サイト内検索|page:581

検索結果 合計:11752件 表示位置:11601 - 11620

11601.

インドの急性冠症候群はSTEMIが多く、貧困層の30日死亡率が高い

インドの急性冠症候群(ACS)患者は先進国に比べST上昇心筋梗塞(STEMI)の割合が高く、貧困層はエビデンスに基づく治療を受けにくいために30日死亡率が高いことが、インドSt John's医科大学のDenis Xavier氏が実施したCREATE registryにより明らかとなった。2001年には世界で710万人が虚血性心疾患で死亡したが、そのうち570万人(80%)が低所得国の症例であった。インドは世界でACSによる負担がもっとも大きい国であるが、その治療およびアウトカムの実態はほとんど知られていない。Lancet誌2008年4月26日号掲載の報告。心筋梗塞疑い例を対象としたレジストリー研究CREATE registryは、インドの50都市89施設で実施されたプロスペクティブなレジストリー研究である。対象は、明確な心電図上の変化(STEMI、非STEMI、不安定狭心症)が見られ急性心筋梗塞(MI)が疑われる症例、あるいは心電図上の変化は見られないが虚血性心疾患の既往を有しMIが疑われる症例とした。臨床的アウトカムおよび30日全原因死亡率の評価を行った。70%以上が貧困層~中間所得下位層2002~2005年の間に2万937例が登録され、明確な心電図上の変化により診断がなされた2万468例のうち1万2,405例(60.6%)がSTEMIであった。全体の平均年齢は57.5歳であり、非STEMI例/不安定狭心症(59.3歳)よりもSTEMI例(56.3歳)のほうが若年であった。1万737例(52.5%)が中間所得層の下位層であり、3,999例(19.6%)が貧困層であった。症状発現から来院までの所要時間中央値は360分、来院から血栓溶解療法開始までの時間は50分。糖尿病が6,226例(30.4%)、高血圧が7,720例(37.7%)、喫煙者は8,242例(40.2%)であった。30日死亡率はSTEMI例および貧困層で有意に高いSTEMI例は非STEMI例よりも血栓溶解薬(96.3%がストレプトキナーゼ)(58.5% vs 3.4%)、抗血小板薬(98.2% vs 97.4%)、ACE阻害薬/アンジオテンシン受容体遮断薬(ARB)(60.5% vs 51.2%)、経皮的冠動脈インターベンション(PCI)(8.0% vs 6.7%)の施行率が有意に高かった(いずれもp<0.0001)。逆に、STEMI例は非STEMI例/不安定狭心症に比べβ遮断薬(57.5% vs 61.9%)、脂質低下薬(50.8% vs 53.9%)、冠動脈バイパス移植術(CABG)(1.9% vs 4.4%)の施行率が有意に低かった(いずれもp<0.0001)。STEMI例の30日アウトカムが死亡8.6%、再梗塞2.3%、心停止3.4%、脳卒中0.7%であったのに対し、非STEMI例/不安定狭心症ではそれぞれ3.7%、1.2%、1.2%、0.3%と有意に良好であった(いずれもp<0.0001)。富裕層は貧困層に比べ血栓溶解療法(60.6% vs 52.3%)、β遮断薬(58.8% vs 49.6%)、脂質低下薬(61.2% vs 36.0%)、ACE阻害薬/ARB(63.2% vs 54.1%)、PCI(15.3% vs 2.0%)、CABG(7.5% vs 0.7%)の施行率が有意に高かった(いずれもp<0.0001)。貧困層の30日死亡率は富裕層よりも有意に高かった(8.2% vs 5.5%、p<0.0001)。治療法で補正するとこの差は消失したが、リスク因子およびベースライン時の患者背景で補正した場合は維持された。Xavier氏は、「インドのACSは先進国に比べSTEMI例が多かった。これらの患者の多くは貧困層であり、それゆえにエビデンスに基づく治療を受けにくく、30日死亡率が高かった」と結論し、「貧困層における病院へのアクセスの遅れを解消し、高額すぎない治療法を提供できれば、罹患率および死亡率が低減する可能性がある」と指摘している。(菅野守:医学ライター)

11602.

公共施設等同様に自宅にもAEDを装備すると有益なのか?

米国では毎年約166,200例の突然の心停止が病院外で起きている。そのうち約4分の3は自宅で、それゆえ各家庭で適時治療を行えるかどうかは救急医療の課題になっている。Gust H. Bardy氏らHAT(Home Automated External Defibrillator Trial)研究グループは、公共施設等でのAED設置が突然の心停止の生存率改善に寄与していることから、リスクの高い患者の生存率改善のため在宅AED使用の有用性を検討した。NEJMオンライン版2008年4月1日号、本誌2008年4月24日号より。自宅療養者7,001例をAED使用と不使用に割り付け生存率を調査突然の心停止リスクが中等度である患者が、自宅でAEDを使えることで生存率が改善するかどうかを調べるため、前壁心筋梗塞既往患者のうち植込み型除細動器の非適応患者7,001例を対象とする無作為化試験が行われた。対象は、自宅で突然の心停止が起きた場合、救急電話をして心肺蘇生術(CPR)を実行する群と、AEDを使用して救急電話、そしてCPRを実行する群に無作為に割り付けられた。対象患者の年齢中央値は62歳。女性患者の割合は17%。追跡期間(中央値)は37.3ヵ月。主要転帰は全死因死亡とされた。蘇生法に重点を置いた従来法と比べて、有意に改善することはなかった対象患者の全死亡は450例。AED非使用群が228/3,506例(6.5%)、AED群は222/3,495例(6.4%)で、ハザード比は0.97(95%CI:0.81~1.17、P=0.77)。事前規定の主要サブグループ別にみた死亡率に有意差はみられなかった。頻脈性不整脈での突然の心停止と考えられた死亡例は160例(35.6%)で、このうち家庭で心停止が起きたのは117例で、そのうち58例が発作を目撃された。そして32例にAEDが使用された。この32例中、適切に電気ショックが受けられたのは14例であり、その後4例が生存退院した。不適切な電気ショックに関する報告はなかった。この結果を受け、「家庭でAEDを使用しても、従来の蘇生法に重点を置いた方法と比べて、生存率が有意に改善することはなかった」と結論している。(武藤まき:医療ライター)

11603.

