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重症精神疾患に対する抗精神病薬+メトホルミン併用の有用性

 メトホルミンは、重症精神疾患患者における第2世代抗精神病薬(SGA)誘発性体重増加を軽減するための薬理学的介入の候補薬剤である。英国・ユニバーシティ・カレッジ・ロンドンのLuiza Farache Trajano氏らは、SGAによる治療を開始する重症精神疾患患者におけるメトホルミン併用の割合、有病率、人口統計学的パターンを明らかにし、SGA開始後2年間におけるメトホルミン併用が体重変化に及ぼす影響を推定するため、コホート研究を実施した。BMJ Mental Health誌2025年4月2日号の報告。 Clinical Practice Research Datalinkのプライマリケアデータを用いて、2005〜19年にアリピプラゾール、オランザピン、クエチアピン、リスペリドンによる治療を開始した重症精神疾患患者を対象に、コホート研究を実施した。メトホルミン併用の累積割合、期間有病率を推定し、人口統計学的および臨床的因子による併用処方率の違いを調査した。交絡因子を考慮し、SGA単独またはSGA+メトホルミン併用で治療された患者の体重変化について線型回帰法を用いて比較した。 主な結果は以下のとおり。・SGA治療を開始した患者2万6,537例のうち、メトホルミン併用患者は4,652例、非併用患者は2万1,885例であった。・2年間のメトホルミン初回処方割合は3.3%であった。・SGA+メトホルミン併用群は、民族的に多様性であり、社会的貧困度が高く、合併症割合が高く、ベースライン時の体重が多かった(平均体重:90.4kg vs.76.8kg)。・SGA開始後2年間での平均体重の変化は、SGA単独群では4.16%増加(95%信頼区間[CI]:−1.26〜9.58)したのに対し、SGA+メトホルミン併用群では0.65%の減少が認められた(95%CI:−4.26〜2.96)。・交絡因子で調整したのち、SGA+メトホルミン併用群における2年間の平均体重差は、女性で1.48kg(95%CI:−4.03〜1.07)、男性で1.84kg(95%CI:−4.67〜0.98)の減少がみられた。 著者らは「メトホルミンは、SGA誘発性体重増加の軽減に有効であることがガイドラインにも示されているにもかかわらず、併用されることは少ないことが明らかとなった。1次、2次医療の連携を強化し、併用処方の障壁に対処する必要があることが示唆された」と結論付けている。

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β遮断薬やスタチンなど、頻用薬がパーキンソン病発症を抑制?

 痛みや高血圧、糖尿病、脂質異常症の治療薬として、アスピリン、イブプロフェン、スタチン系薬剤、β遮断薬などを使用している人では、パーキンソン病(PD)の発症が遅くなる可能性のあることが、新たな研究で明らかになった。特に、PDの症状が現れる以前からβ遮断薬を使用していた人では、使用していなかった人に比べてPDの発症年齢(age at onset;AAO)が平均で10年遅かったという。米シダーズ・サイナイ医療センターで神経学副部長兼運動障害部門長を務めるMichele Tagliati氏らによるこの研究結果は、「Journal of Neurology」に3月6日掲載された。 PDは進行性の運動障害であり、ドパミンという神経伝達物質を作る脳の神経細胞が減ることで発症する。主な症状は、静止時の手足の震え(静止時振戦)、筋強剛、バランス障害(姿勢反射障害)、動作緩慢などである。 この研究では、PD患者の初診時の医療記録を後ろ向きにレビューし、降圧薬、非ステロイド性抗炎症薬(NSAIDs)、スタチン系薬剤、糖尿病治療薬、β2刺激薬による治療歴、喫煙歴、およびPDの家族歴とPDのAAOとの関連を検討した。対象は、2010年10月から2021年12月の間にシダーズ・サイナイ医療センターで初めて診察を受けた1,201人(初診時の平均年齢69.8歳、男性63.5%、PDの平均AAO 63.7歳)の患者とした。 アテノロールやビスプロロールなどのβ遮断薬使用者のうち、PDの発症前からβ遮断薬を使用していた人でのAAOは72.3歳であったのに対し、β遮断薬非使用者でのAAOは62.7歳であり、発症前からのβ遮断薬使用者ではAAOが平均9.6年有意に遅いことが明らかになった。同様に、その他の薬剤でもPDの発症前からの使用者ではAAOが、スタチン系薬剤で平均9.3年、NSAIDsで平均8.6年、カルシウムチャネル拮抗薬で平均8.4年、ACE阻害薬またはアンジオテンシンII受容体拮抗薬(ARB)で平均6.9年、利尿薬で平均7.2年、β刺激薬で平均5.3年、糖尿病治療薬で平均5.2年遅かった。一方で、喫煙者やPDの家族歴を持つ人は、PDの症状が早く現れる傾向があることも示された。例えば、喫煙者は非喫煙者に比べてAAOが平均4.8年早かった。 Tagliati氏は、「われわれが検討した薬剤には、炎症抑制効果などの共通する特徴があり、それによりPDに対する効果も説明できる可能性がある」とシダーズ・サイナイのニュースリリースで話している。 さらにTagliati氏は、「さらなる研究で患者をより長期にわたり観察する必要はあるが、今回の研究結果は、対象とした薬剤が細胞のストレス反応や脳の炎症を抑制することで、PDの発症遅延に重要な役割を果たしている可能性が示唆された」と述べている。

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免疫チェックポイント阻害薬の治療効果、年齢による差は認められず

