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ACE阻害薬とARBの併用療法は心血管疾患発症抑制においてもはや有用でない-ARB史上最大規模の試験「ONTARGET試験」は何をもたらしたか(1)-

 4日、先頃、発表されたONTARGET試験の発表を受けて、日本ベーリンガーインゲルハイム株式会社、アステラス製薬株式会社は、ARBテルミサルタン(販売名:ミカルディス)が心血管疾患のハイリスク患者に対して、既に心血管疾患の発症抑制効果が確立しているACE阻害薬ラミプリルと同等の効果を有することを発表し、同日、檜垣實男氏(愛媛大学大学院 病態情報内科学 教授)はその意義についてプレスセミナーにおいて講演した。ここではその内容を基にONTARGET試験に関していくつかの観点からレビューする。ONTARGET試験では心血管イベントハイリスク患者を対象にARB(ミカルディス、一般名:テルミサルタン)単独投与のACE阻害薬(一般名:ラミプリル)単独投与に対する非劣性と、テルミサルタンとACE阻害薬併用療法のACE阻害薬単独投与に対する優越性を検証された。その結果は3月31日、第57回米国心臓病学会(ACC)にて発表された。また、この内容はNew England Journal of Medicine誌4月10日号に発表される予定である(インターネット上には31日、掲載されている)。(1)ACE阻害薬とARBの併用療法はもはや有用でない ONTARGET試験の中で、最も注目した結果は、ACE阻害薬とARBの併用療法が、ACE阻害薬単独投与に比べて優越性を示せなかったことである。ONTARGET試験では、1次評価項目として「心血管死、心筋梗塞、脳卒中、心不全による入院のいずれかの発現」と複合心血管イベントが設定されたが、その発現率は、ACE阻害薬単独投与群で16.5%、ACE阻害薬とARBの併用群で16.3%であった。1次評価項目における併用療法のACE阻害薬に対するハザード比は0.99(95%信頼区間:0.92-1.07)であり、ACE阻害薬にARBを併用しても有意な心血管系イベントの改善には至らなかったのだ。 そもそも、なぜ、この試験が行われたか。ACE阻害薬はアンジオテンシンIからアンジオテンシンIIへの変換を促進させる酵素ACEを阻害することによってアンジオテンシンIIの産生を抑制する。しかし、アンジオテンシンIIはキマーゼなどACE以外の酵素によっても産生され、完全にはレニン・アンジオテシン系(RAS)をブロックできない。ARBはアンジオテンシンII受容体を直接遮断する。したがってACE阻害薬とARBの併用によるRASのデュアルブロックによって、ACE阻害薬で証明されている数々の心血管疾患発症抑制効果がさらに増強されると期待されていた。 これまでにACE阻害薬とARBの併用療法の有用性を検証した臨床試験はONTARGET試験が初めてではない。大規模な試験としては、心筋梗塞後の左室収縮不全または心不全例に対してバルサルタン(販売名:ディオバン)とカプトプリル(カプトリル)の併用療法の有用性を検証したVALIANT試験と、慢性心不全例に対してカンデサルタン(販売名:ブロプレス)とACE阻害薬(どのACE阻害薬を選択するかは医師の判断:エナラプリル27%、リシノプリル19%、カプトプリル17%)の併用療法の有用性を検証したCHARM-Added試験がある。 これらの結果は対照的なものとなった。すなわち、VALIANT試験では併用療法がACE阻害薬単独投与に対して優越性を示せず、CHARM-Added試験では併用療法が単独療法に対して優越性を示したのである。 Yusuf氏らはONTARGET試験やVALIANT試験の対象は、他の薬剤によって治療が成功している集団であったため、ACE阻害薬とARBの最大投与量を用いたRASのデュアルブロックによる臨床ベネフィットはほとんど得られなかったのではないかと考察している。 また、安全性面に目を向けてみると、ONTARGET試験では、ACE阻害薬とARBの併用療法によって低血圧、失神、腎機能障害、高カリウム血症が有意に増加し、透析を必要とする腎不全も増加傾向にあった。これらを受け、檜垣氏は「ハイリスク例では副作用が増加するだけで、併用療法の有用性は心不全例を除いては期待できない」と述べた。 血圧値は141.8/82.1mmHgからACE阻害薬投与によって6.4/4.3mmHg降下し、ACE阻害薬とARBの併用療法によって9.8/6.3mmHg降下した。すなわち、その差は2.4/1.4mmHg。この血圧差からは4-5%のイベント抑制が期待できるとしているが、今回はそこまでの結果に至らなかった。テルミサルタンを併用しても血圧差が2.4/1.4mmHgであったこと、血圧差があったにも関わらず、一次評価項目で全く差がなかったのはなぜか、まだ疑問は残る。 一方、わが国で保存期腎不全例を対象にACE阻害薬(トランドラプリル)とARB(ロサルタン)の併用療法は、それぞれの単独療法に比べ腎不全への進行を抑制することができたことがCOOPERATE試験より証明されており、我々もLancet誌発表直後に著者の中尾尚之氏に独占インタビューした。心血管疾患発症抑制ではなく、腎疾患の進展抑制における併用療法の効果について期待できるかもしれない。 2007年6月に弊社が独自に調査した結果によると、高血圧症例を10例/月に診察している医師(n=503)がCa拮抗薬およびARBが投与されている例で降圧効果が不十分な場合、増量、切り換え、追加などの中から、ACE阻害薬を追加投与し、3剤併用を選択する割合は平均5.2%であった。まだ、臨床においてはARBとACE阻害薬の併用投与が行われている。今回のONTARGETの結果は、ハイリスク患者における心血管疾患発症抑制を目的としたACE阻害薬とARBの併用療法の臨床意義は期待できないことを証明したといえる。 次回は「ARB投与による冠動脈疾患発症抑制」についてレビューする。