医薬品と栄養補助食品の相互作用に関するデータベースを作成

小林製薬株式会社は、医薬品と栄養補助食品の相互作用に関するデータベースを作成し、2008年5月1日より顧客対応を開始した。医薬品24,718種(漢方薬を除くOTC医薬品と医療用医薬品)と小林製薬が発売する栄養補助食品157種を収載しているとのこと。詳細はプレスリリースへhttp://www.kobayashi.co.jp/corporate/news/0878/index.html

11604.

【トピック】健康リスクの性差は子どもの時から始まる!?

性差による健康リスクは子どもの時にすでに始まっているようだ。米医学誌「Circulation」に掲載された研究によれば、男児の心疾患リスク増大等が10代から見られるという。ミネソタ州の児童507人を対象とした研究結果によれば、11歳から19歳の間で、トリグリセライド(TG)値が男児では増大し、女児では減少することがわかった。さらにHDLコレステロール値が男児では減少し、女児では増大。血圧は男女ともに上昇がみられたが、男児の方がより大きく上昇した。ただ、こうした性差による健康リスクも肥満などの危険因子によって変ることは間違いない。詳細はアブストラクトへhttp://circ.ahajournals.org/cgi/content/abstract/117/18/2361

11605.

リピトールの高用量投与群、慢性腎臓病患者の心臓発作および脳卒中発症リスクを低下

米国ファイザー社は、心疾患を有する慢性腎臓病患者において、リピトール(アトルバスタチンカルシウム)80mg投与群が、リピトール10mg投与群と比較し、心臓発作および脳卒中発症リスクを32%低下させたと発表した。この解析は、5年間にわたるTreating to New Targets(TNT)試験の終了後に計画され、完了したもので、米国心臓病学会誌(JACC:Journal of the American College of Cardiology)に発表されている。TNT試験の主要評価項目は、主要な心血管疾患(心疾患による死亡、心臓発作(非致死的なもの)、心停止(蘇生が行われたもの)、および脳卒中(致死的または非致死的なもの)など)の低減。サブ解析では、標準的な腎機能測定法で中等度から重度に分類された慢性腎臓病患者3,107名を対象とした。リピトールは、80mgと10mgのいずれの用量でも忍容性は良好で、リピトール80mgは開始用量ではないが、慢性腎臓病患者におけるリピトール80mgの安全性は、TNT試験の全患者群で報告された安全性と同様であり、予期しない安全性に関する問題は認められなかった、とのこと。詳細はプレスリリースへhttp://www.pfizer.co.jp/pfizer/company/press/2008/2008_04_28.html

11606.

【トピック】「食べ過ぎ」中毒がメタボを導く!?

アルコール中毒やニコチン中毒など、いろいろな中毒があるが、食べ過ぎも中毒が原因かもしれない。そして、それがメタボの原因かもしれない。医学誌「ニューロイメージ」に発表された研究によると、太っている人は通常よりも食べ物をみると脳が興奮しやすい状態にあるということが証明されたという。20代後半の肥満女性(BMI30~40)を対象に様々な食べ物の写真を見せて脳の反応をMRIで記録した結果、肥満女性はお菓子や肉など高カロリー食を見せたときに、脳のいくつかの部位がより強く活性化されたとのこと。一方、米国科学アカデミー発行の「Proceedings of the National Academy of Sciences(PNAS)」オンライン版に4月14日掲載された研究によれば、メタボリックシンドロームの原因は肥満でなく過食にあると指摘されている。食べ過ぎ → 中毒 → 過食 → メタボリックシンドロームこんな図式が浮かび上がってくる。様々な調査でメタボに対する意識は高いものの(約半数)、対策をしていないと出ているが、脳から変えていく必要があるということだろう。関連記事●「太っている人は食べ物を見ると興奮する」と発表されるhttp://news.ameba.jp/special/2008/04/13227.html●メタボリックシンドロームの原因は肥満でなく過食http://health.yahoo.co.jp/news/detail/?idx0=w20804253●肥満解消が必要と思っても、4割は何もしていないhttp://www.carenet.com/news/det.php?nws_c=2492●約半数が「自分はメタボ」と自覚 http://www.carenet.com/news/det.php?nws_c=2684

11607.

クラスター無作為化試験の内的妥当性は改善しているようだ

グループ・集団を無作為化して行われるクラスター無作為化試験は、保健サービス分野で介入の妥当性を調査するのに必須とされる。しかし、グループ構成がナーシングホームからであったり一般開業医からであったりといった違いがある。統計学者は設定デザインや解析法等の妥当性、特に盲検化について評価することの重要性を強調するが、研究者は必ずしもその点に留意していない。Barts and The London School of Medicine and Dentistry(英国)Sandra Eldridge氏らは、最近発表された34の治験(医学雑誌7誌で発表分)をレビューし、その内的妥当性、外的妥当性について評価を行った。BMJオンライン版2008年3月25日号、本誌2008年4月19日号より。医学雑誌7誌で発表された34試験をレビューMedlineを利用して行われたレビューの対象試験は、2004~2005年に医学雑誌7誌(「British Medical Journal」「British Journal of General Practice」「Family Practice」「Preventive Medicine」「Annals of Internal Medicine」「Journal of General Internal Medicine」「Pediatrics」)で発表された34治験。各治験の内的妥当性(サンプルサイズ、解析法、参加者の同定方法および集め方、盲検化について)と、外的妥当性(クラスターの適格性、クラスターの構成要因、クラスターを普遍化できる可能性、医療提供者の介入に対する実行可能性および受容性)が評価された。内的妥当性は改善、外的妥当性はまだあまり留意されていないサンプルサイズの妥当性が確認されたのは21治験(62%)、解析法については30治験(88%)で妥当性が評価できた。患者の集め方と同定法に関しては、約4分の1の治験に、偏りがある可能性が認められた。盲検化が妥当だったのは19治験(56%)、アウトカム対象者(outcome assessors)が盲検化されていたのは15治験(44%)だった。一方で、外的妥当性の評価項目のうち、クラスター普遍化の可能性は半分に満たなかった。また介入の実現可能性と許容性に関しては5分の2で妥当性が確認できなかった。Eldridge氏は、「内部妥当性(例えばサンプルサイズや解析法)については、改善がみられるが、盲検化は必ずしも妥当に行われているとは言えない。内部妥当性に問題があるのは、参加者が集まりにくい試験のようだ。外部妥当性は、介入の質を判断するのに内的妥当性同様重要と思われるが、現状ではあまり留意されていない」とまとめた。

11608.

