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手洗い、マスクは、呼吸器系ウイルス感染の拡大防止に有効

 鳥インフルエンザや重症急性呼吸器症候群(SARS)などのウイルス感染症のパンデミック(世界的大流行)に対する社会的な関心が高まっている。Cochrane Vaccines Field所属の研究者である Tom Jefferson氏(イタリア、アレッサンドリア)らは、呼吸器系ウイルスの拡大を防止する物理的介入法の効果に関するエビデンスを系統的にレビューし、パンデミックへの備えとしての手洗いやマスクの着用など簡便で低コストの方法の有用性を明らかにした。BMJ誌2008年1月12日号(オンライン版2007年11月27日号)掲載の報告。呼吸器系ウイルス伝搬の予防法に関する49論文をレビュー データベースの検索により、呼吸器系ウイルス伝搬の予防法[発病者の隔離(isolation)、曝露者の隔離(quarantine)、社会的接触の低減化(social distancing)、防御法、個人的防護、衛生管理]に関する無作為化試験、コホート試験、症例対照試験などの文献を抽出した。 51試験に関する49の論文についてレビューを行った。試験の質は、3つの無作為化試験およびほとんどのクラスター無作為化対照比較試験で低く、観察試験にはばらつきがみられた。低コストの物理的な防御法が有効、優先度を上げるべき もっとも質の高いクラスター無作為化試験では、低年齢の小児を対象とした衛生処置による介入が呼吸器系ウイルスの伝搬を予防することが示唆された。また、6つの症例対照試験のメタ解析により、SARSの拡大の予防には次の6つの物理的対策が高い効果を示した。 1日10回以上の手洗い[オッズ比(OR):0.45、1感染の予防に要する治療例数(NNT):4]、マスクの着用(0.32、6)、微粒子用N95マスクの着用(0.09、3)、手袋の着用(0.43、5)、防護用ガウンの着用(0.23、5)、手洗い・マスク・手袋・ガウンの併用(0.09、3)。 通常の手洗いに抗ウイルス薬、抗菌薬を併用した場合の相加的効果は不明であり、スクリーニングや社会的接触の低減化(学校閉鎖、公共の場への集合禁止)などの総合対策については適切な評価法がないため確固たる結論には至っていない。Jefferson氏は、「呼吸器系ウイルス感染の拡大を防止するには、とくに手洗い、マスク着用などの低コストの物理的な防御法が有効と考えられる」と結論し、「これらの方法はパンデミックへの備えとしてもっと高く評価すべきであり、優先度を上げる必要がある」と指摘している。

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最重症肺炎患児に対するアンピシリン+ゲンタマイシンの有効性を確認

種々のバクテリアによって引き起こされる最重症市中肺炎は死亡率が高く、クロラムフェニコールの注射が標準治療とされるが厳格な検証はなされていない。Rai Asghar氏(パキスタン、ラワルピンディ総合病院)らは、医療資源が乏しい状況において最重症市中肺炎に罹患した生後2~59ヵ月の患児に対しては、アンピシリン+ゲンタマイシンがクロラムフェニコールよりも有効なことを明らかにした。BMJ誌2008年1月12日号(オンライン版1月8日号)掲載の報告。7ヵ国が参加した無作為化試験SPEAR(Severe Pneumonia Evaluation Antimicrobial Research)studyは、生後2~59ヵ月の最重症肺炎患児(WHO判定規準)を対象にクロラムフェニコールとアンピシリン+ゲンタマイシンの有効性を比較する無作為化試験。2000年8月~2004年4月の間にバングラデシュ、エクアドル、インド、メキシコ、パキスタン、イエメン、ザンビアの3次病院に入院した958例が登録され、クロラムフェニコール群に479例が、アンピシリン+ゲンタマイシン群に479例が無作為に割り付けられた。5日、10日、21日目の治療無効率はクロラムフェニコール群で高い主要評価項目である5日目における治療無効率は、クロラムフェニコール群の16%に対しアンピシリン+ゲンタマイシン群は11%と有意に低かった[相対リスク(RR):1.43)]。副次評価項目である10日目(19% vs. 14%、RR:1.37)および21日目(22% vs. 16%、RR:1.34)も、同様にアンピシリン+ゲンタマイシン群で優れていた。110例(11.5%)の血液および肺吸引物から112のバクテリアが単離され、そのうち黄色ブドウ球菌が47ともっとも多く、次いで肺炎球菌が22であった。菌血症はクロラムフェニコール群で21日目の治療無効のリスクを増大させたが(RR:2.09)、アンピシリン+ゲンタマイシン群では増大しなかった(RR:1.12)。同様に、肺炎球菌はクロラムフェニコール群において21日目の治療無効(RR:4.06)および死亡(RR:5.80)のリスクを増大させた。多変量解析では、治療無効の独立の予測因子として低酸素血症、クロラムフェニコール治療、女児、免疫抑制状態が挙げられた。以上により、Asghar氏は「医療資源が乏しい状況では、最重症肺炎患児の治療としてクロラムフェニコールよりもアンピシリン+ゲンタマイシンの効果が優れる」と結論し、「これらの知見は、最重症肺炎の第一選択薬としてクロラムフェニコールを推奨しているWHOガイドラインの改定時に大きな影響を及ぼす可能性がある」と指摘している。(菅野 守:医学ライター)

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ICU患者に対し、鎮静中断による毎日の自発覚醒法+自発呼吸法が有効