 人の免疫システムが加齢に伴い衰えていくことはよく知られている。しかし、そのような免疫機能の低下が、がんに対する免疫療法の効果を妨げることはないようだ。がん患者に対する免疫チェックポイント阻害薬による治療は年齢に関わりなく有効であることが、新たな研究で明らかにされた。米ジョンズ・ホプキンス大学医学部腫瘍学分野のDaniel Zabransky氏らによるこの研究結果は、「Nature Communications」に4月21日掲載された。Zabransky氏は、「高齢患者に対する免疫療法の効果は、若年患者と同等か、場合によってはそれ以上だ」と述べている。 がん細胞は、免疫チェックポイントと呼ばれる正常な免疫システムを利用して免疫細胞の攻撃を回避することが知られている。免疫チェックポイント阻害薬は、この免疫システムのブレーキを解除し、免疫細胞ががん細胞をより効果的に攻撃できるようにする薬剤である。研究グループによると、がんと診断される患者の大半は65歳以上だという。がん治療における全体的な治療成績は高齢患者の方が悪い傾向にあり、免疫システムの老化が原因の一部と考えられている。しかし、免疫療法がこのような老化の影響の克服に役立つのかは明確になっていない。 本研究では、免疫チェックポイント阻害薬による治療を受けた104人のがん患者(男性67.3%)を対象に、治療後の免疫反応を比較した。対象者のうち54人が65歳以上だった。免疫反応は、試験開始時と治療から1〜5カ月後に採取した末梢血サンプルを用いて評価した。追跡期間中央値は8.8カ月だった。 その結果、無増悪生存期間(PFS)と全生存期間(OS)において年齢による有意な差は認められなかった。奏効率は、高齢患者で35.4%、若年患者で23.1%であり、この差も統計学的に有意ではなかった。 一方で、免疫反応については高齢患者と若年患者の間に違いが見られた。例えば、高齢患者では、ナイーブT細胞(特定の抗原に曝露したことのないT細胞)が少なく、免疫チェックポイント阻害薬による増強がなければ、がんなどの新たな脅威に対応する準備ができていない可能性が示唆された。研究グループは、「このような違いは、免疫療法薬が高齢患者にとって特に有益なものになる可能性があることを示唆している」と述べている。 研究グループは次の研究で、腫瘍内部で見つかった免疫細胞の違いに注目し、年齢層間で比較して免疫療法に対する反応を調べる予定だとしている。Zabransky氏は、「現行の治療では、免疫システムによるがん細胞の認識能力に年齢差がある点をあまり考慮せずに、免疫チェックポイント阻害薬をどの患者にも同じように投与している。われわれは、加齢に伴う免疫システムの変化に対する理解を深めることで、新たな治療戦略を特定し、患者ごとに異なる重要な因子に基づく個別化治療を進めていきたいと考えている」との展望を示している。

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小児・保護者との関わり方【すぐに使える小児診療のヒント】第2回

小児・保護者との関わり方前回は、小児の採血やルート確保についてお話しました。採血やルート確保の手順を身につけることはとても大切です。しかし、それ以上に重要なのは、小児や保護者の心理に寄り添いながら対応することです。実際、技術的な部分よりも、泣いて暴れる小児や不安そうな保護者への対応に苦手意識を持っている先生も多いのではないでしょうか。今回は、そうした場面での具体的な関わり方についてお話しします。症例3歳、男児6日間持続する発熱を主訴に受診。活気は保たれているが、眼球結膜充血や口唇発赤を認める。川崎病を疑い、採血をする方針とした。子「いたいのいやだーーー!!」母「この子、注射が本当に苦手で…。暴れないか心配です。」小児への声掛けの工夫処置前には小児の気持ちに共感して、年齢に応じた声掛けをします。そして、終わったあとには自信を持てるように褒めてあげましょう。大事なことは、(1)嘘をつかないこと、(2)一人前の人間として接することです。つい「痛くないよ~」と声掛けをしてしまいがちですが、誰しも注射は痛いものです。小児だって人間ですから、騙されたと思うと今後は協力してくれません。伝え方としては、「どうして〇〇になって(例:熱が出て)いるか調べてみようね。そして検査して早く治ろうね。みんな〇〇君に早くよくなってほしいと思っているよ」といったように声掛けしてみましょう。およそ2歳以上の小児であれば、多くの場合は理解してくれると思います。たまに耳にしますが、「言うこと聞かないと注射するよ!」という脅しはもってのほかです。脅すのではなく、「嫌だ」という気持ちに共感し、その上で頑張る気持ちを尊重しましょう。「嫌だから頑張れない自分」ではなく、「嫌だけど頑張ろうと思えた自分」を褒めてあげるのです。そうすれば実際に処置が終わると、「やられた」のではなく「できた」という自信に繋がります。この経験がその後の医療への向き合い方や自己肯定感に影響を与えることがあるからこそ、一つひとつの機会を大切にしたいものです。言葉で伝えるだけではなく、ごっこ遊びやおもちゃを活用して、病気や治療に関する理解を促す方法もあります。たとえば、おもちゃの注射器を持たせたり、人形に注射をするまねをしてもらったりしながらごっこ遊びをすることもあります。これを「プレパレーション」といい、2~7歳の小児にはとくに有用であるとされていますが、年齢にかかわらず理解できるように説明する必要があります。また、保護者に協力してもらって、おもちゃやDVDなどで小児の注意をそらして心理的負担を軽減させることを「ディストラクション」といいます。小児が感じている不安や恐怖を軽減し、前向きに治療を受けられるようにするための大切なプロセスであるといえます。保護者との関わり方保護者とは、まずは「なぜ処置が必要なのか/必要ないのか」を共有しましょう。安易に処置を行うことは不要な苦痛を生みかねません。「まぁ、採血ぐらいしとこうかな」と思っても、難しくて何度も穿刺することになってしまった、ということは容易に想像がつきますね。また、理由を説明しなかったり、保護者に言われるがままに処置をしたりすると、「前の先生はやってくれたのに、どうして今回はしてくれないんですか!」といった今後のトラブルにも繋がりかねません。そもそも、検査や処置の要否について、判断を保護者に委ねることは医師としての矜持に欠けるのではないでしょうか。「何を重要だと思っているか」を互いに理解し合おうとする姿勢が大切であるように思います。小児をお預かりするor保護者が付き添う多くの小児科外来では、「では、検査をするのでお子さんをお預かりします。お母さん(お父さん)はお外でお待ちください」と、処置の際は保護者は付き添わずにお預かりするスタイルが主流です。保護者が見ている前で泣き叫ぶ小児のルートをとる、という医療者側のプレッシャーは大きいでしょう。小児が処置を受けている様子を見るのがつらいという保護者の意見もあるかもしれません。しかし、日本ユニセフの「小児の権利条約」の第9条に「児童が父母の意に反してその父母から分離されない」と掲げられていることを受けて、保護者同伴で処置をする場面が少しずつ増えてきているように感じます。私は普段、よほど切迫している状況でなければ「どちらを選んでもいいですよ」と保護者に選択権を渡すようにしています。保護者が一緒に付いてくれているほうが、小児が安心して頑張れるというパターンをよく経験します。わが子が必死に助けを求めていたのに助けてあげられなかった、という意識になってしまう保護者に対しては、「お母さん(お父さん)が付いていてくれたおかげで心強かったと思います。助かりました、ありがとうございます」とぜひ伝えてください。小児の採血や点滴は難しいと感じるかもしれませんが、適切な準備と関わり方を知ることで、確実に成功率を上げることができます。処置の必要性は、小児の状態を的確に評価した上で判断し、不要な侵襲を伴う手技を避けることが大切です。また、小児には正直かつ前向きな声掛けを行い、保護者には処置の目的を丁寧に説明することで、不安を和らげ、協力を得ることができます。採血を「嫌な記憶」ではなく、「頑張れた経験」として残せるよう、ぜひ実践してみてください。本コラムでは、疾患の診断や治療だけでなく、診療の際の小児や保護者への関わり方についても毎回考えていきます。次回は、よく遭遇する生後3ヵ月未満児の発熱について、一緒に学んでいきましょう。 参考資料 1) Tomas-Jimenez M, et al. Int J Environ Res Public Health. 2021;18:7403. 2) Constantin KL, et al. J Pediatr Psychol. 2023;48:108-119. 3) ユニセフ:子どもの権利に関する条約 4) 国際成育医療センター:お子さんが注射を受けることになったとき