肺塞栓症の除外には、マルチスライスCTを用いれば超音波検査は不要

 肺塞栓症(PE)の診断では、Dダイマー(DD)測定とマルチスライスCT(MSCT)検査を実施すれば、下肢静脈超音波(US)を行う必要はないことが、スイスGeneva大学病院脈管/止血学のMarc Righini氏らが行った研究で明らかとなった。MSCTは肺区域・亜区域血管の可視化に優れるという。最近の大規模試験では、PEに対する感度は83%にすぎないが、PEの臨床的な疾患確率が低い症例における陰性的中率は95%、中等度の症例では89%と報告されている。Lancet誌2008年4月19日号掲載の研究。DD+MSCTのDD+US+MSCTに対する非劣性を検証 研究グループは、PEを除外するにはDD+MSCTで十分か、それともDD+US+MSCTを行う必要があるかという問題を解決するために、DD+MSCTの非劣性を検証する多施設共同無作為対照比較試験を実施した。 対象は臨床的にPEが疑われた1,819例で、DD+US+MSCT群に916例が、DD+MSCT群には903例が無作為に割り付けられた。改訂Genevaスコアで臨床的疾患確率が低い~中等度と判定された症例はDDを測定し、高いと判定された症例はDDを測定せずに画像検査が行われた。検査でPE陰性と診断された症例についてさらなる調査を行った。 主要評価項目は、診断検査でPEが除外され治療が行われなかった症例における3ヵ月後の静脈血栓塞栓症の発症リスクとした。アウトカム評価を行う研究者には割り付け状況をブラインドし、per protocol解析を行った。3ヵ月静脈血栓塞栓リスクは両群で同等 intention-to-treat解析によるPEの発症率は両群で同等であった[DD+US+MSCT群:20.6%(189/916例)、DD+MSCT群:20.6%(186/903例)]。 DD+US+MSCT群の855例、DD+MSCT群の838例に関するper protocol解析では、3ヵ月静脈血栓塞栓リスクは同等であった[DD+US+MSCT群:0.3%(2/649例、95%信頼区間:0.1~1.1)、DD+MSCT群:0.3%(2/627例、95%信頼区間:0.1~1.2)]。 DD+US+MSCT群の574例のうち、USにより53例(9%)に深部静脈血栓がみつかり、これらの症例にはMSCTは施行されなかった。 Righini氏は、「PEの除外において、DDとMSCTを併用する診断戦略の安全性および有効性は、DD測定後にUSとMSCTを実施する診断法と同等である」と結論し、「DD+MSCT群では、平均コストがPP解析で24%、ITT解析で21%削減された。CTが禁忌の症例にはUSが使用できる」と指摘している。

11609.

prasugrelのステント血栓症抑制効果はクロピドグレルよりも優れる

冠動脈ステント留置術を受けた急性冠症候群(ACS)における抗血栓薬prasugrelのステント血栓症の予防効果はクロピドグレル(国内商品名:プラビックス)よりも優れることが、TRITON TIMI 38試験のサブ解析で明らかとなった。Harvard大学医学部循環器科のStephen D Wiviott氏がLancet誌2008年4月19日号(オンライン版2008年4月2日号)で報告した。ACSにおける冠動脈ステント留置術の施術成功率および再狭窄低下効果はバルーン血管形成術よりも優れるが、ステント血栓症などの血栓性合併症が増加する可能性が指摘されている。TRITON TIMI 38試験ではすでにprasugrelの有意な虚血性イベント低下効果が確認されている。ステント留置術施行ACS例に抗血栓療法を実施、心血管死などを評価解析の対象となったのは、TRITON TIMI 38試験に登録された中~高リスクのACSのうち、無作為化後に少なくとも1つの冠動脈ステントを留置された症例であり、ステントのタイプによりさらなるサブグループに分類した。無作為化後、できるだけ早期に負荷量(prasugrel 60mg、クロピドグレル300mg)を投与したのち、維持療法(それぞれ10mg/日、75mg/日)を行った。全例がアスピリンの投与を受けた。治療期間は最短でも6ヵ月とし、最長15ヵ月とした。無作為割り付けの際にステントのタイプによる層別化は行わなかった。主要評価項目は、心血管死、非致死的心筋梗塞、非致死的脳卒中の複合エンドポイントとした。ステント血栓症はAcademic Research Consortiumの定義により評価し、intention-to-treat解析を行った。複合エンドポイント、ステント血栓症発症率ともにprasugrel群が有意に低値1万2,844例が少なくとも1つのステントを留置された。そのうち薬物溶出ステント(DES)のみを留置されたのが5,743例(prasugrel群:2,865例、クロピドグレル群:2,878例)、ベアメタルステント(BMS)のみは6,461例(それぞれ3,237例、3,224例)であり、640例は両ステントが留置された。prasugrel群の複合エンドポイントは、全ステント留置術施行例[9.7% vs 11.9%、ハザード比(HR):0.81、p=0.0001]、DES留置例(9.0% vs 11.1%、HR:0.82、p=0.019)、BMS留置例(10.0% vs 12.2%、HR:0.80、p=0.003)のいずれにおいてもクロピドグレル群よりも有意に低値を示した。ステント血栓症を発症した症例の89%(186/210例)が死亡あるいは心筋梗塞をきたした。prasugrel群のステント血栓症の発症率は、全ステント留置術施行例(1.13% vs 2.35%、HR:0.48、p=0.0001)、DES留置例(0.84% vs 2.31%、HR:0.36、p=0.0001)、BMS留置例(1.27% vs 2.41%、HR:0.52、p=0.0009)のいずれにおいてもクロピドグレル群よりも有意に低かった。Wiviott氏は、「prasugrel+アスピリンによる強化抗血栓療法は、ステント血栓症を含む虚血性イベントの発症率がクロピドグレル+アスピリン療法よりも低かった。これらの知見はステントのタイプにかかわらず強い有意差を示し、冠動脈ステント留置例における強化抗血栓療法の重要性が確認された」と結論している。(菅野守:医学ライター)

11610.

