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筋力アップが死亡率低下に結びつく

慢性疾患予防や健康増進に有効であるとしてフィットネスが推奨されている。筋力と全死亡率の負の相関はこれまでにも報告されていたが、男性における、筋力と全死因・心血管疾患・癌の死亡率に関する大規模な前向きコホート研究が行われ、筋力と全死因・癌の死亡率は独立した負の相関関係にあることが、BMJ誌2008年7月1日号で公表された。スウェーデン王立カロリンスカ研究所のJonatan R Ruiz氏らによる報告。男性20歳~80歳8,762例を18.9年追跡アメリカ・テキサス州ダラスにあるCooper Clinicのエアロビクスセンターに、1980年~1989年の間に登録された男性(20歳~80歳)8,762例について追跡調査が行われた。主要評価項目は、2003年12月31日までの全死因死亡率、筋力、心肺フィットネス(トレッドミル運動負荷試験による)。筋力は、反復跳び、ベンチ・プレスの結果を、年齢特異的に三分位(Lower、Middle、Upper)に分類した。平均追跡調査期間は18.9年。死亡は503例(心血管疾患145、癌199含む)。筋力と死亡率は負の相関死亡率/1万人年は、全死因はLower:38.9、Middle:5.9、Upper:26.6、心血管疾患はLower:12.1、Middle:7.6、Upper:6.6、癌はLower:6.1、Middle:4.9、Upper:4.2だった(P

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ABIは心血管イベントリスク予測にFraminghamリスクスコアより有効

健常者の心血管疾患のハイリスクを識別する予測モデルの精度は限られている。英国のABI共同研究チーム(Ankle Brachial Index Collaboration)は、アテローム性動脈硬化症の指標とされる足関節上腕血圧比(ABI)をFraminghamリスクスコア(FRS)と組み合わせることで、心血管疾患のリスク予測を改善できる可能性があると報告した。JAMA誌2008年7月9日号より。男女約4万9千例を追跡調査しメタ解析試験は、データベースのMEDLINE(1950年~2008年2月)、EMBASE(1980年~2008年2月)から、ABIに関してヒットした論文を選定し、前向きコホートをデザインし行われた。一般集団(非疾患グループ)に属する参加者のABIはベースラインで測定し、全死因死亡と心血管原因死亡を見いだすために追跡。コホート研究の対象は16集団。虚血性心疾患の既往歴がない参加者についてメタ解析された。男性2万4,955例と女性2万3,339例(期間中延べ48万325例)を追跡調査した結果、ABIと死亡リスクの関係は、ABI正常値(1.11~1.40)を低リスクとして逆J字形の分布を示した。10年死亡率、冠動脈イベント発生率ともFRSの2倍男性の10年死亡率(心血管疾原因)は、ABI低値(0.90)18.7%(95%信頼区間:13.3~24.1%)、ABI正常値(1.11~1.40)4.4%(3.2~5.7%)。同様に女性は、ABI低値では12.6%(6.2~19.0%)、ABI正常値では4.1%(2.2~6.1%)だった。ハザード比は男性4.2(95%信頼区間:3.3~5.4)、女性3.5(2.4~5.1)。FRSで補正後も、男性2.9(95%信頼区間:2.3~3.7)、女性3.0(92.0~4.4)と高いままだった。ABI低値(0.90)で、10年全死因死亡率、心血管原因死亡率、主要冠動脈イベント発生率のカテゴリー別にFRSの数値と比較すると、ほぼ2倍を示していた。FRSによる心血管リスクの階層化にABIを包含させると、リスクカテゴリー再分類と、男性の約19%、女性の約36%に対する推奨治療を変更することになった。この結果を踏まえ「ABI測定は、FRS以上に心血管リスク予測の精度を改善する可能性がある」と結論している。(朝田哲明:医療ライター)

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加齢黄斑変性症治療剤「マクジェン」、製造販売承認を取得

ファイザー株式会社は、7月16日(水)、加齢黄斑変性症治療剤「マクジェン硝子体内注射用キット0.3mg」(ペガプタニブナトリウム)の製造販売承認を取得したと発表した。マクジェンは、加齢などが原因で物がゆがんだり、視野の中心が欠けて見えるなどの症状を起こす滲出型(しんしゅつがた)の加齢黄斑変性症(Age-related Macular Degeneration:AMD)の治療薬。病的な血管の成長や血液などの漏出をひき起こす原因となる体内の物質の働きを抑え、病的な血管の成長を遅らせることで、視力が低下する速度をゆるやかにする。詳細はプレスリリースへhttp://www.pfizer.co.jp/pfizer/company/press/2008/2008_07_17_02.html

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rivaroxaban長期投与が有効、人工股関節全置換術後の静脈血栓塞栓症予防

