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10061.

スピリーバの安全性プロファイルを再確認

ベーリンガーインゲルハイムとファイザーは、30件の厳格に管理された対照試験について新たな解析を行い、スピリーバ(チオトロピウム)の長期間に亘る安全性プロファイルが確認されたと発表した。この新たな広範な安全性に関するデータは、9月24日発行のJAMA(the Journal of the American Medical Association)に掲載されたSinghらによる論文でのチオトロピウムに対する見解とは相反する。一般的にCOPD(慢性閉塞性肺疾患)の患者は健常人に比べ高い心血管系リスクを持つことから、COPD治療薬においては心血管系領域の安全性が非常に重要な問題となる。そこで、これまでの30件、合計19,545名(チオトロピウム群10,846名; プラセボ群8,699名)のCOPD患者を対象としたプラセボ対照2重盲検無作為割付試験のデータをベーリンガーインゲルハイムが新たに解析した結果、死亡(あらゆる原因による)および心血管イベントに起因した死亡のいずれにおいても、チオトロピウム群で特にリスクの増加がみられないことが示されたという。詳細はプレスリリースへhttp://www.boehringer-ingelheim.co.jp/news/p-release/08_0925.html

10062.

アジア系医学生に落ちこぼれが多い理由

イギリスの医学生のうち約30%の出自は民族・人種的に白人以外の少数派で、彼ら少数派の医学生および医師に対する評価は、白人出自の者と比較して平均以下である。類似の報告はアメリカ、オーストラリアでも報告され、アメリカでは民族・人種的な「ステレオタイプの脅威」によるものと説明されている。この理論を当てはめることでイギリスにおいても、民族的に少数派の落ちこぼれ医学生の背景にある民族的なステレオタイプを調査する質的研究が、ロンドンの医学教育アカデミックセンターのKatherine Woolf氏らによって行われた。BMJ誌2008年8月18日号より。医学生とクリニカルティーチャーの意識を分析本研究は個人面談とフォーカスグループ(白人、インド人、パキスタン/バングラデシュ人)をデザインし分析した質的研究。分析対象は、ロンドンのメディカルスクールに籍を置く医学生(3年課程のmedical students、1年時に臨床講義)27人と、クリニカルティーチャー25人で、民族性と性別を考慮し選定された。収集されたデータは、ステレオタイプ脅威の理論(教育でネガティブな固定観念を抱かせることになっている心理現象)と不変な比較研究法を用いて分析された。「典型的なアジア系医学生」は本と向き合ってばかりいておとなしい参加者はいずれも、医学生とクリニカルティーチャーとの関係性が、臨床学習では重要であることを認識していた。その上で、クリニカルティーチャーは、「インタラクティブ」「熱心」「礼儀正しい」学生を「よい学生」と強く認識していた。何人かは、「おとなしい」「動機に乏しい」「無気力」な学生に対して攻撃的になると回答した。医学生は、「心強い」「面白い」「インタラクティブ」「攻撃的ではない」教師を「よい教師」であると強く認識していた。医学生とクリニカルティーチャーとは「典型的なアジア系医学生」の認識について一致しており、その医学生像ははっきりしていた。すなわち「本に過度に依存」「患者とのコミュニケーションが不得手」「臨床講義ではとてもおとなしい」「親のエゴが優先して医学の道に進んでいるため動機に乏しい」という見方である。「典型的な白人医学生」像は、「自律的」「自信に満ちている」「外向的なチームプレーヤー」であったが、完全にはステレオタイプ化されてはいなかった。Woolf氏は、「アジア系臨床学生は白人学生よりも、ステレオタイプ的に、かつ否定的に捉えられているようである。それがクリニカルティーチャーとの関係性を危うくし学習機会を減らすことになっているようだ」とし、「なかでもわずかなネガティブなステレオタイプの存在が、『ステレオタイプの脅威』となって少数派の学生の能力が劣っていると助長している可能性がある」と述べ、「クリニカルティーチャーは、個々人をよく知る機会と、ポジティブな教育的関係を促進する訓練を受けることが推奨される」とまとめている。

10063.

変形性膝関節症の治療に関節鏡視下手術を併用しても利益なし

変形性膝関節症の治療に関節鏡視下手術を併用することは広く行われているが、その有効性を支持するエビデンスは乏しい。カナダ・西オンタリオ大学のAlexandra Kirkley氏らは、中等度から重度の変形性膝関節症患者を対象に、関節鏡視下手術の単一施設無作為化比較試験を行った結果、「理学療法と薬物療法に関節鏡下手術を加えても、それによる利益は生じない」と報告した。JAMA誌2008年9月11日号より。理学・薬物療法との併用の有無で2年後に効果を比較患者は無作為に、理学療法と薬物療法および関節鏡下手術(外科的洗浄と壊死組織切除)の併用群(手術併用群)と、理学療法と薬物療法だけの対照群に割り付けた。主要転帰は、2年時点の追跡調査で測定したWestern Ontario and McMaster Universities Osteoarthritis Index(WOMAC)の合計スコアとした(range=0~2,400、高値ほど重症)。副次転帰はShort Form-36(SF-36)Physical Component Summaryスコア(range=0~100、高値ほど良好なQOL)とした。手術併用の優位性示されず手術に割り付けられた患者は92例。このうち6例は手術を受けなかった。比較対照群の86例は、全員が理学療法と薬物療法だけを受けた。2年時点のWOMACスコアの平均値(±SD)は、手術併用群は874±624だったが、対照群は897±583だった。手術併用群スコアから対照群スコアを差し引いた絶対差は-23±605だった(95%信頼区間:-208~161、ベースラインのスコアと重症度で補正した後のP = 0.22)。SF-36スコアは、手術併用群が37.0±11.4、対照群が37.2±10.6だった(絶対差:-0.2±11.1、95%信頼区間:-3.6~3.2、P = 0.93)。中間受診の際のWOMACスコアと他の副次転帰を分析しても、手術併用の優位性を示すことはできず、Kirkley氏は「変形性膝関節症に対して、関節鏡視下手術を理学療法と薬物療法に併用し行っても、付加的利益は示されなかった」と結論付けている。(武藤まき:医療ライター)