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青年期統合失調症に対するブレクスピプラゾールの短期的有用性〜第III相試験

 青年期の統合失調症に対する現在の治療は、不十分であり、新たな治療オプションが求められている。米国・Otsuka Pharmaceutical Development & CommercializationのCaroline Ward氏らは、青年期統合失調症に対するブレクスピプラゾール治療の短期的有効性および安全性を評価するため、10ヵ国、62施設の外来診療における国際共同ランダム化二重盲検プラセボ対照第III相試験を実施した。The Lancet Psychiatry誌2025年5月号の報告。 同試験の対象は、DSM-5で統合失調症と診断され、スクリーニング時およびベースライン時に陽性・陰性症状評価尺度(PANSS)合計スコア80以上であった13〜17歳の患者。ブレクスピプラゾール群(2〜4mg/日)、プラセボ群、アリピプラゾール群(10〜20mg/日)のいずれかに1:1:1でランダムに割り付けられた。主要有効性エンドポイントは、PANSS合計スコアのベースラインから6週目までの変化とした。安全性は無作為に割り付けられ、試験薬を1回以上投与された患者について評価を行った。 主な結果は以下のとおり。・2017年6月29日〜2023年2月23日にスクリーニングされた376例のうち、316例がランダム化された。内訳は、ブレクスピプラゾール群110例、プラセボ群104例、アリピプラゾール群102例。・対象患者の平均年齢は、15.3±1.5歳。女性は166例(53%)、男性は150例(47%)。・米国国勢調査局分類による人種別では、白人204例(65%)、黒人またはアフリカ系米国人21例(7%)、アメリカ先住民またはアラスカ先住民7例(2%)、アジア人2例(1%)、その他81例(26%)。・最終診察時の平均投与量は、ブレクスピプラゾールで3.0±0.9mg、アリピプラゾールで13.9±4.7mgであった。・PANSS合計スコアのベースラインから6週目までの最小二乗平均値変化は、ブレクスピプラゾール群で−22.8±1.5、プラセボ群で−17.4±1.6(プラセボ群との最小二乗平均値差:−5.33、95%信頼区間[CI]:−9.55〜−1.10、p=0.014)であった。アリピプラゾール群は−24.0±1.6であり、プラセボ群との最小二乗平均値差は−6.53(95%CI:−10.8〜−2.21、p=0.0032、多重検定調整なし)であった。・治療中に発生した有害事象は、ブレクスピプラゾール群で44例(40%)、プラセボ群で42例(40%)、アリピプラゾール群で53例(52%)発現した。・発生率5%以上の有害事象は、ブレクスピプラゾール群では頭痛(7例)、悪心(7例)、アリピプラゾール群で傾眠(11例)、疲労(8例)、アカシジア(7例)。・重篤な有害事象は、ブレクスピプラゾール群で1例(1%)、プラセボ群で3例(3%)、アリピプラゾール群で1例(1%)報告された。・死亡例の報告はなかった。 著者らは「青年期統合失調症において、ブレクスピプラゾール2〜4mg/日は、プラセボと比較し、6週間にわたる症状重症度の大幅な改善に寄与することが示唆された。また、安全性プロファイルは、成人の場合と一致していた。これらの結果は、青年期統合失調症におけるブレクスピプラゾールに関するエビデンスのさらなる充実につながり、臨床現場における治療選択の参考となるであろう」と結論付けている。

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未治療の進行性肺線維症、ニンテダニブ+抗炎症薬の同時導入療法の安全性・有効性(TOP-ILD)/日本呼吸器学会