新たな経口第Xa因子阻害薬rivaroxabanの長期投与は、人工股関節全置換術(THA)を施行後の静脈血栓塞栓症(VTE)の予防において低分子ヘパリンであるエノキサパリン(商品名:クレキサン)の短期投与よりも有効なことが、21ヵ国が参加した大規模臨床試験(RECORD 2)で確認された。周術期のヘパリンベースの血栓予防療法は致死的肺塞栓症を減少させるが、THA後のVTEのリスクは退院後も持続するため、簡便な長期的抗血栓療法の探索が進められてきた。イギリスBarts and the London医科歯科大学のAjay K Kakkar氏が、Lancet誌2008年7月5日号(オンライン版2008年6月24日号)で報告した。21ヵ国、2,509例が参加した二重盲検ダブルダミー無作為化試験RECORD 2(REgulation of Coagulation in ORthopaedic surgery to prevent Deep-vein thrombosis and pulmonary embolism 2)は、THA施行例を対象にrivaroxaban(10mg/日、1日1回、経口)を31~39日投与する群(プラセボ静注、10~14日)と、エノキサパリン(40mg/日、1日1回、皮下注)を10~14日投与後プラセボを投与する群(31~39日)を比較する二重盲検ダブルダミー無作為化試験。2006年2月~2007年4月に21ヵ国123施設から登録された2,509例が、rivaroxaban群(1,252例)あるいはエノキサパリン群(1,257例)に無作為に割り付けられた。主要評価項目は、深部静脈血栓(両側静脈造影で検出された症候性あるいは無症候性の病変)、非致死的肺塞栓症、30~42日までの全死亡の複合エンドポイントとした。主要評価項目が有意に改善、出血の頻度は同等主要評価項目の解析対象となったのは、rivaroxaban群864例、エノキサパリン群869例。複合エンドポイントの発現率は、エノキサパリン群の9.3%(81/869例)に対し、rivaroxaban群は2.0%(17/864例)と有意に低下した(絶対リスク低下率:7.3%、95%信頼区間:5.2~9.4%、p<0.0001)。安全性評価の対象はrivaroxaban群1,228例、エノキサパリン群1,229例。治療期間中の出血の発現率は、rivaroxaban群6.6%(81/1,228例)、エノキサパリン群5.5%(68/1,229例)と両群で同等であった(p=0.25)。Kakkar氏は、「THA後の症候性のイベントを含むVTEの予防において、rivaroxaban長期投与はエノキサパリン短期投与よりも有意に高い有効性を示した」と結論し、「長期的血栓予防療法をさらに確実なものにするには、THAの予後に影響を及ぼす可能性のある出血や他の有害事象について、高リスク群に重点を置いた評価を行うべき」と指摘している。(菅野守:医学ライター)

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DNAメチル化は年齢とともに変化し家系的に類似

DNA配列がメチル化など非遺伝的要因で修飾されたことを記す、いわゆる「エピジェネティック・マーク」は、がんなどの後発性疾患を説明できるのではないかと注目されている。米国ジョンズ・ホプキンス大学医学部のHans T. Bjornsson氏らは、個々人のDNAメチル化の経時変化について調べた。JAMA誌2008年6月25日号より。アイスランドと米国で11~16年後のDNA比較試験は、個々人のゲノム全体のメチル化に縦断的な変化は見られるのか、また、メチル化が家系的な傾向を持つかどうかを評価することを目的に行われた。luminometric methylation assay法で定量的に、被験者の全DNAのメチル化を測定した。対象サンプリングは、アイスランドと米国で行われた。アイスランドでは住民対象の研究参加者「アイスランド・コホート」から111例のDNAサンプルが、1991年に初回採取され、2回目採取が平均11年後の2002~2005年に行われた。米国ではユタ州での家族ベースの研究参加者「ユタ・サンプル」の126例が、初回採取は1982~1985年に、2回目採取は平均16年後の1997~2005年に行われた。主要評価項目は、全DNAのメチル化の経時的変化とした。年齢とともに被験者の29%でメチル化水準が変化アイスランド・コホートのうち29%は、年齢とともに10%以上のメチル化変化を示した(P<0.001)。地理的に遠く隔たったユタ・サンプルでも、年齢に伴う個々人のメチル化変化が見られたばかりでなく、家系的に変化が類似していることも見られた(P=0.003)。DNAの全体的なメチル化が少ない家系では、個々人についても遺伝子特異的なメチル化が少ないことも見出された。Bjornsson氏は、「これらのデータは、DNAのメチル化が年齢とともに変化すること、またメチル化管理が遺伝的にコントロールされている可能性があることを示唆するもの」と結論している。(朝田哲明:医療ライター)

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α遮断薬の投与によって治療中の高血圧症例の尿中アルブミンが減少する

自治医科大学循環器科の苅尾七臣氏(=写真)らは、治療中の高血圧症患者に対するα遮断薬ドキサゾシンの就寝前投与によって、尿中アルブミン/クレアチニン比(urinary albumin/creatinine ratio、以下UAR)の有意な減少が認められたことをJournal of Hypertension誌6月号に発表した1)。これは厳格な早朝高血圧管理が臓器障害の発症抑制に及ぼす影響を検討することを目的としたJapan Morning Surge-1(JMS-1)試験より得られた結果で、α遮断薬の投与によって微量アルブミン尿が減少することを無作為化比較試験において証明した。以下、本試験の概要とこれまで得られていた知見を踏まえてレビューする。600例を越える治療中の高血圧症例を対象とした無作為化比較試験JMS-1試験では治療中の高血圧症患者611例がドキサゾシン群と対照群とに無作為に割り付けられ、6ヵ月後の血圧値(外来血圧、早朝血圧、就寝前血圧)とUARが評価された。ドキサゾシンは1~4mg/日を就寝前に投与された。対象の3人に2人はCa拮抗薬(ドキサゾシン群:66.6%、対照群:65.6%)が、約6割にARB(ドキサゾシン群:60.3%、対照群:57.5%)、約2割に利尿薬が投与されていた。また、約15%が糖尿病を合併しており(ドキサゾシン群:15.3%、対照群:16.5%)、238例(対象の39.0%)に微量アルブミン尿(UAR:30-300 mg/gCr)が認められた。ドキサゾシンの追加投与によって治療中の高血圧症例の血圧が有意に低下ドキサゾシンの投与によって試験期間中を通じて血圧値は対照群より低値でコントロールされ、6ヵ月後におけるドキサゾシン群と対照群の血圧差は、外来血圧で8.7/7.5mmHg、早朝血圧で8.9/6.0mmHg、就寝前血圧で4.8/4.0mmHgであり、いずれも有意な差を認めた。ドキサゾシンの投与によって尿中アルブミン/クレアチニン値が有意に減少UARはドキサゾシンの投与によって3.4mg/gCr減少し、対照群に比べて有意な差が認められた(p