ICUに収容された重症患者に対し機械的人工換気を施行する際は、ほとんどの場合大量の鎮静薬を要するが、これらの併用により多くの合併症が引き起こされるため、鎮静および機械的人工換気の低減に向けさまざまなアプローチが試行されている。Timothy D. Girard氏(アメリカ、バンダービルト大学健康サービス研究センター)らは、鎮静中断による毎日の自発覚醒法(SAT)と自発呼吸法(SBT)の併用が、鎮静とSBTによる通常ケアに比べ患者のアウトカムを改善することを明らかにした。Lancet誌2008年1月12日号掲載の報告。毎日のSAT追加の有効性を評価2003年10月~2006年3月の間に4つの第3次病院に336例が登録され、毎日のSAT後にSBTを施行する介入群(168例)あるいは通常ケアとして鎮静とSBTを行う対照群(168例)に無作為に割り付けられた。対照群は、毎朝SBTの安全性が評価されたのちSBTを施行された。介入群は、毎朝SATの安全性評価ののちSATが施行され、さらにSBTの安全性評価後にSBTが実施された。各評価で不適とされた症例は翌朝に再評価が行われた。SATの成功は、鎮静薬の中断と声かけで患者が4時間以上開眼した場合とした。無人工換気日数が有意に増加、1年死亡率は32%低下主要評価項目である試験期間中(登録日~28日後)の機械的補助なしの呼吸日数(無人工換気日数)は、介入群(14.7日)が対照群(11.6日)に比べて多かった(p=0.02)。副次評価項目であるICU退室までの期間(介入群:9.1日 vs. 対照群12.9日、p=0.01)および退院までの期間(14.9日 vs. 19.2日、p=0.04)の中央値も介入群で優れていた。介入群で自己抜管症例数が多かった(16例 vs. 6例、p=0.03)が、再挿管を要する症例の数は同等であり(5例 vs. 3例、p=0.47)、全体の再挿管率にも差は認めなかった(13.8% vs. 12.5%、p=0.73)。一方、1年死亡率は介入群が対照群よりも32%低く(ハザード比:0.68、p=0.01)、介入群における1例を救命するのに要する治療例数(NNT)は7.4例であった。Girard氏は、「鎮静中断による毎日のSATにSBTを併用する覚醒-呼吸プロトコールは、現行の標準的アプローチに比べ、ICUで機械的人工換気を施行されている患者に良好なアウトカムをもたらすことが示唆される」と結論したうえで、「日常診療においてルーチン化すべき」と主張している。(菅野守:医学ライター)

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活動的な両親の子は活動的に育つ?

小児期の身体活動に影響を及ぼす因子が同定されれば、より優れた介入戦略の開発に役立つ可能性がある。しかし、乳幼児期の因子が後年の身体活動にどう影響するかはほとんど知られていない。Calum Mattocks氏(イギリス、ブリストル大学社会医学)らは、5歳までの乳幼児期の因子が後年の11~12歳時の身体活動と相関するか否かについて検討。妊娠中や乳幼児期の両親の身体活動が11~12歳時の身体活動に影響を及ぼすことなどが明らかとなった。BMJ誌2008年1月5日号(オンライン版2007年11月23日号)掲載の報告。イギリスの同時出生コホート研究Avon longitudinal study of parents and children(ALSPAC)は、イギリスで実施されたプロスペクティブな同時出生コホート研究。1991年4月1日~1992年12月31日に出産予定の妊婦14,541人が登録され、14,062人の生児が誕生した。研究グループは、5歳までの乳幼児期の因子が後年の11~12歳時における身体活動と相関するか否かについて検討した。身体活動レベルはcounts per minute(cpm)で評価し、身体活動は11歳時に単軸性アクティグラフ(身体運動記録装置)加速度計を装着してもらい7日間測定することとした。妊娠中の早歩き、水泳が11~12歳時の活動性を高める5,451人の小児から、1日最低10時間の身体活動を少なくとも3日間測定したアクティグラフデータが集められた。回帰係数をカテゴリー変数が“none”のベースラインと比較したところ、「妊娠中の妊婦早歩き」「妊娠中の妊婦水泳」「生後21ヵ月時の両親の身体活動」などが11~12歳時の身体活動に関連していた。Mattocks氏は、「乳幼児期のいくつか因子が後年の11~12歳における身体活動に影響を及ぼすことがわかった」としたうえで、「妊娠中や乳幼児期の両親の身体活動が11~12歳の子どもの身体活動をわずかながら増進させたため、活動的な両親の子どもは活動的に育つ傾向が示唆された。それゆえ、両親が身体活動を増進するよう支援すれば、子どもの活動性が促進される可能性がある」と指摘している。(菅野 守:医学ライター)

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乳癌患者における癌抑制遺伝子TP53変異とリンパ節転移の関連