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レビトラの高脂血症併発ED患者への効果 

バイエル ヘルスケア社は、第23回欧州泌尿器科学会年会(EAU2008)において、レビトラ(塩酸バルデナフィル)が脂質代謝障害を有するED(勃起不全)患者に対する治療として有効であることが報告されたと発表した。約400名の男性が参加した二重盲検プラセボ比較試験で、高脂血症を伴うED患者へのレビトラの安全性及び効果をプロスペクティブ(前向き介入)に評価したもの。試験参加者全員がスタチン製剤による高脂血症の治療を受けていたが、12週間後、レビトラ錠はプラセボ(偽薬)群に比べて挿入の成功率と勃起の維持を有意に改善した。詳細はプレスリリースへhttp://byl.bayer.co.jp/scripts/pages/jp/press_release/press_detail/?file_path=2008%2Fnews2008-04-03.html

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iPodなどのデジタル音楽プレーヤーは心臓ペースメーカーに影響するのか

iPodをはじめとするデジタル音楽プレーヤーの心臓ペースメーカーへの影響が指摘されていたが、その影響はないとの研究が「Heart Rhythm」4月号に発表された。それによると、ペースメーカーまたは埋め込み型除細動器(ICD)を使用する患者51人を対象に検査を実施、4機種のデジタル音楽プレーヤー(Apple Nano, Apple Video, SanDisk Sansa, Microsoft Zune)をペースメーカーおよびICDの近くで再生した結果、影響は一切認められなかった、という。ただし、医師がペースメーカーを調整時にデジタル音楽プレーヤーを使用していると影響がでるとの指摘。詳細はアブストラクトへDigital music players cause interference with interrogation telemetry for pacemakers and implantable cardioverter-defibrillators without affecting device function

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関節リウマチに対する新たな生物学的製剤トシリズマブの有用性を確認

関節リウマチ治療における新たな生物学的製剤として、日本で開発されたヒト化抗インターロイキン(IL)-6受容体モノクローナル抗体トシリズマブ(商品名:アクテムラ)の有用性を示唆する第III相試験(OPTION study)の結果が、オーストリアVienna医科大学リウマチ科のJosef S Smolen氏によりLancet誌2008年3月22日号で報告された。IL-6は免疫および炎症反応に広範な作用を及ぼすが、この系を介して関節リウマチの発症にも関与すると考えられている。トシリズマブは、すでに日本およびヨーロッパの第II相試験で関節リウマチに対する有効性が示されていた。メトトレキサートとの併用で、2種類の用量とプラセボを比較トシリズマブはIL-6受容体を阻害することでIL-6を遮断する。Smolen氏らは、関節リウマチに対するトシリズマブの有用性を評価する二重盲検無作為化プラセボ対照パラレルグループ第III相試験を実施した。2005年2月~2006年11月の間に17か国の73施設から中等度~重度の関節リウマチ623例が登録された。これらの症例が、メトトレキサート(10~25mg/週)との併用においてトシリズマブ 8mg/kg(205例)、同4mg/kg(214例)、プラセボ(204例)を4週ごとに静注投与する群に無作為に割り付けられた。治療期間は24週で、16週の時点で腫脹関節数(SJC)および圧痛関節数(TJC)の双方の改善が20%に満たない場合は、トシリズマブ 8mg/kgを用いたレスキュー治療が行われた。主要評価項目は、24週の時点で米国リウマチ学会(ACR)の判定規準による関節リウマチの徴候および症状が20%以上改善した症例の割合(ACR 20%改善率)とした。ACR 20%改善率:8mg/kg群59%、4mg/kg群48%、プラセボ群26%622例がintention-to-treat解析の対象となった。ACR 20%改善率は、8mg/kg群が59%(120/205例)、4mg/kg群が48%(102/214例)、プラセボ群が26%(54/204例)であり、プラセボ群に対する8mg/kg群のオッズ比は4.0(p<0.0001)、4mg/kg群のオッズ比は2.6(p<0.0001)と有意な改善効果が認められた。ほぼ寛解とされるACR 70%改善率は、プラセボ群の2%に対し、8mg/kg群が22%、4mg/kg群が12%であった[プラセボ群に対するオッズ比はそれぞれ14.2(p<0.0001)、7.0(p<0.0001)]。少なくとも1つ以上の有害事象を発現した症例の割合は、プラセボ群の63%(129/204例)に対し、8mg/kg群が69%(143/205例)、4mg/kg群が71%(151/214例)と治療群で多い傾向が見られた。最も高頻度に見られた重篤な有害事象は、重症感染症あるいはインフェステーション(外寄生)であり、8mg/kg群で6例、4mg/kg群で3例、プラセボ群で2例が報告された。Smolen氏は、「トシリズマブは中等度~重度の活動性関節リウマチに対し有効な治療アプローチと考えられる」と結論し、「治療開始後2~4週には明らかな改善効果が認められ、効果は治療期間を通じて維持され、治療終了後も持続した。2種類の用量の比較は本試験の目的ではないが、8mg/kgのほうが強固な治療効果を示した」と指摘している。(菅野守:医学ライター)

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結腸・直腸癌の肝転移に対する手術+化学療法は適格例、切除例に有効

