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認知症改善のため日光浴を

多くの認知症高齢患者と介護者を苦しめる、認知低下や気分障害、行動・睡眠障害およびADL(日常生活動作)の制限は、サーカディアンリズム障害が関連している。オランダ神経科学研究所(Netherlands Institute for Neuroscience)のRixt F. Riemersma-van der Lek氏らは、サーカディアンリズムの2大同調因子である「明るい光」と「メラトニン」を長期間、単独もしくは組み合わせることで、認知症状の進行を改善できるかどうかを検証する長期2×2因子二重盲検無作為化プラセボ対照試験を行った。JAMA誌2008年6月11日号より。オランダの12施設で最長3.5年間にわたり比較試験は1999年から2004年にかけて、オランダのグループケア施設12ヵ所の居住者計189例を対象に行われた。平均年齢は85.8歳(SD:5.5年)、90%が女性、87%は認知症だった。対象を、平均15ヵ月間(SD:12ヵ月間、最長3.5年間)、全日明るい(±1000ルクス)もしくは薄暗い(±300ルクス)状況、夕方にメラトニン(2.5mg)またはプラセボを、施設ごとに無作為に割り付けた。主要転帰尺度は、6ヵ月ごとに、標準的な評価検査や指標[認知機能検査のMini-Mental State Examination (MMSE)、うつ症状を評価するCornell Scale for Depression in Dementia(CSDD)、看護情報に基づく日常生活動作スケールなど]を用いて認知症状の進行状況やADLの制限、および有害事象に関する評価を行った。光+メラトニン療法は攻撃的態度や夜間不穏もやや改善結果、光療法は、認知症状をMMSEで平均0.9ポイント改善させたほか、うつ症状はCSDDで1.5ポイント寛解、ADLの制限は年1.8ポイント改善した。メラトニン投与は睡眠開始までの時間を8.2分短縮し、睡眠時間を27分延長した。ただしメラトニン投与をPhiladelphia Geriatric Centre Affect Rating Scaleを用いて行った評価では、ポジティブ感情がマイナス0.5ポイント、ネガティブ感情がプラス0.8ポイントだった。またMulti Observational Scale for Elderly Subjects scaleを用いた評価では、引きこもり行動が1.02ポイント増加していたが、光療法との併用では増加はみられなかった。併用療法については、Cohen-Mansfield Agitation Indexの評価で、攻撃的態度が3.9ポイント減少させ、睡眠効率を3.5%増加し、夜間不穏を年間1時間当たり1分間改善させた。Lek氏は「光療法は、認知症高齢者の症状をある程度改善する効果がある。一方メラトニン投与は気分障害の副作用が出るため、光療法との併用のみ推奨される」と結論している。(朝田哲明:医療ライター)

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QRS幅拡大は心不全患者の退院後死亡・再入院の独立予測因子

心不全で入院した患者は、退院後も死亡率と再入院率の高いことはわかっているが、入院中のQRS波持続時間による予後予測については、これまであまり検討されていない。そこで、米国ノースウエスタン大学医学部(シカゴ)のNorman C. Wang氏らは、左室駆出率(LVEF)低下に伴う心不全の入院患者のQRS幅と予後の関係について検討し、「QRS幅延長は、高い退院後死亡率の独立因子である」と報告している。JAMA誌2008年6月11日号より。南北アメリカ、欧州の2,962例を分析検討は、LVEF 40%以下の心不全入院患者を対象としたイベント駆動二重盲検無作為化プラセボ対照試験「Efficacy of Vasopressin Antagonism Heart Failure Outcome Study With Tolvaptan」(EVEREST)のデータに基づく遡及的解析。2003年10月7日~2006年2月3日にかけて、南北アメリカ、ヨーロッパの359施設で登録された患者4,133例のうち、登録時にペースメーカーや埋込型除細動器を装着していた1,029例、およびベースラインのQRS幅が報告されなかった142例を除外した2,962例が分析された。このうち1,641例はQRS幅正常(120ms未満)、1,321例はQRS幅拡大(120ms以上)だった。主要エンドポイントは全原因死亡率と、心血管死亡と心不全による再入院の組み合わせとした。QRS幅正常群よりも拡大群は、死亡率、再入院率ともに悪化中央値9.9ヵ月の追跡期間中、全原因死亡率は、ベースラインのQRS幅正常群は18.7%、QRS幅拡大群は28.1%だった(ハザード比:1.61、95%信頼区間:1.38~1.87)。心血管死亡または心不全再入院は、QRS幅正常群は32.4%だったが、拡大群では41.6%だった。QRS幅拡大がリスク上昇に関連することは、全原因死亡率でハザード比1.24、心血管死亡または心不全再入院で同1.28で、ともに確認された。ベースラインでQRS幅拡大群だった患者で、入院中の最終心電図でQRS幅正常に戻ったのは105例(3.6%)のみだった。QRS幅拡大は、LVEF低下による心不全入院患者に一般的に見られるが、Wang氏は「QRS幅拡大は、高い退院後死亡率と再入院率の独立予測因子である。これを介入の潜在的目標とすれば、退院後の死亡率、再入院率を改善できる可能性がある」と結論した。(朝田哲明:医療ライター)

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英国で進行中の患者治療記録のIT共有プロジェクトに対する人々の反応は?

英国では、NHS(National Health Service)のスタッフや患者が、電子化した患者の治療記録サマリーを共有できるよう大規模なITプロジェクトが進められている。SCR(summary care record)と呼ばれるサマリーは、一般開業医の診療記録から抽出・電子化されたもので、患者もHealthSpaceというWEBサイトを通じてアクセスすることができる。治療効率のアップ、それに伴う治療コスト削減が期待される本システムだが、一方で実用性、システムにかかるコスト、個人情報管理などに疑念を呈する声も絶えない。そこでロンドン大学のTrisha Greenhalgh氏らが、患者、スタッフが本システムをどう見ているのか質的研究を行った。BMJ誌2008年6月7日号(オンライン版2008年5月29日号)掲載より。システムを知っているか、記録の共有についてどう思うかを質問研究調査は103人への個別インタビューと7つのフォーカスグループ参加者に対して行われた。参加者は、プロジェクト初期からSCRやHealthSpaceに関わっている3つのプライマリ・ケア集団(生活レベルは3つとも同一)を通じて集められた。個別インタビュー対象者は、一般外科医院から、センター病院を時間外および入院、救急利用したことがある者が集められた。フォーカスグループ参加者は任意集団だが、HIV患者やメンタルヘルスケアサービス利用者、若者、高齢者、ドラッグ・リハビリ・プログラム参加者など社会的弱者と言われるような人々や英語が満足に話せない人々だった。それら参加者に、SCRとHealthSpaceを知っているか、電子媒体によるサマリー共有についてどう思うか意見を聞いた。認知度は低いがシステム自体には肯定的結果は、大半の人がSCRとHealthSpaceの存在を知らず、そこから情報をとれることを想起できなかった。またSCRに対する意見から利点と欠点があることがわかったが、それは個人的経験に基づくものであることが明らかとなった。意見を左右した主要な因子は、疾患の性質(特に緊急性が高い医療ニーズを必要とするかどうか)、ヘルスケアシステムやサーベイにより受けたこれまでの経験、健康教養レベル、主要なヘルスケアチームあるいはNHSそのものに対する信頼度などが挙げられた。全体として、薬害や医療ミス被害者が、社会的弱者と呼ばれる人々よりSCRに対して肯定的だった。SCRに関する誤解は、共通していた。特にそれがどんなデータを含んでいるのか、そして、誰がそれにアクセスできるかに関する混乱があった。大半の人は医療データを記録するかどうか、HealthSpaceを介して自分たちのSCRにアクセスするかどうかということには興味がない。しかし、持病を有する人々のセルフ・マネジメントおよび治療に、多少なりとも役立つ可能性もうかがえた。Greenhalgh氏は、「大規模な情報プログラムにもかかわらず、共有電子記録政策に関する公式見解は現時点は不明なままである。しかし、人々はこれを非常にポジティブに展開していくと見なしている」と結論。また、SCRにアクセスしやすくするためSCRデータ更新者や利用者が再訪問する際は「暗黙の同意」で済むようなシステム改善の必要性も提言している。 