10064.

最近のMD/PhD選択者の特性と職業意識

MD/PhDプログラムの選択者は米国医学生全体からみればごく一部に過ぎないが、彼らは将来、医師の間で主要な役割を演じることが期待されている。米国・ワシントン大学医学部のDorothy A. Andriole氏らは、このMD/PhDプログラム選択者の特性と職業意識について、MDプログラム卒業生との比較調査を行った。JAMA誌2008年9月10日号より。米国医科大学卒業生8万8千人余りの調査データを分析最近の医科大学卒業生にとってMD/PhDプログラム選択に働く要因は何なのかを特定するため、Andriole氏らは2000年~2006年の米国医科大学卒業生8万8,575人分のサンプルデータを分析した。データは各大学共通で用いた調査用紙Association of American Medical Colleges Graduation Questionnaireからサンプリングした。学位取得プログラムの違いと結びついた卒業生の特徴やキャリアプランに関係する項目への回答を検証するため、多変量ロジスティック回帰分析を用いて変数ごとに補正オッズ比を示した。主要評価項目はMD/PhDプログラムによる学位取得。MD/PhDプログラム選択の動機は研究への関与、少ない就学負担など完全なデータが揃った7万9,104人(2000~2006年の卒業生の71.7%)の回答者のうち、1,833人(2.3%)がMD/PhDプログラムの卒業生だった。MD/PhDプログラム選択に、より強く関連する変数には次のようなものが含まれた。研究業務への深い関与(オッズ比:10.30)、就学負担(15万ドル以上と比較して10万~14万9,999ドル:1.85、5万~9万9,999ドル:5.50、1~4万9,999ドル:17.50、負債なし:17.41)、医学部奨学金または研究費の受領(3.22)などとなっている。内科学の修練と比較して、MD/PhD卒業生は皮膚科学、神経学、眼科学、病理学、小児科学または放射線学の修練と正の関連が見られた。MD/PhD選択とあまり関連しない変数としては、女性であること(オッズ比:0.68)、少数民族であること(0.64)、救急医学(0.58)、外科学(0.70)の修練(内科学と比べて)だった。これらの結果からAndriole氏は、MD/PhD卒業生はMDプログラムの卒業生と比較して、人種・民族的多様性がなく、就学負担を抑えること、専門分野への独特の嗜好があり、研究業務への関与に強い関心をもつ傾向があること、などを指摘している。(朝田哲明:医療ライター)

10065.

97%の医療機関がED診察に工夫、院内処方や問診票の活用でプライバシーに配慮

日本イーライリリー株式会社が行ったED診療に関する実態調査結果によると、96.9%の医療機関がED治療を受ける患者が受診しやすい環境づくりのため、プライバシーの配慮等に取り組んでいる実態が分かった。工夫のトップは「院内処方」、次いで「ED相談の希望を問診表でチェック」、「ED治療希望カードなどの設置」。来院理由を言い出しづらい患者でも、黙って意思表示ができるよう配慮している。また患者の年齢層の平均は33~73歳と、幅広い年代の人が受診している。本調査での最年少は16歳、最高齢は94歳だったという。 初診時の診察時間は、「10分以内」が66.0%を占め、主な診察項目は「問診」を中心に必要に応じて、「血圧測定」、「心電図」が行われていた。詳細はプレスリリースへhttp://www.lilly.co.jp/CACHE/news_2008_27.cfm

10066.

アリスキレン、肥満の高血圧患者において利尿剤よりも有意な降圧効果を示す

ノバルティス ファーマ株式会社は、新しいクラスの直接的レニン阻害剤(Direct Renin Inhibitor:DRI)アリスキレン(製品名:米国ではTekturna、それ以外ではRasilez)が、肥満の高血圧患者において、利尿剤ヒドロクロロチアジド(HCT)単独よりも有意に血圧を低下させることが確認されたと発表した。2008年度欧州心臓病学会(ESC: European Society of Cardiology)で発表された事後解析では、アリスキレン300mgを単独で使用した場合、座位収縮期血圧が平均で16.7mmHg低下したということが示された。これに対し、HCTによる座位収縮期血圧の低下は平均で12.2mmHgだった。また、拡張期血圧の低下については、HCTの9.1mmHgに対してアリスキレンは12.3mmHgだった(p

10067.

