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イギリスの病院データ(HES)は先天性心疾患術後30日死亡率の評価には不十分

イギリスのhospital episode statistics(HES)は、病院の活動、死亡率などを施設間で比較する際に用いられる統計データであるが、その信頼性は疑問視されてきた。オックスフォードRadcliffe病院心臓外科のStephen Westaby氏らは、子どもの先天性心疾患開胸手術後の30日死亡率の解析におけるHESの有用性を、先天性心疾患監査データベース(CCAD)の情報との比較において検証した。BMJ誌9月20日付オンライン版、10月13日付本誌掲載の報告。HESとCCADのデータを用い、先天性心疾患開胸手術後30日死亡率を比較2000年4月1日~2002年3月31日までの先天性心疾患開胸手術に関するHESのデータとCCADの関連データについて解析した。HESには11施設のデータが、CCADにはイギリスの全施設(13施設)のデータが含まれた。主要評価項目は、生後1年未満の先天性心疾患患児に対する開胸手術後の30日死亡率とした。HES、CCADの双方に30日死亡率の過少評価がHES、CCADの双方にデータがある11施設のデータを直接比較したところ、HESには各施設で5~38%の手術記録の記載漏れがあることがわかった。また、HESには死亡確認記録の不足が中央値で40%(0~73%)も生じていた。平均30日死亡率は、HESでは4%過少評価され、CCADでは8%過少評価されていた。CCADでは、比較に用いられた11施設中9施設で患者アウトカムの1~23%が見逃されていた(ほとんどが海外からの患児)。結果的には、CCADにも過少評価が生じていた。HESは先天性心疾患手術を評価する情報源として不十分Westaby氏は、「HESは、先天性心疾患手術の施行状況やアウトカム評価の情報源としては不十分である。CCADのほうが正確で完成度が高かったが、リスクを層別化した包括的な死亡率データを実現するにはさらなる検討が必要である」と結論している。同氏は、「データの質に問題があるので、一般に公開されている個々の施設や外科医個人の死亡率データを再検討すべきだ」と指摘している。(菅野 守:医学ライター)

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「2015年までに妊産婦死亡率を1990年の1/4に」は達成できるのか

 妊産婦の死亡はほとんどが回避可能であり、それゆえ国連のミレニアム開発目標(Millennium Development Goals; MDGs、http://www.undp.or.jp/aboutundp/mdg/)のターゲットのひとつとなっている。これは、2015年までに妊産婦の死亡率を1990年の1/4に減少させるというものだが、データの脆弱性のため進捗状況のモニタリングに問題が起きているという。 2006年、評価法の改善を推進するために新たなワーキンググループが設立され、2005年度の妊産婦死亡率を改めて推計し、1990年以降のトレンドの解析を行った。Harvard Center for Population and Development Studies(アメリカ、ケンブリッジ市)のKenneth Hill氏が10月13日付Lancet誌上で報告した。さまざまな方法を開発して解析Hill氏らは、対象となる国を利用可能なデータのタイプ別に8つのカテゴリーに分けて個々に解析を行うなどさまざまな方法を開発し、これらを用いて同一カテゴリーの国や地域レベル、およびグローバルなレベルで2005年度の妊産婦死亡率を算出し、1990~2005年のトレンドを評価した。妊産婦死亡のほとんどがサハラ以南のアフリカ、アジアに集中2005年度の世界の妊産婦死亡数は545,900人、妊産婦死亡率は10万出生あたり402人であった。そのほとんどが、サハラ以南のアフリカ(270,500人、約50%)およびアジア(240,600人、約45%)に集中していた。1990年から2005年にかけて妊産婦死亡率は年平均2.5%減少(p<0.0001)していたが、サハラ以南のアフリカでは有意な減少は認めなかった。MDGターゲットの達成には開発途上地域の妊娠/分娩医療の改善が急務Hill氏によれば、MDGのターゲット「2015年までに妊産婦の死亡率を1990年の1/4に減少させる」の達成に要する妊産婦死亡率の低下率は年平均5.5%であり、現在の2.5%のままでは不可能という。同氏は、「1990年以降、妊産婦死亡数の減少にある程度の進展がみられた地域もあるが、サハラ以南のアフリカの死亡率は高いままであり、過去15年間に改善のエビデンスはほとんどない」と指摘し、「MDGターゲットの実現には、開発途上地域の妊娠/分娩医療の改善に重点を置いた持続的な施策が急務である」と強調している。(菅野 守:医学ライター)