乳癌補助療法、生存率改善はパクリタキセル週1回投与に軍配

乳癌の標準的化学療法後に用いられる2種類のタキサン系薬剤(ドセタキセルとパクリタキセル)による補助療法は、週1回投与と3週に1度の投与ではどちらの有効性が高いのか? 検証作業に当たっていた米国Eastern Cooperative Oncology Group(ECOG)のJoseph A. Sparano氏らによる報告がNEJM誌2008年4月17日号で掲載された。転移性乳癌の女性4,950例を調査研究は、乳癌女性のうち腋窩リンパ節転移が陽性か、リンパ節転移は陰性だがリスクの高い患者4,950例を対象に実施された。患者は無作為化された後、まずドキソルビシン(国内商品名:アドリアシン)とシクロホスファミド(エンドキサン)静脈内投与を3週に1度4サイクル行い、引き続き、パクリタキセルまたはドセタキセルを、3週に1度4サイクル静脈内投与する群と、週1回12サイクル静脈内投与する群に割り付けられた。主要エンドポイントは無病生存率。HER2陰性、エストロゲン受容体陽性でも効果パクリタキセルを3週に1度投与する標準的な用法の群と比べて、無病生存のオッズ比はそれぞれ、パクリタキセル週1回投与群は1.27(P = 0.006)、ドセタキセル3週に1度投与群は1.23(P = 0.02)、ドセタキセル週1回投与群は1.09(P = 0.29)だった。いずれもオッズ比は1以上で、実験的治療群が支持される結果となった。また、標準用法群に比べてパクリタキセル週1回投与のほうが、生存率が改善していた(オッズ比1.32、P = 0.01)。サブグループ(HER2陰性)解析の結果では、エストロゲン受容体が陽性でも、パクリタキセル週1回投与によって無病生存率と全生存率に同様の改善が見られた。パクリタキセル週1回投与群では、同剤の3週に1度投与群に比べてグレード2、3、4の神経障害の発生頻度が高かった(27%対20%)が、研究グループは、「ドキソルビシンとシクロホスファミドによる標準的化学療法の後に補助療法としてパクリタキセルを週1回投与することは、乳癌女性の無病生存と全生存率を改善する」と結論付けている。(武藤まき:医療ライター)

11611.

ST上昇型心筋梗塞患者への新たな治療戦略の模索:MULTISTRATEGY

経皮的冠動脈形成術(PCI)を受けるST上昇型心筋梗塞(STEMI)患者への、アブシキシマブ療法とベアメタルステント留置の治療戦略は心イベントを減らすが、同様のベネフィットが、高用量ボーラスのチロフィバン療法で、またシロリムス溶出ステントを用いた場合で確認できるかどうか。MULTISTRATEGY(Multicentre Evaluation of Single High-Dose Bolus Tirofiban vs Abciximab With Sirolimus-Eluting Stent or Bare Metal Stent in Acute Myocardial Infarction Study)研究グループによる報告が、JAMAオンライン版2008年3月30日号、本誌4月16日号にて発表された。アブシキシマブ vs チロフィバン、ベアメタル vs シロリムス溶出ステントチロフィバンがアブシキシマブと同様の効果があるのかは確認されておらず、シロリムス溶出ステントはベアメタルステントに比べて、標的血管再建術のリスクを減らすとする一方で相反する結果が無作為化試験により報告されているためSTMI患者への留置は認められていない。研究グループは、これら効果を比較検討する非盲検2×2要因試験を行った。試験期間は2004年10月~2007年4月。イタリア、スペイン、アルゼンチンの16施設で、STEMIあるいは新規の左脚ブロックを呈した患者計745例が対象。患者は無作為に、チロフィバン群またはアブシキシマブ群に割り付けられ、さらにこれら患者をベアメタルステント群とシロリムス溶出ステント群に割り付けられた。主要評価項目は、薬剤比較は投与90分以内のST上昇改善の達成割合(9%絶対差、相対リスク0.89に相当する50%改善に達した割合を比較)、ステント比較は8ヵ月以内の主な心イベント発生率(全死亡、再梗塞、標的血管再建術に至った臨床イベント)。チロフィバンは同等、シロリムス溶出ステントは有意にリスク低下ST上昇改善は、アブシキシマブ群では83.6%(302/361例)で、チロフィバン群では85.3%(308/361例)で出現。相対リスクは1.020(95%信頼区間:0.958~1.086、非劣性に対するP<0.001)で、両剤の虚血性および出血性のアウトカムはほぼ同程度であることが認められた。また8ヵ月時点の主な心イベント発生率は、ベアメタルステント群で14.5%、シロリムス溶出ステント群では7.8%で(P=0.004)、主として標的血管再建術の低下がシロリムス溶出ステント群で際立っていた(10.2% vs 3.2%)。ステント血栓症の発生率は両群でほぼ同程度である。研究グループは「チロフィバンの効果はアブシキシマブに劣らず、シロリムス溶出ステントはベアメタルステントよりも有意に心イベントリスクを低下していた」と結論づけている。(朝田哲明:医療ライター)

11612.