身体活動が高齢者の認知機能低下を改善する

身体活動が認知機能低下のリスクを低減することは、多くの観察研究が示しているところだが、エビデンス(無作為試験に基づく)は十分ではない。オーストラリア・メルボルン大学のNicola T. Lautenschlager氏らが、1つのエビデンスとなる研究成果を報告した。JAMA誌2008年9月3日号より。24週間にわたる身体活動プログラムの効果を測定本研究はオーストラリア西部の大都市パースにおいて、2004~2007年にかけて実施された。自ら記憶に問題があると申し出たが、認知症の基準は満たさない50歳以上の被験者311例に対して、試験適格のスクリーニングを行い、170例を(不適格89例と辞退52例を除いた)、24週間にわたって教育・通常ケアを受ける群と、在宅の身体運動プログラムを受ける群に無作為に割り付けた。このうち138例が18ヵ月間の評価を終了。評価にあたって認知機能の査定担当者が、被験者集団の構成員が特定できないよう配慮された。主要評価項目は、「アルツハイマー型認知症評価尺度」の変化と、18ヵ月後の「認知度Subscale(ADAS-Cog)」のスコア(possible range:0~70)とした。通常ケア群の認知度が悪化したのに介入群では改善ITT解析(包括解析)の結果、介入終了時点のADAS-Cogスコアは、介入群では0.26ポイント(95%信頼区間:-0.89~0.54)改善したが、通常ケア群は逆に1.04ポイント(0.32~1.82)悪化。介入群と対照群の間の転帰尺度の絶対差は、-1.3ポイント(-2.38~-0.22)だった。18ヵ月後のADAS-Cogスコアは、介入群では0.73ポイント(-1.27~0.03)、通常ケア群は0.04ポイント(-0.46~0.88)改善した。「単語の思い出し遅延度」と「臨床的認知症尺度」の合計指標はわずかに改善されたが、「単語を完全にすぐに思い出せる」「計数コードの正確性」「流暢に話せる」、またベックのうつ評価スコア、SF-36(Medical Outcomes 36-Item Short-Form)評価尺度による身体面・精神面には、有意な変化は見られなかった。これらを踏まえてLautenschlager氏らは「記憶障害の自覚がある年配者を対象とした本研究では、6ヵ月間の身体活動プログラムは、18ヵ月間の追跡調査期間中、適度な認知改善効果を提供した」と結論している。(朝田哲明:医療ライター)

10068.

国産初、カプセル内視鏡の製造販売承認を取得

オリンパスメディカルシステムズ株式会社は、日本メーカー初となる小腸用「オリンパスカプセル内視鏡システム(愛称:Endo Capsule)」について、厚生労働省から日本での製造販売承認を2008年9月8日に取得したと発表した。カプセル(外径11mm、長さ26mm)に高解像度CCD、自動調光機能を搭載し、内視鏡メーカーならではの通常内視鏡に匹敵する高画質を実現したという。詳細はプレスリリースへhttp://www.olympus.co.jp/jp/news/2008b/nr080910capsulej.cfm

10069.

低・中所得国の心血管疾患対策に母子栄養改善を

妊婦および幼児への公衆衛生プログラムに加えて栄養補助介入が、栄養不足集団での心血管疾患リスクを低減するかどうか。Hygiene and Tropical Medicineロンドン学校のSanjay Kinraらによる長期追跡調査の結果、「母子栄養改善策は、低・中所得国の心血管疾患に対する負担軽減対策として有効のようだ」と報告された。BMJ誌2008年7月25日号より。南インド29村対象に約15年、長期追跡調査インド南部のハイデラバード市近郊の29村を対象に、約15年にわたる長期追跡調査が行われた。対象はコミュニティ単位で比較され、介入群15村、対照群14村。参加者は13~18歳の若者1,165例。介入群には、公衆衛生プログラムに加えて、妊婦と6歳以下の就学前児童に連日、プロテインとカロリーを補助するサプリメント(2.51 MJ, 20 g protein)が与えられた。主要転帰は、身長、肥満度、血圧、脂質、インスリン抵抗性(HOMAスコア)、動脈硬化(増加インデックス)。インスリン抵抗性と動脈硬化の値で良好な結果介入村のほうが対照村より身長が14mm高かった(95%信頼区間:4~23、P=0.007)が、体質的に差異はなかった。介入村ではインスリン抵抗性と動脈硬化の値でより良好な結果が得られた。HOMAスコアで20%低く(3%~39%、P=0.02)、動脈硬化の増加インデックスは3.3%(1%~5.7%、P=0.008)低かった。血圧と脂質では確たるエビデンスは得られなかった。Kinra氏は、「この栄養不足集団において、妊婦と幼児への他の公衆衛生プログラムに加えての補足的な栄養供給は、青年期における心血管疾患リスク因子へより良好な影響を及ぼしていた。今のところ、本研究と同様の研究報告は見あたらず、本仮説が最も強いエビデンスを提供するものである。母子栄養改善は、低・中所得国における心血管疾患の負担軽減策となりうる可能性がある」と結論している。

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欧州心臓病学会にて大規模臨床試験「TRANSCEND」発表される