 クリーブランドクリニック・ゲノム部門(アメリカ)のAttila Patocs氏らは、以前の研究で腫瘍性胸部上皮細胞とその周囲の間質細胞で高頻度に見出された癌抑制遺伝子TP53の変異に着目。この遺伝子が乳癌の転帰に寄与しているとの仮説を立て、「遺伝性」および「散発性」乳癌患者それぞれにおけるゲノムワイド解析、臨床的・病理学的所見との関連解析を行った。NEJM誌2007年12月20日号に掲載。遺伝性・散発性乳癌患者のTP53変異に着目研究対象は遺伝性乳癌患者43例と散発性乳癌患者175例。それぞれの腫瘍性上皮細胞と間質細胞のDNAにおけるTP53変異の解析、ヘテロ接合消失、アレル不均衡に関するゲノム・ワイドな解析を行った。またコンパートメント特有のパターンが見られないか、その際のTP53の状態、ヘテロ接合消失、アレル不均衡、臨床的および病理学的所見との関連についても解析が行われた。リンパ節転移との関連は「散発性」においてのみ「遺伝性」および「散発性」乳癌患者のサンプルいずれにおいてもTP53変異と、ヘテロ接合消失およびアレル不均衡増幅との関連が見られたが、変異の頻度は「遺伝性」のほうが「散発性」より高かった(74.4%対42.3%、P=0.001)。TP53変異と関連を示すマイクロサテライト遺伝子座は、「遺伝性」乳癌患者の間質細胞では1個(2p25.1)だったが、「散発性」では66個あった。また「散発性」の上皮細胞ではみられなかったが間質細胞では、TP53変異と局所リンパ節転移との関連も見いだされた(P=0.003)。「散発性」の間質細胞ではTP53変異がない場合でも、ヘテロ接合消失とアレル不均衡の増幅に関係する5つの遺伝子座の特異的な組み合わせがある場合、リンパ節転移との関連が認められた。こうした関連は「遺伝性」の臨床的および病理学的所見では全く見いだされなかった。研究者らは、「散発性乳癌では、間質細胞のヘテロ接合消失またはアレル不均衡は、TP53変異、局所リンパ節転移と関連しているが、遺伝性乳癌ではこうした関連はみられなかった」と結論づけている。(武藤まき:医療ライター)

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STEMI患者へのPCI施行例での偽陽性頻度

救急治療部の医師が心臓カテーテル室を起動させることができるのは、ST上昇型心筋梗塞(STEMI)患者への処置を迅速に行う鍵となる戦略である。一方、STEMIが疑われ経皮的冠動脈形成術(PCI)を受けた患者に、“false-positive”(偽陽性)の頻度についてのデータは少ない。Minneapolis Heart Institute Foundation at Abbott Northwestern Hospital(アメリカ)のDavid M. Larson氏らは、STEMIが疑われ心カテ室を起動した患者の患者で有病率、病因と偽陽性の結果を評価した。JAMA誌2007年12月19日号にて掲載。STEMI疑いで心カテ室を起動した1,345例を対象本研究は、ミネソタでシステム化されているSTEMI患者へのPCI施行の搬送受け入れ体制で登録された患者を対象に行われた。解析対象となったのは、2003年3月から2006年11月までに登録された1,345例。主要評価項目は、3つの判定基準(非冠動脈、重要な冠動脈疾患でない、心臓生物マーカー陰性)を用いて、STEMIの疑いで心カテ室を起動した患者における偽陽性率。偽陽性へのPCI施行が一般的に起きている血管撮影を受けたSTEMIが疑われた患者1,335例のうち、187例(14%、95%信頼区間:12.2%~16.0%)は非冠動脈で、127例(9.5%、同8.0%~11.2%)は有意な冠動脈疾患がなかった。心臓生物マーカーレベルでは11.2%(95%信頼区間:9.6%~13.0%)で陰性だった。マーカー結果と非冠動脈との組合せでは、患者の9.2%(95%のCI、7.7%-10.9%)が偽陽性だった。30日死亡率は、非冠動脈群2.7%(95%信頼区間:0.4%~5.0%、P=0.33)、冠動脈群4.6%(同3.4%~5.8%)。研究者らは、「偽陽性での心カテ室起動の頻度は、コミュニティで比較的一般的に起きている。最近強調されるdoor-to-balloon timesについて、この結果を考慮しなければならない」と注意を喚起している。(武藤まき:医療ライター)

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重症例に対するアンチトロンビンIII投与は無効なばかりか、むしろ有害

アンチトロンビンIII(AT III)の投与は高価な介入法であるが、重症例に対し広く使用されている。これまでに、無作為化および非無作為化試験に関する4つの小規模なメタ解析が報告されているが、死亡率に関して結論に至るエビデンスは得られていない。 Arash Afshari氏(デンマーク、コペンハーゲン大学Juliane Marieセンター麻酔科)らは、重症例におけるAT IIIの有効性および有害性を評価するために、無作為化試験の系統的レビューおよびメタ解析を行った。BMJ誌12月15日号(オンライン版11月23日号)掲載の報告。2名のレビューワーが個々に文献を選び、データを抽出データベースなどの文献から、2名のレビューワーが個々にAT III投与群とプラセボ群あるいは非介入群を比較したパラレルグループ無作為化臨床試験を選び出し、試験法、介入法、アウトカム、バイアスのリスク、有害事象に関連するデータを抽出した。レビューワーの見解が一致しない場合はディスカッションを行って解決した。ICUに収容された重症例に関する試験は解析対象として適格とし、二重盲検か否かおよび論文の言語は問わないこととした。バイアスのリスクが低い試験とは、適切な無作為化、二重盲検、intention-to-treat解析を行っているものとした。重症例の死亡率を改善せず、出血リスクが増大合計3,458例を無作為に割り付けた20試験が適格規準を満たした。8試験がバイアスのリスクが低いとされた。プラセボ群あるいは非介入群に比べ、AT III投与群は全体の死亡率を低下させなかった(相対リスク:0.96、95%信頼区間:0.89~1.03)。バイアスのリスク、患者集団、ヘパリンによる補助療法の有無に関するサブグループ解析では有意な結果は得られなかった。AT IIIは出血のリスクを増大させた(相対リスク:1.52、95%信頼区間:1.30~1.78)。 trial sequential analysisでは、死亡率の10%以上の低下を「有効」と定義すると、重症例に対するAT IIIの投与はこの基準を満たさなかったことから、「無効」とのエビデンスが示された。以上の知見により、Afshari氏は「AT IIIは重症例の死亡率を改善しないだけでなく、出血のリスクを増大させるため推奨されない」と結論している。(菅野 守:医学ライター)