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メタボの診断基準では心血管疾患や糖尿病を予測できない?

メタボリックシンドローム(MetS)とその構成因子は高齢者の2型糖尿病とは相関するものの、血管リスクとの関連はないか、あるいは弱いため、心血管疾患(CVD)と糖尿病のリスクを同時に予測するMetSの判定規準を策定する試みは有益でないことが、2つのプロスペクティブ試験の予後データの解析から明らかとなった。MetS診断基準はインスリン抵抗性と血管疾患の関連をよりよく理解できるように策定されたが、その臨床的な役割には疑問の声もあるという。英国Glasgow大学医学部のNaveed Sattar氏らによる報告で、Lancet誌2008年6月7日号(オンライン版2008年5月22日号)に掲載された。PROSPERのデータを解析、BRHSで裏付け研究グループは、MetSおよびその5つの構成因子[BMIあるいはウエスト周囲長、トリグリセライド(TG)、HDLコレステロール、空腹時血糖、血圧]が高齢者におけるCVDと糖尿病のリスクをどの程度まで予測できるかを調査した。MetSは、National Cholesterol Education Program第3報の判定規準に基づいて定義した。Prospective Study of Pravastatin in the Elderly at Risk(PROSPER)に登録された70~82歳の非糖尿病患者4,612例において、MetSおよびその構成因子とCVDおよび2型糖尿病のイベント発生リスクの関連について解析した。次いで、得られた知見について、60~79歳の非糖尿病患者2,737例が参加したもうひとつのプロスペクティブ試験British Regional Heart Study(BRHS)のデータを用いて検証した。個々の疾患の至適なリスクアルゴリズムの確立を目指すべきPROSPERでは、3.2年間に772例がCVDをきたし、287例が糖尿病を発症した。MetSは、ベースライン時に疾患に罹患していない登録者のCVDリスクを上昇させなかったが(ハザード比:1.07 、95%信頼区間:0.86~1.32)、糖尿病のリスクは上昇させた(4.41、3.33~5.84)。糖尿病では、MetSのすべての構成因子のリスクが上昇したが、とくに空腹時血糖の異常が顕著であった(18.4、13.9~24.5)。CVDに罹患している参加者においても、同様の結果が得られた。BRHSでは、7年間に440例がCVDを、105例が糖尿病を発症した。MetSはCVDリスクを中等度にしか上昇させなかったが(相対リスク:1.27、1.04~1.56)、糖尿病リスクは顕著に上昇させた(7.47、4.90~11.46)。両試験ともに、BMIあるいはウエスト周囲長、TG、血糖のカットオフ値はCVDリスクと相関しなかったが、5つの構成因子はいずれも糖尿病の新規発症との関連を示した。Sattar氏は、「MetSとその構成因子は高齢者の2型糖尿病のリスクを上昇させるが、血管リスクとの関連はないか、あるいは弱いため、CVDと糖尿病のリスクを同時に予測するMetSの判定規準を策定する試みは有益でない」と結論し、「従来どおり、個々の疾患の至適なリスクアルゴリズムの確立に臨床的関心を向けるべきである」と指摘している。(菅野守:医学ライター)

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小児の外傷性脳損傷後の低体温療法は死亡率上昇の危険性

低体温療法は外傷性脳損傷後の生存率と神経病学的転帰を改善することが、動物モデルでは知られているが、人間の子どもでは?これまで効果が明らかにされていなかった、重篤な外傷性脳損傷を受けた小児に対する低体温治療の、神経病学的転帰と死亡率についてカナダ・トロント小児病院のJames S. Hutchison氏らが調査を実施。「かえって死亡率を上昇させる危険性がある」と警告する報告を寄せた。NEJM誌2008年6月5日号より。小児225例を32.5℃ 24時間と37.0℃の群に割り付け本研究に参加したのは小児外傷性脳損傷低体温療法の研究者およびカナダ救命救急治験グループのメンバー。カナダ、アメリカ、イギリスの17医療センターによる多施設共同国際試験で、重篤な外傷性脳損傷を受けた小児225例を、受傷後8時間以内に低体温療法(32.5℃で24時間)を始める群と、正常体温(37.0℃)で治療する群に無作為に割り付け試験された。主要転帰は、Pediatric Cerebral Performance Category score(小児脳機能分類スコア)に基づき6ヵ月時点で評価した転帰不良(重度障害、遷延性植物状態、死亡)の小児の割合。死亡、低血圧、投薬とも低体温群が上回る平均到達体温は、低体温治療群33.1±1.2℃ 、正常体温治療群36.9±0.5℃ だった。6ヵ月時点で転帰不良と評価されたのは、低体温治療群31%に対して正常体温治療群22%だった(相対リスク:1.41、 相対リスク:0.89~2.22、 P=0.14)。このうち死亡は低体温治療群23例(21%)に対して正常体温治療群14例(12%)(相対リスク:1.40、相対リスク:0.90~2.27、P=0.06)。低体温治療群は復温期間中に正常体温治療群より低血圧症が多発し(P=0.047)、血管作用薬の投与も多く必要とした(P