結腸・直腸癌の肝転移に対し、手術と術前・後の化学療法を併用すると適格例および切除例の無増悪生存率(PFS)が改善することが、Bernard Nordlinger 氏らEORTC Intergroupの検討で明らかとなった。毎年、世界で約100万人が結腸・直腸癌と診断され、その40~50%に肝転移がみつかる。転移巣が切除可能な場合は5年生存率は35%に達するが、切除しても75%が再発するという。そのため、再発リスクを低減させるアプローチの探索が進められている。Lancet誌2008年3月22日号掲載の報告。術前FOLFOX4+手術+術後FOLFOX4群と手術単独群を比較研究グループは、結腸・直腸癌の切除可能肝転移例(転移巣数≦4)を対象に、手術+術前・後化学療法と手術単独を比較する無作為化対照比較試験を実施した。今回の報告は、プロトコールに規定されていない時点での中間解析によるPFSの最終データについてであり、全生存率は含まれない。2000年10月~2004年7月の間に11か国の78施設から364例が登録され、FOLFOX4(フルオロウラシル/ロイコボリン+オキサリプラチン)を6コース施行後に手術を行い、さらにFOLFOX4を6コース実施する群(182例)と手術単独群(182例)に無作為に割り付けられた。主要評価項目はPFSのハザード比≦0.71とした。intention-to-treat解析のほか、適格例(併用群:171例、単独群:171例)および切除例(併用群:151例、単独群:152例)に限定した解析も行った。ITT解析ではPFSに有意差なし、適格例、切除例で有意に改善術前FOLFOX4施行(中央値6コース)後は151例(83%)が切除可能であり、115例(63%)が術後FOLFOX4(中央値6コース)を受療した。手術単独群では152例(84%)が切除可能であった。3年PFSは、単独群の28.1%に対し併用群は35.4%と7.3%増加したが、ハザード比は0.79であり有意差を認めなかった(p=0.058)。一方、適格例の3年PFSは、単独群28.1%、併用群36.2%と8.1%増加(ハザード比:0.77、p=0.041)し、切除例ではそれぞれ33.2%、42.4%と9.2%増加(ハザード比:0.73、p=0.025)しており、いずれも有意な差が見られた。解析時までに単独群で75例が、併用群では64例が死亡した。回復可能な術後合併症の頻度は、単独群(16%、27/170例)よりも併用群(25%、40/159例)で高かった(p=0.04)。手術関連の死亡例は単独群2例、併用群1例であった。Nordlinger 氏は、「FOLFOX4による化学療法と肝転移巣切除術は併用可能であり、適格例および切除例では再発のリスクを低減する」と結論している。なお、同じ号の本論文に対するコメントで、米国MDアンダーソン癌センターのScott Kopetz 氏とJean-Nicolas Vauthey氏は、ITT解析では有意差がないこと、適格例と切除例の解析は事前にプロトコールに規定のない後付け解析である点に着目し、「本試験では、術前・後の化学療法の併用によるPFSに対するポジティブな効果は証明されていない」と指摘している。(菅野守:医学ライター)

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PCI後のスタチン投与は、糖尿病例で、高い心血管イベント抑制率を示す

冠動脈インターベンション(PCI)後のスタチン投与が、心血管イベントの発症に与える影響を、糖尿病例と非糖尿病例のそれぞれに対し検討した試験の結果が、日本循環器学会総会・学術集会のLate Breakingにおいて発表された。発表者は、小島淳氏(熊本大学循環器病態学)。これまで、①糖尿病例に対するPCIは、非糖尿病例に比較し予後が悪いこと ②PCI施行後のスタチン投与は、フルバスタチンを用いたLIPSにより心血管イベントを抑制することが報告されていること ③糖尿病例へのスタチン投与は、アトルルバスタチンを用いたCARDSにより、心血管イベントの発症を抑制すること 等がわかっている。そこで、今回小島氏らは、PCI後のスタチン投与が、心血管イベントの発症に与える影響を、糖尿病例と非糖尿病例のそれぞれに対し検討した。試験で用いられたスタチンの用量は我が国の標準用量で、薬剤の内訳は、プラバスタチン約50%、アトルバスタチン約40%であった。試験終了時LDL-Cは100mg/dL未満に低下した。一次エンドポイントであった心血管イベント(MACCE)は、糖尿病例では、スタチン投与により相対リスクが66%減少し(p=0.002)、非糖尿病例では、24%減少したが、有意差は認められなかった。特に糖尿病例へのスタチン投与は、NNTが8となり、高い効果を示した。この試験により、正常なコレステロール値を持つ糖尿病患者に対し、PCI後に、我が国の標準用量のスタチンを処方することは、非糖尿病例に比較し、高い臨床的ベネフィットをもたらすことが示された。そして、小島氏は、糖尿病例と非糖尿病例の心血管イベント発症抑制作用の違いには、スタチンの糖尿病例へのPleiotropic effectがひとつの原因ではないか、と考察した。(ケアネット 鈴木 渉)

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アトルバスタチンとピタバスタチンに、日本人のACS例におけるプラーク退縮作用が確認される(日本循環器学会)

3月28日、注目を集めていたJAPAN-ACSの結果が、木村剛氏(京都大学循環器内科学)により日本循環器学会総会・学術集会Late Breakingにおいて、発表された。JAPAN-ACSは、急性冠症候群(ACS)307例を対象にアトルバスタチン20mg(154例)、または、ピタバスタチン4mg群(153例)に無作為割付し、8~12ヵ月間の投与後、プラーク容積の変化を比較検討した試験である。これまでにも、ストロングスタチンによる積極的な脂質低下療法が、冠動脈疾患既往例の心血管イベントを抑制することや、プラークを退縮させることは発表されていた。そして、アトルバスタチンでは、ESTABLISH試験により、日本人のACS例におけるプラーク退縮作用も既に確認されている。しかし、その規模が少人数を対象とした試験で、一施設のデータであったことなどから、医師主導の大規模な多施設試験が行われた。JAPAN-ACSでは、8~12ヵ月の投与後いずれの脂質プロファイルにおいても、ピタバスタチン群とアトルバスタチン群で有意な差は認められなかった。一次エンドポイントであるプラーク容積は、ピタバスタチン群で、-16.9(±13.9)、アトルバスタチン群で、-18.1(±14.2)と、両群ともに、プラーク退縮が認められた。また、ピタバスタチンのアトルバスタチンに対する非劣性が認められた。さらに、安全性の面でも、両群間に有意差が認められなかった。JAPAN-ACSで、新たに興味深いデータとなったのは、LDL-Cの減少率と、プラーク退縮の間に相関関係が認められなかった点である。この点に注目し、多変量解析した結果、糖尿病の有無、ベースラインのプラーク容積、ベースラインのRLP-C(レムナント様タンパク)値に相関が認められた。特に、糖尿病例では、非糖尿病例に比べプラーク退縮率が約65%と低かった。今後、JAPAN-ACSの詳細なデータ解析が実施され、様々な報告が行われる予定である。(ケアネット 鈴木 渉)

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副鼻腔炎に抗生物質の使用を正当化する臨床徴候、症状はない