日本ベーリンガーインゲルハイム株式会社は、欧州心臓病学会(European Society of Cardiology: ESC)において高血圧治療薬ミカルディス(テルミサルタン)のアウトカム試験TRANSCENDの結果が報告され、ミカルディス群はプラセボ群と比較して、心血管イベント高リスク患者での心血管死、心筋梗塞、脳卒中発症リスクの抑制効果が13%高いことが証明されたと発表した。TRANSCEND(Telmisartan Randomised AssessmeNt Study in ACE-iNtolerant subjects with cardiovascular Disease)は、ONTARGET試験に並行して実施された試験で、ACE阻害薬に忍容性の認められない心血管イベント高リスク患者5,926人(40ヵ国)を対象に、ミカルディス群のプラセボ群に対する心血管イベント抑制効果および忍容性を検討したもの。抗血小板薬、スタチンなどの標準的治療が施された上に、ミカルディスまたはプラセボ群ともにRAS抑制薬以外の降圧薬の併用が認められていたことも、試験の特徴として挙げられる。詳細はプレスリリースへhttp://www.boehringer-ingelheim.co.jp/news/p-release/08_0902.html

10071.

チロフィバンの入院前投与はPCI後のSTEMIの臨床転帰を改善するか:On-TIME 2

血小板糖蛋白IIb/IIIa受容体拮抗薬チロフィバンの入院前高用量急速静注投与により、ST上昇型心筋梗塞(STEMI)に対するPCI施行後の臨床転帰が改善することが、ヨーロッパで行われたプラセボ対照無作為化試験(On-TIME 2)で明らかとなった。PCIが適用となる急性のSTEMIでは、抗血小板療法の最も効果的な強度およびタイミングが重要とされ、さまざまな治療アプローチの評価が進められている。オランダIsala Klinieken循環器科のArnoud W J van't Hof氏らによる報告で、Lancet誌2008年8月16日号に掲載された。入院前の標準的抗血栓療法+チロフィバンの効果を評価On-TIME(Ongoing Tirofiban in Myocardial Evaluation)2試験は、2006年6月29日~2007年11月13日にオランダ、ドイツ、ベルギーの24施設で実施された二重盲検プラセボ対照無作為化試験で、救急あるいは心臓病センターへの初回搬送時の早期チロフィバン投与が、PCI施行後の転帰を改善するか否かを評価した。PCIの候補となったSTEMI患者984例が、標準治療(アスピリン500mg+ヘパリン5,000IU+クロピドグレル600mg)に高用量急速静注チロフィバン(25μg/kgを急速静注後、0.15μg/kg/分を18時間点滴静注)を追加する群(491例)あるいはプラセボを投与する群(493例)に無作為に割り付けられた。主要評価項目はPCI施行後1時間のST値の変化とした。標準治療よりもさらに強力な抗血小板療法の必要性が明らかに入院前のMI診断後に各治療群に割り付けられたのは936例(95%)で、発症から診断までの所要時間は75分(中央値)であった。平均ST間部偏位は、PCI前がチロフィバン群10.9mm(SD 9.2)、プラセボ群12.1mm(SD 9.4)(p=0.028)、PCI施行後1時間ではそれぞれ3.6mm(SD 4.6)、4.8mm(SD 6.3)(p=0.003)であり、チロフィバン群で有意な改善効果が確認された。大出血の発生率は両群間に有意な差は認めなかった(4% vs. 3%、p=0.36)。著者は、「ルーチンの入院前高用量急速静注チロフィバン投与は、PCI施行後のST回復を改善する」と結論し、「今回の知見により、PCIが適用となるSTEMIに対しては、高用量クロピドグレルに加えさらなる血小板凝集阻害療法を実施すべきであることが明確となった」と指摘している。(菅野守:医学ライター)

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安定冠動脈疾患患者へのPCI追加によるQOL改善効力は3年

慢性冠動脈疾患の治療法に関する臨床試験「COURAGE」では、最適薬物療法に経皮的冠動脈介入(PCI)を加えても、死亡率や心筋梗塞発生率の改善につながらなかった。しかし、最適薬物療法+PCIがQOLを改善できるかどうかを検証していた、同試験メンバーのWilliam S. Weintraub氏(米国・Christiana Care Health System)らは、「PCI追加によって、治療初期にはよりQOLが改善されるが、3年後には差がなくなる」と報告した。NEJM誌2008年8月14日号より。2,287例を薬物単独群とPCI追加群に割り付け慢性冠動脈疾患患者2,287例を無作為に、PCI+最適薬物療法群(PCI群)と最適薬物療法単独群(薬物療法群)に割り付けた。狭心症に特有の健康状態の評価は「Seattle Angina Questionnaire」(SAQ;0~100のスコアが高いほど良好な健康状態を示す)を用いて、また全般的な身体・精神機能は「RAND-36=36項目健康調査」によって評価した。24ヵ月までなら重症者ほどPCIの利点が大きいベースラインで狭心症の認められなかった患者は22%だが、3ヵ月後にはPCI群で53%、薬物療法群で42%となった(P