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来年1月1日からプレミネントの投薬期間制限が解除

アンジオテンシンII受容体拮抗薬(ARB)と少量利尿薬との合剤である「プレミネント」の投薬期間制限が2008年1月1日より解除される。「プレミネント」には2週間に1度の投薬期間制限が設けられているが、発売後の市販直後調査等を経て、1年が経過する来年1月1日より長期処方が可能となる。詳細はプレスリリースへhttp://www.banyu.co.jp/content/corporate/newsroom/2007/product_news_1226.html

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「グリベック」6年間投与の最新データ発表、病期の進行は見られず

「グリベック」(一般名:メシル酸イマチニブ*) の最大の臨床試験であるIRIS (International Randomized Interferon versus ST1571)で得られた最新のデータによると、「グリベック」投与6年目においても病期の進行が見られないことが米国血液学会(ASH)の第49回年次大会で発表された。IRIS試験は、慢性期のPh+CMLと新たに診断された患者さん1,106名を対象に、16カ国177施設で行なわれたオープンラベル方式の第3相臨床試験。試験結果によると、2年間の治療を経た後の年次憎悪率は年々減少を続け、6年目では0%となった。また、「グリベック」による治療を受けた患者の6年目における全生存率は約88%だった。詳細はプレスリリースへhttp://www.novartis.co.jp/news/2007/pr20071220.html

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rosiglitazoneが心血管リスクの増加に関連

2型糖尿病の治療に用いられるインスリン抵抗性改善薬であるチアゾリジン系薬剤(TZDs)は、一方でうっ血性心不全、あるいは急性心筋梗塞のリスクとの関連が指摘される。本報告は、「コホートレベルで関連を調べた研究は少ない」としてTZDsとリスクの関連について後ろ向きコホート研究を行った、カナダ・オンタリオ州Institute for Clinical Evaluative Sciences のLorraine L. Lipscombe氏らによる研究報告。JAMA誌12月12日号掲載より。66歳以上16万の糖尿病患者コホートを解析TZDと他の経口血糖降下薬治療との比較で、うっ血性心不全との間の関連、急性心筋梗塞と死亡率を調査することを目的とする本研究は、カナダ・オンタリの保健データベースを利用し行われた。解析はネステッド・ケースコントロールにて実施。対象は2002年から2005年にかけて、少なくとも1つの経口血糖降下薬の投与を受けた66歳以上の糖尿病患者(N=159,026)で、2006年3月31日まで追跡した。主要評価項目は、うっ血性心不全による救急来院または入院、副次評価項目は急性心筋梗塞による救急来院と全原因死亡率とした。これらイベントのリスク因子を特定するため、TZDs(rosiglitazoneとピオグリタゾン)単独療法を受けた患者と、他の経口血糖降下薬の併用療法を受けた患者とを調整後に比較した。TZD単独療法は有意に心血管リスクを増加追跡期間中央値3.8年の間に12,491例(7.9%)がうっ血性心不全で病院を受診、12,578例(7.9%)が急性心筋梗塞、30,265例(19%)が死亡した。一般に行われるTZD単独療法は他の経口血糖降下薬併用療法(うっ血性心不全3,478例、急性心筋梗塞3,695例、死亡5,529例)と比較して、うっ血性心不全(78例、調整リスク比:1.60、 95%信頼区間:1.21-2.10、P<0.001)、急性心筋梗塞(65例、同1.40、1.05-1.6、P=0.02)、死亡(102例、同1.29、1.02-1.62、P=0.03)で、有意なリスク増大と関連していた。TZD使用に関連したうっ血性心不全、急性心筋梗塞ならびに死亡率のリスク増はrosiglitazoneだけにみられた。研究者らは、このコホート研究によって、高齢糖尿病患者に対する主にrosiglitazoneによるTZD療法は他の経口血糖降下薬併用療法と比較して、うっ血性心不全、急性心筋梗塞、死亡率のリスク増加と関連していたと結論づけている。(朝田哲明:医療ライター)