副鼻腔炎はウイルス感染と細菌感染の鑑別が困難なため、プライマリ・ケア医は急性副鼻腔炎に対し抗生物質を過剰に処方しがちだという。スイスBasel大学病院臨床疫学研究所のJim Young氏らは、副鼻腔炎には、抗生物質が有効な症例を同定しうる一般的な徴候や症状はないことを確認、Lancet誌2008年3月15日号で報告した。米国では、受診理由の第3位が上部気道感染症で、その約1/3を急性副鼻腔炎が占め、さらにその80%が抗生物質を処方されている。ヨーロッパでもプライマリ・ケアにおける抗生物質処方の72~92%が急性副鼻腔炎とされる。無作為化試験に登録された症例の個々のデータを再解析研究グループは、抗生物質が有効な副鼻腔炎の一般的な徴候、症状を評価するために、個々の症例のデータに基づいて無作為化試験のメタ解析を実施した。Cochrane Central Register of Controlled Trials、Medline、Embaseを検索し、当該試験を記述した報告のリストを参照することで、副鼻腔炎様の病状を呈する成人患者を対象に抗生物質あるいはプラセボによる治療に無作為に割り付けた試験を同定した。9つの試験に登録された2,547例の個々のデータを確認し、再解析を行った。抗生物質の全体的な治療効果を評価し、1例の治癒を得るのに要する抗生物質治療の回数(NNT)を算出することで一般的な徴候、症状の予測値の検討を行った。ベネフィットはほとんどない、可能なのはwatchful waiting、症状の緩和のみ新たに1例の治癒を得るためには、副鼻腔炎様病状を呈する15例を抗生物質で治療する必要があった。咽頭に膿性分泌物を認める症例では、この徴候のない症例よりも治癒に長い時間を要した。新たに1例の治癒を得るには、咽頭の膿性分泌物を認める8例を抗生物質で治療する必要があった。より高齢の症例、より長期間にわたり症状を訴える症例、より重篤な症状を呈する症例は治癒に長い時間を要したが、これらの症例が他の症例に比べ抗生物質が有効な傾向は認めなかった。Young氏は、これらの知見に基づき「抗生物質治療が明確に正当化される副鼻腔炎患者を同定しうるような一般的な臨床徴候および症状は認めなかった」と結論している。また、同氏は「プライマリ・ケアでは、急性副鼻腔炎様病状の患者に対する抗生物質治療のベネフィットはほとんどない。患者が7~10日以上の長期間にわたって症状を訴える場合でも抗生物質治療は正当化されない。正当化されるのは重篤な合併症を示唆する徴候が見られる場合のみである。小児や免疫抑制状態の患者はこの限りではないが、急性副鼻腔炎様病状の成人患者に保障できるのは、ほとんどの場合watchful waitingあるいは症状の緩和のみである」と指摘している。(菅野守:医学ライター)

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「BMI」だけで心血管系リスクの予測は可能:NHEFS

心血管系リスクの評価にあたり「肥満」を評価項目にすれば、必ずしも「コレステロール値」を測定しなくとも心血管系リスクの予測ができる可能性が出てきた。採血のためだけに医療機関を訪れる必要が減るのであれば、患者サイドにとっては朗報だろう。Lancet誌2008年3月15日号でBrigham & Women’s Hospital(米国)のThomas A Gaziano氏らが報告した。「採血なし」のCHDリスク評価の正確性を検討Gaziano氏らが今回検討したのは「採血なしで心血管系リスクをどこまで正確に評価できるか」という点である。そのため、「性別」「年齢」「収縮期血圧」「糖尿病」「喫煙習慣の有無」「高血圧治療の有無」に加え「総コレステロール値」を組み込んだ心血管系リスク予測モデル(コレステロール・モデル)と、「総コレステロール値」を「BMI」で置き換えた「BMIモデル」による心血管系リスク予測の正確性を比較した。検討に用いられたコホートはNHEFS(NHANES I Epidemiologic Follow-up Study)、1971~75年にかけて実施された全国的調査NHANES Iの対象から当時25~74歳だった14,407例を前向きに追跡しているコホートである。今回はNHANES Iの時点で心血管系疾患既往を認めなかった6,186例が対象となった。  コレステロール値を用いなくともリスク予知の正確性は同等21年間の追跡期間中、1,529例に心血管イベントが発生し、うち578例が死亡した。「コレステロール・モデル」と「BMIモデル」のイベント予知正確性に差はなかった。すなわち、リスクモデルの正確性の指標であるc-statisticを比較すると、女性では「コレステロール・モデル:0.829」 vs. 「BMIモデル:0.831」(p=0.116)。男性では「コレステロール・モデル:0.784」 vs. 「BMIモデル:0.783」(p=0.457)だった。ROCカーブも両モデルは、ほぼ同一に重なっていた。WHO(世界保健機関)は心血管系リスク評価からコレステロール値をすでに取り除いているが、その正当性を強く示唆するデータであるとGaziano氏らは述べ、前向きコホート研究のデータを持つ国はすべて、このような検討を行う価値はあるとしている。わが国でも、医療経済的考察を含む検討は興味深いのではないだろうか。(宇津貴史:医学レポーター)

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米国FDA、小児用3種混合ワクチンDAPTACELの5回目接種分を承認

サノフィ・アベンティスグループのワクチン事業部門であるサノフィパスツールは、ジフテリア、破傷風、百日咳の予防を目的とした4~6歳の小児に対するDAPTACELワクチン(ジフテリア、破傷風トキソイド、無細胞型百日咳沈降精製ワクチン)の5回目接種が、米国医薬品食品局により承認されたと発表した。DAPTACELワクチンは2002年に4回接種ワクチンとしてFDAの承認を取得、現在は2,4,6ヶ月齢と15-20ヶ月齢に接種されている。今回の承認により5回接種すべてに対する承認を取得した。詳細はプレスリリースへhttp://www.sanofi-aventis.co.jp/live/jp/ja/layout.jsp?scat=D85FC173-8D5D-4C22-94DB-93D72F0A86EC

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末期COPDに対する肺移植、片肺よりも両肺移植で生存期間が延長