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心的外傷を負ったインドネシアの小児に対する精神保健介入

武力紛争に巻き込まれた中・低所得層の児童に対する、精神保健面の介入の有効性は明らかではない。貧困と不安定な政治状況では、対処は困難である。宗教紛争で住民に多数の犠牲者が出たインドネシア・ポソ県で活動するオランダのNGO「Health Net TPO」のWietse A. Tol氏らは、紛争で心的外傷を負った小児のために、学校ベースの介入を試み、その成果を報告した。JAMA誌2008年8月13日号より。405例にグループ介入を行い、待機群と成果を比較被験者は、同県で紛争が起きた地域から無作為に選んだ学校に通う平均年齢9.9歳(標準偏差:1.3)の小児で、心的外傷後ストレス障害(PTSD)と不安障害を露呈している495例(包含率81.4%)。学校ベースのグループ介入は、5週間にわたる15セッションで、心的外傷に対応する行動や共同での遊び、創造的で表現力に富む構成要素を含んでおり、地元で訓練された助手によって行われた。介入は2006年3~12月に行われ、介入の1週間後と6ヵ月後に、非盲検法で治療の成果を比較。精神医学的症状は「Child Posttraumatic Stress Scale」と「Depression Self-Rating Scale」および「Self-Report for Anxiety Related Disorders 第5版」「Children's Hope Scale」などに基づいて評価した。PTSDは改善したが抑うつ症状には効果なし治療群は待機群より、PTSDの症状が有意に改善されていた(平均変化差:2.78、95%信頼区間:1.02~4.53)ほか、待機群より、希望を持ち続けることも認められた(-2.21、-3.52~-0.91)。しかし、ストレスに起因する身体症状の変化(0.50、-0.12~1.11)、抑うつ症状(0.70、-0.08~1.49)、不安障害(0.12、-0.31~0.56)、機能障害(0.52、-0.43~1.46)などには、治療群と待機群に有意な差異は認められなかった。紛争の影響にさらされた小児に対して、学校ベースの介入はPTSDを減らし、希望を持ち続けられるようになるなど一定の効果は認められた。しかし、抑うつ症状や不安症状、機能障害などには改善が認められなかったと結論している。(朝田哲明:医療ライター)

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うつ病やPTSDが深刻なネパールの元少年兵

戦争や武力紛争で、戦闘への参加を強いられた少年兵経験者には、特別の精神保健的な介入が必要とされるが、徴兵されなかった一般の少年との精神保健面の違いに関する研究は十分ではない。エモリー大学(米国・ジョージア州アトランタ市)のBrandon A. Kohrt氏らはネパールにおける調査の結果、「元少年兵の精神保健面の問題は、徴兵されなかった少年に比べて、より重症である」と報告した。JAMA誌2008年8月13日号より。少年兵と徴兵未経験者を141例ずつ選定し比較ネパールで2007年3月から4月にかけて、元少年兵と徴兵されなかった少年をそれぞれ141例選定し、年齢、性別、教育水準、民族性を合わせた横断的コホート研究を行い、精神保健面を比較した。主要評価項目は、うつ病症状は「Depression Self Rating Scale」、不安障害は「Screen for Child Anxiety Related Emotional Disorders」、心的外傷後ストレス障害(PTSD)の症状は「Child PTSD Symptom Scale」、一般的な心理的障害は「Strength and Difficulties Questionnaire」、日常的動作は「Function Impairment tool」、心的外傷要因への曝露は、情動障害と統合失調症に関する「PTSD Traumatic Event Checklist of the Kiddie Schedule」で評価した。PTSDは男子よりも女子で深刻研究参加時の平均年齢は15.75歳、少年兵徴用時の年齢は5歳~16歳だった。すべての参加者に、少なくとも1種類の心的外傷があった。元少年兵の症状別では、うつ病が75例(53.2%)、不安障害が65例(46.1%)、PTSDが78例(55.3%)、心理的障害が55例(39.0%)、機能障害が88例(62.4%)だった。心的外傷要因への曝露および他の要素で補正すると、うつ病(オッズ比:2.41、95%信頼区間:1.31~4.44)、PTSD(女子)(6.80、2.16~21.58)、PTSD(男子)(3.81、1.06~13.73)に有意な関連が認められた。一般的な心理的障害(2.08、0.86~5.02)、不安(1.63、0.77~3.45)、機能障害(1.34、0.84~2.14)との関連は有意ではなかった。Kohrt氏は「ネパールの元少年兵は、徴兵されなかった少年と比べて精神衛生的な問題はより重症で、うつ病とPTSD(特に女子)の形で心に焼きついている」と結論している。(朝田哲明:医療ライター)