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新開発のクラミジア迅速検査により即日診断・治療が可能に

クラミジアの核酸増幅検査は、現在使用されている迅速検査よりも感度および特異度が優れるが、高価なため財源が限られた診療所は導入が困難だ。また、核酸増幅検査は結果が出るまでに1~2週間を要するため、治療の勧告やパートナーへの告知に支障が生じる。イギリス・ケンブリッジ大学診断法開発部門の研究グループは、医療財源が限定された状況を想定して非侵襲的な自己採取の膣スワブ標本を用いた新たなクラミジア迅速検査を開発した。 Diagnostics for the Real World(Europe) 社のLourdes Mahilum-Tapay氏らは、クラミジアの診断およびスクリーニングのツールとしての本法の有用性を評価し、BMJ誌12月8日号(オンライン版11月30日号)で報告した。迅速検査と2つの核酸増幅検査を比較若者の性の健康センター(施設1)、泌尿生殖器クリニック(施設2および3)に16~54歳の女性1,349人(施設1:663人、施設2:385人、施設3:301人)が登録された。試験期間は2005年11月~2006年3月。施設1では自己採取した膣スワブを2標本と初尿を提供してもらい、施設2、3では医師の採取による膣スワブ、自己採取膣スワブ、初尿および子宮頸管スワブの提供も受けた。クラミジア迅速検査と、polymerase chain reaction(PCR)アッセイおよびstrand displacement amplification(SDA)アッセイという2つの核酸増幅検査の感度、特異度、陽性的中率、陰性的中率を比較した。また、迅速検査のvisual signalと病原体量の相関、膣スワブの自己採取を受容できるか否かについても評価した。持続感染や感染拡大のリスクを低下させうるPCR法によるクラミジア陽性率は、施設1が8.4%、施設2が9.4%、施設3が6.0%であった。PCR法との比較における迅速検査の感度は83.5%、特異度は98.9%、陽性的中率は86.7%、陰性的中率は98.6%であった。SDA法との比較における迅速検査の感度は81.6%、特異度は98.3%であった。これらの検出能には有意な差は認めなかった。自己採取膣スワブの病原体量はクラミジアプラスミド数換算で5.97×10の2乗~1.09×10の9乗であり、迅速検査のvisual signalと良好な相関を示した(r=0.6435、p<0.0001)。ほとんどの参加者(95.9%)が、膣スワブの自己採取について「快適」と回答した。Mahilum-Tapay氏は、「自己採取膣スワブによるクラミジア迅速検査は即日診断およびスクリーニングのツールとして有用」と結論、「30分以内に結果が得られるため即日治療や接触者の追跡が可能となり、持続感染や感染拡大のリスクを低下させうる。また、スクリーニングにおいて核酸増幅検査に代わる簡便かつ信頼性の高い検査法となる可能性がある」と指摘している。(菅野 守:医学ライター)

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新規CETP阻害薬は血圧を上昇させない?

コレステロールエステル転送蛋白(CETP)阻害薬はHDLを増加させるため、冠動脈イベント抑制作用が期待されていたが、torcetrapibを用いた大規模試験ILLUMINATEでは総死亡と心血管イベントリスクをプラセボに比べ有意に増加させていた。このtorcetrapib群におけるイベント増加の一因として血圧の上昇を指摘する声があったが、新規CETP阻害薬anacetrapibには血圧に対する悪影響はないかもしれない。Merck Research Laboratories(アメリカ)のRajesh Krishna氏らがLancet誌12月8日号で報告した。健常者に低脂肪食下で血圧評価本研究では自由行動下血圧(ABP)を用いて血圧への影響を検討した。45~75歳の健常者22名をanacetrapib 150mg/日群とプラセボ群に11例ずつ割り付け、服用開始10日後の24時間ABPを測定した。その後、最低14日間の無服薬期間経過後、プラセボ群とanacetrapib群を入れ替え、再び服用開始10日後に24時間ABPを測定した。試験期間中は低脂肪食が供された(理由不詳)。まず血圧日内変動だが、anacetrapib群とプラセボ群に大きな差はなかった。また24時間血圧の最小二乗平均値で比較すると、プラセボ群に比べanacetrapib群では0.60/0.47mmHgの上昇を認めたのみだった(有意差なし)。HDL-Cは用量依存性で有意に増加本論文にはもう1つ研究が収められている。こちらは脂質代謝異常例を対象とした用量発見試験であり、50例をプラセボ群とanacetrapib 10~300mg/日の4群にそれぞれ10例ずつ無作為割り付けた。服用開始28日後、anacetrapib群ではいずれもプラセボ群に比べHDLコレステロール(HDL-C)が有意に増加していた。HDL-C増加作用は用量依存性であり、300mg/日群で最も強力となっていた。torcetrapibとの違いは?本論文では脂質代謝異常例における血圧データは示されず、またtorcetrapibによる血圧上昇の一因とされた「血中アルドステロンの増加」の有無を見ていないのも残念だ。考察においてKrishna氏らはtorcetrapibとの違いを強調しているが、torcetrapibも162例を8週間追跡した第II相試験では明らかな血圧上昇は認められていない。さらなるデータを待ちたい。 (宇津貴史:医学レポーター)

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バクロフェンはアルコール性肝硬変患者の断酒推進に有効だ

アルコール性肝硬変患者の最も効果的な治療は「断酒」である。ここ数十年の間に、断酒や飲酒再発予防への作用効果が期待される薬がいくつか登場しているが、薬剤性肝障害などを引き起こす可能性が高いことから、薬理学的試験でアルコール性肝硬変患者の飲酒に関しては決まって対象外とされている。ローマ・カトリック大学内科のGiovanni Addolorato氏らは、γアミノ酪酸(GABA:脳や脊髄に存在するアミノ酸の一種で主要な神経伝達物質)受容体作用薬で、日本では抗痙縮薬として保険収載されているバクロフェンの、アルコール性肝硬変患者の断酒効果と安全性について臨床試験を行った。LANCET誌12月8日号より。低肝代謝に着目、プラセボ対照無作為化試験バクロフェンに着目した背景としてAddolorato氏らは、肝代謝が15%と低く大半が腎から排出される点、またアルコール依存症患者あるいは中枢神経疾患患者でいずれも副作用としての肝障害が報告されていないことを挙げている。治験は2003年10月~2006年11月の間にローマ・カトリック大学内科に紹介されてきたアルコール性肝硬変患者148例を対象に行われた。このうち84例を、経口バクロフェン投与群またはプラセボ投与群に無作為に割り付け、12週間投与が行われた。主要評価項目は、断酒を成し遂げ維持できている患者の比率。断酒できた患者総数と断酒継続期間の結果を、外来来診時に評価する方法で行われた。飲酒再発とは、最低1ヵ月の間に、1日4杯以上飲酒もしくは週に14杯以上飲酒した場合と定義された。断酒率71% vs 29%、継続期間は62.8日 vs 30.8日断酒を成し遂げ維持できていた患者は、バクロフェン投与群71%(30/42例)、プラセボ投与群は29%(12/42例)で、オッズ比は6.3(95%信頼区間:2.4-16.1、p=0.0001)。脱落者(治療打ち切り)数は、バクロフェン投与群14%(6/42例)に対しプラセボ投与群は31%(13/42例)だった(p=0.12)。断酒継続期間は、バクロフェン投与群の平均値は62.8日(SE 5.4)で、プラセボ投与群の30.8日(SE 5.5)に比べ約2倍だった(p=0.001)。肝性の副作用は記録されていない。以上からAddolorato氏らは、「バクロフェンは、アルコール性肝硬変患者の断酒推進に有効だ。薬剤として十分通用し、治療において重大な効果を発揮するだろう」と結論づけている。