 進行性肺線維症(PPF)に対する治療は、原疾患の標準治療を行い、効果不十分な場合に抗線維化薬を使用するが、早期からの抗線維化薬の使用が有効な可能性も考えられている。そこで、未治療PPFに対する抗線維化薬ニンテダニブ+抗炎症薬の同時導入療法の安全性と有効性を検討する国内第II相試験「TOP-ILD試験」が実施された。本試験において、ニンテダニブ+抗炎症薬の同時導入療法は、治療継続率が高く、有効性についても良好な結果が得られた。第65回日本呼吸器学会学術講演会において、坪内 和哉氏(九州大学病院)が本試験の結果について解説した。・試験デザイン:医師主導国内第II相単群試験・対象:%FVC(努力肺活量の予測値に対する実測値の割合)が50%以上の未治療PPF※患者34例・治療方法:1~7日目にプレドニゾロン(10mg、1日1回)+タクロリムス(0.075mg/kg、1日2回)→8日目以降にニンテダニブ(300mg、1日2回)+プレドニゾロン(10mg、1日1回)+タクロリムス(0.075mg/kg、1日2回)・評価項目:[主要評価項目]同一患者における治療介入前と治療介入後24週間の%FVC変化率(相対値)の差解析計画:治療介入前と治療介入後24週間の%FVC変化率(相対値)の差が0より有意に大きい場合に主要評価項目達成とした。※:特発性非特異性間質性肺炎(iNSIP)、分類不能型特発性間質性肺炎(分類不能型IIPs)、線維性過敏性肺炎、関節リウマチに伴う間質性肺疾患(RA-ILD)のいずれか 主な結果は以下のとおり。・対象患者34例中32例が試験を完遂した。・対象患者の登録時の診断名は、分類不能型IIPsが16例、線維性過敏性肺炎が15例、iNSIPが2例、RA-ILDが1例であった。・対象患者の年齢中央値は71歳、男性の割合は64.7%であった。%FVC(平均値±標準偏差[SD])は75.2±17.1%、%DLco(平均値±SD)は58.2±12.6%であった。自己抗体陽性の割合は23.5%、気管支肺胞洗浄液(BALF)中のリンパ球割合(中央値)は9.0%(範囲:0.4~78.8)であった。UIP(通常型間質性肺炎)like patternを呈する割合は58.8%であった。・プレドニゾロン、タクロリムス、ニンテダニブの減量に至った割合はそれぞれ11.8%、8.8%、33.3%であった。有害事象のため薬剤中止となった症例はいなかった。・%FVCの相対変化率(%/年)は、治療介入前24週間が-20.9%であったのに対し、治療介入後24週間では11.2%であった。主要評価項目の治療介入前と治療介入後24週間の%FVC変化率(相対値)の差は32.1%(95%信頼区間:17.2~47.0)となり、主要評価項目は達成された。・サブグループ解析(BALF中のリンパ球割合20%以上/未満、UIP like patternあり/なし)において、いずれの集団でもニンテダニブと抗炎症薬の同時導入療法による良好な治療効果が示された。 本結果について、坪内氏は「抗線維化薬と抗炎症薬の同時導入療法は治療継続率が高く、有効な治療法となる可能性が示唆された。今後は治療開始後52週まで追跡し、有効性および安全性を検討する予定である」とまとめた。

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既治療のHER2変異陽性NSCLC、zongertinibは有益/NEJM

 既治療のHER2変異陽性非小細胞肺がん(NSCLC)患者において、経口不可逆的HER2選択的チロシンキナーゼ阻害薬zongertinibは臨床的有益性を示し有害事象は主に低Gradeであったことが、米国・University of Texas M.D. Anderson Cancer CenterのJohn V. Heymach氏らBeamion LUNG-1 Investigatorsによる第Ib相試験の結果で報告された。HER2変異陽性NSCLC患者には、革新的な経口標的療法が求められている。zongertinibは第Ia相試験で進行または転移を有するHER2異常を認める固形がん患者への有効性が示されていた。NEJM誌オンライン版2025年4月28日号掲載の報告。複数コホートで用量探索および安全性・有効性を評価 第Ia/Ib試験はヒト初回投与試験で、現在も進行中である。進行または転移を有するHER2異常を認める固形がん患者(Ia相)および進行または転移を有するHER2変異陽性NSCLC患者(Ib相)を登録した複数コホートでzongertinibの用量探索および安全性・有効性が評価された。 本論ではIb相から既治療の患者が登録された3つのコホートにおけるzongertinibの主要解析の結果が報告された。3コホートは、チロシンキナーゼドメイン(TKD)変異陽性NSCLC患者(コホート1)、TKD変異陽性かつHER2標的抗体薬物複合体による治療歴のあるNSCLC患者(コホート5)、非TKD変異陽性NSCLC患者(探索的コホート3)である。 コホート1の患者は、zongertinib 1日1回120mgまたは240mgで投与を開始し、コホート3および5の患者は、同240mgで投与を開始した。コホート1の用量選択の中間解析の結果を受けて、その後は全コホートが120mgの投与を受けた。 主要評価項目は、盲検下独立中央判定で評価(コホート1、5)または治験担当医師判定で評価(コホート3)した奏効率(ORR)であった。副次評価項目は、奏効期間(DOR)、無増悪生存期間などであった。zongertinib 1日1回120mg投与群の71%で奏効 2023年3月8日~2024年11月29日に、オーストラリア、欧州、アジア、米国の74施設で、コホート1は132例、コホート5は39例、コホート3は25例の患者が治療を受けた。 データカットオフ(2024年11月29日)時点で、コホート1では計75例がzongertinib 1日1回120mgの投与を受けており、そのうち奏効を示したのは53例で(ORR:71%[95%信頼区間[CI]:60~80]、p<0.001)、DOR中央値は14.1ヵ月(95%CI:6.9~未到達)であった。Grade3以上の治療関連有害事象(TRAE)は13例(17%)に発現した。 コホート5(31例)では、ORRは48%(95%CI:32~65)であった。Grade3以上のTRAEは1例(3%)に発現した。 コホート3(20例)では、ORRは30%(95%CI:15~52)であった。Grade3以上のTRAEは5例(25%)に発現した。 全3コホートにおいて、薬剤性間質性肺疾患の発現は報告されなかった。

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中等度早産児へのカフェイン投与継続、入院期間を短縮するか/JAMA