慢性閉塞性肺疾患(COPD)の末期例に対する肺移植では、片肺移植よりも両肺移植のほうが生存期間が長いことが、パリ第7大学Bichat病院肺移植部のGabriel Thabut氏らの研究で明らかとなった。2006年のInternational Society for Heart and Lung Transplantationの国際登録に関する報告では、1995年1月~2005年6月に実施された肺移植のうち46%がCOPDの治療として行われているが、片肺と両肺移植のいずれがより有効かは不明であった。Lancet誌2008年3月1日号掲載の報告。1987~2006年に肺移植を受けたCOPD患者9,883例のデータを解析研究グループは、International Society for Heart and Lung Transplantationの登録データを解析、片肺移植と両肺移植ではいずれの生存期間が長いか検討した。1987~2006年の間に肺移植を受けた9,883例のCOPD患者のうち、3,525例(35.7%)が両肺移植を、6,358例(64.3%)が片肺移植を施行されていた。選択バイアスを解決する統計手法として、共分散分析、傾向スコア(propensity-score)によるリスク補正、傾向ベースのマッチングを用いた。生存期間中央値が両肺移植で有意に延長肺移植を受けたCOPD患者全体の生存期間中央値(MST)は5.0年であった。1998年以前に移植を受けた症例のMSTが4.5年であったのに対し、1998年以降に受けた症例では5.3年と有意な差が認められた(p<0.0001)。両肺移植例は1993年の21.6%(101/467例)から2006年には56.2%(345/614例)に増加していた。両肺移植後のMSTは6.41年であり、片肺移植の4.59年に比べ有意に延長していた(p<0.0001)。移植前の患者背景は両群間で異なっていたが、ベースラインの差の補正をいずれの統計手法で行った場合も、片肺移植より両肺移植でMSTが長かった。すなわち、ハザード比の範囲は共変量解析の0.83(95%CI:0.78~0.92)から傾向ベースのマッチングの0.89(0.80~0.97)までであり、いずれも有意差を認めた。しかし、60歳以上の患者では、両肺移植のベネフィットはほとんど見られなかった(0.95、0.81~1.13)。Thabut氏は、「COPD患者に対する肺移植では、片肺移植よりも両肺移植のほうがMSTが長く、特に60歳以下の症例で延長していた」と結論し、「進行肺疾患に対する移植臓器の割り当ての社会的ベネフィットを検討する際は、COPD患者に対する両肺移植の生存ベネフィットに重きを置くべきであろう」と指摘している。(菅野守:医学ライター)

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麻薬メトカチノン常用者に特徴的なパーキンソン様症候群はマンガンの作用

東ヨーロッパとロシアでは、違法合成麻薬メトカチノン(エフェドロン、ロシアでは通称cat等で知られる)の静注常用者に特徴的な錐体外路症候群が観察されている。ラトビアにあるリガ・ストラディン大学のAinars Stepens氏らのグループは、平均(±SD)6.7(±5.1)年にわたってメトカチノンを常用、錐体外路症状を呈していたラトビア成人23例について調査を行った。対象者が用いていたメトカチノンは、エフェドリンまたは偽エフェドリンの過マンガン酸カリウム酸化作用を用いて、家内製造されたものだった。NEJM誌2008年3月6日号より。常用4~5年で全例が歩行障害、高率で発声不全を発症対象全員がC型肝炎ウイルス陽性で、さらに20例はヒト免疫不全ウイルス(HIV)が陽性だった。聞き取り調査によって神経症状(歩行障害20例と発声不全3例)が最初に発症したのは、メトカチノン使用開始から平均5.8±4.5年。神経学的評価を行ったところ、23例全例で歩行障害と後ろ向き歩行困難を呈し、11例は毎日転倒、そのうち1例は車椅子を使用していた。21例は歩行障害に加えて発声不全があり、そのうち1例は口がきけなかった。認知機能の低下が報告された例はなかった。神経障害に溶液中のマンガンが関与と結論MRI検査では、現在もメトカチノンを常用している全10例に、T1強調画像で淡蒼球、黒質、無名質に対称性の高信号域が認められた。元常用者13例(最後に使用して2~6年経過)では、信号変化のレベルはより小さかった。全血マンガン濃度(正常値<209nmol/L)は、現在もメトカチノンを常用している者は平均831nmol/L(範囲201~2,102)、元常用者が平均346nmol/L(範囲114~727)だった。なおメトカチノン使用を中止した後も神経障害は回復しなかった。これらから研究グループは、メトカチノン溶液中のマンガンが持続的な神経障害を引き起こしているのではないかと結論づけている。(武藤まき:医療ライター)

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合剤によるホルモン補充療法は介入中止後試験でもリスクがベネフィットを上回った

Women’s Health Initiative(WHI)試験は、米国国立衛生研究所(NIH)による閉経後女性(50~79歳、16,608人)を対象としたホルモン補充療法の大規模臨床試験。心臓疾患、股関節骨折、乳癌リスク増大を予防することを期待されたが2002年7月、健康リスクがベネフィットを上回ったため、平均追跡期間5.6年で中止となった。本論は、介入中止後3年(平均2.4)時の追跡調査の結果。JAMA誌2008年3月5日号より。介入中止後15,730例を追跡WHI試験は二重盲検プラセボ対照無作為化試験で、結合型エストロゲン(CEE、0.625mg/日)+酢酸メドロキシプロゲステロン(MPA、2.5mg/日)の合剤(国内未承認)を用いたホルモン補充療法を、1993~1998年の間、40の医療センターで50~79歳、16,608人の女性を対象に投与された。介入後の追跡試験開始は2002年7月8日、解析対象は15,730例。半年ごとのモニタリングとアウトカムの確認が試験プロトコルに基づき継続された。主要エンドポイントは、冠動脈性心疾患および侵襲性乳癌。リスクとベネフィットのバランスの全体指標には、他の原因による脳卒中、肺塞栓症、子宮体癌、大腸癌、股関節骨折および死亡に加えて2つの主要エンドポイントも含んで解析された。心血管イベント以外、リスクがベネフィットを上回る傾向続く介入後調査期間の心血管イベントリスクは、当初行われた無作為割付で比較できた。結果はCEE+MPA群343イベントで1.97%(年率)、プラセボ群323イベントで1.91%だった。より悪性であるリスクはプラセボ群[1.26%(n=218)]よりもCEE+MPA群で高く[1.56%(n=281)]、ハザード比は1.24(95%信頼区間:1.04~1.48)。乳癌についても同様の傾向がみられ、プラセボ群0.33%(n=60)に対しCEE+MPA群0.42%(n=79)、ハザード比は1.27(95%信頼区間:0.91~1.78)。全死亡率の傾向も同様。プラセボ群1.06%(n=196)に対しCEE+MPA群1.20%(n=233)、ハザード比は1.15(95%信頼区間:0.95~1.39)。全体指標のリスクとベネフィットは、無作為化当初から2005年3月31日まで変わらず(ハザード比:1.12、95%信頼区間:1.03~1.21)、CEE+MPA投与のリスクはベネフィットを上回る結果が示された。この結果を受け、「CEE+MPA群には介入後調査期間中、心血管リスクの増大は観察されなかったが、致命的あるいは非致死性の悪性度の高いリスクが確認された。全リスク指標は12%で、プラセボと比較してCEE+MPAにランダムに割り付けられた女性でより高かった」と結論している。(朝田哲明:医療ライター)