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小児喘息リスクは新生児期の細菌定着で増加する

小児喘息では一般に先行して、繰り返す喘息様症状=喘鳴(recurrent wheeze)がみられる。デンマーク・コペンハーゲン大学のHans Bisgaard氏らは、重度の繰り返す喘鳴を呈する幼児の気道に病理学的にみられる細菌定着と、喘息の起因との関連を示唆してきた。その関連を明らかにするスタディを実施。NEJM誌10月11日号に結果が報告された。無症候の新生児下咽頭からの吸引液を培養し5歳児までモニタリング検証が行われたのは、無症候の新生児の下咽頭の細菌定着と、5歳時までの喘鳴・喘息・アレルギー発現との関連。喘息の母親から生まれ、コペンハーゲン小児喘息前向き研究(CPSAC:Copenhagen Prospective Study on Asthma in Childhood)に登録された小児が対象となった。無症候の新生児(生後1ヵ月の乳児)の下咽頭部位から吸引液を採取し、肺炎球菌、インフルエンザ菌、Moraxella catarrhalisと黄色ブドウ球菌を培養。5歳児まで喘鳴の評価が前向きにモニタリングされ、日記に記録。4歳時に血中好酸球算定と総IgE、特異的IgE測定を行い、5歳時に肺機能の評価および喘息の診断が行われた。肺炎球菌、Moraxella catarrhalis、インフルエンザ菌の1つ以上の定着がリスク増加培養されたサンプル数は321例。乳児の21%が、肺炎球菌、Moraxella catarrhalis、インフルエンザ菌、あるいは複数の細菌が定着していた。黄色ブドウ球菌の定着はみられなかった。細菌定着(黄色ブドウ球菌を除く1つ以上の)と持続的な喘鳴とのハザード比は2.40、喘鳴の急性かつ重度の増悪とのハザード比は2.99、喘鳴による入院は3.85で、有意に関連していることが明らかとなった。またこれら細菌定着がみられた小児には、4歳時の好酸球数、総IgE値に有意な増加がみられた。特異的IgE値には有意な影響がみられていない。β2作動薬投与後5歳時の、喘息有病率と気道抵抗性の可逆性は、新生児期に細菌の定着がみられた小児 vs みられなかった小児でそれぞれ33% vs 10%、23% vs 18%と、いずれも細菌定着がみられた小児で有意に高いことが判明した。Bisgaard氏らは、「肺炎球菌、Moraxella catarrhalis、インフルエンザ菌の1つ以上の定着がある新生児は、幼児期に繰り返す喘鳴と喘息のリスクが増加する」と結論づけている。(武藤まき:医療ライター)

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メディケード加入者は医療格差に曝されている

アメリカでは近年、営利保険とは対照的に、管理医療型(マネジドケア)のHMOに加入するメディケード受益者の比率が増加し続けている。マネジドケアHMOでは、重篤あるいは高コストの合併症などを防ぐために予防とルーチンケアを一律に組み込むなど、低所得者や移民が多いメディケード加入者にとってメリットがある半面、必要な医療サービスが制限されるなど“格差”をもたらす可能性も指摘されてきた。 ハーバード・メディカル・スクールのBruce E. Landon氏らは、マネジドケアプランの3パターン間の治療の質を比較。JAMA誌10月10日号で格差の実態について報告した。383のヘルスプランの治療の質を比較治療の質を比較したのは、「メディケード・オンリー・プラン(主にメディケード加入者に供給)」と「営利保険・オンリー・プラン(主に営利保険加入者に供給)」と「メディケード/営利保険適用プラン(実質的に両方の加入者多数に供給)」の3タイプ。比較対象となったのは、2002~2003年にNational Committee for Quality Assuranceで報告された383のヘルスプラン。37が「メディケード・オンリー・プラン」、204が「営利保険・オンリー・プラン」、142が「メディケード/営利保険適用プラン」(メディケード・営利保険加入者データは別々に報告)だった。質の評価には、メディケード集団に適用可能なHEDIS(Healthcare Effectiveness Data and Information Set)の11の指標が用いられた。営利保険加入者のほうが優位メディケード加入者間での11の指標パフォーマンスは、「メディケード・オンリー・プラン」と「メディケード/営利保険適用プラン」で違いはなかった。同様に営利保険加入者間で、「営利保険・オンリー・プラン」と「メディケード/営利保険適用プラン」でパフォーマンスの違いは実質的になかった。全体的に見ると、1つを除く全ての指標で営利保険加入者のパフォーマンスがメディケード加入者より上回っていた。高血圧症コントロールでは4.9%の差(営利保険加入者58.4%対メディケード加入者53.5%、P=0.002)があり、分娩後の適切な治療に関しては24.5%(同77.2%対52.7%、P=0.001)に上る。同程度の格差は、同一のヘルスプランで治療を受けた営利保険加入者とメディケード加入者の間で観察された。Landon氏らは、「メディケード・マネジドケア加入者は、営利保険・マネジドケア加入者より質の低い治療を受けている」と結論。「国家として治療における相違を減らすことが米国ヘルスケアシステムの重要な目的とするのなら、マネジドケアは万能薬でない」と述べ、現状システムの改善を提起した。(武藤まき:医療ライター)

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自由行動下血圧測定(ABPM)は24時間が望ましい:IDACO

前向きコホート研究データベースIDACOでは自由行動下血圧と予後の関係を検討しているが、血圧測定は夜間だけでなく24時間行うべきだという。Universidad de la Republica(ウルグアイ)のJose Boggia氏らがLancet誌10月6日号で報告した。 住民研究データを解析IDACO(International Database on Ambulatory blood pressure monitoring in relation to Cardiovascular Outcomes)は国際データベースで、自由行動下24時間血圧と致死性・非致死性予後の相関を検討した前向き住民研究のデータが集積されている。今回の解析対象は平均年齢56.8歳(標準偏差:13.9歳)の7,458例。随時血圧平均値は132.4/80.1mmHg、24時間平均血圧は124.8/74.0mmHgだった。追跡期間中央値は9.6年間だった。 昼間血圧のみでは予後予知力が減弱収縮期血圧(SBP)、拡張期血圧(DBP)は昼間、夜間血圧を問わず1標準偏差上昇により心血管系死亡が有意に増加していた。ただし、非心血管系死亡の有意な増加と相関していたのは夜間血圧の上昇だった(いずれも、コホート、年齢、性別、降圧薬服用の有無などで補正後)。同様にSBP、DBPの夜間/昼間血圧比増加(1標準偏差)も、心血管系・非心血管系死亡を有意に増加させていた。夜間降圧度はさほど予後に影響せず?興味深いのは夜間降圧と心血管系予後の関係だろう。夜間/昼間血圧比「0.8~0.9」を正常、「0.8未満」をいわゆる"extreme dippier"、「0.9~1.0」を"non-dipper"、「1.0以上」を"riser"とすると、正常に比べ"riser"と"non-dipper"では総死亡と非心血管系死亡は有意に増加していたものの、心血管系死亡が有意に増加していたのは"riser"だけだった。心血管系イベント(致死性・非致死性)も同様で、"riser"では正常に比べ「全心血管系イベント」、「脳卒中」のリスクが有意に増加していたが、「冠動脈イベント」、「冠動脈イベント+心不全」は増加傾向にとどまった。また"extreme dippier"と"non-dipper"では正常に比べリスクが有意に増加しているイベントはなかった(年齢等補正後)。上記の通り夜間血圧のみでも予後予知が可能だが筆者らは、夜間/昼間血圧比の増加と心血管系死亡・非心血管系死亡の相関に着目し、「自由行動下血圧は夜間だけではなく24時間測定すべきだ」と結論している。(宇津貴史:医学レポーター)