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中国製原料使用のヘパリンが毒ヘパリンであるEBM

年明けの日本では毒ギョーザが話題となっていたが、米国では透析患者から相次いでいた静脈注射用ヘパリン投与後のアナフィラキシー様反応の報告が大きな関心事となっていた。死亡例も相次いだ本件に関して米国疾病管理センターは共通の症例報告からBaxter Healthcare社のヘパリン製剤を特定。1月17日にリコール開始、2月28日に回収を終了する。しかし3月6日、ドイツから他社製品での事例が報告。これを受け米食品医薬品局(FDA)はヘパリンの全製造業者に汚染物質混入の検査を命じた。そして混入が明らかになったのが、過硫酸化コンドロイチン硫酸(OSCS)。本論は、これまで立証されていなかったOSCSと臨床有害事象との生物学的関連を目的に、Momenta Pharmaceuticals社のTakashi Kei Kishimoto氏らが、FDAの協力を得て行った試験結果。NEJMオンライン版2008年4月23日に速報され、本誌では2008年6月5日号にて掲載された。ブタ体内で有害事象の再現実験試験はFDAから、有害事象との関連が疑われたヘパリン製剤ロットと比較対照用のロットの提供を受けて実施された。OSCSの有無、および汚染物質と観察された臨床有害事象(低血圧、顔面浮腫、頻脈、蕁麻疹、吐き気など)とを結び付ける可能性がある生物活性について盲検下でスクリーニング。in vitroで接触系活性化と補体カスケードを分析。さらにブタの生体内でOSCSが問題の臨床症状を再現するかどうかin vivoの試験も行われた。ブタもヒトもOSCSに同様の反応示す未分画へパリンの汚染ロットで見つかったOSCSは、標準試料の合成OSCSと同様に直接、ヒト血漿中のキニンカリクレイン経路を活性化したが、これは強力な血管作用を持つブラジキニン産生につながる可能性を示唆するものでもあった。加えてOSCSは、補体系タンパク由来の強力なアナフィラトキシンであるC3a、C5aの産生も誘導した。意外なことに、この2つの経路の活性化は連鎖しており、第XII因子の液相活性化に依存していた。また、さまざまな種の血漿サンプルのスクリーニングによって、ブタとヒトのOSCSの作用に対する感受性は同様なことがわかった。ブタの静脈に投与したOSCS汚染ヘパリンと合成OSCSは、いずれもカリクレイン活性化に関連する低血圧を引き起こした。これらからKishimoto氏は「本試験結果は、疑惑のヘパリン・ロットに混入しているOSCSが、観察された有害事象と生物学的な関連のあることを示す科学的根拠を提供するものだ」と結論。また、カリクレインのアミド溶解性の活性を評価する分析試験を行い、ヘパリンのOSCSや、その他の接触系を活性化する高度の過硫酸化多糖類の混入物質をスクリーニングすることで、ヘパリン供給経路を保護するための分析試験を補足できるとも報告した。(武藤まき:医療ライター)

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糖尿病臨床試験の多くは患者にとって重要な転帰と無関係

米国・メイヨー・クリニック医科大学(ミネソタ州)のGunjan Y. Gandhi氏らは、糖尿病治療の安全性や有効性への懸念が消えない理由の一つとして、糖尿病に関する無作為化対照臨床試験(randomized clinical trial=RCT)が、患者にとって重要な転帰(patient-important outcomes)、すなわち死あるいはQOL(疾患状態、疼痛、身体機能)を検証してこなかったことにあると指摘。現在進行中の多数の試験を検証し、「患者にとって重要な転帰を評価しているものは少ない」と報告した。JAMA誌2008年6月4日号より。データベースに登録された臨床研究436件を検証本研究の目的は、現在進行中か今後予定されている糖尿病RCTの範囲・限界を系統的に検証し、患者にとって重要な転帰が含まれているかどうかを確認すること。2007年11月10日時点で、主要なRCTが登録されている臨床研究データベースのClinicalTrials.gov(http://www.clinicaltrials.gov)、International Standard Randomized Controlled Trial Number Register(http://isrctn.org)、Australian New Zealand Clinical Trials Registry(http://www.anzctr.org.au)を検索した。条件に適合した第2相~第4相のRCT は2,019件中1,054件。無作為に50%(527件)のサンプルをとり、登録が義務化された2004年以降の登録研究436件を選定した。それら対象試験で測定される転帰と、それが(1)生理学的転帰、(2)代替転帰(患者にとって重要な転帰のリスク上昇を反映すると考えられる)、(3)患者にとって重要な転帰、のいずれに該当するかを決定した。「患者に重要」18%、「生理学的」16%、「代替」61%対象試験436件のうち24件(6%)は被験者登録をしていなかったが、109件(25%)は積極的に登録を行い、303件(69%)は登録を完了していた。試験の主要転帰が、患者にとって重要な転帰だったのは78件(18%、95%信頼区間:14~22%)で、生理学的転帰またはラボレベルの評価が69件(16%、13~20%)、代替転帰は268件(61%、57~66%)だった。患者にとって重要な転帰が主要またはそれに次ぐ転帰として報告されていたのは201件(46%、41~51%)。多変量解析の結果、患者100例以上の大規模試験(オッズ比:1.10、95%信頼区間:1.02~1.19)と30日以上の長期試験(1.03、1.01~1.06)は、患者にとって重要な転帰を評価する傾向があると言えたが、パラレルデザインのRCT(0.15、0.05~0.44)、2型糖尿病試験(0.23、0.09~0.61)はあまり測定されていない。この結果からGandhi氏らは「現在、登録され進行中の糖尿病RCTのうち、患者にとって重要な転帰を含んでいる試験は18%にすぎない」と結論している。(朝田哲明:医療ライター)

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ゾメタ、早期乳がんの女性に対し無病生存・無再発生存を有意に改善

ノバルティスファーマ株式会社は、ゾメタ(ゾレドロン酸水和物)が閉経前のホルモン感受性早期乳がん患者に対して、有意な再発抑制効果を示すことが示唆されたと発表した。今回の研究から、術後のホルモン療法にゾメタを追加投与した場合、ホルモン療法単独の場合と比較して、がんの再発リスクが36%減少することが判明したという。この結果は、米国イリノイ州シカゴで開催された第44回米国臨床腫瘍学会(ASCO2008)で、オーストリアの乳房・結腸直腸がん研究グループ(Austrian Breast & Colorectal Cancer Study Group:ABCSG)の医師らが発表したもの。詳細はプレスリリースへhttp://www.novartis.co.jp/news/2008/pr20080606_02.html

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静脈血栓塞栓症リスクを経口エストロゲンは増大するが経皮エストロゲンは安全

ホルモン補充療法は静脈血栓塞栓症のリスクを増大するのか。フランス国立保健医学研究所(INSERM)心血管疫学部門のMarianne Canonico氏らによるシステマティックレビュー&メタ解析が行われ、「経口エストロゲンはリスクを増大する。経皮エストロゲンは安全なようだ」と報告された。BMJ誌2008年5月31日号(オンライン版2008年5月20日号)掲載より。経口エストロゲンはリスクを増大、しかも服薬初期ほどリスク高Medlineから選定されたレビュー対象は8つの観察研究と9つの無作為化試験。いずれも静脈血栓塞栓症が報告されたホルモン補充療法に関するスタディである。解析はχ二乗検定、I二乗検定を用いて行われた。静脈血栓塞栓症の全リスクは、固定効果モデルもしくは変量効果モデルで評価された。まず8つの観察研究のメタ解析では、経口エストロゲンはリスクを増大するが、経皮エストロゲンは増大しないとの結果が得られた。エストロゲン非服用者との比較による、静脈血栓塞栓症の初回発症オッズ比は、経口エストロゲン服用中の者の場合は2.5 (95%信頼区間:1.9~3.4)に対し、経皮エストロゲン服用中の者は1.2(0.9~1.7)だった。また現在は経口エストロゲンを服用していない者のリスクを一度も服用したことのない者のリスクと比較した場合、程度は同じではなかった。経口エストロゲン服用中の女性の静脈血栓塞栓症リスクは、服薬期間が1年以上の場合のオッズ比は2.1(1.3~3.8)、これに対して最初の1年は4.0(2.9~5.7)で、より高かった(P