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小児科研修医の投薬ミスが6倍以上に:うつ病、燃え尽き症候群調査から判明

 小児科研修医の2割がうつ病を、7割以上が燃え尽き症候群(burnout)に罹患し、うつ病研修医は投薬ミスの頻度が約6倍も高いことが、米国Harvard大学医学部付属小児病院(ボストン)のAmy M Fahrenkopf氏らの研究により明らかとなった。米国では毎年4万4,000~9万8,000人の患者が医療過誤で死亡し、薬物有害事象のうち予防可能な事例は40万件にのぼるが、これには睡眠不足や過重労働など医療従事者の労働条件の実質的な関与が指摘されていた。BMJ誌2008年3月1日号(オンライン版2008年2月7日号)掲載の報告。都市部施設の小児科研修医の労働状況、投薬ミス、罹病を調査 研究グループは、小児科研修医におけるうつ病および燃え尽き症候群の罹患状況を調査し、これらの疾患と投薬ミスの関連性について検討するためのプロスペクティブなコホート研究を実施した。 米国都市部の3つの小児病院[ボストン小児病院(ボストン、マサチューセッツ州)、Lucile Packard小児病院(パロアルト、カリフォルニア州)、国立小児医療センター(ワシントンDC)]で3つの小児科研修医プログラムに参加した研修医123人が対象となった。 参加研修医は2003年5~6月の期間、毎日の労働状況と睡眠時間を記録し、健康状態、QOL、自己報告による投薬ミスに関する質問票に記入した。うつ病の発症状況はHarvard national depression screening day scale、燃え尽き症候群はMaslach burnout inventoryを用いて評価した。医療従事者の精神衛生が患者の安全性に重大な影響を及ぼす 24人(20%)がうつ病の判定規準を、92人(75%)が燃え尽き症候群の判定規準を満たした。積極的監視(active surveillance)では参加研修医による45件の投薬ミスが確認された。 うつ病に罹患した研修医の月間の投薬ミス頻度は非うつ病研修医の6.2倍に達した(1.55 vs. 0.25、p<0.001)。燃え尽き症候群の研修医と非燃え尽き症候群研修医の投薬ミスの頻度は同等であった(0.45 vs. 0.53、p=0.2)。 Fahrenkopf氏は、「うつ病および燃え尽き症候群は小児科研修医の大きな問題であることが明らかとなった。投薬ミスの頻度はうつ病の研修医で有意に高かったが、燃え尽き症候群では差は見られなかった」と結論している。また、同氏は「試験中にうつ病の研修医に適切な治療が行われないなど、本研究は重大な倫理的問題を提起する」と指摘し、「医療従事者の精神衛生は患者の安全性に重大な影響を及ぼす可能性が示唆され、他科を含め医師の精神衛生のさらなる検討の必要性が浮き彫りとなった」と考察している。

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「空腹時血糖値≧126mg/dL」に合理性なし?

WHOならびにADAが採用している空腹時血糖値(FPG)正常上限「126mg/dL」は、これを超えると細小血管症のリスクが増加する値だとWHOでは解説している(WHO/NCD NCS/99.2) 。これに対しUniversity of MelbourneのTien Y Wong氏らは、Lancet 誌2008年3月1日号において、そのような閾値は存在しないと主張している。 3つの横断研究でFPGと網膜症の関係を検討同氏らが依って立つのは、大規模な横断的住民研究3件、Blue Mountains Eye(BME)研究(3,162例)、Australian Diabetes、Obesity and Lifestyle(ADOL)研究(2,182例)とMulti-Ethnic Study of Atherosclerosis(MESA:6,079例)──である。これらのデータより糖尿病性網膜症の発症が増加するFPG閾値を求めたが、MESAでは明白な値が得られず、BMS研究では93.6mg/dL、ADOL研究では113.4mg/dLだった。モデルを変更して解析し直しても、閾値はやはり得られなかったという。また「FPG≧126mg/dL」の糖尿病性網膜症に対する感度は40%しかなかった。規準の見直しが必要だこれらよりWong氏らは、FPG規準の見直しが必要だと主張している。しかしWHOガイドラインが126mg/dLをFPG閾値としているのは糖負荷後2時間値の200mg/dLと相関するというのが主たる理由であり、細小血管症との相関は副次的な扱いとなっている。(宇津貴史:医学レポーター)

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SSRI抵抗性思春期うつ病には投与薬剤変更+認知行動療法併用を