妊産婦と子どもの死亡に関するミレニアム開発目標の達成は楽観できない

妊産婦と子どもの死亡の97%を占める68ヵ国において、ミレニアム開発目標(MDG)の4(2015年までに5歳児未満の死亡率を1990年の1/3に削減)およびMDG5(妊産婦の死亡率を1/4に削減)の進捗状況を調査したところ、いずれも順調に進んでいるとはいえないことが明らかとなった。“Countdown to 2015 for Maternal, Newborn, and Child Survival”構想は、MDG4とMDG5の達成に向けた優先的な介入法の実施状況の評価を目的とする。運営組織であるCountdown to 2015 Core Groupの研究班がLancet誌2008年4月12日号で報告した。死亡率が高い国と介入法を選定し、追跡調査した研究グループは、妊産婦と子どもの死亡率が高い国とその死亡率を低下させる可能性の高い介入法を選定し、国ごとの死亡に関するデータと介入法の実施状況を解析した。死亡原因のプロフィール、栄養状態の指標、支持的な施策の有無、妊産婦・新生児・子どもの死亡に対する対策への資金投入、介入の実施状況について追跡調査が行われた。MDG4の進捗が順調な国は24%すぎず、MDG5はデータが不十分選定された68の優先国のうち、MDG4の達成に向け順調に進んでいるのは16ヵ国(24%)のみであった。そのうち7ヵ国はCountdown構想が始動した2005年には軌道に乗っており、2008年に「順調」のカテゴリーに加えられたのは中国を含む3ヵ国、残りの6ヵ国は2008年に初めてCountdown構想に選ばれた国である。今回の調査では、MDG5の進展を示す妊産婦死亡率の傾向に関する十分なデータは得られなかったが、68ヵ国中56ヵ国(82%)では妊産婦死亡率は「高い」あるいは「きわめて高い」であった。個々の介入法の実施状況は、各国間および国内でばらつきが大きかった。ルーチンに予定を立てることが可能な介入法(予防接種、妊娠管理など)は、機能的な医療システムや24時間体制の医療サービスに依存する介入法(高い技術を要する出産時の緊急ケア、罹病状態で出生した新生児や病気の子どものケアなど)に比べ、実施状況がはるかに良好であった。68ヵ国のほとんどにおいて、産後ケアのデータは得られないか、調査状況が不十分であった。もっとも迅速な進歩が見られたのは予防接種であり、調査期間中に多くの投資を受けていた。報告を行ったCountdown Coverage Writing Groupは、「MDG4、5の達成に向けた迅速な進展は可能だが、実施できることとなすべきことは、なお多く残されている」との見解を示し、「特に、避妊、出産ケア、産後ケア、罹病新生児や病気の子どもの臨床管理などの優先事項の実施状況を改善するには、集中的な取り組みが必要とされるだろう」と指摘している。(菅野守:医学ライター)

11613.

ミレニアム開発目標達成のための介入実施率の格差は、依然として大きい

ミレニアム開発目標(MDG)の4(2015年までに5歳児未満の死亡率を1990年の1/3に削減)およびMDG5(妊産婦の死亡率を1/4に削減)を達成するには、妊産婦、新生児、子どもの健康に対する介入の実施率の向上が必須であるが、対象国では1990年以降、徐々に改善してはいるものの、貧富の差に基づく実施率の格差は大きいままであることが明らかとなった。Countdown 2008 Equity Analysis GroupがLancet誌2008年4月12日号で報告した。5つの貧富の段階ごとに、4つの介入領域の実施率を評価本研究では、過去の動向および今後の展開に対する洞察を提供するために、集約的な指標を用いて主要な介入法の実施率(coverage)の公平性と傾向が評価された。実施率は、「特定の介入を要する集団のうち実際にその介入を受けた人々の割合」と定義され、健康サービスの重要な指標であり、プログラムの進捗状況のモニタリングにおいて不可欠な戦略とされる。1990~2006年に“Countdown to 2015 for Maternal, Newborn and Child Survival”構想の対象となった54ヵ国の家庭調査のデータを用いて、4つの介入領域(家族計画、妊産婦・新生児ケア、予防接種、病気の子どもの治療)の総合的な実施率の指標を計算した。4つの領域は指標の計算において同等に重み付けした。貧富の程度を5つの段階に分け、標準測定値を用いて各段階における実施率の差のレベルおよび傾向を評価した。介入実施率の差は、各国間、国内ともに、わずかしか短縮していない54ヵ国の最新の調査データでは、最貧困層と最富裕層間の実施率の差は、もっとも小さいタジキスタンやペルーが20%弱、もっとも大きいエチオピアやチャドが70%以上という範囲にあった。4つの介入領域を合わせた平均実施率の差は5段階の最貧困層が54.2%、最富裕層が28.9%であり、全体の平均は43.0%であった。最貧困層と最富裕層間の差は、妊産婦および新生児医療への介入がもっとも大きく、予防接種がもっとも小さかった。1回以上の調査が行われた40ヵ国では、実施率の差は1990年代初頭以降、毎年、平均0.9%ポイントずつ短縮していた。1995年以降、毎年、2%ポイント以上の差の短縮が見られたのは3ヵ国(コロンビア、モザンビーク、ネパール)のみであった。国レベルの格差のパターンは経時的に確固として持続しており、徐々にしか変化していなかった。研究グループは、「1990年以降、主要な介入法の実施率はほとんどの国でわずかずつしか進展しておらず、依然として国レベルで大きな差が見られた。MDG4、5の達成に必要な介入の実施率を実現するには、この格差の短縮ペースが現在の2倍以上になる必要がある。国内的にも、富裕層と貧困層の格差のパターンは持続しており、介入のターゲットとすることに重要性が認められる場合でさえ変化はわずかなものであった」と考察している。(菅野守:医学ライター)

11614.