 中等度早産児(在胎期間29週0日~33週6日で出生)に対するカフェイン投与の継続は、プラセボ投与と比較して入院期間の短縮には至らなかったことが、米国・アラバマ大学バーミングハム校のWaldemar A. Carlo氏らEunice Kennedy Shriver National Institute of Child Health and Human Development Neonatal Research Networkによる無作為化試験「MoCHA試験」の結果で示された。中等度早産児に最も多くみられる疾患の1つに未熟児無呼吸発作がある。カフェインなどのメチルキサンチン製剤が非常に有効だが副作用が生じる可能性があり、必要以上に投与を継続すべきではないとされる。2024年に発表されたメタ解析では、早産児へのカフェイン中止戦略の有益性と有害性に関するデータは限定的であることが示され、カフェイン投与の短期的および長期的な影響のさらなる評価が求められていた。JAMA誌オンライン版2025年4月28日号掲載の報告。無作為化後の退院までの期間を評価 研究グループは、2019年2月~2022年12月に米国の29病院で、カフェイン療法の延長が入院期間を短縮するかを評価する無作為化試験を行った。対象は、在胎期間29週0日~33週6日で出生し、(1)無作為時の月経後年齢が33週0日~35週6日、(2)カフェイン投与を受けており投与中止の計画があり、(3)120mL/kg/日以上の経口栄養および/または経管栄養を受けている新生児とした。 対象児は退院後28日まで、経口カフェインクエン酸塩(10mg/kg/日)投与を受ける群またはプラセボ投与を受ける群に無作為に割り付けられ、追跡評価を受けた(フォローアップ完了は2023年3月20日)。 主要アウトカムは、無作為化後の退院までの期間。副次アウトカムは、生理的発達(無呼吸発作が連続5日間なく、完全経口栄養を受けており、少なくとも48時間保育器から出ている)までの日数、退院時の月経後年齢、あらゆる要因による再入院およびあらゆる疾患による受診、安全性アウトカム、死亡などであった。補正後群間差中央値0日、生理的発達までの日数も短縮せず 事前に規定された無益性閾値の検出に必要とされた被験者登録は878例であったが、計827例(在胎期間中央値31週、女児414例[51%])が無作為化(カフェイン群416例、プラセボ群411例)された時点で登録は早期に中止された。 無作為化から退院までの入院日数は、カフェイン群18.0日(四分位範囲[IQR]:10~30)、プラセボ群16.5日(10~27)で群間差はなく(補正後群間差中央値:0日[95%信頼区間[CI]:-1.7~1.7])、また生理的発達までの日数も差は認められなかった(14.0日vs.15.0日、補正後群間差中央値:-1日[95%CI:-2.4~0.4])。 カフェイン群の新生児は無呼吸発作消失までの期間が短縮したが(6.0日vs.10.0日、補正後群間差中央値:-2.7日[95%CI:-3.4~-2.0])、完全経口栄養を受けるようになるまでの期間は同程度であった(7.5日vs.6.0日、0日[-0.1~0.1])。再入院および疾患による受診は両群で差はなかった。 有害事象については、両群間で統計学的有意差は認められなかった。

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触覚フィードバックで軽度アトピー性皮膚炎患者における夜間掻痒が軽減

 軽度のアトピー性皮膚炎に対する触覚フィードバックは、患者の夜間掻痒を軽減させる非薬理学的介入として使用できる可能性があるという研究結果が、「JAMA Dermatology」に2月5日掲載された。 米ミシガン大学アナーバー校のAlbert F. Yang氏らは、単アーム2段階コホート試験を実施し、クローズドループ・触覚フィードバックを備えた人工知能(AI)対応ウェアラブルセンサーについて、軽症アトピー性皮膚炎の夜間掻痒症状に対する検出精度および軽減効果を検討した。試験には、中等度~重度の掻痒行動を自己申告した軽症アトピー性皮膚炎患者が対象者として登録された。手に装着したウェアラブルセンサーから送られる触覚フィードバックは、AIアルゴリズムによって夜間掻痒症状が検出されたときに発せられる。対象者は、まず検出機能のみ作動させたセンサーを7日間装着し、その後触覚フィードバックも作動させた状態でセンサーを7日間装着した。 対象者10人について、合計104回、831時間の夜間睡眠がモニタリングされた。追跡期間中に試験から脱落した対象者はいなかった。解析の結果、第2週目に触覚フィードバックを作動させると、1夜当たりの掻痒イベント平均回数が28%有意に減少し(45.6回対32.8回)、睡眠1時間当たりの掻痒平均時間に50%の有意差が認められた(15.8秒対7.9秒)。総睡眠時間の減少はなかった。 著者らは、「この技術は、全身治療の適応でない、あるいはステロイド外用薬の使用を希望しないが掻痒行動が多いと訴える軽症AD患者において、掻痒行動を減少させるための単独、あるいはより現実的には補助的な治療機器として役立つ可能性がある」と述べている。 なお複数の著者が、本研究の一部助成を行い、特許を出願中であるマルホ社と、1人の著者がアッヴィ社との利益相反(COI)に関する情報を明らかにしている。

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線形回帰(重回帰)分析 その5【「実践的」臨床研究入門】第54回