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高血圧管理にはインターネットによる薬剤師支援が有効

高血圧治療の進展は心血管系疾患の死亡率と身体機能障害を減少させはしたが、患者の大半はコントロール不十分な状態にいる。そこで米国・ワシントン大学のBeverly B. Green氏らは、薬剤師によるインターネットを利用した患者支援(血圧モニタリング、情報提供サービス)という新しいケアモデルを検討した。無作為化試験の結果、「インターネットによる薬剤師の管理は血圧管理を改善する」と報告している。JAMA誌2008年6月25日号より。25~75歳の参加者778例を約1年追跡本研究は「Chronic Care Model」に基づく3群無作為化試験「Electronic Communications and Home Blood Pressure Monitoring study」。対象は、ワシントン州で参加登録した、未治療の本態性高血圧でインターネット接続可能な25~75歳の参加者778例。2005年6月から2007年12月にかけて、ネット支援は患者専用ウェブサイトを利用して行われた。参加者は、一般的な治療を受けるグループ、自宅で血圧モニタリング+患者ウェブサイトを利用するグループ、自宅での血圧モニタリング+患者ウェブサイト利用+インターネットを通じた薬剤師の管理支援を受けるグループに、無作為に割り付けられた。主要評価項目は、血圧140~90mm Hg未満にコントロールできた患者比率と、12ヵ月間の収縮・拡張期血圧の変化とした。収縮期・拡張期血圧とも薬剤師管理群が改善778例のうち730例(94%)が、1年間の追跡調査を完了。正常血圧(140~90mm Hg未満)の比率は、通常ケア群の31%と比べ、在宅血圧モニタリング+ウェブ利用群は36%で、有意な上昇は確認されなかった(P=0.21)。しかし、在宅血圧モニタリング+ウェブ利用+薬剤師管理群は56%で、通常ケア群(P<0.001)、在宅血圧測定とウェブ利用群(P<0.001)と比べ高い改善が確認された。収縮期血圧は、通常ケア群→在宅血圧モニタリングとウェブ利用群→在宅血圧モニタリング+ウェブ利用・薬剤師管理群へと段階的に減少。拡張期血圧は、薬剤師管理のあった群でだけ減少した。ベースラインの収縮期血圧が160mm Hg以上で、在宅血圧モニタリング+ウェブ利用+薬剤師管理を受けた群は、通常ケア群より収縮期血圧で-13.2 mm Hg(P<0.001)、拡張期血圧で-4.6 mm Hg(P<0.001)と顕著な低下を達成し、血圧管理が改善した(相対リスク:3.32、P<0.001)。インターネットの専用患者ウェブサイトを通して行われる情報提供と薬剤師による管理は、高血圧患者の血圧改善に役立つと結論づけている。(朝田哲明:医療ライター)

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心房細動と心不全患者には心拍コントロールを主要戦略とすべき

心房細動および心不全患者の治療は、洞調律を回復し維持する方法が一般的である。これは、心房細動が心不全患者の死亡の予測因子であり、心房細動を抑制すれば転帰に有利な影響を及ぼす可能性があるというデータに基づいているが、この方法の利点とリスクについては、これまで十分に検討されなかった。カナダ・モントリオール大学心臓研究所のDenis Roy氏らAtrial Fibrillation and Congestive Heart Failure 共同研究グループは、心調律コントロールと心拍コントロールを比較検証した結果、心調律コントロールは死亡率減少に結びつかず、心拍コントロールが主要アプローチであると結論付けた。NEJM誌2008年6月19日号より。患者1,376例を37ヵ月間にわたり追跡調査本研究では、左室駆出率35%以下で、うっ血性心不全の症状と心房細動の既往歴を有する患者について、洞調律維持(心調律コントロール)と、心室拍動数制御(心拍コントロール)を比較する多施設共同無作為試験を行った。登録患者計1,376例を(心調律コントロール群682例、心拍コントロール群694例)、平均37ヵ月間にわたり追跡調査した。主要評価項目は、心血管系原因による死亡までの時間とした。主要・副次転帰とも両治療に有意差はないが心血管系原因での死亡は、心調律コントロール群182例(27%)、心拍コントロール群175例(25%)だった(心調律コントロール群のハザード比:1.06、95%信頼区間:0.86~1.30、log-rank検定によるP=0.59)。全死因死亡(心調律コントロール群32%、心拍コントロール群33%)、脳卒中(同じく各3%、4%)、心不全悪化(同じく各28%、31%)、心血管系原因・脳卒中または心不全悪化の複合死亡(同じく各43%、46%)であり、主要・副次転帰とも同程度だった。あらかじめ定義したサブグループでも、両治療戦略のいずれかを支持する有意差はなかった。この結果、心房細動とうっ血性心不全の患者に対して、ルーティンに心調律コントロール治療を行っても、心拍コントロール治療より心血管原因による死亡率を低下させないことが判明したとして、「心拍コントロール戦略は、電気的除細動を繰り返す必要性を排除し、入院率を低下させる。心拍コントロールが心房細動とうっ血心不全患者のための主要なアプローチと考えるべき」と強調している。(武藤まき:医療ライター)

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重篤な心不全患者へのdronedarone治療で死亡率は上昇