 うつ病の若者のうち、選択的セロトニン再取り込み阻害剤(SSRI)による初期治療に反応するのは60%程度にすぎず、その後の治療法はデータに基づく指針はない。そこで米国ピッツバーグ大学のDavid Brent 氏らは、SSRI抵抗性思春期うつ病患者に対して、4つの治療法を試験。SSRIの変更と認知行動療法の併用が、より高い臨床効果を挙げると報告している。JAMA誌2008年2月27日号より。12~18歳334例を薬剤変更と認知行動療法の有無に無作為化 初回診断で大うつ病とされ、SSRIによる2ヵ月間の初期治療に反応しなかった12~18歳の患者334例を対象としたTORDIA無作為化試験は、2000~2006年にかけて、米国の大学病院と地域の医療機関計6ヵ所で実施された。12週にわたり(1)初期治療とは異なるSSRI[パロキセチン(日本国内商品名:パキシル)、citalopramまたはfluoxetine、20~40mg]への変更、(2)異なるSSRIへの変更と認知行動療法併用、(3)選択的セロトニン・ノルアドレナリン再取り込み阻害剤(SNRI)venlafaxine(150~225mg)への変更、(4)venlafaxineへの変更と認知行動療法併用の4群に無作為に割り付けられた。 主要評価項目は、Clinical Global Impressions-Improvement scoreが2以下(非常にまたは格段に改善)と、Children’s Depression Rating Scale-Revised (CDRS-R)が少なくとも半数の子供たちで改善していること、またCDRS-Rの経時的変化によって測定した。venlafaxine療法では血圧、脈拍数上昇と皮膚病頻発 奏効率は認知行動療法+薬剤変更群(54.8%、95%信頼区間:47~62%)のほうが、単なる薬剤変更群(40.5%、同33~48%)より高かった(P=0.009)。しかしvenlafaxine群(48.2%、同41~56%)とSSRI群(47.0%、同40~55%)に違いはなかった(p=0.83)。 CDRS-Rや、うつ症状の自己評価、自殺念慮、その他の有害事象発生率に、治療による差はなかった。ただしSSRI群と比べてvenlafaxineで、拡張期血圧と脈拍数の増大、皮膚病の頻発が確認された。 Brent 氏は「SSRIによる初期治療に反応しなかったうつ病の若者に、抗うつ薬変更と認知行動療法を組み合わせると、薬剤変更だけより高い臨床効果が得られる。またSSRI変更は、第4世代の抗うつ薬とされるvenlafaxineへの変更と同程度に有効で、副作用もより少ない」と結論付けている。

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外傷性脳損傷の臨床使用可能な予後予測モデルが開発。ネットで利用可能

臨床で使用できる外傷性脳損傷の簡便な予後モデルが、Medical Research Council(MRC) CRASH(corticosteroid randomisation after significant head injury)試験の研究グループによって開発された。BMJ誌2008年2月23日号(オンライン版2008年2月12日号)で報告され、すでにインターネット上で利用可能だ(www.crash2.lshtm.ac.uk/)。毎年、世界で約150万人が外傷性脳損傷で死亡し、数百万人が緊急治療を受けているが、その90%が低~中所得国の事例という。既存のモデルは一般に方法論的な質が低く、サンプルサイズが小さく、低~中所得国を含むものは少ない。14日死亡率、6ヵ月死亡/重度身体障害率を予測MRC CRASH試験は、外傷性脳損傷患者を対象とした大規模なプロスペクティブ研究。研究グループは、14日死亡率および6ヵ月死亡/重度身体障害率を算出する臨床的な予後予測モデルを開発、その妥当性を検証した。対象は、Glasgow coma scale≦14、発症後8時間以内の外傷性脳損傷患者。2つのアウトカムに関連する変数を抽出するために多変量ロジスティック回帰分析を行った。基本モデルは背景因子および臨床所見に関連する変数に限定し、CTモデルは基本モデルにCT所見を付加した。いずれのモデルも高所得国と低~中所得国に分けて検討した。基本モデルの4つの指標、CTモデルの5つの指標を同定1万8例が登録され、8,509例で外的妥当性の検証を行った。基本モデルの予後指標は、年齢、Glasgow coma scale、瞳孔反応、大きな頭蓋外損傷(入院を要する損傷)の4つであった。また、CTモデルによる付加的指標は、点状出血、第3脳室あるいは基底槽の閉塞、くも膜下出血、正中線偏位(mid-line shift)、non-evacuatedな血腫の5つであった。誘導群(derivation sample)では、モデルの判別(discrimination)はexcellent(C統計>0.80)、較正(calibration)はgoodであった。Hosmer-Lemeshow検定でも、低~中所得国のCTモデルを除き較正はgoodと判定された。高所得国における6ヵ月の不良なアウトカムの外的妥当性は、基本およびCTモデルともにgood discrimination(両モデルともC統計=0.77)であったが、較正はpoorerであった。以上により、研究グループは「外傷性脳損傷のアウトカムを予測する簡便な予後モデルが確立された。アウトカム予測の強度は、その国の所得の高低によって変化する」と結論している。なお、インターネット上では、国名を指定したうえで、基本モデルの4つの指標を選択し、CT所見がある場合は5つの指標の有無を指定すれば、2つのアウトカムの確率と95%信頼区間が自動的に算出される。(菅野守:医学ライター)

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むしろ死亡率が上昇、重症急性膵炎に対するプロバイオティクス予防投与

 急性膵炎の感染合併症に対する予防治療としてのプロバイオティクス腸内投与はむしろ死亡率を高めることが、オランダUtrecht大学医療センター外科のMarc G H Besselink氏らDutch Acute Pancreatitis Study Groupの研究によって明らかとなった。急性膵炎では感染合併症とその関連死が大きな問題となるが、プロバイオティクスは細菌の過増殖を抑制することで感染合併症を予防し、消化管のバリア機能を修復して免疫系を調整する可能性が指摘され、期待を集めていた。Lancet誌2008年2月23日号(オンライン版2008年2月14日付け)掲載の報告。多菌種混合プロバイオティクス製剤腸内投与の感染合併症予防効果を評価 本研究は、重症急性膵炎に対するプロバイオティクス予防投与の効果を評価する多施設共同二重盲検無作為化プラセボ対照比較試験。対象は、急性膵炎と診断され、重症化が予測される[Acute Physiology and Chronic Health Evaluation (APACHE II)スコア≧8、Imrie/modified Glasgowスコア≧3、C反応性蛋白>150mg/L]症例とした。 症例は発症72時間以内に、多菌種混合プロバイオティクス製剤(153例)あるいはプラセボ(145例)に無作為に割り付けられ、28日間にわたり1日2回腸内投与された。主要評価項目は、入院期間およびフォローアップ期間(90日)における複合感染合併症(感染性膵壊死、菌血症、肺炎、尿路性敗血症、感染性腹水)の発現とした。プロバイオティクス群で感染合併症が低下せず、死亡率は有意に上昇 プロバイオティクス群152例、プラセボ群144例が解析の対象となった。両群間でベースライン時の患者背景および疾患重症度に差は見られなかった。 感染合併症の発症率はプロバイオティクス群が30%(46例)、プラセボ群が28%(41例)であった(相対リスク:1.06、95%信頼区間:0.75~1.51)。死亡率はそれぞれ16%(24例)、6%(9例)とプロバイオティクス群で有意に高かった(2.53、1.22~5.25)。プロバイオティクス群の9例が腸虚血をきたし、そのうち8例が死亡したのに対し、プラセボ群では腸虚血は認めなかった(p=0.004)。 Besselink氏は、「今回用いた菌種の組み合わせによるプロバイオティクス製剤の予防投与は重症急性膵炎の感染合併症のリスクを低減させず、死亡リスクはむしろ上昇した」と結論し、「他の菌種を用いた場合は異なる結果が得られる可能性があるが、基礎的メカニズムが明らかとなるまでは使用すべきでない。最も重要な点は、もはやプロバイオティクスは経腸栄養の補助療法として無害とはいえないことだ」と考察している。