3cm以上の肝細胞癌には塞栓療法とラジオ波焼灼法の併用が有利

3cm以上の肝細胞癌には、ラジオ波焼灼療法(RFA)と肝動脈化学塞栓療法(TACE)が併用されてきたが、生存のベネフィットは明らかではなかった。そこで中国・済南市のQilu Hospital School of MedicineのBao-Quan Cheng氏らが、各療法の単独施行と併用療法とを比較検討した。JAMA誌2008年4月9日号より。中国内の291例を対象に3療法の経過を3年余観察本研究は大きな肝細胞癌を有する患者に対するTACE-RFA併用療法と、TACE単独療法あるいはRFA単独療法を行った場合の生存率を比較するため、2001年1月から2004年5月の間、中国内の一施設において、3cm以上の肝細胞癌をもつ患者291例を、無作為にTACE-RFA併用療法(n=96)、TACE単独療法(n=95)、RFA単独療法(n=100)に割り付け、継続的に観察した。初期エンドポイントは生存率、副次的エンドポイントは客観的奏功率とした。生存期間、生存率、奏功率ともTACE-RFA併用療法が有利中央値28.5ヵ月間の追跡調査の間、生存期間中央値はTACE単独群(3.4コース)が24ヵ月、RFA単独群(3.6コース)は22ヵ月、TACE-RFA群(4.4コース)は37ヵ月だった。TACE-RFA併用療法を受けた患者群の総生存率は、TACE単独群(ハザード比:1.87、95%信頼区間:1.33~2.63、P<0.001)、RFA単独群(1.88、1.34~2.65、P<0.001)より良好だった。また、単結節肝細胞癌患者に絞って解析した場合もRFA単独群(2.50、1.42~4.42、P=0.001)よりTACE-RFA併用群が、多結節肝細胞癌患者の場合もTACE単独群(1.99、1.31~3.00、P<0.001)よりTACE-RFA併用群のほうがいずれも生存率は高かった。少なくとも6ヵ月間維持された客観的奏功率は、TACE-RFA併用群が54%で、TACE単独群35%(rate difference:0.19、95%信頼区間:0.06~0.33、P=0.009)、RFA単独群36%(0.18、0.05~0.32、P=0.01)のいずれもより高かった。Cheng氏らは「腫瘍径3cm以上の肝細胞癌患者の生存率改善には、TACEとRFAを併用したほうが、それぞれ単独で施行するより優れている」と結論づけている。(朝田哲明:医療ライター)

11615.

2型糖尿病患者への積極的治療は動脈硬化を退縮するが…

心血管疾患(CVD)リスクの高い2型糖尿病患者の、リスク因子コントロールの目標値について、MedStar Research Institute(米国)のBarbara V. Howard氏らの検証結果が発表された。JAMA誌2008年4月9日号より。動脈硬化進行を「積極的治療群」と「標準治療群」とで比較本研究は2型糖尿病を有する40歳以上の米国原住民(American Indians)男女が対象。「SANDS」(Stop Atheroschlerosis in Native Diabetics Study)と呼ばれる。CVD履歴のない参加者499例をLDLコレステロールと収縮期血圧(SBP)の目標値をそれぞれ、「70mg/dL以下」「115mmHg以下」に定めた「積極的治療群」(n=252)と、「100mg/dL以下」「130mmHg以下」に定めた「標準目標治療群」(n=247)とに無作為に割り付け、無症状アテローム性動脈硬化症の進行が比較された。実施場所はオクラホマ州1、アリゾナ州2、サウスダコタ州1の計4つのクリニカルセンター。追跡期間は2003年4月~2007年7月にわたる間の3年。主要エンドポイントは総頸動脈内膜中膜厚(IMT)により評価されるアテローム性動脈硬化の変化。副次エンドポイントは、他の頸動脈、心臓超音波検査、CVDイベント発生とされた。介入後のLDL・SBPの平均値(最低12カ月間)は、「積極的治療群」では72mg/dL・117mmHg(95%信頼区間:69~75、115~118)、「標準目標治療群」は104mg/dL・129mm Hg(101~106、128~130)で、両群とも治療目標値はほぼ達成維持された。CVDイベント発生に有意差なし、「積極群」の降圧薬に関する有害事象多しで…「積極的治療群」ではIMTの退縮(-0.012mm)が認められた。一方の「標準目標治療群」は進行(0.038mm)していた(P

11616.

平成20年4月1日から「がん性疼痛緩和指導管理料(100点)」が算定可能に

平成20年度診療報酬改定で、がん性疼痛の緩和を目的に医療用麻薬(オピオイド鎮痛薬)を投与しているがん患者に対して、WHO方式のがん性疼痛治療法に従って、計画的な治療管理と療養上必要な指導を継続的に行い、麻薬を処方することに対して「がん性疼痛緩和指導管理料(100点)」が算定できるようになった。保医発第0305001号(平成20年3月5日付)の「診療報酬の算定方法の制定等に伴う実施上の留意事項について」で通知された(下欄参照)。WHO方式がん性疼痛治療法とは、世界標準のがん性疼痛治療のガイドライン。1986年、「がんの痛みからの解放(Cancer Pain Relief)」においてWHOが推奨する治療法が公表され、その後、疼痛治療の進歩や新知見が取り入れられ、1996年に第2版(改訂版)が刊行された。本治療法は、70~90%のがん患者で痛みを消失させる鎮痛薬の使用法であり、その有効性が実証され、次の5点に要約される。 1.経口的に(by mouth)  鎮痛薬は、できる限り経口投与とすべきである。2.時刻を決めて規則正しく(by the clock)  痛みが持続性であるときには、時刻を決めて規則正しく投与する。  頓用方式の投与を行ってはならない。 3.除痛ラダーにそって効力の順に(by the ladder)  鎮痛薬を除痛ラダーにしたがって順次選択していく。4.患者ごとの個別的な量で(for the individual)  鎮痛薬の適切な投与量とは、治療対象となった痛みが消える量である。5.そのうえで細かい配慮を(attention to detail)  患者にとって最良の鎮痛が得られ、副作用が最小となるように  治療を進めるには、治療による患者の痛みの変化を監視し  続けていくことが大切である。 (世界保健機関編. 武田文和訳. がんの痛みからの解放-WHO方式がんの疼痛治療法-.第2版. 金原出版株式会社; p.16-41.)今後は、WHO方式がん性疼痛治療法の5原則に従ってオピオイド鎮痛薬を投与し、副作用等を含めて計画的に治療を行うことで、管理料の算定が可能となる。 【参考】「診療報酬の算定方法の制定等に伴う実施上の留意事項について」保医発第0305001号B001 特定疾患治療管理料22 がん性疼痛緩和指導管理料(1) がん性疼痛緩和指導管理料は、医師ががん性疼痛の症状緩和を目的として麻薬を投与しているがん患者に対して、WHO方式のがん性疼痛の治療法(がんの痛みからの解放-WHO方式がんの疼痛治療法-第2版)に従って、副作用対策等を含めた計画的な治療管理を継続して行い、療養上必要な指導を行った場合に、月1回に限り、当該薬剤に関する指導を行い、当該薬剤を処方した日に算定する。なお、当該指導には、当該薬剤の効果及び副作用に関する説明、疼痛時に追加する臨時の薬剤の使用方法に関する説明を含めるものであること。(2) がん性疼痛緩和指導管理料を算定する場合は、麻薬の処方前の疼痛の程度(疼痛の強さ、部位、性状、頻度等)、麻薬の処方後の効果判定、副作用の有無、治療計画及び指導内容の要点を診療録に記載する。