国際的な第III相試験が進められている抗不整脈薬dronedaroneは、強い副作用が問題とされているアミオダロン(商品名:アンカロン)に代わる心不全患者の治療薬として期待されている。本報告は、コペンハーゲン大学(デンマーク)のLars Kober氏らのdronedarone研究グループによるANDROMEDA試験(Antiarrhythmic Trial with Dronedarone in Moderate to Severe CHF Evaluating Morbidity Decrease)の結果で、「重症の心不全患者にdronedaroneを投与した場合、死亡率が上昇する」との警告が報告された。NEJM誌2008年6月19日号より。欧州6ヵ国72施設1,000例を予定してスタートしたがANDROMEDA試験は、デンマーク、スウェーデン、ノルウェー、ポーランド、オランダ、ハンガリーの72施設で実施された多施設二重盲検試験で、症候性心不全と重篤な左室収縮機能不全で入院した患者1,000例を、dronedarone投与群とプラセボ投与群(400mg、1日2回)に無作為に割り付ける予定でスタートした。主要エンドポイントは、全死因死亡の複合または心不全のための入院。追跡試験中に死亡者が増えたため研究中止試験は、患者627例(dronedarone群310例、プラセボ群317例)が登録された時点で、データ・安全性監視委員会の勧告を受け、研究終了についての事前規定に従い安全上の理由から早期中止となった。これは、中央値2ヵ月の追跡期間中に、dronedarone群で25例(8.1%)、プラセボ群で12例(3.8%)の死亡が発生したためである(dronedarone群のハザードリスク:2.13、95%信頼区間:1.07~4.25、P=0.03)。超過死亡は主に心不全悪化との関連が認められ、dronedarone群で10例、プラセボ群では2例が該当した。主要エンドポイントは、dronedarone群53例(17.1%)、プラセボ群40例(12.6%)で両群間に有意差はなかった(ハザード比:1.38、95%信頼区間:0.92~2.09、P=0.12)。しかしクレアチニン濃度上昇が、dronedarone群のほうがプラセボ群より多く、深刻な有害事象として報告されている。以上の結果から、「重篤な心不全と左心収縮機能不全の患者へのdronedarone投与は、心不全悪化に関連する早期死亡率上昇と関係していた」と結論付けた。(武藤まき:医療ライター)

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セント・ジョーンズ・ワートは注意欠陥多動障害(ADHD)に効果なし

年少者の注意欠陥多動性障害(ADHD)には興奮剤が有効で、患者の60%~70%を効果的に治療できるが、多くの親は代替療法を求める。米国では植物性薬品(ハーブ)が人気だが、その中でセント・ジョーンズ・ワート(セイヨワートギリソウ=Hypericum perforatum)は使用されるハーブの上位3つに入る。補完代替療法を主体とするバスティア大学(アメリカ)のWendy Weber氏らは、ADHD治療におけるセント・ジョーンズ・ワートの有効性と安全性を検討し報告した。JAMA誌2008年6月11日号より。54例に二重盲検プラセボ対照試験本研究は2005年3月から2006年8月までの間、ADHDの基準「精神疾患の分類と診断の手引第4版(DSM-IV)」を満たした6~17歳のボランティア患者54例を対象に、無作為二重盲検プラセボ対照試験が行われた。被験者は、1週間のプラセボ同時投与の後8週間にわたり、H perforatum300mg(ヒペリシン0.3%)を毎日3回服用する群(n=27)と、同量のプラセボ投与を受ける群(n=27)に無作為に割り付けられた。試験期間中、ADHDのための他の薬物投与は禁じられた。主要評価項目は「ADHD Rating Scale.IV」(範囲:0~54)と「Clinical Global Impression Improvement Scale=臨床全般印象尺度」(範囲:0~7)の成績と有害事象。試験期間中に、プラセボ群の患者1人が、有害事象のため試験を中止した。症状改善、副作用ともに有意差なしベースラインから第8週まで、H perforatum投与群とプラセボ群の間でADHD Rating Scale.IVスコアの変化に有意差はなかった。不注意症状の改善ではH perforatum群が2.6ポイント(95%信頼区間:4.6~0.6ポイント)、プラセボ群3.2ポイント(5.7~0.8ポイント)だった(P=0.68)。また多動症状の改善では、H perforatum群1.8ポイント(3.7~0.1ポイント)、プラセボ群2.0ポイント(4.1~0.1ポイント)だった(P=0.89)。「Clinical Global Impression Improvement Scale」による改善基準(スコア2)を満たした参加者の比率でもH perforatum群(44.4%)とプラセボ群(51.9%)に有意差はなかった(P=0.59)。研究期間中に有害事象を経験した参加者の数でも、H perforatum群(40.7%)、プラセボ群(44.4%)で違いはなかった(P=0.78)。「有意差はみられず、H perforatumが症状を改善されすることはなかった」と結論付けている。(朝田哲明:医療ライター)