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熱性けいれん児の長期的死亡率の実態とは

熱性けいれんをきたした小児では、長期的な死亡率は上昇しないが複合型熱性けいれん発症後は一時的に死亡率が上がることが、デンマークで実施された長期にわたる大規模なコホート研究で明らかとなった。熱性けいれんは5歳未満の小児の2~5%にみられる。神経学的な疾患が基盤にあるてんかん児では発症頻度が高いとされるが、死亡率などの詳細はほとんど知られていないという。Aarhus大学公衆衛生研究所総合診療科のMogens Vestergaard氏が、Lancet誌2008年8月9日号で報告した。フォローアップ期間28年の地域住民ベースの大規模コホート研究研究グループは、1977年1月1日~2004年12月31日にデンマークで誕生した167万5,643人の小児を同定し、全国的な市民サービス、健康、死亡原因登録の情報との関連づけを行った。対象となった小児は、生後3ヵ月から死亡、海外への転出もしくは2005年8月31日までフォローアップされた。生存分析では、初回熱性けいれん発症後の全体の死亡率および死因別死亡率が推算された。さらに、コホート内でのnested case-control studyを実施し、死亡した小児(8,172人)とこれらの死亡児とマッチさせた対照群(4万860人)の熱性けいれんおよび神経学的異常に関する診療記録情報の検索を行った。熱性けいれん後の死亡はきわめてまれなことを告げて、両親を安心させるべきフォローアップ期間中に8,172人が死亡した。このうち232人が熱性けいれんの既往歴を有しており、既往歴のある小児の総数は5万5,215人であった。熱性けいれんの既往歴のない小児との比較において、初回熱性けいれん発症後の死亡率の比は1年目に80%増加し(補正死亡率比:1.80、95%信頼区間:1.31~2.40)、2年目は89%増加したが(1.89、1.27~2.70)、その後は一般人口集団と同等の値に近づいた。熱性けいれんの既往歴のない小児10万人当たりの死亡率が67人(95%信頼区間:57~76人)であったのに対し、既往歴のある小児では132人(102~163人)であった。nested case-control studyでは、単純型(発作持続時間≦15分、かつ24時間以内の再発なし)の熱性けいれん児の死亡率は対照群と類似していた(補正死亡率比:1.09、95%信頼区間:0.72~1.64)のに対し、複合型(発作持続時間>15分もしくは24時間以内の再発あり)の熱性けいれん児の死亡率は対照群に比べ有意に上昇していた(1.99、1.24~3.21)。これらの知見は、既存の神経学的異常やそれに続発するてんかんによって部分的に説明可能であった。著者は、「熱性けいれんをきたした小児では、長期的な死亡率が上昇することはなかったが、複合型熱性けいれんでは発症後2年間、一時的な上昇が見られた」と結論し、「両親は一般に、初回熱性けいれんを発症中の子どもは死に瀕していると考え、2度目の発作時にはそのまま死亡するのではないかとの恐怖に苛まれる。今回の知見に基づき、熱性けいれん後の死亡はきわめてまれなこと、高リスクの小児でさえ滅多に死亡しないことを告げて、両親を安心させるべきである」と指摘している。(菅野守:医学ライター)

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広範囲薬剤耐性結核には包括的治療が有効

すべての抗菌剤が効かないとされる広範囲薬剤耐性結核(XDR-TB)は、資源に乏しく結核に悩まされている国など世界45ヵ国で報告されている。そのうちの一つ、ペルーにおける広範囲薬剤耐性結核患者に対する外来治療による管理と転帰を調査した米国・ハーバード大学医学部のCarole D. Mitnick氏らは、4~7剤併用と包括的な外来治療が有効であることを報告した。NEJM誌2008年8月7日号より。個別の包括的治療を受けた患者810例を調査1999年2月1日~2002年7月31日にかけてペルーの首都リマで、個別的な外来治療を受けた患者計810例を後ろ向きに調査した。患者たちは、薬物療法、手術、有害事象管理と栄養指導、心理・社会的サポートを含む無料の包括的な治療を紹介された。患者のうち651例から分離株を得て、広範囲薬剤耐性結核の検査を行い、耐性を示さなかった5つ以上の薬剤を含む投薬計画が作成された。管理下の包括治療で6割以上が治療完了か治癒検査の結果、651例中48例(7.4%)が広範囲薬剤耐性結核で、残る603例は多剤耐性結核だった。広範囲薬剤耐性結核の患者は、他の患者より多くの治療を受けていた(投薬計画数の平均値[±SD]:4.2±1.9対3.2±1.6、P

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近年の婦人科がん医療の進歩:最近の学会報告から がん医療セミナー 「もっと知って欲しい女性のがん」より