11617.

女性に対するDVは、人権侵害かつ深刻な公衆衛生上の問題を引き起こす

「女性に対する親密な男性パートナーによる暴力は、人権侵害だけでなくその帰結として深刻な公衆衛生上の問題を引き起こす」――WHO主導の研究グループが日本を含む10ヵ国のデータをまとめ、Lancet誌2008年4月5日号で報告した。女性の外傷の主原因が身体的虐待であることを示す多くの報告がある一方で、男性パートナーによる虐待がもたらす不良な健康アウトカムは外傷に限らず、はるかに広範囲に及ぶことが指摘されている。WHOとの共同研究に当たったPATH(Program for Appropriate Technology in Health)のMary Ellsberg氏による報告。暴力行為の経験、特定の症状、暴力で負った外傷についてインタビュー本試験は、“WHO Multi-country Study on Women’s Health and Domestic Violence against Women(VAW)”の研究チームによる観察研究である。2000~2003年に、標準化された地域住民ベースの調査が実施された。15~49歳の女性を対象に、現在あるいは以前の親密な男性パートナーによる身体的、性的な暴力行為の経験および身体的、精神的健康に関連する特定の症状についてインタビューを行った。パートナーによる身体的暴力を報告した女性には、その暴力で負った外傷について質問した。身体的な健康問題だけでなく、精神的苦痛の頻度も高い10ヵ国15地域の2万4,097名の女性にインタビューし、これまでにパートナーがいたことがある1万9,568人のデータについてプール解析を行った。パートナーによる暴力の経験と自己報告による不良な健康状態との間には有意な相関が認められた(補正オッズ比:1.6、95%信頼区間:1.5~1.8)。これらの女性には、過去4週間における特定の健康問題として、歩行困難(1.6、1.5~1.8)、日常動作困難(1.6、1.5~1.8)、疼痛(1.6、1.5~1.7)、記憶喪失(1.8、1.6~2.0)、目まい(1.7、1.6~1.8)、膣分泌物異常(1.8、1.7~2.0)が見られた。少なくとも1回以上のパートナーによる暴力を報告した女性は精神的苦痛の頻度も有意に高く、虐待を受けたことがない女性に比べ自殺念慮(2.9、2.7~3.2)、自殺企図(3.8、3.3~4.5)が有意に多く見られた。これらの有意な相関はほとんどの調査地域で維持されており、身体的虐待を受けた女性の19~55%が外傷を負った経験をもっていた。Ellsberg氏は、「生活地域や文化的、人種的背景にかかわらず、ひいてはその地域や女性自身が暴力を許容したとしても、パートナーによる身体的、性的な暴力は不良な身体的、精神的健康状態の頻度を増大させた」と指摘したうえで、「女性に対する親密な男性パートナーによる暴力は、人権侵害だけでなくその帰結として深刻な公衆衛生上の問題を引き起こす。国およびグローバルな健康関連組織による施策やプログラムの検討が急務なことが浮き彫りとなった」と結論している。ちなみに、日本からの参加者1,276人のうち虐待経験者は196人(15.4%)と15の調査地区中最も低く、不良な健康状態のオッズ比は全体より高いものの有意差はなかった(1.9、0.9~4.0)。(菅野守:医学ライター)

11618.