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prucaloprideは重度の慢性便秘に有効で心血管作用も見られない

本論は、重度の慢性便秘に対し開発された選択的高親和性5-hydroxytryptamine4(5-HT4)受容体作動薬prucaloprideの有効性を検証していた、米国・メイヨー・クリニックのMichael Camilleri氏らによる第III相試験の報告。「prucaloprideは腸機能を高め、重度慢性便秘症状を軽減した。心配されていた重大な心血管への影響はなかった」としている。NEJM誌2008年5月29日号より。12週間にわたり620例対象にプラセボ対照試験prucalopride の有効性は、重度の慢性便秘(自発的な完全排便が週2回以下)の患者620例を対象に12週間にわたり検討された。多施設共同無作為化プラセボ対照試験検討並行群間第3相試験。患者は1日1回、プラセボまたはprucalopride 2mgないしprucalopride 4mgを投与。主要有効性エンドポイントは、12週間で、平均して週3回以上の自発的な完全排便があった患者の割合。副次的有効性エンドポイントは、患者記入による日記とアンケートの結果とした。また有害事象と臨床検査数値、心血管作用についてもモニタリングされた。排便回数も重症度の実感も有意に改善週3回以上の自初的な完全排便があった患者の割合は、prucalopride 2mg群では30.9%、prucalopride4mg群は28.4%だったが、プラセボ群は12.0%だった(両群間比較のP

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(第51回日本糖尿病学会年次学術集会から) -2型糖尿病治療の新たな戦略- インクレチン治療(1) GLP-1誘導体

2008年5月21日~24日(土)まで、東京国際フォーラムにおいて、これまでで最多である11,623名が参加した「第51回日本糖尿病学会年次学術集会(会長:東京大学大学院医学系研究科 門脇 孝氏)」が、開催された。数多くのシンポジウムやワークショップ、共催セミナーが開催され、さらには過去最多の一般演題が発表、海外から第一線で活躍する50名以上の先生方が参加した本集会において、最も多くの参加者を集めたのは、「インクレチン治療」をテーマとしたプログラムであった。わが国では現在、インクレチンを利用したいくつかのGLP-1受容体作動薬(皮下注射剤)およびDPPⅣ阻害薬(経口薬)が、申請中、あるいは臨床試験中であり、発売が待たれているが、欧米では、これら薬剤は、既に数年前から、多くの2型糖尿病患者に用いられている。古くて新しい“インクレチン”インクレチンは、小腸から分泌されるホルモンの総称で、栄養素の消化吸収とともに、消化管から分泌され、膵β細胞からのインスリン分泌を促進させる作用を有する。100年くらい前には既に小腸から抽出した因子に、血糖降下作用があることがわかっていたが、その実態については、しばらく明らかにされていなかった。しかし、血中の血糖上昇を同程度になるよう調整したブドウ糖を経静脈により流入させたときと、経口で摂取させたときの血糖降下程度に差があり、後者の方がより低下し、より血中のインスリン濃度が高くなることが明らかになったことから、それら因子は、糖が消化管を通過することで、インスリン分泌を促進させる作用を持つことが示された。その後の研究により、それが小腸から分泌されるいくつかのホルモンであることが明らかとなり、それらは総称して、その働きである「Secreti(o)n of insulin(インスリン分泌)」から、「incretin」と名づけられた。インクレチンの中で、膵β細胞に結合し、インスリン分泌を促進させる作用があることがわかっているのは、小腸上部のK細胞から分泌されるGIP(Gastric inhibitory polypeptide)と、小腸下部のL細胞から分泌されるGLP-1(Glucagon-like peptide-1)であり、GLP-1は、その機能を保ちつつ、体内で分解されにくい構造にしたGLP-1誘導体として、欧米では既に多くの2型糖尿病患者に用いられている。GLP-1は、SU薬とは異なる機序でインスリン分泌を促進元来、インスリン分泌能の低い日本人では、糖尿病を発症すると、インスリン分泌の低下が主体となる病態になることが多いため、インスリン分泌を促進する薬剤は非常に有用となる。現在、インスリン分泌を促進する薬剤としては、スルホニル尿素(SU)薬と速効型インスリン分泌促進薬がある。SU薬は、古くから使われており、確実に血糖を低下させることから、非常に多くの2型糖尿病患者に使われているが、しばしば、膵β細胞の疲弊による効果の減弱(二次無効)や低血糖の発現、体重の増加が問題となる。GLP-1は小腸で栄養素が消化吸収されることにより分泌され、膵β細胞のGLP-1受容体に結合し、インスリン分泌を促進させる。つまり、投与されたGLP-1誘導体のインスリン分泌促進作用は血中グルカゴン濃度依存性であるため、GLP-1誘導体は、絶え間なく膵臓を刺激し、インスリン分泌を促進し続けるSU薬と異なり、生理的なインスリン分泌促進作用(食後のインスリン分泌作用)を持ち、低血糖を来たしにくいという利点を有する。GLP-1は膵β細胞の機能を回復?GLP-1は膵β細胞のアポトーシスを抑制させる(in vitro)との報告や、糖尿病モデルラットにおいて、膵β細胞の数を増加させたとの報告などから、GLP-1誘導体は膵β細胞の機能を回復させる可能性があることが示唆されている。GLP-1は食欲を抑制し、体重を減少させる-GLP-1の膵外作用-膵外作用として、GLP-1は中枢神経に作用し、食欲を抑制することが、ラットおよびヒトで明らかになっており、実際にGLP-1誘導体を服用した2型糖尿病患者において、体重が減少することが報告されている。強力な血糖低下作用を持つSU薬を服用すると、空腹感から食欲が増し、体重が増加、さらに血糖が悪化するという悪循環に陥ることがあるが、この点からも、GLP-1誘導体が有用であると考えられている。わが国で発売が待たれるGLP-1誘導体現在、わが国では、GLP-1誘導体として、エクセナチド(イーライリリー/既に米国と欧米で使用中)が第2相試験中、リラグルチド(ノボノルディスク/米国と欧米で承認申請中)が第3相試験中である(ともに1日1回投与)。これらについては、本集会においても、海外における数多くのエビデンスが報告され、多くはないが日本人のエビデンスも発表された。生理的なインスリン分泌促進作用を持つGLP-1誘導体。さらに、低血糖が発現しにくく、体重増加がなく、むしろ体重を減少させ、その上、膵β細胞の機能を回復させる可能性が示唆されている。このように非常に期待できる有用な治療薬であり、わが国でもその使用が待たれているが、唯一の弱点は、皮下注射剤であるということである。インスリン注射と同様に、注射剤は、診療する医師にとっても、患者にとっても、なかなか導入が困難であるが、エクセナチドについては、週1回製剤も開発段階にあり、将来的には、週1回の注射のみで、良好な血糖コントロールが可能になる時代も期待できるかもしれない。次回は「(第51回日本糖尿病学会年次学術集会から)-2型糖尿病治療の新たな戦略-インクレチン治療(2) DPP-IV阻害薬」を紹介する。(ケアネット 栗林 千賀)