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「スパイ事件だから私は大丈夫」リトビネンコ事件後の健康リスク意識

2006年11月にロンドン中心部で発生したポロニウム-210(210Po)によるリトビネンコ氏毒殺事件後、ロンドン市民の毒物曝露リスクへの関心は低かったという。この事実は、公衆衛生にかかわる事故発生の最中に、一般市民にそのリスクの詳細を包括的かつ効果的に伝えることの重要性を改めて浮き彫りにした。 King’s College London(ロンドン大学)精神科のG. James Rubin氏らは、当該事件後に健康リスクに関する一般市民の意識調査を実施、公衆衛生学的な情報伝達(public health communications)の評価を行った。BMJ誌11月1日付オンライン版、12月1日付本誌掲載の報告から。健康リスクを意識した市民は11.7%にすぎないロンドン市民1,000人を対象に横断的調査を行い、毒物曝露の可能性があった86人に質的インタビュー(qualitative interview)を実施した。210Po事件後、個々人が自らの健康リスクをどう認識したかを調査し、質的インタビューでは情報ニーズをどの程度重視しているかを解析した。横断的調査で、「自分の健康が危険にさらされている」と認識していたのは117人(11.7%)であった。健康リスクを意識した主な予測因子は、「これはスパイ事件ではなくテロリズムだ」という思いこみであった(オッズ比:2.7)。これは、テロリズムのターゲットが一個人ではなく広く公衆一般だからであり(オッズ比:5.9)、汚染地区にいなかった人々の認識に影響を及ぼしていた(オッズ比:3.2)。包括的で詳細な曝露リスク情報へのアクセスが重要質的インタビューを受けた者は全般に、得られた情報には満足していたが、個人的な曝露のリスク、尿検査の結果、事件が健康に及ぼす影響についてもっと多くの情報を望んでいた。Rubin氏は、「2006年、ロンドンで起きた210Po事件後のロンドン市民の健康リスクへの関心は低かったが、これは汚染がスパイ活動に関連したものでターゲットは公衆一般ではなく、曝露されなかった市民にリスクはないと認識したためだ」と結論している。また、「将来、起きるであろう事故の際は、曝露のリスクに関する包括的で詳細な情報への自在なアクセスを保障することが重要だ」と指摘している。(菅野 守:医学ライター)

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コレステロール低値の脳卒中死リスクは必ずしも低くない

観察研究のメタ解析としては最も信頼性の高いProspective Studies Collaboration(PSC)が、血清脂質と心血管系イベントに関する解析をLancet誌12月1日号で公表した。虚血性心疾患死のリスクは予想通り、血清総コレステロール(TC)低値例で年齢を問わず低かった。一方、脳卒中死では、TC高値がリスクとなっていたのは、相対的若年者と収縮期血圧がほぼ正常である場合のみだった。約90万例、1千万例・年のデータを解析解析対象となったのは、観察開始時に心血管系疾患の既往がなかった40~89歳の89万2,337人。前向きコホート研究61件のデータが集められた。わが国からのデータも含まれているが、主として欧米人の成績である。また一般的なメタ解析と異なり、PSC解析では原則として、オリジナルデータが入手可能だった。1,160万人・年のサンプル(平均追跡期間13年)中、55,262例が血管系イベントで死亡していた。内訳は「虚血性心疾患死」が33,744例、「脳卒中死」11,663例、「その他の血管死」が9,855例である。虚血性心疾患リスクはTC低値に従い減少性別、年齢と参加した試験で補正後、血清脂質と死亡リスクの関係を検討すると、以下が明らかになった。まず虚血性心疾患死のリスクだが、リスク対数値とTC値の間に正の相関を認めた。年齢の高低、性別を問わず、TC値が37.8mg/dL(1mmol/L)低いと虚血性心疾患死のリスクも有意に低かったが、相対リスクの減少率は若年者で顕著であり、高齢になるに従ってTC低値による相対リスク減少率は小さくなっていた。また、このTC低値における虚血性心疾患リスクの減少は、収縮期血圧の高低、喫煙習慣の有無、BMIの高低を問わず認められた。脳卒中リスクは血圧145mmHg以上では有意に大きい一方、脳卒中死リスク(対数値)とTC値は、40~59歳で弱い正の相関が認められるのみで、それより高齢では相関していなかった。試験開始時の収縮期血圧別に検討すると、「145mmHg未満」ではTC値が37.8mg/dL低値であれば脳卒中死リスクは有意に低くなっていたが、「145mmHg以上」であった場合、リスクは逆に有意に大きくなっていた。この脳卒中と総コレステロールの関係については、更に検討する必要があると著者らは記している。なお本コホートにおける「非血管系死亡」は42,865例。TCが37.8mg/dL低値だとリスクは相対的に10%有意に増加していた(95%信頼区間:1.08~1.11)。この結果を著者らは、TCを低下させる基礎疾患などによりリスクが増加した結果であろうと記している。TC値と総死亡の関係は示されていないが、TC低値は「虚血性心疾患死」のリスクは低いが、血圧コントロール不良例では「脳卒中」抑制に注力が必要であり、また一般的にTC低値例では続発性の低コレステロール血症を除外する重要性が示された。 (宇津貴史:医学レポーター)