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2型糖尿病治療でかえってうつ発症率が高まる

抑うつ症状と2型糖尿病は関連が指摘されているが、2型糖尿病が抑うつ症状のリスク因子かどうかは不明である。抑うつ症状と2型糖尿病の相関関係を調べていたジョンズ・ホプキンス大学(アメリカ)のSherita Hill Golden氏らは、全体としての相関関係はないとしながらも、糖尿病治療中のほうが抑うつ症状発症率は高まることを示した。JAMA誌2008年6月18日号より。米国人男女約5,000人の追跡調査から関係推定本研究は、45~84歳の米国男女を2000~2002年に登録し、2004~2005年まで追跡した縦断的・多民族コホート研究「Multi-Ethnic Study of Atherosclerosis」に基づいて行われた。主要評価項目は、疫学研究センター・うつ病スケール(CES-D)で16ポイント以上と定義される抑うつ症状か、抗うつ薬投与またはその両方とし、参加者を、空腹時血糖値が正常(100mg/dL)、境界型=IFG(100~125mg/dL)、2型糖尿病(126mg/dL以上または治療中)に分類。「分析1」では、ベースラインで2型糖尿病でない参加者5,201例を対象に、抑うつ症状の有無について、3.2年間にわたり2型糖尿病との相対ハザードを推定。「分析2」では、ベースラインで抑うつ症状のない参加者4,847例を対象に、2型糖尿病の有無について、3.1年間にわたり抑うつ症状発症との相対オッズを算出した。糖尿病とうつは関連するものの有意差なし「分析1」では、2型糖尿病発症率は、抑うつ症状群で1,000人/年につき22.0人、抑うつ症状のない群で同16.6だった。2型糖尿病のリスクは、人口動態的因子とBMIを補正後、CES-Dスコアが5単位増すごとに1.10倍高くなった(95%信頼区間:1.02~1.19)。この傾向は、代謝や炎症、社会経済、生活様式因子で補正しても同じだが、補正後は統計学的な有意差はなかった(相対ハザード比:1.08、95%信頼区間:0.99~1.19)。「分析2」では、抑うつ症発症率は、正常血糖群では1,000人/年につき36.8。IFG群では同27.9、未治療群は同31.2、治療群は61.9だった。正常血糖群で抑うつ症を発症する人口動態的補正オッズ比は0.79、IFG群は0.75、未治療と治療群では1.54だった。抑うつ症状と2型糖尿病の関連性は、BMIや社会経済、生活様式因子、共存症による補正後も同じだが、実質的に相関関係は存在しない。ベースラインにおける抑うつ症と2型糖尿病のおおまかな関連は、生活様式因子によって部分的に説明できた。IFG群と未治療群は、抑うつ症発症率と逆相関し、治療群は正相関を示した。 これらは人種民族集団全体で類似していた。(朝田哲明:医療ライター)

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限局性前立腺癌にホルモン単独療法は有用であるか? -第4回 日本泌尿器科学会プレスセミナー レポート-

 2008年6月25日に帝国ホテルにおいて「第4回日本泌尿器科学会プレスセミナー」が開催された。そこで話された、「泌尿器科疾患に関するトピックス」についてレポートする。 初めに、金沢大学大学院医学系研究科集学的治療学 教授の並木幹夫氏より、「前立腺癌の治療選択~ホルモン療法の役割と副作用対策~」が紹介された。 現在、前立腺癌は死亡率・死亡数共に増加の一途をたどっており、2020年には男性のがん罹患率第2位になるという。並木氏は、PSA(前立腺特異抗原)導入前後における治療の変遷、治療の進歩と共に、QOLに配慮した治療も発達してきた経緯を紹介した。 その治療法としては、放射線療法、手術療法、ホルモン療法があり、病期によって選択される。一方、ホルモン依存性の前立腺癌においては全身的な治療法であるホルモン療法が選択されることが多い。今回並木氏は、特に限局性前立腺癌に対するホルモン単独療法の有用性を紹介した。 限局性前立腺癌に対するホルモン療法の有効性に関する後ろ向き研究から、Low-risk症例やIntermediate-risk症例への効果が期待できるのではないか、と提案した。また、QOLの観点から行われた試験でも、ホルモン療法はQOLに影響しなかったという。しかし、その一方で、ホルモン療法による男性ホルモン低下が招く加齢男性性腺機能低下症候群(LOH症候群)の対策は必要であるとし、ホルモン療法の今後の課題や新たな薬剤であるSARMへの期待を述べた。 最後に並木氏は、様々な方法を駆使して前立腺癌の治療を行っていくことが我々の使命であるとまとめた。 続いて、国際医療福祉大学病院リプロダクションセンター 教授の岩本晃明氏より「男性不妊症の治療戦略~無精子症は増えているのか~」が紹介された。 冒頭、岩本氏は現在のカップルの不妊症の半分は男性に原因があることを述べ、その患者数に比し、男性不妊患者が専門医を受診していない現状を紹介した。続いて、男性不妊症の原因、診療、種類、治療法を解説した。 現在、50~60人に1人が体外受精によって誕生しており、今後はさらに増えていくであろうと岩本氏は述べた。しかし、現状では不妊治療が高コストであることから、若い夫婦などは子供をつくりにくいのではないか、という。岩本氏は泌尿器科学会として、不妊症における男性不妊専門医の利用を呼びかけ、行政に対しても、「男性不妊症の存在を認識して原因を究明し治療していくことが、少子化対策に寄与するのではないか」ということを訴えていきたいと述べた。最後に、男性不妊症にさらに光を当ててもらいたい、と強く訴えた。「前立腺がんホルモン療法」関連記事ホルモン療法未治療の前立腺がん、ADTにアビラテロンの併用は?/NEJM

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「ランタス注ソロスター」新発売

サノフィ・アベンティス株式会社は、6月20日、 1型および2型糖尿病患者を対象とするディスポーザブル型インスリンペン型注入器を用いたキット製剤「ランタス注ソロスター」の販売を開始した。ランタス注ソロスターは、1日1回投与の持効型溶解インスリンアナログ製剤「ランタス」〔インスリン グラルギン(遺伝子組換え)〕を投与するためのディスポーザブル型の新しいインスリンペン型注入器を用いたキット製剤。詳細はプレスリリースへhttp://www.sanofi-aventis.co.jp/live/jp/ja/layout.jsp?scat=F46269E9-3D18-4250-BA23-5A6A7A0ECD74

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HIV感染症治療薬「ストックリン錠600mg」新発売

万有製薬株式会社は、HIV感染症治療薬「ストックリン錠600mg」(エファビレンツ)を、6月20日の薬価基準収載を受けて新発売した。ストックリンは米国本社が開発した非ヌクレオシド系の逆転写酵素阻害剤(NNRTI)で、1998年9月に米国で承認され、日本では1999年9月に「ストックリンカプセル200」を発売している。「ストックリン錠600mg」は、これまで「ストックリンカプセル200」が1日1回3カプセルの服薬であったのに対し、1日1回1錠の服薬となる。詳細はプレスリリースへhttp://www.banyu.co.jp/content/corporate/newsroom/2008/product_news_0620.html