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9割は自分のHbA1c値を知らない

サノフィ・アベンティス株式会社が行った調査から、血糖コントロールの重要な指標となるグリコヘモグロビン(HbA1c)の認知度が低いことがわかった。調査は全国の30歳以上男女416人を対象にインターネットを通じて実施された。その結果、30代以上の男女95%が「糖尿病は怖い病気である」と回答する一方、92%以上が自分のHbA1c値を知らなかった。また特定健診については「知らない」が25%以上と認知度が低くく、実施の趣旨も全体の6割が「肥満の検査」と回答するなど、十分に理解されていないことが判明した。詳細はプレスリリースへhttp://www.sanofi-aventis.co.jp/live/jp/ja/layout.jsp?scat=F46269E9-3D18-4250-BA23-5A6A7A0ECD74

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「厳格な血圧コントロール」と「腎機能の改善」によって糖尿病合併高血圧例の予後が改善 -Challenge DM study CKDサブ解析より-

CKD治療のポイントは「厳格な血圧コントロール」と「腎機能改善」5月31日、第51回日本腎臓学会学術総会において梅村敏氏(横浜市立大学大学院医学研究科病態制御内科学)は、腎機能の低下と不十分な血圧コントロールが糖尿病を合併した高血圧症例の心血管系イベントの発症を増加させることを示し、血圧コントロールと腎保護の重要性を訴えた。これは『Candesartan antiHypertensive Assessment for Long Life Enrolled by General practitioners - target on hypertension with Diabetes Mellitus (Challenge-DM) study』に参加した16,860例(有効性評価対象症例数)のうち、登録時から酵素法によって血清クレアチニン値を測定していた4,799例を用いたCKDサブ解析の結果によるもの。Challenge-DM studyは、糖尿病を合併した高血圧症例にカンデサルタンをベースとした治療を施行し、平均2年5ヵ月追跡した観察研究であり、総イベントは突然死、脳血管系イベント、心血管系イベント、脳・心血管疾患系イベント、重篤な不整脈、重篤な腎障害、その他の血管障害と設定された。eGFRが60mL/min/1.73m2未満をCKDと定義した場合、糖尿病を合併した高血圧症例4,799例中、1,704例(35.5%)が登録時にCKDであった。糖尿病合併高血圧にCKDを併発すると、心血管系イベントの発現がさらに高率になるCKD群では非CKD群と比べると、総イベントが有意に多く発現した。これをCKDのステージ分類別にみると、ステージ4(eGFR15以上30未満)群で14.6%と総イベント発現率が高く、ステージ3(eGFR30以上60未満)群と比較すると有意に高かった。CKDの放置は心血管系イベントの発症を招くまた、「登録時におけるCKDの有無」と「経過観察時におけるCKDの有無」によって、「登録時も経過観察時もCKDが認められなかった群(無→無群)」、「経過観察中にCKDが発症した群(無→有群)」、「経過観察中にCKDが改善した群(有→無群)」、「登録時も経過観察時も継続してCKDが認められた群(有→有群)」の4群に分けて解析した。「有→有群」は「無→無群」より有意に総イベント発現率が高く(p

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遺伝子治療でレーバー先天性黒内障患者は失明から救われる?

 レーバー先天性黒内障(LCA)は幼児期に発症し重度の視力障害から青年期には失明に至る一群の遺伝性疾患。異常な眼振を主症状とし網膜電図検査と対光反射で診断が行われるが、治療は現在のところない。ペンシルベニア大学Scheie Eye InstituteのAlbert M. Maguire氏らは、同疾患のうちLCA2の患者に対して遺伝子治療を行い、正視には至らなかったが有害事象もなく視力改善に成功したことを報告した。NEJM誌2008年5月22日号(オンライン版4月27日号)に掲載されたブリーフレポートより。組み換え型アデノウイルスベクターを網膜下に注入 LCA2は網膜色素上皮特有の遺伝子RPE65の突然変異によって発症することから、RPE65相補DNAを含む組み換え型アデノウイルスベクターであるAAV2.hRPE65v2を網膜下に注入する遺伝子治療が行われた。本手法についてはすでにイヌモデルでの長期の視覚機能回復の実証データがあり、ヒトでの安全性が検討された。 患者は2007年9月~2008年1月の間に治験登録した19歳女性と26歳男女の計3人。フィラデルフィア小児病院で生成された最新のベクターが全身麻酔下で、右眼にのみ注射された。 術後6ヵ月間、主観的な視力テスト、対光反射および眼振テストが行われ安全性および有効性が評価された。 臨床的ベネフィットは6ヵ月経っても継続 患者は3人とも術後2週時点で主観的な視力テストで網膜機能に適度の改善が認められた。対光反射も改善し、治療を受けた右眼は術前より約3倍、光に対する感度が増していた。眼振については治療後、右眼だけでなく左眼ともに減少が認められた。 障害物コースの操縦テストについては、治療前は大きな困難があったにもかかわらず治療後は可能となった患者が1人いた。 視力の改善について、6週時点まで向上し続けその後改善率は鈍化したことが観察されている。また1人の患者について、治療を受けていない左眼の視力も改善していたが、これはイヌモデルでも報告されたように、眼振の改善に伴うものではないかとしている。 ベクター曝露に関連した有害事象は局所性・全身性ともに認められなかった。患者のうち1人に無症候性黄斑円孔が発症したが、炎症性あるいは急性の網膜毒性の徴候は認められなかった。また無症候性黄斑円孔を発症した患者も、網膜機能は治療前より回復している。 患者に対する臨床的ベネフィットは6ヵ月経っても継続。Maguire氏は安全性と有効性を評価するため、より長期および大規模な試験が必要であること、また「弱視と網膜変性が確定される前、すなわち小児期に治療を行えばより有効性が向上するのでは」と述べ、「追跡期間が短く正視には至っていないが、今回の治験結果はLCAおよび一連の他網膜変性疾患への遺伝子治療のアプローチの可能性を示すものとなった」とまとめた。