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先進国の児童福祉改善には経済発展より格差是正を

2007年4月にユニセフが公表した、OECD加盟の経済先進国の子どもや若者を取り巻く状況に関する研究報告書(Report Card 7)で、イギリスの子どもは最も評価が低く、次いでアメリカが低位であることが報告された(日本は一部のデータが不足していたため総合評価には含まれていない)。 子どものウェルビーイング(児童福祉)の状況は、その国の社会経済学的状態と密接に関連しているといわれていることから、ヨーク大学(イギリス)のKate E Pickett氏らのグループは、児童福祉格差の状況を明らかにするため、3つのマクロ経済的尺度との関連について調査を行った。BMJ誌オンライン版11月16日付け、本誌11月24日号より。OECD 23ヵ国間とアメリカ国内間の児童福祉を縦断評価3つの尺度とは、「物質的な生活水準(平均収入)」「社会的地位の格差(収入格差)」「社会的疎外(相対的貧困家庭で生活する小児の割合を評価)」。これらについて、ユニセフに報告されたOECD 23ヵ国間の横断比較を行い、国際的な関連性を確認するためアメリカ国内の州間の解析も行った。主要評価項目は、児童福祉に関するユニセフ報告の指標。アメリカ国内については8つの指標(10代の出産、青少年の殺人、乳児死亡率、低体重出生、教育パフォーマンス、高校の中退、肥満、精神保健上の問題)を用いた。児童福祉は平均収入より収入格差、相対的貧困と負の相関その結果、児童福祉指標は総合的に「収入格差(r=-0.64、P=0.001)」と「相対的貧困(r=-0.67、P=0.001)」との間で負の相関が認められ、「平均収入」との相関は認められなかった(r=0.15、P=0.50)。各指標を見ても大半が、「平均収入」より「収入格差」あるいは「相対的貧困」と関連していた。アメリカ国内では、ワシントンDCと他の各州とですべての指標の格差が有意に大きかった。10代の出産率と高校中退率については、豊かな州ほどより低い傾向がみられた。これらからPickett氏らは、「先進国の児童福祉の改善には、国家のさらなる経済成長よりも国内の経済格差の是正に努めたほうがよい」と結論づけた。

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torcetrapibの臨床試験ILLUMINATEの結果

本報告は、コレステロールエステル転送蛋白(CETP)の抑制が血漿リポ蛋白レベルに重要な影響を及ぼすことが示され開発が進められていた、CETP阻害薬torcetrapib(2006年12月開発中止)の臨床試験ILLUMINATEの結果。NEJM誌オンライン版11月5日付け、本誌11月22日号で掲載された。強力なCETP阻害薬torcetrapibが重大な心血管イベントを減少させるかどうかについて調査された本治験は、結果として投与を受けた患者の死亡リスクと心イベントが増加したため早期に中止された。HDL-Cの増加とLDL-Cの減少は有意も血圧上昇を伴うILLUMINATEは、心血管リスクの高い15,067例の患者を対象とする無作為化二重盲検試験。患者はtorcetrapib+アトロバスタチンの併用、またはアトロバスタチン単独のいずれかに割り付けられた。主要評価項目は最初の重大な心血管イベントまでの期間とした。重大な心血管イベントとは、虚血性心疾患による死亡、非致死的心筋梗塞、脳卒中、不安定狭心症による入院と定義された。12ヵ月時点で、torcetrapibを投与された患者はベースラインと比較して、高比重リポ蛋白コレステロール(HDL-C)が72.1%上昇、低比重リポ蛋白コレステロール(LDL-C)は24.9%低下(P

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病棟の迅速対応チーム(RRT)は小児患者でも有効

迅速対応チーム(rapid response team:RRT、別名メディカル対応チームまたはメディカル緊急チーム)は、ICU以外の入院病棟でのコード(呼吸停止、心肺停止等)による患者死亡を減少させるために導入されたもので、これまで成人患者に関する成果は報告されているが、小児患者については死亡率、コード率の有意な減少を示すデータは公表されていない。そこでスタンフォード大学医学部小児部門のPaul J. Sharek氏らが、小児病院でRRT導入前後の検証を行った。JAMA誌11月21日号掲載より。小児病院でRRT導入前後の死亡率、コード率を検証本研究は、264床を有するスタンフォード大学附属の高度小児医療専門病院で行われた。2001年1月1日から2007年3月31日の間に、同院医療病棟または外来外科手術病棟で少なくとも1日を過ごした小児入院患者計22,037例、102,537 入院日(patient-days)が検討対象で、このうち2005年9月1日以後の入院患者7,257例、34,420入院日分がRRT導入後群。RRTは、小児科ICU訓練を受けたフェローまたは指導医、ICU看護師、ICU呼吸療法士、看護師長から構成。チームは統一基準を用いて活動し、24時間体制で入院患者のアセスメント、治療、トリアージに対応する。主要転帰は、ICUを除く病棟の死亡率、コード率(呼吸停止、心肺停止)とされ、すべての転帰はケースミックス指標値で調整された。死亡率18%減、コード率70%減RRT導入後、平均月間死亡率は18%減少(100退院当たり死亡1.01→0.83)した。平均月間コード率は、1,000入院当たりでは71.7%減少(2.45→0.69)、1,000入院日当たりでみた場合は71.2%(0.52→0.15)減少しており、導入後の推定コード率は、1,000入院当たりでは導入前の0.28倍、1,000入院日当たりでは0.29倍。この結果を受けSharek氏らは、「RRT導入は小児科でも、死亡率、コード率の統計学的な有意な減少が示された」と結論。患者特性、重症度は検討していないものの19ヵ月間で33例の小児が救われたと推定される今回の結果は劇的であると述べる一方、将来的な課題としては、成人患者と混在する病院での検討および、特に費用対効果について検証する必要があるとまとめている。(武藤まき:医療ライター)