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アルツハイマー病治療薬ドネペジルは興奮症状に対し効果がない

コリンエステラーゼ阻害薬ドネペジルは、アルツハイマー病患者の認知機能障害を改善するとされるが、行動障害に関する有益性については明らかになっていない。 キングズ・カレッジ・ロンドン附属精神医学研究所のRobert J. Howard氏らは、アルツハイマー病患者に共通してみられる興奮症状に対して、本剤が効果的かどうかを検証した。NEJM誌10月4日号掲載報告より。1日10mgを12週投与、評価はCMAIスケールで臨床的に明らかな興奮症状を呈し、短期の心理社会的な治療プログラムでも改善がみられなかった272例のアルツハイマー病患者を、ドネペジル10mg/日投与群(128例)とプラセボ投与群(131例)にランダムに割り付け行われた。投与期間は12週間。12週時点の結果評価は、CMAIスケール(Cohen-Mansfield Agitation Inventory:スケールスコアは29~203。スコアが高いほどより興奮状態であることを示す)が用いられ、スコアの変化が測られた。プラセボ投与群との有意差なし基線から12週へのCMAIスコアの変化に、ドネペジル投与群とプラセボ群で有意差は見られなかった。変化の推定平均差(ドネペジル値-プラセボ値)は-0.06(95%信頼区間:-4.35~4.22)。CMAIスコアが30%以上改善した患者は、プラセボ投与群で22/108例(20.4%)、ドネペジル投与群で22/113(19.5%)で、むしろプラセボ投与群のほうが0.9ポイント上回っていた(95%信頼区間:-11.4~9.6)。両群スコアには、Neuropsychiatric Inventory、Neuropsychiatric Inventory Caregiver Distress ScaleまたはClinician's Global Impression of Changeの各スケールを用いても有意差はみられなかった。Howard氏らは、この12週試験では、アルツハイマー病患者の興奮症状に対してドネペジルは効果がなかったと結論づけている。(武藤まき:医療ライター)

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LDL-C値<70mg/dLにおいても、HDL-C値は心血管イベントの予測因子と成り得るか?

本研究はスタチン治験・TNT(Treating to New Targets study)の事後解析の1つ。高比重リポタンパク(HDL)コレステロール値と心血管イベントとの間にみられる強い逆相関性が、低比重リポタンパク(LDL)コレステロールの極低値との間でもみられるかを検証したもの。オーストラリア心臓血管研究所のPhilip Barter氏らTNT研究グループによる報告は、NEJM誌9月27日号に掲載された。研究ターゲットはLDL値が70mg/dL未満解析はまず、最近終了したTNTスタディ参加患者9,770例のHDLコレステロール値でその予測能が評価された。主要評価項目は、主な心血管イベント(虚血性心疾患、非致死性・非処置の心筋梗塞、心停止後蘇生、致死性あるいは非致死性の脳卒中による死亡)の初回発症までの時間で、スタチン投与後3ヵ月目のHDLコレステロール値との予測的な関係について単変量・多変量解析が行われた。そして同様の評価が、LDLコレステロール値が70mg/dL(1.8mmoL/L)未満である特定の治験者層に対しても行われた。心血管イベントのリスクが少ないことが観察されたTNT試験コホート全体でみると、HDLコレステロールを連続変数とみなした時も、被験者をHDLコレステロール値の五分位数によって階層化した場合も、スタチン治療群のHDLコレステロール値から心血管イベントを予測することは可能だった。また、スタチン治療群をLDLコレステロール値によって階層化し分析したところ、HDLコレステロール値と心血管イベントとは有意な関連がみられ(P=0.05)、LDLコレステロールが70mg/dL未満の患者でも、HDLコレステロール値が最大五分位群の患者は最小五分位群の患者より心血管イベントのリスクが少ないことが見受けられた(P=0.03)。研究グループは、「HDLコレステロール値はスタチン治療患者における主な心血管イベントの予測因子であることが確認され、その関係は70mg/dL未満のLDLコレステロール値の患者でも観察された」と結論付けている。(武藤まき:医療ライター)

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うつ病労働者への治療プログラムは職場アウトカムをもたらす