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旅行者下痢の予防に大腸菌由来毒素含有ワクチンパッチが有効

旅行者下痢に対し、腸管毒素原性大腸菌(ETEC)由来の易熱性毒素(LT)を含有する経皮吸収型のワクチンが有効なことが、IOMAI Corporation(米国、Gaithersburg)のSarah A Frech氏らが健常な旅行者を対象に行った第II相試験で示された。ETECは、流行地への旅行者や開発途上国の幼児の下痢の主要原因である。毎年2,700万人の旅行者および2億1,000万人の小児が急性の下痢を発症し、38万人の子どもが死亡しているという。Lancet誌2008年6月14日号掲載の報告。メキシコあるいはグアテマラへの旅行者を対象とした無作為化第II相試験本研究は、メキシコあるいはグアテマラへの旅行を計画している18~64歳の健常成人のうち、米国の地域ワクチンセンターにアクセスした者を対象に行われた無作為化第II相試験である。割り付けには中央無作為化コードを用い、参加者および各施設のスタッフには割り付け状況はマスクされた。主要エンドポイントはETEC性下痢の発症率およびワクチンパッチから放出されたLTの安全性の評価とした。副次エンドポイントは旅行者下痢およびETECに対するワクチンの有効性などとした。参加者は旅行前に2~3週間隔で2枚のパッチを用いてワクチンを接種された。パッチにはLT 37.5μgあるいはプラセボが含有された。参加者は旅行先の国でカード形式の日誌に排便量を記録し、下痢を起こした場合は病原菌同定のためにサンプルを提出した。下痢の重症度は24時間における軟便の排便回数で評価した(軽度:3回、中等度:4、5回、重度:6回以上)。なお、旅行者下痢は一般に18回ほどの軟便の排便回数を伴って4~5日間持続し、通常、悪心・嘔吐、腹部疝痛、衰弱、脱水をきたす。ワクチンパッチは重度の下痢を有意に予防、罹病期間、軟便排便回数を低減2006年5~12月に201人が登録され、そのうち178人が2回のワクチン接種を受けてメキシコおよびグアテマラに旅行し、170人が解析の対象となった。プラセボ群の111人のうち24人(22%)が下痢を発症したが、ETEC性の下痢は11人(10%)であった。ワクチンは安全であり、免疫原性は発揮されていた。ワクチン群の59人においては、中等度~重度の下痢(予防効果:75%、p=0.0070)および重度の下痢(予防効果:84%、p=0.0332)に対する有意な予防効果が認められた。下痢をきたしたワクチン群の症例は、プラセボ群に比べ罹病期間が有意に短く(0.5日 vs 2.1日、p=0.0006)、軟便の排便回数が有意に少なかった(3.7回 vs 10.5回、p<0.0001)。Frech氏は、「旅行者下痢は一般的な疾病であり、旅行先での下痢の10%は腸管毒素原性大腸菌(ETEC)によるものである。ワクチン貼付薬は安全かつ実行可能であり、旅行者下痢の発症頻度および重症度を抑制する効果を有する」と結論している。また、同氏は「経皮的パッチは簡便かつ注射器不要で、低温流通体系(cold chain)を必要とせず、旅行者および途上国での使用に適するようデザインされている。今回確認された効果は第III相試験で検証する必要がある」とコメントしている。(菅野守:医学ライター)

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強化血糖コントロールは血管系転帰を改善:ADVANCE

本論は、2型糖尿病の大規模試験ADVANCE(the Action in Diabetes and Vascular Disease:Preterax and Diamicron Modified Release Controlled Evaluation)研究グループによる、2型糖尿病患者に対する強化血糖コントロールの、血管系転帰に与える影響の検討結果。NEJM誌2008年6月12日号(オンライン版2008年6月6日号)に掲載された。同日掲載されたACCORD研究グループでは、「血糖降下強化療法は死亡率を高め心血管イベント減へのベネフィットはない」と結論していたが、ADVANCE研究グループからは反対の見解が報告されている。経口血糖降下薬で強化血糖コントロール2型糖尿病患者1万1,140例を、標準血糖コントロールと強化血糖コントロールに無作為に割り付け、強化コントロールでは、糖化ヘモグロビン値が6.5%以下になるように、SU系経口血糖降下薬グリクラジドと、必要に応じて他剤を併用した。主要転帰は、主要大血管イベント(心血管系の原因による死亡、非致死的な心筋梗塞または脳卒中)と主要細小血管イベント(腎症、網膜症の発現または悪化)の複合とし、合同評価と個別評価を行っている。腎症発生率21%低下で主要血管系イベントの複合転帰10%低下中央値5年の追跡調査の結果、糖化ヘモグロビン平均値は、強化コントロール群(6.5%)のほうが標準コントロール群(7.3%)より低く、主要大血管と細小血管イベントの複合発生率も、強化群(18.1%)のほうが標準群(20.0%)より低下した(ハザード比:0.90、95%信頼区間:0.82~0.98、P=0.01)。主要細小血管イベント単独でみた場合も、強化群のほうが標準群より低下した(9.4%対10.9%、ハザード比:0.86、95%信頼区間:0.77~0.97、P=0.01)。これは主に、腎症発生率が低下したためで(4.1%対5.2%、0.79、0.66~0.93、P=0.006)、網膜症に対する有意な効果は認められていない(P=0.50)。血糖コントロール方法が違っても、主要大血管イベントや心血管系の原因による死亡に有意な影響はなかったことも確認された。強化コントロール群の主要大血管イベントのハザード比0.94(95%信頼区間:0.84~1.06、P=0.32)、同心血管系の原因による死亡のハザード比0.88(0.74~1.04、P=0.12)、同全死因死亡は0.93(0.83~1.06、P=0.28)。ただし重篤な低血糖症は、件数はまれだが強化群のほうが、発生率が高かった(2.7%対1.5%、ハザード比:1.86、95%信頼区間:1.42~2.40、P