重回帰分析の前提条件・留意点の検証と結果の記述前回は、重回帰分析におけるEZR(Eazy R)の操作手順と解析結果の解釈について仮想データ・セットを用いて説明しました。今回は、EZRを用いた重回帰分析の前提条件および留意点の検証方法を解説し、解析結果のまとめを示します。重回帰分析モデルの前提条件と留意点重回帰分析モデルには下記のようないくつかの前提条件(連載第52回参照)や留意点があります。前提条件線形性:目的変数と説明変数に線形性(直線的な関係)があること。⇒残差-予測値プロットで確認します。残差の正規性:残差(予測値と実測値の差)が正規分布に従うこと。⇒Q-Qプロットで確認します。留意点多重共線性:説明変数同士が強く相関していること。多重共線性があると、回帰係数の推定が不安定になる。⇒VIF(Variance Inflation Factor)の値で確認します。それでは、実際にEZRの下記の操作手順でこれらの前提条件や留意点を検証してみましょう(連載第53回参照)。仮想データ・セットの取り込み仮想データ・セットをダウンロードする※ダウンロードできない場合は、右クリックして「名前をつけてリンク先を保存」を選択してください。「ファイル」→「データのインポート」→「Excelのデータをインポート」重回帰分析の実行「統計解析」→「連続変数の解析」→「線形回帰(単回帰、重回帰)」の順でメニューバーを選択。ポップアップウィンドウにて、下図のように目的変数および説明変数を指定し、モデル名(例:「重回帰分析_GFR変化量」)を入力。オプションで「基本的診断プロットを表示する」にチェックを入れ、「OK」をクリック。基本的診断プロットによる前提条件の確認「基本的診断プロットを表示する」をチェックすると、4つのプロット(グラフ)が表示されます。ここでは、下記の2つのプロットの出力結果を解説します。残差-予測値プロット(Residuals vs.Fitted)y軸が残差(実測値-予測値)、x軸が重回帰分析モデルの予測値。残差が0を中心に特定のパターンを持たず、おおむねランダムに分布し、赤い平滑曲線が水平に近ければ、線形性が保たれていると考えられます。Q-Qプロット(Q-Q Residuals)残差が正規分布に従っていれば、プロット上の点は y=x の直線上にほぼ沿って並びます。重回帰分析結果で重回帰分析モデルの前提条件を確認EZRの出力ウィンドウには各説明変数のVIFが表示されます(下図)。VIF画像を拡大するいずれの説明変数のVIFも5未満(多重共線性がほとんどない)であることが確認できます。以上の検証から、この重回帰分析モデルの前提条件(線形性と残差の正規性)は満たしており、多重共線性の問題もほとんどないと考えられました。ここであらためて、GFR変化量(diff_eGFR5)を厳格低たんぱく食の遵守の有無(treat)で層別し、要約してみましょう(下図参照)。「統計解析」→「連続変数の解析」→「連続変数の要約」の順でメニューバーを選択。開いたポップアップウィンドウの変数(1つ以上選択)は「diff_eGFR5」を指定。さらに、層別変数のボタンをクリックし、ポップアップウィンドウの層別変数(1つ選択)で「treat」を指定。「OK」をクリックすると、EZRの出力ウィンドウに下に示した解析結果が表示されます。画像を拡大するそれでは、前回の重回帰分析結果の解釈も併せて、解析結果の記述を下記のようにまとめてみました。GFR変化量の推定平均値(SD)は、厳格低たんぱく食遵守群と非遵守群で、それぞれ-12.5(4.41)、-16.1(4.49)mL/分/1.73m2であった。重回帰分析結果から、GFR変化量には遵守群と非遵守群間で2.03(95%CI:1.61〜2.45)mL/分/1.73m2の差が認められた(連載第53回参照)。※SD:Standard deviation(標準偏差)、95%CI:95% confidence interval(95%信頼区間)

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疫学・自然経過―その1【脂肪肝のミカタ】第2回

疫学・自然経過―その1Q. MASLD由来の肝がんの実態は?腹部超音波検査で脂肪性肝疾患(SLD)と診断された虎の門病院の9,959例を、SLDの新規分類に基づいて肝発がん率を評価した。その結果、代謝機能障害関連脂肪性肝疾患(MASLD)が0.05%/年、代謝機能障害アルコール関連肝疾患(MetALD)が0.11%/年、アルコール関連肝疾患(ALD)が0.21%/年と、アルコール摂取量に伴い肝発がん率が増加することが確認された(図1)。(図1)腹部超音波検査でSLDと診断された患者のエタノール摂取量別累積肝発がん率画像を拡大するMASLDからの肝発がん率は決して高くはないが1,2)、本邦における対象は2,000万人以上とされ、将来的に肝がんの主な原因の一つになることが予測される。MASLD症例における肝発がんに影響する要因として、肝線維化進行度、高齢、2型糖尿病、肥満、エタノール摂取量などが挙げられる(表1)。とくに、肝線維化進行度は生命予後の予測に重要な因子とされる3-5)。これらの危険因子を組み合わせて、多くの対象の中から、危険なMASLD症例を絞り込むことが必要とされる。(表1) MASLD症例における肝がんの危険因子画像を拡大する1)Kawamura Y, et al. Clin Gastroenterol Hepatol. 2016;14:597-605.2)Chen YT, et al. Am J Gastroenterol. 2024;119:2241-2250.3)Rinella ME, et al. Hepatology. 2023;77:1797-1835.4)European Association for the Study of the Liver (EASL) ・ European Association for the Study of Diabetes (EASD) ・ European Association for the Study of Obesity (EASO). J Hepatol. 2024;81:492-1542.5)日本消化器病学会・日本肝臓学会編. NAFLD/NASH診療ガイドライン2020. 南江堂.

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PTSDの迅速なスクリーニングと評価のための言語的特徴〜メタ解析