ガイドラインに沿ったうつ病治療の有効性は明らかだが、しばしば根拠に基づいた勧告から外れた治療が行われている。うつ病治療プログラムは有意に治療の質を向上させるが、雇用者たちは、対費用効果という点でエビデンスに乏しいとこれらプログラムの採用を後回しにしてきた。 そこで、うつ病治療プログラムの効果が職場に与える影響および雇用者の懸念を評価する無作為化対照試験が、アメリカ国立精神保健研究所(NIMH)のPhilip S. Wang氏らによって行われた。JAMA誌9月26日号より。介入6ヵ月毎にうつ重症度と作業能力を評価試験は、行動保健プランでカバーされる604例の労働者を対象に行われ、うつ病は2段階スクリーニングで同定された。患者の治療割当と、6・12ヵ月後のうつ重症度と作業能力の評価結果は公表されず、難治性の躁うつ病や薬物依存症の者、最近精神専門治療を受けた者、また自殺傾向のある労働者は除外された。電話アウトリーチとケア管理プログラムでは、労働者に外来治療(精神療法および/または薬物療法)を受診するよう促し、治療の質を連続モニターして医療提供者に忠告を与えることで、治療が向上するよう試みた。外来治療を嫌がる対象者には、電話による体系的な認知行動精神療法が提供された。主要評価項目は、うつ重症度(QIDSによる評価:Quick Inventory of Depressive Symptomatology)と作業能力(HPQによる評価:WHO Health and Productivity Questionnaire。労働継続率、労働から外れた時間、作業能力、職場で起こしたインシデントを自己評価で報告する方法)。系統的治療プラグラムで労働生産性が向上6ヵ月後と12ヵ月後の評価データを組み合わせると介入群は、QIDSの自己報告スコアは有意に低く(回復の相対確率1.4、95%信頼区間:1.1-2.0、P=0.009)、維持率は有意に高く(同1.7、1.1-3.3、P=0.02)、介入期間を通して通常ケア群より有意に多くの時間労働したことが明らかになった(β=2.0、P=0.02、年換算では2週間分の労働に等しい)。研究グループはこれらから、うつ病を同定し系統的プログラムを行うことは、臨床的な予後改善ばかりでなく職場アウトカムをも有意に改善すると報告。雇用復帰と訓練、給与コストに関する後者の財政的価値は多くの雇用者に、うつ病治療プログラムは投資収益を生むものであると認識させ、治療に前向きに取り組むようになるだろうとまとめている。(朝田哲明:医療ライター)

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ユニセフとWHOが推奨する6ヵ月母乳養育には母親への教育が欠かせない

母乳栄養には多くの利点があり、ユニセフとWHOは1991年から、母乳栄養についてベストな選択を母親ができるようサポートするイニシアティブ(the baby friendly hospital initiative)を開始しているが、診療現場に普及するには至っていない国も多い。 シンガポール大学のLin-Lin Su氏らは、どのような方法が母乳養育率を改善するのかを調査するため、一般的に行われる院内ケアを受けるグループと出産前だけに母乳栄養について教育されるグループ、出産後授乳支援を受けるグループとを比較する無作為化試験を行った。本論はBMJ誌オンライン版8月1日付けで早期公開され、本誌では9月22日号で収載されている。ルーチンケア、出産前教育、出産後サポートの3群に分け比較調査はシンガポールの3次機能病院で、併発症を伴わない妊婦450例を、ルーチンケア群(151例)、出産前教育群(150例)、出産後サポート群(149例)にランダムに振り分け行われた。主要評価項目は、分娩退院後2週、6週、3ヵ月、6ヵ月各時点の母乳養育率。副次評価項目は、すべての母乳養育率とした。出産後サポートのほうが出産前教育よりわずかに効果的結果、ルーチンケア群と比較して出産後サポート群のほうが母乳養育の傾向が強いことが明らかとなった。相対リスクは2週時点1.82(95%信頼区間:1.14-2.90)、6週時点1.85(同1.11-3.09)、3ヵ月時点1.87(1.03-3.41)、6ヵ月時点2.12(1.03-4.37)。出産前教育群は、6週、3ヵ月、6ヵ月の時点だけ出産後サポート群より母乳で育てる傾向が見られた。相対リスクはそれぞれ1.73(1.04-2.90)、1.92(1.07-3.48)、2.16(1.05-4.43)。6ヵ月時点での出産後サポート群と出産前教育群の比較では、それぞれNNT(*)が11(6~80)と10(6~60)という結果で有意差は見られなかった。しかし2週時点では、出産後サポート群は出産前教育群と比べるともっぱらあるいは主として母乳で育てる傾向が見られた(相対リスク1.53、95%信頼区間1.01-2.31)。6週間時点でも出産サポート群は、ルーチンケア群と比較しても母乳養育率がより高かった(同1.16、1.02-1.31)。このように、出産前後を問わず1回の介入で分娩後最高6ヵ月時点での母乳養育率の改善につながること、出産後サポートのほうが出産前教育よりわずかに効果的であることが明らかとなった。*NNT:number needed to treat。治療必要数。ここではルーチンケア群との比較で。