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前立腺癌肥満者の血液希釈とPSA濃度との関係

肥満者の血清前立腺特異抗原(PSA)濃度が非肥満者より低いことが、最近の研究で示唆されている。デューク大学メディカルセンター(アメリカ)のLionel L. Banez氏らのグループは、ボディマス指数(BMI)の高い男性のほうが循環血漿量も多いので、肥満者の低PSAは血液希釈が原因かもしれないと仮定。検証結果をJAMA誌2007年11月21日号に報告した。根治的切除術を受けた患者の後ろ向き研究を実施血液希釈とPSAとの関連を前立腺癌の肥満者で判定するため、根治的前立腺切除術を受けた男性の後ろ向き研究を行った。3施設[Shared Equal Access Regional Cancer Hospital(n=1,373)、Duke Prostate Center(n=1,974)、Johns Hopkins Hospital(n=10,287)]で1988年から2006年までに手術を受けた患者のデータベースが用いられた。主要評価項目は、平均PSA濃度、平均血漿量、平均PSA質量(全循環PSA蛋白、血漿量と掛け合わせて算出)とBMI値との関係。PSA質量は傾向のP値を決定することで評価された。結果は臨床病理学的な特性を制御した後、検証された。高BMIと低PSAの相関を評価する前向き研究が必要と結論すべてのコホートにおいて、高BMIと高血漿量とは有意に相関しており(傾向のP<0.001)、低PSAとも有意に相関していた(傾向のP≦0.02)。3つのコホートのうち2つにおいて、PSA質量は、BMIの増加に伴う有意な変化はなかったが、残り1つのコホートでは、高BMIとPSA質量増加とに相関がみられた(傾向のP<0.001)。ただしBMI値25以下カテゴリーと他の各カテゴリーとの間だけにみられたものである。Banez氏らは、「高BMIと高血漿量とは相関することが確認された。したがって、前立腺癌の肥満患者における低PSAの1つの原因として、血液希釈の可能性は十分に考えられる」と結論し、「この相関を評価するためスクリーニング集団での前向き研究を行う必要がある」と最後に提言した。(朝田哲明:医療ライター)

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一般医への1日集中トレーニングで患者の服薬コンプライアンス改善

一般医を対象に高血圧治療に関する集中トレーニングを1日行うだけで、患者の服薬コンプライアンスが有意に改善することが初めて、地域住民を対象とした無作為化試験により確認された。Aga Khan University(パキスタン)のNudrat Noor Qureshi氏らによる報告として、BMJ誌オンライン版11月8日付け早期公開、本誌11月17日号で掲載された。治療アルゴリズムと診療態度を指導本研究では、一般医にて高血圧治療を受けているカラチ住民178例を、受診しているクリニックを基準にクラスター無作為化により、医師「トレーニング」群(81例)と「対照」群(97例)に割り付けた。両群の患者背景に有意差はない。「トレーニング」群に割り付けられた医師たちは1日かけて集中講義を受け、各国高血圧ガイドラインに沿った治療アルゴリズムと、患者に対する十分かつ適切な態度と説明方法を解説された(外務省の情報によると、パキスタンではまだ「『患者を診てやる!』という姿勢が主流」とのこと)。また降圧治療のマニュアル並びにポスターが配布された。一方、対照群の医師は何ら特別な講習は受けていない。降圧薬服薬率はトレーニング群48%、対照群32.4%その結果、受診6週間後の降圧薬服用率は、「トレーニング」群の医師を受診した患者では48%(95%信頼区間:35.8~60.4%)で、32.4%(95%信頼区間:22.6~42.3%)の「対照」群に比べ有意に高かった(p=0.048)。両群で処方された薬剤の詳細は不明だが、降圧薬にかかるコストに有意差はなかった。「指示通りの服薬」に影響を与える有意な因子を多変量解析で探ったところ、医師側の要因としては「服薬の目的を患者に説明」という項目が残った。確かに「トレーニング」群では服薬目的を患者に説明する医師が「対照」群に比べ有意に多かったが、それでも37%のみだった(p=0.01、vs 「対照」群:17%)。著者はこれらより、医師からの患者へのコミュニケーションの重要さを訴え、特に人的資源が限られている発展途上国ではこのようなアプローチが必要だろうと結論している。なお社会経済的にパキスタンの対極に位置する米国では,薬剤師による指導が服薬コンプライアンスを改善するという無作為化試験が報告されている (FAME Study. JAMA 2006; 296: 2563)。 (宇津貴史:医学レポーター)

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