乳癌予後予測の精度アップと治療戦略改善にゲノム情報統合が有効

デューク大学(米国)ゲノム研究所のChaitanya R. Acharya氏らは、「遺伝子発現プロファイルの活用が乳癌の予後予測と治療戦略に有益をもたらす」として、ゲノム情報と臨床像および病理学的危険因子(米国で「Adjuvant! Online」と呼ばれている乳癌再発リスクのオンラインシミュレーションシステムの集約情報)を統合し、初期乳癌の予後予測の精度アップと治療戦略改善が図れるかどうかを検討した。JAMA誌2008年4月2日号より。補助化学療法の初期乳癌患者964例対象の後ろ向き研究本研究は、補助化学療法対象となった初期乳癌患者を対象とした後ろ向き研究。マイクロアレイ・データに対応した964例(最初の解析患者群として573例をセット、検証群として391例をセット)の乳房腫瘍サンプルが用いられた。患者は全員、臨床病理学的所見に基づき再発危険スコアに割り付けられ、再発危険スコアとの一致パターン入手と、臨床病理学的予後モデルでの予後予測の精度を高めるため、発癌経路と腫瘍生物学/微小環境状態を現す署名付け(signature)が行われた。化学療法反応の予測因子も、初期乳癌での臨床特異性との関連を特徴づけるため実施された。主要評価項目は、無再発生存と薬物療法への感受性予測を洗練する初期乳癌の遺伝子発現シグネチャーと臨床病理学的変数。再発リスク予測の精度を高める予備的証拠が得られた573例のデータセットで、発癌経路と腫瘍生物学/微小環境状態のパターンを示す予後に有意なクラスタが同定された。乳癌の下位表現型を示す低リスク(ログランク検定P=0.004)、中リスク(ログランク検定P=0.01)と高リスク(ログランク検定P=0.003)の各クラスタ。例えば低リスク群(6つの予後的に有意なクラスタのうち)クラスタ4の患者は、クラスタ1(ログランク検定P=0.004)、クラスタ5(ログランク検定P=0.03)の患者に比べて無再発生存が下位だった。クラスタ4の患者の無再発生存の中央値は、クラスタ5の16ヵ月(95%信頼区間:10.5~27.5ヵ月)よりも、クラスタ1の19ヵ月(7.5~24.5ヵ月)よりも少なかった。 多変量解析の結果からは、ゲノムクラスタの独立した予後的価値が確認された[低リスク(P=0.05)、ハイリスク(P=0.02)]。これら再発リスクパターンの再現性と有効性は検証群でも、クラスタは同一ではなかったが確証された。また予後臨床ゲノムクラスタは、一般的に用いられる細胞毒性治療にユニークな感受性パターンを持つことも明らかとなった。Acharya氏らは、「これらの結果は、臨床リスク階層化に遺伝子発現シグネチャーを組み入れることで予後予測の精度を高めることができるという予備的証拠となる。治療戦略の細分化のためこのアプローチの価値を前向き研究で検証する必要がある」と結論づけた。(朝田哲明:医療ライター)

11619.

多剤耐性結核患児へのフルオロキノロン投与は侵襲性肺炎球菌疾患を招く

 多剤耐性結核(MDRTB)に罹患した子どもの治療にフルオロキノロンを使用すると、レボフロキサシン(LVFX)非感受性肺炎球菌およびその院内伝搬に起因する侵襲性肺炎球菌疾患(IPD)の発現を招くことが、Anne von Gottberg氏らGERMS-SA(南アフリカ)の研究グループによって明らかにされた。現在、抗生物質に対する肺炎球菌の耐性獲得が世界的な問題となっており、フルオロキノロンなど比較的新しい薬剤に対する耐性菌は、とくに市中肺炎の経験的治療(empiric treatment)において重要とされる。Lancet誌2008年3月29日号(オンライン版2008年3月21日付)掲載の報告。IPD例の中からLVFX非感受性肺炎球菌保有例を同定 南アフリカでは、2000~2006年に全国的な積極的サーベイランスを行っており、2003年には7州に導入された15の拠点病院においてサーベイランスを強化した。その結果、2万1,521例のIPDが同定された。 スクリーニングによりオフロキサシン耐性菌の保菌者1万9,404例(90%)を同定し、これらの患者においてLVFXの最小発育阻止濃度(MIC)を測定した。MIC≧4mg/Lを、LVFX非感受性と定義した。LVFX非感受性肺炎球菌に起因するIPDが検出された2つの結核専門施設で、65例の患児において肺炎球菌の鼻咽頭保菌を評価した。LVFX非感受性菌によるIPDと結核治療歴、院内感染率が関連 15歳以下の子どものうちLVFXに非感受性のIPDは12例であった。すべての分離株がリファンピシンに耐性を示した。このうち11例の転帰が判明し、5例(45%)が死亡した。 LVFXに感受性の肺炎球菌の感染児のうち結核治療歴を有する者の割合は18%(396/2,202例)であったのに対し、非感受性菌感染児では89%(8/9例)であり、非感受性菌によるIPDと結核治療歴の関連が示唆された(相対リスク:35.78、p<0.0001)。 また、感受性菌感染児の院内感染率は4%(109/2,709例)であったのに対し、非感受性菌感染児では80%(8/10例)であり、非感受性菌によるIPDと院内感染にも関連が認められた(相対リスク:88.96、p<0.0001)。 肺炎球菌の保菌者35例のうち31例(89%)がLVFX非感受性の菌を有していた。 これらの知見により、Gottberg氏は「子どものMDRTBの治療にフルオロキノロンを使用すると、LVFX非感受性肺炎球菌およびその院内伝搬に起因するIPDの発現を招くことが示唆された」と結論している。

11620.

冠動脈カルシウムは人種・民族を問わず冠動脈イベントリスクの独立因子

CTにより測定される冠動脈カルシウムスコアは、従来のリスク因子とは別に冠動脈性心疾患が予測できる独立したリスク因子であることが報告されている。ただしこれは白人を母集団にした場合で、その他の人種・民族集団においても独立したリスク因子となりうるかどうかは明らかではない。カリフォルニア大学放射線部門のRobert Detrano氏らは、白人、黒人、ヒスパニック系、アジア人(中国人)の4つの人種・民族集団を対象とした循環器系疾患の前向き研究であるMESA(Multiethnic Study of Atherosclerosis)参加者のデータを用い検証した。NEJM誌2008年3月27日号にて掲載。MESA被験者男女計6,722例を3.8年経過観察対象となったのは全米6地点(シカゴ、フォーサイス、ノースカロライナ、ロサンゼルス、ニューヨーク、セントポール)の医療センターで2000年7月~2002年9月の間に集められたMESA被験者男女計6,722例。年齢は45~84歳、登録時点で心血管疾患を有していない参加者の冠動脈カルシウム検査値を調べ、中央値3.8年にわたり経過を観察した。被験者の人種内訳は白人38.6%、黒人27.6%、ヒスパニック系21.9%、中国系11.9%。結果、162例の冠動脈イベントがみられ、そのうち89例が心筋梗塞または冠動脈性心疾患による死亡例だった。スコアが増すほどリスクも増大冠動脈イベントリスクを被験者の冠動脈カルシウム沈着有無別で比較すると、沈着が認められなかった被験者と比べ冠動脈カルシウムスコア(石灰化指数)101~300を持つ被験者ではイベントリスクが9.67倍に、スコア300以上の被験者では7.73倍だった(両群比較P

検索結果 合計:11752件 表示位置:11601 - 11620