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モザンビークにおける重篤な精神的・神経学的障害の出現率

モザンビークは世界でも最も貧しい国の一つである。人口約1,800万人のうち、7割は農村部に暮らしている。この国の精神科医はわずか10人に過ぎず、人々の精神的・神経学的健康状態に関する情報不足は、国の政策決定と医療資源への投資を妨げてきた。Vikram Patel氏らのグループはWHOの支援を受けたモザンビーク保健省とともに、都市部と農村部における発作性疾患、精神疾患、精神発達遅滞の出現率の評価を行った。LANCET誌9月22日号より。都市部と農村部から計2,739世帯をランダムに抽出調査対象はモザンビークの首都Maputo市から1,796世帯、同国でも最も貧困な地方の町Cuambaから943世帯の計2,739世帯がランダムに選ばれた。調査は一定間隔ごとの世帯への訪問インタビュー形式で行われた。各々の世帯の情報提供のキーマンとなる人物から、症状に合致する障害のあると思われる世帯構成員を聞き出すことで有症者を同定し、障害の原因と行われた治療、現在の状態についても聞き取りが行われた。農村部の精神疾患出現率は都市部の約3倍生涯有病率は3つの精神障害すべてにおいて、都市部より地方の方がより高かった。成人の精神疾患出現率は農村部の4.4%に対し都市部では1.6%(標準化有病比2.79)、精神発達遅滞は1.9%対1.3%(同1.48)、発作性疾患は4.0%対1.6%(同2.00)だった。3つの障害の中で、世帯情報提供者がその原因を超自然的な理由にあると考えているのは精神疾患がトップで、発作性疾患がそれに続いた。また、これら精神疾患を持つ構成員のいる世帯の約4分の3は“昔ながらの開業医”に相談しており、農村部に住むこれら障害のある者のほぼ半数は現在も健康状態に問題ありと判定できた。Patel氏らはこうした実態を踏まえ、「精神障害に対する理解を向上させるための援助としては、農村部における精神保健資源への投資、そして、特にモザンビークの貧困な農村地帯においては“昔ながらの開業医”との協力が差し迫った課題である」と結論づけた。

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出生前コルチコステロイド反復投与の長期予後:ACTORDS研究グループ

 オーストラリアのアデレード大学Caroline A. Crowther氏らACTORDS(Australasian Collaborative Trial of Repeat Doses of Steroids)研究グループは以前、早期産のリスクを有する妊婦へのコルチコステロイド反復投与療法について無作為化対照臨床試験を行い、「新生児における呼吸窮迫症候群や重篤な疾患罹患リスクが減少した」と報告したが、この時のデータは本療法の長期予後に関しては有効ではなかったため、あらためて前向き臨床試験を実施した。NEJM誌9月20日号の報告から。2歳時の感覚神経障害と体格を評価 今回の試験では、コルチコステロイドの初期治療コースを7日間以上受けた妊婦に、コルチコステロイド(ベタメタゾン11.4mg:反復投与群)またはプラセボ(生理食塩水:単回投与群)の筋注がランダムに割り当てられた。妊娠期間が32週未満で早期産の危険がある妊婦には、毎週投与が繰り返された。 評価は年齢調整後の2歳時点における重度感覚神経障害を伴わない生存率および体格。注意力に問題あるも単回投与群と有意差なし 2歳時点で生存していた1,085例の小児の内、1,047例(96.5%)が評価の対象となった(反復投与群521例、単回投与群526例)。 重度障害を伴わない生存率は、反復投与群84.4%、単回投与群81.0%で同程度だった(補正相対危険度1.04、95%信頼区間:0.98-1.10、P = 0.20)。 体格、血圧、保健サービスの利用度、呼吸器系疾患罹患率、また小児行動スコアのいずれも両群間に有意差は認められなかった。ただし注意力の面での問題が、反復投与群で単回投与群より一定の根拠をもって指摘された(P = 0.04)。 これらの結果から研究グループは、出生前コルチコステロイドの反復投与を用いた早期産のおそれのある妊婦の管理は、前回試験で明らかになったように、新生児の罹患率を低下させるとともに、2歳時点においても重度の感覚神経障害または発育不良のどちらも伴わないと報告している。

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出生前コルチコステロイド反復投与の長期予後:MFMU研究グループ

 出生前コルチコステロイドの反復投与は、早期産児の新生児期における一部の疾患罹患や死亡リスクを改善するものの、出生時体重の低下および子宮内胎児の発育遅延のリスクを増すことが、先行研究によって示されている。本論文は、コロンビア大学Ronald J. Wapnerら米国NIHのMFMU(Maternal-Fetal Medicine Units)ネットワークの研究グループによる、出生前コルチコステロイド投与の長期追跡調査の結果報告。NEJM誌9月20日号に掲載された。反復投与群と単回投与群を比較 追跡調査は、コルチコステロイドの初期コース受療後7日目の時点で妊娠が継続していた妊娠23~31週の女性を、反復投与群(ベタメタゾン週1回12mg筋注、24時間後に再投与)と単回投与群(プラセボ投与)に無作為に割り付け、それぞれに生まれた修正年齢2-3歳時の小児が対象とされた。 評価は、ベイリー乳幼児発達検査(Bayley Scales of Infant Development:BSID)スコア、身体測定値、脳性麻痺の有無で行われた。脳性麻痺の発症率が反復投与群で高かった 追跡調査が行われたのは556例。そのうち486例(87.4%)が身体測定を受け、465例(83.6%)がベイリー検査を受けた。平均修正年齢(±SD)は29.3±4.6ヵ月だった。 身体測定およびベイリー検査の結果に関しては両群に有意差は見られなかった。 脳性麻痺に関しては、反復投与群では6例(妊娠全体の2.9%)に認められたのに対し、単回投与群は1例(同0.5%)で、相対リスクは5.7という結果だった(95%信頼区間:0.7-46.7、P=0.12)。 長期予後として神経認知機能や身体の発達度に有意差は認められなかったが、脳性麻痺の発症率が統計学的に有意差は認められなかったとはいえ反復投与群で高かったことを受け、研究グループは「懸念すべきことであり、さらなる研究が必要だ」と結んでいる。