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認知症改善のため日光浴を

多くの認知症高齢患者と介護者を苦しめる、認知低下や気分障害、行動・睡眠障害およびADL(日常生活動作)の制限は、サーカディアンリズム障害が関連している。オランダ神経科学研究所(Netherlands Institute for Neuroscience)のRixt F. Riemersma-van der Lek氏らは、サーカディアンリズムの2大同調因子である「明るい光」と「メラトニン」を長期間、単独もしくは組み合わせることで、認知症状の進行を改善できるかどうかを検証する長期2×2因子二重盲検無作為化プラセボ対照試験を行った。JAMA誌2008年6月11日号より。オランダの12施設で最長3.5年間にわたり比較試験は1999年から2004年にかけて、オランダのグループケア施設12ヵ所の居住者計189例を対象に行われた。平均年齢は85.8歳(SD:5.5年)、90%が女性、87%は認知症だった。対象を、平均15ヵ月間(SD:12ヵ月間、最長3.5年間)、全日明るい(±1000ルクス)もしくは薄暗い(±300ルクス)状況、夕方にメラトニン(2.5mg)またはプラセボを、施設ごとに無作為に割り付けた。主要転帰尺度は、6ヵ月ごとに、標準的な評価検査や指標[認知機能検査のMini-Mental State Examination (MMSE)、うつ症状を評価するCornell Scale for Depression in Dementia(CSDD)、看護情報に基づく日常生活動作スケールなど]を用いて認知症状の進行状況やADLの制限、および有害事象に関する評価を行った。光+メラトニン療法は攻撃的態度や夜間不穏もやや改善結果、光療法は、認知症状をMMSEで平均0.9ポイント改善させたほか、うつ症状はCSDDで1.5ポイント寛解、ADLの制限は年1.8ポイント改善した。メラトニン投与は睡眠開始までの時間を8.2分短縮し、睡眠時間を27分延長した。ただしメラトニン投与をPhiladelphia Geriatric Centre Affect Rating Scaleを用いて行った評価では、ポジティブ感情がマイナス0.5ポイント、ネガティブ感情がプラス0.8ポイントだった。またMulti Observational Scale for Elderly Subjects scaleを用いた評価では、引きこもり行動が1.02ポイント増加していたが、光療法との併用では増加はみられなかった。併用療法については、Cohen-Mansfield Agitation Indexの評価で、攻撃的態度が3.9ポイント減少させ、睡眠効率を3.5%増加し、夜間不穏を年間1時間当たり1分間改善させた。Lek氏は「光療法は、認知症高齢者の症状をある程度改善する効果がある。一方メラトニン投与は気分障害の副作用が出るため、光療法との併用のみ推奨される」と結論している。(朝田哲明:医療ライター)

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英国で進行中の患者治療記録のIT共有プロジェクトに対する人々の反応は?

英国では、NHS(National Health Service)のスタッフや患者が、電子化した患者の治療記録サマリーを共有できるよう大規模なITプロジェクトが進められている。SCR(summary care record)と呼ばれるサマリーは、一般開業医の診療記録から抽出・電子化されたもので、患者もHealthSpaceというWEBサイトを通じてアクセスすることができる。治療効率のアップ、それに伴う治療コスト削減が期待される本システムだが、一方で実用性、システムにかかるコスト、個人情報管理などに疑念を呈する声も絶えない。そこでロンドン大学のTrisha Greenhalgh氏らが、患者、スタッフが本システムをどう見ているのか質的研究を行った。BMJ誌2008年6月7日号(オンライン版2008年5月29日号)掲載より。システムを知っているか、記録の共有についてどう思うかを質問研究調査は103人への個別インタビューと7つのフォーカスグループ参加者に対して行われた。参加者は、プロジェクト初期からSCRやHealthSpaceに関わっている3つのプライマリ・ケア集団(生活レベルは3つとも同一)を通じて集められた。個別インタビュー対象者は、一般外科医院から、センター病院を時間外および入院、救急利用したことがある者が集められた。フォーカスグループ参加者は任意集団だが、HIV患者やメンタルヘルスケアサービス利用者、若者、高齢者、ドラッグ・リハビリ・プログラム参加者など社会的弱者と言われるような人々や英語が満足に話せない人々だった。それら参加者に、SCRとHealthSpaceを知っているか、電子媒体によるサマリー共有についてどう思うか意見を聞いた。認知度は低いがシステム自体には肯定的結果は、大半の人がSCRとHealthSpaceの存在を知らず、そこから情報をとれることを想起できなかった。またSCRに対する意見から利点と欠点があることがわかったが、それは個人的経験に基づくものであることが明らかとなった。意見を左右した主要な因子は、疾患の性質(特に緊急性が高い医療ニーズを必要とするかどうか)、ヘルスケアシステムやサーベイにより受けたこれまでの経験、健康教養レベル、主要なヘルスケアチームあるいはNHSそのものに対する信頼度などが挙げられた。全体として、薬害や医療ミス被害者が、社会的弱者と呼ばれる人々よりSCRに対して肯定的だった。SCRに関する誤解は、共通していた。特にそれがどんなデータを含んでいるのか、そして、誰がそれにアクセスできるかに関する混乱があった。大半の人は医療データを記録するかどうか、HealthSpaceを介して自分たちのSCRにアクセスするかどうかということには興味がない。しかし、持病を有する人々のセルフ・マネジメントおよび治療に、多少なりとも役立つ可能性もうかがえた。Greenhalgh氏は、「大規模な情報プログラムにもかかわらず、共有電子記録政策に関する公式見解は現時点は不明なままである。しかし、人々はこれを非常にポジティブに展開していくと見なしている」と結論。また、SCRにアクセスしやすくするためSCRデータ更新者や利用者が再訪問する際は「暗黙の同意」で済むようなシステム改善の必要性も提言している。 