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酸化LDLが高値ほどメタボ発症率上昇

実験レベルでは、酸化LDLとメタボリックシンドロームの関与説が支持されているが、ヒトレベルではどうなのか。メタボリックシンドロームと酸化LDLの関係を検証していたオランダ・ルーヴァン・カトリック大学のPaul Holvoet氏らは、「血中の酸化LDLレベルが高いとメタボリックシンドロームの発症率は上昇する」との報告を行った。JAMA誌2008年5月21日号より。米国の都市住民1889例を20年間追跡調査住民ベースで前向きの観察研究「The coronary artery risk development in young adults」(CARDIA)に、1985~1986年に登録された、米国4大都市圏に居住する18歳~30歳の参加者1,889例(アフリカ系アメリカ人41%、女性56%)を対象に、登録から15年目(2000-2001年、年齢33~45歳)および20年目(2005-2006年)の時点で、血中酸化LDLレベルとメタボリックシンドローム発症の頻度を比較した。酸化LDLレベルは、モノクロナール抗体による検定法で測定。メタボリックシンドロームの定義は、米国の「Cholesterol Education Program」が規定した「Adult Treatment Panel III」によった。当初ゼロから20年後には12.9%が発症追跡調査15年時点ではメタボリックシンドローム事象が見られなかった参加者だが、20年時点では12.9%(1,889例中243例)がメタボリックシンドロームと診断された。この5年間の調査結果を、年齢、性別、人種、検査センター、喫煙、BMI、身体活動度、LDLコレステロール濃度で補正して、酸化LDLレベル5分位ごとに分け、メタボリックシンドローム発症オッズ比を対最小値(<55.4 U/L)群で見たところ 第2分位(55.4~69.1 U/L)では2.1(95%信頼区間:1.1~3.8) 第3分位(69.2~81.2 U/L)では2.4(1.3~4.3) 第4分位(81.3~97.3 U/L)では2.8(1.5~5.1) 第5分位(97.4 U/L以上)では3.5(1.9~6.6)とレベルが上がるほど高くなる相関が確認された。メタボリックシンドロームの各構成要素のオッズ比は、第1分位 vs 第5分位では腹部肥満が2.1(95%CI:1.2~3.6)、高血糖が2.4(95%CI:1.5~3.8)、高TG血症は2.1(95%CI:1.1~4.0)だった。しかし、LDLコレステロール値とメタボリックシンドローム発症との相関関係は確認されなかった。また、酸化LDLを組み込んだ完全調整モデルで構成要素の関連は確認されなかったが、Holvoet氏らは上記結果を踏まえ「血中の酸化LDLレベルが高いほど、個々の症状だけでなく、全体としてメタボリックシンドロームの発症増加に関係する」と結論している。(朝田哲明:医療ライター)

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BPLTTCから新たなメタ解析:65歳の上下で降圧薬の有用性を比較

降圧大規模試験に関する前向きメタ解析であるBlood Pressure Lowering Treatment Trialists’Collaboration(BPLTTC)から新たなデータが報告された。65歳未満の高血圧患者には「ACE阻害薬」、「より積極的な降圧」、「利尿薬またはβ遮断薬」がイベント抑制の観点からは好ましいようだ。BMJ誌2008年5月17日号(オンライン版2008年5月14日号)からの報告。31試験20満例弱を対象今回解析対象となったのは31試験に参加した190,606例。異なった薬剤あるいは降圧目標を比較した降圧無作為化試験のうち、1,000人年以上の規模を持ち2006年9月までにデータを入手でき、かつ本メタ解析が事前に定めている患者情報の得られた試験である。65歳「未満」群(平均年齢57歳)と「以上」群(平均年齢72歳)に分け、1次評価項目である心血管系イベント(脳血管障害、冠動脈イベント[突然死含む]、心不全)のリスクが比較された。65歳「以上」「未満」間で有意なバラツキみられず結果だが、まずプラセボ群と比較したACE阻害薬群、Ca拮抗薬群の心血管系イベント減少率は65歳「未満」「以上」で同等だった。すなわちプラセボ群と比較したACE阻害薬群の心血管系イベント相対リスクは、65歳未満で0.76(95%信頼区間:0.66~0.88)、65歳以上で0.83(95%信頼区間:0.74~0.94)[バラツキ:P=0.37]、Ca拮抗薬群では65歳未満0.84(95%信頼区間:0.54~1.31)、65歳以上0.74(95%信頼区間:0.59~0.92))[バラツキ:P=0.59]だった。「非積極的降圧」と「積極的降圧」を比較しても同様で、積極的降圧群の相対リスクは65歳未満で0.88(95%信頼区間:0.75~1.04)、65歳以上1.03(95%信頼区間:0.83~1.24 [バラツキ:P=0.24] となっていた。「ACE阻害薬 vs 利尿薬またはβ遮断薬」、「Ca拮抗薬 vs 利尿薬またはβ遮断薬」、「ACE阻害薬 vs Ca拮抗薬」、「ARB vs その他」で比較しても同様で、65歳「以上」と「未満」の間にイベント抑制作用の有意なバラツキはみられなかった。65歳「未満」・「以上」ではなく年齢を連続変数として解析しても、各種降圧薬による心血管系イベント抑制作用は有意な影響を受けていなかった。なお65歳「未満」と「以上」の間に「一定度の降圧により得られるイベント相対リスクの減少率」の差もなかった。降圧治療は少なくとも本解析で検討された範囲であれば年齢の高低を問わず有用であり、また年齢により降圧薬の有用性に差はない──と研究者らは結論している。(宇津貴史:医学レポーター)

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Challenge DM study発表される! -血糖管理に加えて徹底した血圧管理が心血管系イベントを抑制する重要な戦略-