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公共禁煙法施行で学童の受動喫煙減少

2006年3月から公共の屋内における喫煙が原則的に禁止された英国スコットランドでは、学童の受動喫煙が有意に減少していることがUniversity of EdinburghのPatricia C Akhtar氏らによるCHETS研究の結果、明らかになった。同研究報告はBMJ誌オンライン版9月9日付、本誌9月15日号に掲載された。両親が喫煙しなければ子供にメリットCHETS(Changes in child exposure to environmental tobacco smoke)研究では、禁煙法制定前の2006年と施行後2007年における小学校最終学年の学童による受動喫煙量の変化を比較した。喫煙量の測定には唾液サンプル中のニコチン代謝物(コチニン)濃度を用いた。2006年には2,403サンプル、2007年にも2,270サンプルが提出された。その結果、2006年には0.35ng/mLだったコチニン濃度(幾何平均値)は0.21ng/mLへと有意(p

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dabigatran etexilateの有効性・安全性はエノキサパリンと同程度:RE-NOVATE試験

関節置換術後のリスクとして静脈血栓塞栓症があり、その予防治療が術後および退院後も一定期間行われる。本稿は、その新しい予防治療剤として開発中の新規経口トロンビン阻害剤dabigatran etexilateに関する臨床試験RE-NOVATEの結果報告。LANCET誌9月15日号より。3,494例対象に無作為化二重盲見試験RE-NOVATEは欧州、南アフリカ、オーストラリアの115の医療センターにわたって行われた無作為化二重盲見試験で、人工股関節全置換術後の計3,494例を対象とする。対象は、dabigatran etexilate 220mg投与群1,157例または150 mg投与群1,174例(いずれも1日1回投与、術後1~4時間に半量投与で開始)と、エノキサパリン40mg投与群1,162例(1日1回投与、術前投与で開始)に無作為に割り付けられ実施された。主要評価項目は、静脈造影あるいは症候性に認められたすべての静脈血栓塞栓症の発生と、原因を問わない治療中のすべての死亡。試験結果には有効性解析の手法が用いられ、エノキサパリンとプラセボによる静脈血栓塞栓症発生率の絶対差を基礎とし、本試験の有効性マージンは7.7%と定義された。静脈血栓塞栓症予防への有効性および有害事象への安全性を確認投与期間の中央値は33日。有効性解析にかけられたのは220mg投与群880例、150 mg投与群874例、エノキサパリン投与群(対照群)897例だった。その他の症例は、主として静脈造影データの不足のため除外されている。主要評価項目が認められたのは、対照群6.7%(60/897例)に対し220mg投与群6.0%(53/880例、絶対差-0.7%、95%信頼区間:-2.9~1.6%)、150 mg投与群8.6%(75/874例、同1.9%、-0.6~4.4%)で、dabigatran etexilateはエノキサパリンと比べて非劣性であることが示された。また大出血の発生率に関しては、dabigatran etexilate投与群と対照群に有意差は認められなかった(220 mg投与:p = 0.44、150 mg投与:p = 0.60)。肝酵素濃度の上昇および急性冠動脈イベント発生についても有意差は認められなかった。以上の結果を踏まえ研究グループは、dabigatran etexilateの有効性と安全性はエノキサパリンと同程度であると結論付けている。

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STAT4と関節リウマチや全身性エリテマトーデスのリスク

 関節リウマチは重要な遺伝的要因をもつ慢性炎症性疾患である。疾患に対する感受性は、染色体2q上の領域と関連付けられてきた。特に、Jakキナーゼアとともにサイトカインシグナルの伝達経路となるSTAT 分子は7種類あることがわかっており、Th1反応を起こすIL-12に反応するSTAT4 の役割の解明に注目が集まっている。 アメリカ国立衛生研究所関節炎・骨格筋・皮膚疾患研究所のElaine F. Remmers氏らは、すでに関節リウマチと関連づけられている染色体2q領域中の13の候補遺伝子の内外にある一塩基多型(SNP)を調べた。NEJM誌9月6日号の報告から。STAT4 第3イントロン(*1)のSNPハプロタイプ(*2)の関連を示唆 研究グループは、関節リウマチと診断された北米の症例患者群1,620例と対照群2,635例についてSTAT1-STAT4 領域の微細な遺伝子マッピングを実施した。関連するSNPについては独立したケース-対照群シリーズから、スウェーデンの初期関節リウマチ患者群 1,529例と対照群881例、さらに全身性エリテマトーデス(SLE)患者については3シリーズから計患者群1,039例と対照群1,248例を登録し、調査した。その結果、STAT4 の第3イントロンにおけるSNPハプロタイプが、関節リウマチとSLE両方の感受性と関連していることがわかった。ハプロタイプを定義しているSNPのマイナー対立遺伝子は、診断が確定した関節リウマチ患者群の染色体の27%に存在する一方、対照群では22%であった(関連が最も強く示されたIDナンバー SNP rs7574865についてP= 2.81×10(-7)、対照群に対して患者群が染色体にリスク対立遺伝子を持つオッズ比1.32)。この関連はスウェーデンの最近の初発関節リウマチ患者で繰り返され(P = 0.02)、対照群とも合致した。STAT4 は関節リウマチ・SLE双方に共通の伝達経路 rs7574865 でマークされたハプロタイプはSLEの主症状である狼瘡と強い関連があり、症例患者群31%の染色体上に存在し、対照群では22%だった(P=1.87× 10(-9)、対照群と比較して患者の染色体にリスク対立遺伝子が存在するオッズ比1.55)。リスク対立遺伝子のホモ接合性は、対立遺伝子の欠如と比較して、狼瘡では2倍のリスクと、関節リウマチでは60%のリスク増加と関連していた。これらの結果から研究グループは、STAT4 のハプロタイプは関節リウマチとSLEの両方のリスク増加と関連しており、これらの疾患には共通の経路があることが示唆されたとしている。*1 遺伝子中でタンパク質を作るための情報をもたない部分*2 同一染色体上で、遺伝的に連鎖している多型(一塩基多型:SNPなど)の組み合わせ(朝田哲明:医療ライター)