 2008年8月10日、NP法人キャンサーネットジャパン、NPO法人ブーゲンビリア、卵巣がん体験者の会スマイリー、NPO法人女性特有のガンサポートグループオレンジティの4団体が主催する婦人科腫瘍啓発セミナーが開催された。セミナーでの、埼玉医大国際医療センター包括的がんセンター婦人腫瘍科、藤原恵一氏の講演の様子をレポートする。主な婦人科腫瘍とそれぞれの進行がん標準治療 婦人科の主な癌種は子宮頸がん、子宮体がん、卵巣がんである。これら3種の進行がん標準治療は概ね下記のようになる。・子宮頸がん:プラチナ製剤ベースの化学療法(CDDP)同時放射線療法・子宮体がん:術後放射線療法・卵巣がん:減量手術後化学療法 パクリタキセル(PTX)+カルボプラチン(CBDCA) 進行度別にみると、子宮頸がん・体がんでは早期例が多く0期からII期が半数以上である。特に頸がんでは0期が40%以上を占める。一方、卵巣がんでは進行例が多くIII期からIV期が半数以上を占める。卵巣がんの予後と治療 卵巣がんは予てから死亡率が高く予後が悪いといわれている。その言葉が示すとおり、卵巣がん(約7000人)罹患数は子宮がん(約18000人)の半分以下であるが、死亡数はほぼ同等である(子宮がん5500人に対し卵巣がん4400人)。その理由は、卵巣がんの進行例の割合が多いため(卵巣がんはIII~IV期が70%、子宮がんでは0期~I期が70%)だと考えられる。 進行卵巣がんはインオペ例とされていたが、1980年のCDDP登場、その後のタキサン系薬剤の登場で生存率は改善し、現在CBDCA+PTXが標準療法となっている。だが、その後は有効率の向上を目指し標準治療への抗がん剤のアドオン試験が行われたが予後改善をもたらすにはいたっていない。卵巣がんの治療の今後 そのような中、有効率の改善を目指すべく幾つかの研究が行われている。投与法も研究され、プラチナ製剤の腹腔内投与の有効性が米国NCI(National Institute of Cancer)が推奨されている。そして、2008年、日本発のエポックメイキングな研究がASCO2008で発表された。これは、医師主導治験JGOG3016で、PTX毎週投与の有効性試験有効性が立証された。今後、保健適応取得に向け行政への働きかけが重要となる。 さらに、分子標的治療薬の有効性も検討されており、医師主導の治験で、ベバシズマブの有効性研究も進行中である(GOG218)。 一方、ドラッグラグの問題も以前残っている。ドキシル(リボゾーマドキソルビシン)は世界80カ国で承認され、標準治療無効例における2ndライン薬剤として期待されておる。しかし、日本では以前未承認であり、現在自費投与1回あたり30~40万/回の金銭的負荷がかかる。子宮頸がんの治療 子宮頸がんは0期が多く、この段階で発見できれば多くの患者さんが助かることになる。 そのためには、まず、検診の普及が非常に重要である。実際、検査の普及率が高い国では子宮頸がんの死亡率は低いが、日本の検診普及率は22%であり後進国並みといえる。そのためか、日本では若年層での罹患数が増加しているという問題もある。 子宮がんの治療は、プラチナ製剤の化学療法(CDDP単独またはCDDP+5FU)と放射線治療同時併用が標準治療である。しかし、本邦での普及は依然高いとはいえない。今後の課題として日本人のCDDP適正ドーズの設定、ガイドラインでの積極的取り上げなど一層の普及が急がれる。子宮頸がんの治療の今後 そして、近年のトピックとして子宮頸がんにおけるHPV(ヒトパピローマウイルス)の関与があげられる。HPVは子宮頸がん患者の大部分が感染しており、確率こそ非常に少ないが子宮頸がんの発症因子である。そのため、HPVワクチンがHPVの感染予防および前がん病変への移行を防止するとして多大な効果が期待できる。現在、米国、オーストラリアをはじめ多くの国で承認されており日本でも早期の承認が望まれる。日本の婦人科腫瘍治療 日本の婦人科がんの取り組みは欧米に比べ遅れている。そこに昨今の婦人科医師不足が重なり、婦人科腫瘍の診療は大変な状況である。 婦人科腫瘍の場合、そのような状況下であっても製薬メーカーの協力を仰がず医師主導治験をしている例は多い。医師主導治験に携わる医師は診療後に何ら報酬もない中、ボランティアで協力している。しかしながら、医師主導治験を国に認めさせるシステムがなく、今後は医師主導治験で行政を動かしてゆく手法を検討する必要がある。 また、ドラックラグについても大きな問題である。ドキシルのように海外で実績があるのに日本では未承認という薬剤は多い。副作用発現などのリスクから優先審査への動き鈍ることも一つの要因であるが、一番の被害者は患者さんであることを忘れて欲しくない。この点については、マスメディアの取り上げ方が大きな影響を及ぼすため、正確な情報提供をお願いしたいと考える。

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米国では2006年に5万6,300人がHIV感染

米国疾病管理予防センター(CDC)は、米国内のヒト免疫不全ウイルス(HIV)感染状況が予想をはるかに上回り、2006年には5万6,300人が新規に感染したうえ、HIV陽性者は累計123万人に達していると公表した。CDCのH. Irene Hall氏らがまとめた新たな手法による推計報告が、JAMA誌2008年8月6日号に掲載された。22州の患者から血清を採取し感染の新旧確認米国におけるHIV発生状況はこれまで、直接的な方法では測定されなかったが、CDCは、新規感染と長期感染を区別する最新の分析法を導入し、HIV発生の推計を改善した。まず22州で、2006年に新たにHIVと診断された13歳以上の患者から、残遺物診断用血清標本(Remnant diagnostic serum specimens)を採取して、BED法(BED HIV-1 capture enzyme immunoassay)で感染の新旧を検査。同年における22州の発生率をテスト頻度で補正した統計的手法で、全米のHIV発生状態を推定した。さらに、1977~2006年の間に40州で診断されたHIV発生状況と、50州およびワシントンD.C.のAIDS発生率から逆算して、その結果を補強した。依然として新規感染者は黒人と男性同性愛者に集中2006年にHIVと診断されたのは22州で約3万9,400例。そのうち6,864例をBED法で検査した結果、2,133例(31%)は最近の感染と分類された。これらのデータに基づき、同年の全米の推定新規感染者数は5万6,300例(95%信頼区間:4万8200~6万4500)に達し、推定罹患率は人口10万当たり22.8(95%信頼区間:19.5~26.1)と推計されている。人種・民族別感染者数では45%が黒人で、全体の53%は男性同性愛者だった。2003~2006年の年間新規感染者の推計5万5,400例(95%信頼区間:5万~6万800)から逆算した2006年末のHIV/AIDS患者は123万例だった。HIV発生率は1990年代半ば以降増加を続け、1999年以後はわずかに低下したが、その後は横ばいであることもわかった。CDCは、米国のHIV発生状況に関して、以前は臨床ベースの設定に頼る実験室的手法しかなかったが、新たな手法によって初めて直接的な推定が可能になったとし、その結果を踏まえ「米国の新規HIV感染は、依然として男性同性愛者と黒人に集中している」と警告している。(朝田哲明:医療ライター)