 心的外傷後ストレス障害(PTSD)の症状と言語的特徴との関連を調査し、言語的特徴がPTSDの迅速なスクリーニングや評価を行ううえで信頼できる指標として利用可能かを判断するため、中国・上海中医薬大学のZhenyuan Yu氏らは、システマティックレビューおよびメタ解析を実施した。Frontiers in Psychiatry誌2025年3月31日号の報告。 2024年8月までに公表されたPTSDと言語的特徴との関連を調査した研究をPubMed、Embase、Cochrane Central Register of Controlled Trials、Web of Science、Ovidデータベースより包括的に検索し、参考文献の後方トラッキングにより補強した。 主な結果は以下のとおり。・12件の観察研究、累積サンプルサイズ5,706例を分析に含めた。・言語調査や単語数(LIWC)、手動コーディング、機械学習技術などさまざまな言語分析ツールを用いた研究が行われていた。・メタ解析により、PTSD症状と有意な正の相関が認められた言語的特徴は、次のとおりであった。【死亡関連の単語】オッズ比(OR):1.32、95%信頼区間(CI):1.10〜1.59、I2=79.4%、p=0.004【ネガティブな感情の単語】OR:1.21、95%CI:1.11〜1.32、I2=30.5%、p<0.001【怒りに関する単語】OR:1.14、95%CI:1.11〜1.17、I2=0.0%、p<0.001【単語数】OR:1.20、95%CI:1.09〜1.31、I2=11.2%、p<0.001・さらに、身体に関連する単語は、PTSDの過覚醒症状、侵入症状、回避症状と正の相関が認められた。【過覚醒症状】OR:1.26、95%CI:1.15〜1.37、I2=0.0%、p<0.001【侵入症状】OR:1.40、95%CI:1.16〜1.68、I2=0.0%、p<0.001【回避症状】OR:1.29、95%CI:1.21〜1.37、I2=0.0%、p<0.001・死亡関連の単語および単語数は、PTSDの侵入症状と正の相関が認められた。【死亡関連の単語】OR:1.16、95%CI:1.08〜1.25、I2=0.0%、p<0.001【単語数】OR:1.18、95%CI:1.10〜1.27、I2=0.0%、p<0.001・悲壮感、不安、ポジティブな感情、一人称による表現、感覚、認知関連の単語とPTSD症状との間には、相関は認められなかった。 著者らは「PTSDの迅速なスクリーニングや評価に対し、死亡関連、怒り、ネガティブ、身体に関する単語および単語数は、信頼できる指標である可能性が示唆された。ただし、さまざまな文化的背景、性別、トラウマなどとPTSD症状との関係を調査するさらなる研究が必要である」と結論付けている。

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ノータッチ静脈採取法、CABGの静脈グラフト閉塞を改善/BMJ

 冠動脈バイパス術(CABG)のグラフト採取において、従来法とは異なりノータッチ静脈採取法(no-touch vein harvesting technique)は、静脈の外膜と血管周囲組織を温存し、vasa vasorum(脈管の脈管)の完全性と内皮機能を保持する。そのため、内皮傷害が最小限に抑えられ、炎症反応が軽減されてグラフトの開存性が向上すると指摘されている。中国医学科学院・北京協和医学院のMeice Tian氏らは、「PATENCY試験」の3年間の追跡調査により、従来法と比較して大伏在静脈のノータッチ静脈採取法はCABGにおける静脈グラフトの閉塞を有意に軽減し、患者アウトカムを改善することを示した。研究の成果は、BMJ誌2025年4月30日号に掲載された。中国の無作為化試験の3年延長試験 PATENCY試験は、CABGにおけるノータッチ静脈採取法の3年間のアウトカムの評価を目的とする無作為化試験であり、2017年4月~2019年6月に中国の7ヵ所の心臓外科施設で患者を登録した(National High Level Hospital Clinical Research Fundingなどの助成を受けた)。今回は、3年間の延長試験の結果を報告した。 年齢18歳以上で、CABGを受ける患者2,655例(平均[±SD]年齢61±8歳、女性22%、糖尿病36%、3枝病変88.4%、左主幹部病変31.7%)を対象とした。被験者を、CABG施行中に大伏在静脈からのグラフト採取法としてノータッチ静脈採取法を行う群(1,337例)、または従来法によるグラフト採取を行う群(1,318例)に無作為に割り付けた。 主要アウトカムは、CABG後3年の時点における静脈グラフトの閉塞(CT血管造影で評価)とした。グラフトおよび患者レベルとも閉塞率が有意に良好 術後3年間に、全体の2,621例(99.4%)が臨床的なフォローアップを完了し、2,281例(86.5%)が予定されていたCT血管造影を受けた。 術後3年時のグラフトレベルの静脈グラフト閉塞の割合は、従来法群が9.0%(175/1,953グラフト)であったのに対しノータッチ静脈採取法群は5.7%(114/1,988グラフト)と有意に良好であった(オッズ比[OR]:0.62[95%信頼区間[CI]:0.48~0.80]、絶対群間リスク差:-3.2%[95%CI:-5.0~-1.4]、p<0.001)。 また、全2,655例のITT解析でも、3年後の静脈グラフト閉塞の割合は従来法群に比べノータッチ静脈採取法群で低かった(6.1%vs.9.3%、OR:0.63[95%CI:0.51~0.81]、絶対群間リスク差:-3.1%[95%CI:-4.9~-1.4]、p<0.001)。 3年後の患者レベルの静脈グラフト閉塞の割合は、従来法群の13.3%(152/1,141例)に比べノータッチ静脈採取法群は9.2%(105/1,140例)と有意差を認めた(OR:0.66[95%CI:0.51~0.86]、絶対群間リスク差:-4.11[95%CI:-6.70~-1.52]、p=0.002)。創部の皮膚感覚低下、滲出、浮腫が多い 3年後の臨床アウトカムは、非致死的心筋梗塞(ノータッチ静脈採取法群1.2%vs.従来法群2.7%、p=0.01)、再血行再建術(1.1%vs.2.2%、p=0.03)、狭心症の再発(6.2%vs.8.4%、p=0.03)、心臓関連の原因による再入院(7.1%vs.10.2%、p=0.004)の発生率がノータッチ静脈採取法群で良好であった。一方、全死因死亡(3.8%vs.3.4%、p=0.49)、心臓死(2.6%vs.2.4%、p=0.83)、脳卒中(3.7%vs.3.3%、p=0.55)の発生率には両群間に差はなかった。 退院前の脚創部合併症については、皮膚の感覚低下(23.2%vs.17.8%、p<0.001)、滲出(4.3%vs.1.9%、p<0.001)、浮腫(19.0%vs.12.9%、p<0.001)の頻度がノータッチ静脈採取法群で高かった。壊死、コンパートメント症候群などの重度合併症は発現しなかった。また、3ヵ月の時点で未治癒の脚創傷への外科的介入(10.3%vs.4.3%、p<0.001)はノータッチ静脈採取法群で多かったが、12ヵ月時には追加的外科治療の割合は両群で同程度となった。 著者は、「これらの結果により、ノータッチ静脈採取法は長期間にわたってグラフトの開存性を維持し、心筋梗塞や再血行再建術の発生を抑制することで患者アウトカムの改善をもたらすことが示された」としている。