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心室ペーシングを最小化する新型両室ペースメーカーの有効性

従来の両室ペーシングは房室同期を維持するものの、本来不要な心室ペーシングの割合を高める。そのため心室の脱同期化を来たし、洞房結節不全患者の心房細動リスクを高めるとの指摘がなされていた。そこで心室ペーシングを最少化する新型の両室ペースメーカーが開発。その有効性を検証する臨床試験の結果が公表された。NEJM誌9月6日号より。洞房結節不全患者1,065例を対象にSAVE PACe(Search AV Extension and Managed Ventricular Pacing for Promoting Atrioventricular Conduction)研究グループによる本臨床試験は、洞房結節不全患者(QRS間隔が正常、かつ房室伝導が良好な)1,065例を対象に、従来の両室ペーシングを受ける群(従来群:535例)と、新型の両室ペースメーカー(房室伝導を促進し心室伝導を保ち心室の脱同期化を予防するよう設計)で最小のペーシングを受ける群(新型群:530例)にランダムに割り付け実施された。主要エンドポイントは持続性心房細動が現れるまでの期間。持続性心房細動の出現リスクを中等度低下平均追跡期間(±SD)は1.7±1.0年だった。心室拍動のペーシング割合は、従来群(99.0%)より新型群(9.1%)の方が有意に低かった(P

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研修医の勤務時間改善で患者死亡率は改善されたか:民間病院での検証結果

米国では卒後医学教育認定委員会(ACGME:Accreditation Council for Graduate Medical Education)によって2003年7月1日より、研修医の勤務時間規則が施行されたが、これによる勤務時間改善と患者死亡率との関連、教育強度の異なる研修病院間での相関については、これまで検証されていなかった。フィラデルフィア退役軍人医療センターのKevin G. Volpp氏らは、その関連性を評価。JAMA誌9月5日号に掲載された本報告は、民間病院のメディケア対象の短期・急性期入院患者を対象とした検証結果である。勤務時間改善の前後で患者死亡率に差があったか政府系を除く民間病院3,321病院に2000年7月1日から2005年6月30日にかけて入院したメディケア患者8,529,595例を、急性心筋梗塞、うっ血性心不全、消化管出血、脳卒中、あるいは全身性の整形外科的、または脈管手術のいずれかの診断関連群に分類し、時系列解析した観察研究。教育強度の多寡によって患者死亡率に違いがあるかを調べるため、勤務時間改善前後の2000~2003学校年度と2003~2005学校年度を対比させ、共存症の有無、期間傾向、病院立地を調整しつつロジスティック回帰分析を行った。主要評価項目は全対象病院の入院30日以内の死亡率とした。勤務時間の改善と死亡率の変化に相関はなかった結果は、内科系・外科系にかかわらず、勤務時間の改善と相対死亡率の増減に有意な相関は認められなかった。教育強度の多寡でも同様で、改善後1年の内科系疾患群との関連オッズ比は1.03(95%信頼区間0.98-1.07)、外科系疾患群とは1.05(同0.98-1.12)、改善後2年でもそれぞれ 1.03(同0.99-1.08)、1.01(同0.95-1.08)だった。唯一、脳卒中について、より教育強度の高い病院で勤務時間改善後に死亡率の上昇がみられたが、この関連は勤務時間改善前からみられたものだった。非研修病院と最も教育強度の高い研修病院とを比較すると、勤務時間改善前1年と改善後2年目との間で、内科系疾患群で0.42パーセンテージ・ポイント(4.4%の相対増加)、外科系疾患群で0.05パーセンテージ・ポイント(2.3%の相対増加)の死亡率の絶対的変化がみられたが、どちらも統計学的に有意ではなかった。これらから研究グループは、ACGMEの勤務時間改善は、少なくとも最初の2年間においてはメディケア患者の病状悪化と死亡率改善のいずれももたらしていないと報告した。なお同日号に、同一執筆者による退役軍人病院を対象に行った検証結果が報告されている。あわせて読むと興味深い。(朝田哲明:医療ライター)

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研修医の勤務時間改善で患者死亡率は改善されたか:退役軍人病院での検証結果