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原発性高アルドステロン症、高血圧患者における有病率はそれほど高くない

治療抵抗性の高血圧患者では原発性高アルドステロン症の有病率が高いが、現在報告されているほどではなく、それゆえ高血圧患者一般の有病率も低いと推察されることが、20年以上をかけて集積した症例のレトロスペクティブな観察研究で明らかとなった。最近の報告では、一般的な高血圧患者の約10%が原発性高アルドステロン症(Conn症候群)に罹患しているとされるが、この高い有病率については疑問の声が上がっていた。アリストテレス大学Hippokration病院(ギリシャ、セサロニキ)のStella Douma氏らがLancet誌2008年6月7日号で報告した。ARRだけでなく、スピロノラクトン治療に対して反応した場合に確定診断研究グループは、治療抵抗性高血圧患者の大規模集団において原発性高アルドステロン症の有病率の評価を行った。外来通院中の治療抵抗性高血圧患者(利尿薬を含む3剤併用レジメンによる治療を行っても>140/90mmHgを示す患者)を対象に、血清アルドステロン濃度および血漿レニン活性を測定し、その比を算出した。陽性例[アルドステロン/レニン活性比(ARR)>65.16、アルドステロン濃度>416pmol/L]に対し、さらに塩分抑制検査(生理食塩水とフルドロコルチゾンを静注)を行い、原発性高アルドステロン症の診断はスピロノラクトン治療に対して反応した場合に確定診断とした。治療抵抗性高血圧における有病率は11.3%20年以上をかけて集積した治療抵抗性高血圧の1,616例について解析した。338例(20.9%)がARR>65.16、アルドステロン濃度>416 pmol/Lを満たした。塩分抑制検査に基づいて、183例(11.3%)が原発性高アルドステロン症と診断され、スピロノラクトン治療に反応したことから確定診断とした。このうち低カリウム血症が見られたのは83例(45.6%)のみであった。Douma氏は、「治療抵抗性高血圧患者では原発性高アルドステロン症の有病率が高いが、実質的に5つの既報のデータ(14~23%)よりは低い。それゆえ、一般の高血圧患者の有病率はずっと低いと推察される」と結論している。また、同氏は「5つの既報の研究の症例数は合計で418例にすぎない。これらの試験とわれわれのデータのプール解析では有病率は12.3%であり、試験間の不均一性を考慮した場合でも15.75%であった。したがって、一般的な高血圧患者における原発性高アルドステロン症のまん延を示唆する考え方は支持されない」と指摘している。(菅野守:医学ライター)

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メタボの診断基準では心血管疾患や糖尿病を予測できない?

メタボリックシンドローム(MetS)とその構成因子は高齢者の2型糖尿病とは相関するものの、血管リスクとの関連はないか、あるいは弱いため、心血管疾患(CVD)と糖尿病のリスクを同時に予測するMetSの判定規準を策定する試みは有益でないことが、2つのプロスペクティブ試験の予後データの解析から明らかとなった。MetS診断基準はインスリン抵抗性と血管疾患の関連をよりよく理解できるように策定されたが、その臨床的な役割には疑問の声もあるという。英国Glasgow大学医学部のNaveed Sattar氏らによる報告で、Lancet誌2008年6月7日号(オンライン版2008年5月22日号)に掲載された。PROSPERのデータを解析、BRHSで裏付け研究グループは、MetSおよびその5つの構成因子[BMIあるいはウエスト周囲長、トリグリセライド(TG)、HDLコレステロール、空腹時血糖、血圧]が高齢者におけるCVDと糖尿病のリスクをどの程度まで予測できるかを調査した。MetSは、National Cholesterol Education Program第3報の判定規準に基づいて定義した。Prospective Study of Pravastatin in the Elderly at Risk(PROSPER)に登録された70~82歳の非糖尿病患者4,612例において、MetSおよびその構成因子とCVDおよび2型糖尿病のイベント発生リスクの関連について解析した。次いで、得られた知見について、60~79歳の非糖尿病患者2,737例が参加したもうひとつのプロスペクティブ試験British Regional Heart Study(BRHS)のデータを用いて検証した。個々の疾患の至適なリスクアルゴリズムの確立を目指すべきPROSPERでは、3.2年間に772例がCVDをきたし、287例が糖尿病を発症した。MetSは、ベースライン時に疾患に罹患していない登録者のCVDリスクを上昇させなかったが(ハザード比:1.07 、95%信頼区間:0.86~1.32)、糖尿病のリスクは上昇させた(4.41、3.33~5.84)。糖尿病では、MetSのすべての構成因子のリスクが上昇したが、とくに空腹時血糖の異常が顕著であった(18.4、13.9~24.5)。CVDに罹患している参加者においても、同様の結果が得られた。BRHSでは、7年間に440例がCVDを、105例が糖尿病を発症した。MetSはCVDリスクを中等度にしか上昇させなかったが(相対リスク:1.27、1.04~1.56)、糖尿病リスクは顕著に上昇させた(7.47、4.90~11.46)。両試験ともに、BMIあるいはウエスト周囲長、TG、血糖のカットオフ値はCVDリスクと相関しなかったが、5つの構成因子はいずれも糖尿病の新規発症との関連を示した。Sattar氏は、「MetSとその構成因子は高齢者の2型糖尿病のリスクを上昇させるが、血管リスクとの関連はないか、あるいは弱いため、CVDと糖尿病のリスクを同時に予測するMetSの判定規準を策定する試みは有益でない」と結論し、「従来どおり、個々の疾患の至適なリスクアルゴリズムの確立に臨床的関心を向けるべきである」と指摘している。(菅野守:医学ライター)

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