvard Medical School(アメリカ)のTammy F Chu氏らが75例をレトロスペクティブに解析した結果としてLancet誌12月15日号に掲載された。心筋傷害の確認は取れておらず同氏らはイマチニブ抵抗性の転移性GISTに対するsunitinib第I/II相試験に登録された97例における左室駆出率の変化をレトロスペクティブに調査した。全例、sunitinib開始2週間前までに他の抗癌剤は中止している。全例、左室駆出率(LVEF)は50%以上あり、心不全既往はなかった。4例は冠動脈疾患の既往があったが過去1年間は無症候だった。sunitinibは4週間服用、2週間休薬を1サイクルとし、承認用量の50mg/日ないしそれ以下が用いられた。中央値33.6週間の後、6例(8%)が慢性心不全を発症した。いずれもNYHA分類III度以上の重症心不全だった。また36例(28%)でLVEFが10%以上低下した。うち7例では15%以上のLVEF低下が認められた。また、35例(47%)が高血圧(150/100mmHg超)を発症していた。本試験では心筋傷害のマーカーとして血中トロポニンI濃度を観察しているが、心不全発症患者、あるいはLVEF患者のトロポニンI濃度の推移が示されていないため、sunitinibによる心機能低下の原因は今ひとつ明らかではない。sunitinib使用時には心機能と血圧を注意深くモニターするようChu氏らは注意を喚起している。(宇津貴史:医学レポーター)

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