米国の研修医の勤務時間は、卒後医学教育認定委員会(ACGME:Accreditation Council for Graduate Medical Education)によって規定され2003年7月1日に施行されている。しかしこれまでこの制度上の変更と入院患者の死亡率との関連、教育強度の異なる研修病院間での相関はついて検証されていない。JAMA誌9月5日号に掲載された本報告は、フィラデルフィア退役軍人医療センターKevin G. Volpp氏らによる退役軍人病院の患者を対象とした検証結果である。内科系・外科系あわせて約32万例の急性期入院データを時系列解析勤務時間改善以前の2000年7月1日から改善後の2005年6月30日にかけて、急性期退役軍人病院(N=131)に入院した全患者(N= 318,636)のデータを、急性心筋梗塞、うっ血性心不全、消化管出血、脳卒中、あるいは全身性の整形外科的、脈管手術のいずれかの診断関連群に分類し、時系列解析した観察研究。教育強度の多寡によって患者死亡率に違いがあるかを調べるため、勤務時間改善前後の 2000~2003学校年度と2003~2005学校年度を対比させ、共存症の有無、期間傾向、病院立地を調整しつつロジスティック回帰分析を行った。主要評価項目は全対象病院の入院30日以内の死亡率とした。内科系(特に急性心筋梗塞)患者で死亡率が低下改善後1年では、内科系・外科系とも死亡率の有意な変化は観察されなかった。改善後2年目に、研修医の病棟勤務比率が最も高い病院と最も低い非研修病院を比較すると、急性心筋梗塞患者の死亡率オッズ比は0.48(95%信頼区間0.33-0.71)で、4つの内科系疾患の合計オッズ比0.74(同0.61- 0.89)、急性心筋梗塞以外の内科系3疾患の合計オッズ比0.79(同0.63-0.98)と比べて有意に低下した。教育強度が25パーセンタイル値と低い病院と、教育強度の高い75あるいは90パーセンタイル値の病院それぞれの内科系疾患患者の死亡率を比較すると、勤務時間改善前1年と改善後2年目では、それぞれ0.70パーセンテージ・ポイント(11.1%の相対低下)、0.88パーセンテージ・ポイント(13.9%の相対低下)と確実な改善がみられた。ACGMEによる研修医の勤務時間改善は、改善後2年目の時点で、退役軍人病院の中でもより教育強度の高い病院で患者死亡率の顕著な改善と関連していた。ただし改善は一般的な4つの内科系疾患を有する患者においてで、外科系患者における死亡率の低下は確認されていない。本結果に関して同日号に、同一執筆者による民間病院を対象とした検証結果が掲載されている。あわせて読むと興味深い。(朝田哲明:医療ライター)

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外傷性脳損傷患者のアルブミン輸液蘇生は死亡率が高い

古くから論争になっているテーマだが、生理食塩水vsアルブミン輸液評価研究グループ(SAFE:Saline versus Albumin Fluid Evaluation)は、SAFEスタディに登録された外傷性脳損傷患者の事後を追跡調査し、その死亡率が、アルブミン輸液で蘇生された患者のほうが生理食塩水で蘇生された患者より高いことが示唆されたと報告した。NEJM誌8月30日号掲載より。460例の外傷性脳損傷患者を追跡調査外傷性脳損傷患者(外傷既往あり、CT断層撮影による頭部外傷の所見あり、かつグラスゴー昏睡尺度(GCS:Glasgow Coma Scale)スコア13以下の患者について、症例報告書、カルテ、CTスキャンからベースライン特性を記録して無作為化し、24ヵ月後に生命予後と身体機能の神経学的転帰を判定した。追跡調査したのは460例。アルブミン投与群231例(50.2%)、生食投与群229例(49.8%)だった。アルブミン投与の重篤な外傷性脳損傷患者ほど死亡率が高い追跡24ヵ月後、死亡例はアルブミン投与群214例の患者のうち71例(33.2%)に対し、生食投与群では206例中42例(20.4%)だった(相対リスク1.63、95%信頼区間1.17-2.26、P = 0.003)。GCS スコア3~8の患者を重篤な脳損傷患者と分類したサブ解析の結果(内訳はアルブミン投与群160例(69.3%)、生食投与群158例(69.0%))、この重篤な脳損傷患者群では、アルブミン投与群146例中61例(41.8%)が死亡したのに対し、生食投与群で死亡したのは144例中32例(22.2%)だった(同1.88、1.31-2.70、P

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連続流タイプの補助人工心臓の有用性について治験グループが報告

難治性心不全患者に対する治療法として認められている左心補助人工心臓だが、拍動流タイプの装置は、サイズが大きい、耐久性に限界があるなどの問題から実用性に限界があった。一方、近年開発された連続流タイプの補助人工心臓(Thoratec社製Heartmate II LAVD)は、小型化され、耐久性、静音性などにも優れる。ミネソタ大学のLeslie W. Miller氏ら同製品治験グループが、Heartmate II LAVD利用者の多施設共同観察研究の結果を報告した。NEJM誌8月30日号掲載より。133例の人工心臓移植後6ヵ月時点の血行動態を評価本研究は、対照群を並列しない前向き多施設共同試験で、対象は心臓移植待機リストからHeartmate II LAVDの体内移植を受けた末期心不全患者133例を抽出した。主要評価項目は、人工心臓移植後180日の時点における、心臓移植を受けた患者の比率、心機能改善が見られた患者の比率、心臓移植適格だが補助人工心臓の使用を続けている患者の比率。心機能およびQOLの評価も行われた。3ヵ月時点では心機能およびQOLが有意に改善180日時点で主要評価項目のいずれかに該当した患者は100例(75%)だった。残り33例は死亡(25例)、合併症で心臓移植不適格(5例)、他のLAVDに切り換え(3例)となった。Heartmate II LAVDサポート期間の中央値は126日(範囲、1~600)。サポート期間中の生存率は、6ヵ月時点で75%、12ヵ月時点で68%だった。また3ヵ月時点では、心機能の有意な改善(ニューヨーク心臓協会分類および6分間の歩行試験の結果による)、QOLの有意な改善(Minnesota Living with Heart Failure質問票およびKansas City Cardiomyopathy質問票による)が認められた。重篤な有害事象は、術後出血、脳卒中、右心不全、経皮リード感染。ポンプ血栓症が2例で起きていた。以上の結果を踏まえ治験グループは、心臓移植待機患者に対して少なくとも6ヵ月間は、Heartmate II LAVDによって効果的に血行動態を改善でき、心機能、QOLも改善することができると述べている。(朝田哲明:医療ライター)

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