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ウガンダの最近のHIV感染症の危険因子

ヒト免疫不全ウイルス(HIV)罹患に関連する因子の研究は、しばしば新規感染を反映しない有病率データに基づいている可能性がある。そこで、ウガンダで活動する米国Global AIDS ProgramのJonathan Mermin氏らが、新規HIV感染をめぐるリスク因子の調査を行った。JAMA誌2008年8月6日号掲載より。ウガンダ人男女2万人余りに質問と血液検査2004年8月から2005年1月にかけて、ウガンダ全土で家庭調査を実施。データ分析は2007年11月まで行われた。調査対象は15~59歳の女性1万1,454例、男性9,905例で、このうち女性1万826例(95%)、男性8,830例(89%)が質問表に回答。血液標本は女性1万227例(94%)、男性8298例(94%)から採取された。HIV検体の血清陽性は、最近の抗体陽転(中央値:155日)を確認するために、BED IgG法(BED IgG capture-based enzyme immunosorbent assay)で検査した。HIV感染リスクが高い未亡人、離婚者、割礼経験者その結果、HIV陽性は1,023例で、そのうち172例(17%)が新規感染だった。多変量解析による新規HIV感染を伴うリスク因子とし、女性、未亡人・離婚者、ウガンダ中北部、前年の性交渉の人数、単純ヘルペスウイルス2型感染有り、前年に性病感染有り、男子割礼有りが含まれた。オッズ比は以下の通り。女性:2.4(対男性)、未亡人:6.1(対未婚者)、離婚者:3.0(対未婚者)、中北部ウガンダ:2.6(対中部ウガンダ・カンパラ)、前年の性交渉2人以上:2.9(対ゼロ)、単純ヘルペスウイルス2型感染症有り:3.9(対無し)、前年に性病感染有り:1.7(対無し)、男子割礼有り:2.5(対無し)。既婚者の新規HIV感染は、結婚相手以外とコンドームなしで性交渉することに関係していた[オッズ比3.2(対結婚相手とのみ性交渉した場合)]。結婚相手以外とコンドームを使って性交渉していた場合は、結婚相手とのみ性交渉した場合のリスクと同等(オッズ比1.0)。Mermin氏は「これらリスク因子が、感染予防のイニシアティブとなる」と結論している。(朝田哲明:医療ライター)

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高齢者の肺炎に対するインフルエンザワクチンの効果は予想よりも低い

インフルエンザ流行時期の高齢者肺炎に対するインフルエンザワクチンの効果は予想よりも低い可能性があることが、地域住民をベースとした調査で明らかとなった。肺炎は高齢者のインフルエンザ感染における最も頻度の高い合併症であり、それゆえインフルエンザワクチンは肺炎の予防に有効な可能性がある。しかし、これまでに報告されたワクチンの有効性を示唆する検討には根本的なバイアスが含まれるため信頼性は高くないという。米国シアトル市のGroup Health Center for Health StudiesのMichael L Jackson氏が、Lancet誌2008年8月2日号で報告した。ワシントン州西部の地域住民をベースとしたnested case-control study本研究は、2000年、2001年、2002年のインフルエンザ流行前および流行時期に、ワシントン州西部の健康維持組織である“Group Health”に登録された65~94歳の免疫応答が正常な高齢者を対象に実施された地域住民ベースのnested case-control studyである。症例は市中肺炎で外来通院中あるいは入院中の患者(診療記録あるいは胸部X線所見で確定)とし、それぞれの症例群に対し年齢および性別をマッチさせた2つの対照群を無作為に選択した。診療記録を評価して、交絡因子として喫煙歴、肺疾患および心疾患への罹患とその重症度などを規定した。ワクチンは高齢者の市中肺炎のリスクを低減させない1,173例の市中肺炎症例および2,346人の対照が登録された。診療記録審査に基づいて規定された併存疾患の存在および重症度で補正したところ、インフルエンザ流行期間中にインフルエンザワクチンを接種しても、高齢者の市中肺炎のリスクは低減しないことが示された(オッズ比:0.92、95%信頼区間:0.77~1.10)。著者は、「インフルエンザ流行時期の高齢者肺炎に対するインフルエンザワクチンの効果は予想よりも低い可能性がある」と結論したうえで、1)インフルエンザ感染を原因とする高齢者の肺炎はわずかであり、そのため感染リスクを低減しても肺炎は減少しない、あるいは2)ワクチンは、肺炎のリスクを有する高齢者におけるインフルエンザ感染リスクの低減にはそれほど有効ではないという2つの可能性を示唆し、「これらの可能性はワクチン開発およびその接種勧告においてまったく異なる意義を持つことから、基礎研究で確定されたエンドポイントを用いた臨床試験を行う必要がある」と指摘している。(菅野守:医学ライター)

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