17,000例を超える糖尿病合併高血圧例の観察研究がお披露目 23日、第51回日本糖尿病学会年次総会において河盛隆造氏(順天堂大学医学部)は、17,000例を超える糖尿病を合併した高血圧症例に関する観察研究『Candesartan antiHypertensive Assessment for Long Life Enrolled by General practitioners - target on hypertension with Diabetes Mellitus (Challenge-DM) study』の結果を初めて公表し、血糖管理に加えて血圧を130/80mmHg未満にコントロールすることで、さらに30%の心血管疾患系イベントの発症を抑制できることを示した。Challenge-DM studyは、糖尿病を合併した高血圧症例17,622例にカンデサルタンをベースとした治療を施行し、平均2年5ヵ月追跡した観察研究である。総イベントは突然死、脳血管系イベント、心血管系イベント、脳・心血管疾患系イベント、重篤な不整脈、重篤な腎障害、その他の血管障害と設定された。130/80mmHg未満にコントロールされていた症例は20%に満たない 『高血圧治療ガイドライン2004年版』(JSH2004)では糖尿病を合併した高血圧症の降圧目標を130/80mmHg未満と設定しているが、Challenge-DM studyにおいてこの目標値に到達した割合は1年後で13.6%、3年後で18.0%に留まった。降圧目標未達例における使用降圧薬数は平均1.9剤、カンデサルタンの平均用量は7.3mg/日と、標準用量の8mgを下回っていた。 一方、血糖管理については『糖尿病治療ガイド2008-2009』では、HbA1c<6.5%を「良」とし、まずは「良」を目指すべき管理目標値として定めているが、この推奨値に到達した割合は1年後で44.8%、3年後で45.4%であった。血圧値、HbA1c値、総コレステロール値、トリグリセリド値の全てがガイドライン推奨値に到達した割合は3年後においてもわずか3.2%に過ぎなかった。血糖管理+血圧管理によって、さらに30%のイベント抑制が可能に 有効性評価対象症例数16,869例中、826例に総イベントが認められ、これは年間1,000人あたり20.7人が発現することになり、この成績について河盛氏は、「10年も前に発表された久山町研究と大きく変化していない」と治療の選択が増えたにも関わらず改善していない状況を問題視した。 これをHbA1c値が6.5%未満に到達した7,651例と、6.5%以上であった9,017例に分けて解析すると、6.5%未満にコントロールすることで総イベント発現率が15%有意に低下することが示された。さらに6.5%未満にコントロールされていた7,651例を血圧値が130/80mmHg未満であった1,391例と130/80mmHg以上であった6,260例に分けて解析すると、降圧目標に達していた130/80mmHg未満群では、達していなかった群に比べて30%有意に軽減できることが明らかにされた。このことは日本人の糖尿病を合併した高血圧症例においてHbA1c値を6.5%未満にコントロールすることの重要性を示した初のエビデンスであるとともに、血圧を130/80mmHg未満に低下させることの意義を示した。 >総イベントの発現率を使用されていた糖尿病治療薬別にみると、インスリン抵抗性改善薬ピオグリタゾンが投与されていた群では、非投与群に比べ有意に少なかったという糖尿病を治療する医師の立場にとって非常に興味深い結果が得られたと発表した。 以上、Challenge-DM studyについて発表された内容をまとめてみたが、ここからは既報の糖尿病合併高血圧症に関する知見より、今回発表されたChallenge-DM studyも交えて考察してみる。糖尿病と高血圧は合併しやすく、合併することで危険度が高まる 糖尿病症例では高血圧を併発しやすく、端野・壮瞥町研究によると糖尿病の実に62%が高血圧を伴っている1)。またその逆も然りで、高血圧患者において糖尿病の頻度は2~3倍高い。糖尿病患者は非糖尿病患者に比べ、心血管系疾患が2~3倍高率に発症する。高血圧の合併は心血管系疾患の発症率をさらに2~3倍増加させる。厳格な血圧管理によって心血管系イベントが抑制できることは証明済み このような糖尿病合併高血圧に対し、厳格な血圧管理(平均144/82mmHg)を行った群と、通常の血圧管理(平均154/87mmHg)を行った群を比較した介入試験UK Prospective Diabetes Study Group(UKPDS)試験において、厳格な血圧管理によって心血管系疾患の発症率が有意に少ないことが示された2)。また、最適な降圧目標を検証するために実施されたHypertension Optimal Treatment (HOT)試験では、拡張期血圧80mmHg以下を降圧目標にした群で、85mmHg以下群、90mmHg以下群に比べて心血管系イベントの発現リスクが有意に低かったことが示された3)。これらの試験結果より「糖尿病を合併した高血圧」においては130/80mmHg未満を降圧目標として設定されている。糖尿病患者さんの血圧コントロールは難しい しかし、この降圧目標はReal Worldでは20%も達成されておらず、わが国で2002年に実施された疫学研究によると、糖尿病合併高血圧症例のわずか11.3%しか130/80mmHg未満に達成していない4)。また、降圧薬を服用中の高血圧症例のうち、糖尿病を合併していた症例における解析においては、家庭血圧計において130/80mmHg未満に到達していた割合は18%に過ぎなかったことも報告されている5)。Challenge-DM studyにおいても目標血圧到達率は20%未満であり、目標到達の難しさを支持している。8割以上の医師が「糖尿病患者さんの血圧は130/80mmHg以下に!」と考えている 弊社が高血圧症例を10例/月以上診察しているケアネット会員医師を対象に実施した2007年6月に実施したアンケート調査によると、回答した81%の医師が糖尿病合併高血圧症に対しては130/80mmHg以下を治療目標としており、この点ではガイドラインが推奨する目標値との乖離はそれほど大きくない(ただし、58%の医師が130/80mmHgと回答)。心血管イベント発現抑制のカギは「徹底した血圧管理」 前述のUKPDS試験は収縮期血圧を10mmHg、拡張期血圧を5mmHg低下させることにより、HbA1c値を0.9%低下させるよりも、合併症のリスク低下が大きい傾向が認められ、糖尿病患者における血圧管理の重要性も示した。この結果は、糖尿病患者において血圧のコントロールが血糖のコントロールに勝るとも劣らない効果を有することと、血圧は低ければ低いほどよいことを示した。Challenge-DM studyは、血糖値に加えて血圧値もガイドラインで推奨されている範囲にコントロールできた場合、血糖値だけがコントロールできている場合よりさらにイベントの発現を30%低下させられることを証明した。この研究では血糖値と血圧値が目標レベルに達していたのは8%ほどであったが、とくに達成率が低かった血圧値をより厳格に管理することで心血管系疾患の発症を抑制されることができるのではないだろうか。カンデサルタンとピオグリタゾンの併用に新たな可能性 「HbA1c値を6.5%未満に管理した上で血圧を厳格にコントロールする」、Challenge-DM studyはもう1つイベントの発現を低下させる戦略を示している。ピオグリタゾン投与例では、非投与例に比べ、総イベント発現率が有意に少なかった。 これに関連して、最近、熊本大学 中村・光山氏のグループは、脳卒中易発症高血圧自然発症ラット(SHRSP)においてピオグリタゾンの糖代謝改善作用と独立した心筋における抗炎症作用、線維化抑制作用、血管内皮機能改善作用、心筋・血管に対する抗酸化作用があることをHypertension誌に発表した6)。そしてこれらの作用はカンデサルタンの併用により増強されるというのである。 今回、Challenge-DM studyにおいてピオグリタゾン投与例でイベント発症率が低かったことは、基礎研究の結果が臨床においてその有効性が窺えたと考えられる。今後、無作為化比較試験が実施され、この新しいレジメンの有用性が証明されることを期待したい。1) Iimura O:Hypertens Res.1996;19(Suppl 1):S1-S82) UK Prospective Diabetes Study Group:BMJ.1998;317:703-7133) Hansson L et al:Lancet.1998;351:1755-17624) Mori H et al:Hypertens Res.2006;29:143-1515) Obara T et al:Diabetes Res Clin Pract.2006;73:276-2836) Nakamura T et al:Hypertensio