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脊椎管狭窄症をめぐる手術 vs 非手術の比較研究

Spine Patient Outcomes Research Trial(SPORT)は、全米11州13医療施設(脊椎専門クリニック)から集まった研修者によって立ち上げられたスタディで、脊椎診療に関する多方面からの研究を行っている。本論は同研究チームからの、脊柱管狭窄症をめぐる外科的治療 vs 非外科的治療の比較研究の報告。脊椎管狭窄症手術は広く行われているが、非外科的治療との効果の検証結果はこれまで示されていなかった。NEJM誌2008年2月21日号に掲載。外科的治療対象者を無作為コホートあるいは観察コホートに割り付け2年追跡比較研究は無作為化試験にて、13の脊椎専門クリニックの患者を対象に行われた。最低でも12週にわたる症状を訴え、脊椎管狭窄症の既往歴があり、画像診断で脊椎すべり症ではないと確認され外科的治療の候補となった患者を、無作為コホートもしくは観察コホートのいずれかに登録。治療は減圧術か一般的な非外科的治療が施された。主要評価項目は、36項目からなるQOL評価票SF-36(Medical Outcomes Study 36-item Short-Form General Health Survey6)を用いて身体的疼痛スコアと身体機能スコアを、および腰痛評価法で用いられるOswestry Disability Index(ODI)にて評価。6週、3ヵ月、6ヵ月、1年、2年の時点におけるスコアおよび指標が測定された。手術の治療効果が有意に高い各群の登録患者は、無作為コホート289例、観察コホート365例。2年時点において、手術群に無作為割り付けされた患者のうち、実際に手術を受けたのは67%。非外科的治療に割り付けられた患者も43%が手術を受けていた。無作為コホートの全例解析からは、対象者が割り付けられた治療を完結していない、あるいははじめから受けていないといった割合が高かったにもかかわらず、手術の治療効果が有意に高いことが示された。SF-36の身体疼痛スコアのベースラインからの変化の平均差は7.8(95%信頼区間:1.5~14.1)に上る。ただし身体機能スコアやODIに有意差はなかった。また両コホートを統合し因子を補正した上で行われたas-treated解析からは、3ヵ月時点まで、すべての主要評価項目について手術のほうが有意に優れていることが示され、その有意性は2年の時点まで保たれていた。研究チームは、「手術を受けた患者のほうが、非外科的治療患者よりすべての主要評価項目について有意な改善を示した」と結論づけている。(武藤まき:医療ライター)

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入院患者の心停止からの生存率は「夜間」「週末」は低い

入院患者の心停止の発生・生存状況について、これまで時刻や曜日に着目した検討はされていなかった。Virginia Commonwealth UniversityのMary Ann Peberdy氏らは、夜間および週末では異なる発生・生存パターンがあるのではないかと仮定し、確認を試みた。JAMA誌2008年2月20日号にて掲載されている。全米86,748人の登録データを解析検討は、「夜間」および「週末」に起きた心停止後の結果が、「日/夕方」「平日」と比較して異なるかどうか、心停止から1時間ごとの生存率を調査し行われた。「日/夕方」:午前7時00分~午後10時59分、「夜間」:午後11時00分~午前6時59分、そして「週末」:金曜日午後11時00分~月曜日午前6時59分と定義。全米507医療施設からの心停止イベント記録が登録されているNational Registry of Cardiopulmonary Resuscitationから、2000年1月1日~2007年2月1日の成人86,748人のデータが解析された。主要転帰は「退院生存」、第2転帰は「生存(20分以上の自発循環回復)」「24時間生存」「神経学的転帰良好」とし、オッズ比と多変量ロジスティック回帰分析を用いて比較された。退院生存:夜間14.7% 対 日/夕方19.8%。週末格差はなし時間帯で見ると、「日/夕方」発生が58,593例(平日43,483例、週末15,110例)、「夜間」発生は28,155例だった(平日20,365例、週末7,790例)。退院生存は「夜間」14.7%に対し「日/夕方」19.8%、20分以上の自発循環回復44.7%対51.1%、24時間生存28.9%対35.4%、神経学的転帰良好11.0%対15.2%で、「夜間」のほうが「日/夕方」に比べて実質的に低かった(すべてP<0.001)。また「夜間」の発生パターンとして、不全収縮が頻繁だったこと(39.6%対33.5%、P<0.001)、心室細動が少なかったこと(19.8%対22.9%、P<0.001)が確認された。「日/夕方」発生の生存を「平日」と「週末」で比較してみると、前者のほうが高い(20.6%対17.4%、オッズ比:1.15)。ただし「夜間」発生の退院生存は、「平日」と「週末」でほとんど違いはみられなかった(14.6%対14.8%、オッズ比1.02)。以上から Peberdy氏らは、「患者、イベント、病院特性因子を調整しても、入院患者の心停止からの生存率は、夜間と週末でより低い」と結論づけている。(武藤まき:医療ライター)

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