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マンモグラフィと超音波検査の併用で乳癌診断率は上昇

リンパ節転移のない乳癌はマンモグラフィでは発見できないが、超音波検査では小さく映る可能性がある。乳癌スクリーニング検査におけるマンモグラフィ単独とマンモグラフィ・超音波併用の成績を比較して、両者が女性の乳癌リスクにどう関わるのかを調べていたAmerican College of Radiology Imaging Network (ACRIN)6666の研究グループは、「超音波検査を併用すると乳癌診断率は上昇するが、同時に偽陽性の数も増加する」と報告した。JAMA誌2008年5月14日号より。高濃度乳腺の女性2637例を1年間追跡調査主要評価項目は、マンモグラフィ・超音波併用検査とマンモグラフィ単独検査における診断率と感受性、特異性、診断精度(受信者動作特性曲線の領域で評価)および生検勧告の陽性的中率。2004年4月~2006年2月にかけて、少なくとも乳房の4分の1が不均一な高濃度乳腺(dense breast)組織の女性2,809例が21地域から集められ、他の検査結果を知らされていない放射線科医によって無作為に、マンモグラフィと医師による超音波検査を受けた。標準試料は病理と12ヵ月間の追跡調査で定義され、有資格参加者2,725例中2,637例(96.8%)について確認した。併用検査は診断率、診断精度ともに有利参加者中40例(乳房数41)が癌と診断されたが、併用検査で疑われたものは8例、超音波単独では12例、マンモグラフィ単独では12例で、残り8例(同9)はどちらの検査でもなかった。マンモグラフィの診断率は、7.6/1,000(2,637例中20例)で、併用検査では11.8/1,000(2,637例中31例)に増加。補足的診断率は4.2/1,000(95%信頼区間:1.1~7.2/1,000、P=0.003、補足的診断率0)だった。マンモグラフィの診断精度は0.78(95%信頼区間:0.67~0.87)で、併用検査では0.91(0.84~0.96)に上昇した(P=0.003、差0)。超音波検査だけで発見された癌12例のうち11例(92%)は、大きさが中央値10mm(範囲は5~40mm、平均値:12.6[3.0]mm)で浸潤性だった。9病変のうち8例(89%)は、リンパ節転移陰性と報告された。診断に必要なすべての検査を終えてからの生検勧告の陽性的中率は、マンモグラフィが84例中19(22.6%、 95%信頼区間:14.2~33%)、超音波が235例中21(8.9%、5.6~13.3%)、併用検査は276例中31(11.2%、7.8~15.6%)だった。研究グループは「マンモグラフィに超音波検査1回を加えることで、高リスク女性の乳癌診断率は上がるが、実質的に偽陽性の数も増加する」と指摘している。(朝田哲明:医療ライター)

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頸動脈雑音が心筋梗塞、心血管死の予後予測因子に

頸動脈雑音(carotid bruit)の聴診により、心血管リスクに対する積極的な治療戦略が大きなベネフィットをもたらす症例を選択しうることが、Walter Reed米陸軍医療センターのChristopher A Pickett氏らが行ったメタ解析によって示された。頸動脈雑音は全身のアテローム性動脈硬化のマーカーとされるが、その脳血管イベントの予測因子としての意義は低いことがわかっている。そこで、同氏らは心血管イベントにおける頸動脈雑音の意義を検証し、Lancet誌2008年5月10日号で報告した。頸動脈雑音の有無で心筋梗塞、心血管死を予測しうるかを検証研究グループは、頸動脈雑音の有無で心筋梗塞および心血管死を予測しうるか否かを検証するためのメタ解析を行った。“carotid”および“bruit”をキーワードとしてMedline(1966~2007年8月)およびEmbase(1974~2007年8月)を検索し、得られた論文をさらに絞り込んだ。心筋梗塞の発症率および心血管死亡率をアウトカムの変数とした。論文の質はHayden rating schemeで評価し、データは変量効果モデルを用いてプールした。100人・年当たりの心筋梗塞発症率:3.69 vs 1.86、心血管死亡率:2.85 vs 1.11抽出された22論文のうち20論文(91%)がプロスペクティブなコホート研究であった。1万7,295例(6万2,413.5人・年)が解析の対象となり、フォローアップ期間中央値4年(2~7年)におけるサンプルサイズ中央値は273例(38~4,736例)であった。100人・年当たりの心筋梗塞の発症率は、頸動脈雑音が聴取された症例(8試験)が3.69(95%信頼区間:2.97~5.40)であったのに対し、頸動脈雑音が聴取されなかった症例(2試験)は1.86(0.24~3.48)であった。年間の心血管死亡率も、頸動脈雑音のある症例(16試験)が、ない症例(4試験)よりも高かった[2.85(2.16~3.54)/100人・年 vs 1.11(0.45~1.76)/100人・年]。頸動脈雑音がある症例とない症例を直接的に比較した4つの試験では、心筋梗塞のオッズ比は2.15(1.67~2.78)、心血管死は2.27(1.49~3.49)であった。Pickett氏は、「頸動脈雑音が聴取される症例は心筋梗塞および心血管死のリスクが有意に増大していた」と結論し、「頸動脈雑音を聴診することにより、心疾患のリスクを有する患者のうち、心血管リスクに対する積極的な治療戦略が大きなベネフィットをもたらす可能性のある症例を選択できるかもしれない」と指摘している。(菅野守:医学ライター)

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同級生に影響力をもつ生徒の教室外での働きかけが、青少年の喫煙を抑制する

同級生に影響力をもつ生徒が教室外で友人に喫煙しないよう働きかける喫煙予防プログラムの有効性が確認された。青少年期の喫煙が中高年期における喫煙関連疾患への罹患、死亡をもたらすが、ニコチン依存症は青少年期に急速に確立されることを示すエビデンスがある。多くの国では学校が喫煙予防プログラムを行っているが、友人の働きかけによるアプローチの多くが教室内に限定されており、厳密な評価は少ないという。英国Bristol大学社会医学科のR Campbell氏がLancet誌2008年5月10日号で報告した。influential studentの働きかけによる喫煙抑制効果を評価研究グループは、中学校における喫煙予防を目的とした友人の働きかけによる介入の効果を評価するためにクラスター無作為化対照比較試験を実施した。対象は、イングランド/ウェールズの59校に通学する12~13歳の生徒1万730人。29校(5,372人)が通常の禁煙教育を継続する対照群に、30校(5,358人)が介入群に無作為に割り付けられた。介入法はASSIST(A Stop Smoking In Schools Trial)プログラムと呼ばれ、教室外での形式張らない交流の際に、友人が喫煙しないよう働きかける支援者として行動する生徒(influential student)を養成するものである。フォローアップは介入直後、1年後、2年後に実施した。ASSISTプログラムにより、喫煙率が22%低下対照群の学校に比べ、介入群の学校の生徒が喫煙者となるオッズ比は、介入直後(9,349人)が0.75(95%信頼区間:0.55~1.01)、フォローアップ1年後(9,147人)が0.77(0.59~0.99)、2年後(8,756人)が0.85(0.72~1.01)であった。高リスク群(ベースライン時に非習慣的喫煙者、試行的喫煙者、元喫煙者とされた群)のオッズ比は、介入直後(3,561人)が0.79(0.55~1.13)、フォローアップ1年後(3,483人)が0.75 (0.56~0.99)、2年後(3,294人が)0.85(0.70~1.02)であった。3回のフォローアップの全データを用いたマルチレベルモデルによる解析では、対照群の生徒に比べ介入群の生徒が喫煙者となるオッズ比は0.78(0.64~0.96)であり、介入群で22%低かった。Campbell氏は、「ASSISTプログラムを地域住民ベースで実施した場合、公衆衛生学的に重要な青少年の喫煙を低減できることが示唆された」と結論し、「このプログラムを毎年継続的に繰り返せば、学校全体の喫煙行動を取り巻く文化的規範に影響を及ぼし、介入の効果を増強する可能性がある」と指摘している。(菅野守:医学ライター)

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