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肝線維化を有するMASH、週1回セマグルチドが有効/NEJM

 中等度または重度の肝線維化を有する代謝機能障害関連脂肪肝炎(metabolic dysfunction-associated steatohepatitis:MASH)の治療において、プラセボと比較してGLP-1受容体作動薬セマグルチドの週1回投与は、肝臓の組織学的アウトカムを改善するとともに、有意な体重減少をもたらすことが、米国・Virginia Commonwealth University School of MedicineのArun J. Sanyal氏らが実施したESSENCE試験で示された。研究の成果は、NEJM誌オンライン版2025年4月30日号で報告された。37ヵ国の無作為化プラセボ対照第III相試験 ESSENCE試験は、中等度~重度の肝線維化を有するMASHの治療におけるセマグルチドの有効性と安全性の評価を目的とする進行中の二重盲検無作為化プラセボ対照第III相試験であり、2021年5月~2023年4月に日本を含む37ヵ国253施設で患者を登録した(Novo Nordiskの助成を受けた)。今回は、最初の800例に関する中間解析の結果を公表した。 年齢18歳以上、生検で確定したMASHで、ステージF2またはF3の肝線維化を有する患者を、セマグルチド(2.4mg)を週1回皮下投与する群またはプラセボ群に、2対1の割合で無作為に割り付けた。投与期間は240週とし、この中間解析は72週目に行った。 主要エンドポイントは、肝線維化の悪化を伴わない脂肪肝炎の消失、および脂肪肝炎の悪化を伴わない肝線維化の改善とした。脂肪肝炎の消失、肝線維化の改善とも有意に優れた セマグルチド群に534例、プラセボ群に266例を割り付けた。全体の平均(±SD)年齢は56.0(±11.6)歳で、女性が57.1%、白人が67.5%であった。平均BMIは34.6(±7.2)で、2型糖尿病患者が55.9%含まれた。肝線維化はステージF2が31.3%、ステージF3が68.8%だった。 72週の時点で、肝線維化の悪化を伴わない脂肪肝炎の消失の割合は、プラセボ群が34.3%であったのに対し、セマグルチド群は62.9%と有意に高かった(推定群間差:28.7%ポイント[95%信頼区間[CI]:21.1~36.2]、p<0.001)。 また、脂肪肝炎の悪化を伴わない肝線維化の改善を示した患者の割合は、プラセボ群の22.4%に比べ、セマグルチド群は36.8%であり有意に良好だった(推定群間差:14.4%ポイント[95%CI:7.5~21.3]、p<0.001)。消化器系有害事象の頻度が高い 副次エンドポイントの解析では、体重の変化量(セマグルチド群-10.5%vs.プラセボ群-2.0%、推定群間差:-8.5%ポイント[95%CI:-9.6~-7.4]、p<0.001)、および脂肪肝炎の消失と肝線維化の改善の両方を達成した患者の割合(32.7%vs.16.1%、16.5%ポイント[10.2~22.8]、p<0.001)が、セマグルチド群で有意に優れた。 一方、36-Item Short Form Health Survey(SF-36)の体の痛み(bodily pain)のベースラインから72週目までの平均変化量(0.9 vs.-0.5、推定群間差:1.3%ポイント[95%CI:0.0~2.7]、p=0.05)は、セマグルチド群で痛みの程度が低い傾向がみられたが、統計学的に有意な差を認めなかった(事前に、p<0.0045を満たす場合に有意差ありと判定することと定めたため)。 重篤な有害事象は、セマグルチド群で13.4%、プラセボ群でも13.4%に発現した。試験中止に至った有害事象は、それぞれ2.6%および3.3%に認めた。最も頻度の高い有害事象は両群とも消化器系のもので、悪心(36.2%vs.13.2%)、下痢(26.9%vs.12.2%)、便秘(22.2%vs.8.4%)、嘔吐(18.6%vs.5.6%)がセマグルチド群で多かった。 著者は、「MASHの生物学的特性に基づくと、脂肪肝炎が消失すると肝線維化が抑制されると予測され、線維化のステージが高いことは不良なアウトカムと関連するため、ステージの低下はとくに重要と考えられる」「本試験の知見と先行研究の結果を統合すると、ステージF2またはF3の肝線維化を有するMASHの治療におけるセマグルチドの有益性が支持される」「セマグルチドは肝硬変患者にも安全に使用できるが、肝硬変における有効性は確立していないため、MASH患者では肝硬変のスクリーニングを行って、それに応じた治療を行うことが重要である」としている。

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日常的なデジタル機器の使用は高齢者の脳の健康を守る?

 一般に、スマートフォンやタブレットなどのデジタル機器の使い過ぎは、脳に悪影響を及ぼすと考えられている。しかし実際には、その逆の可能性があるようだ。少なくともテクノロジー革命の始まりを経験した世代におけるデジタル機器の日常的な使用は、認知機能障害のリスクを58%低下させる可能性のあることが明らかになった。これは血圧低下や運動、脳トレのゲームによるリスクの低下度に匹敵するという。米テキサス大学オースティン校コンプリヘンシブ・メモリー・センターのJared Benge氏と米ベイラー大学心理学・神経科学分野のMichael Scullin氏によるこの研究結果は、「Nature Human Behaviour」に4月14日掲載された。 Benge氏らは今回、合計で約41万1,430人(試験開始時の平均年齢68.7歳、女性53.5%)が参加した57件の先行研究のデータを統合して解析した。同氏らは、「デジタルテクノロジーとの関わりを持った最初の世代である『デジタル先駆者』が、認知症のリスクが出てくる年齢に差し掛かっている」と指摘する。 例えば、1945年生まれの人は、請求書の支払いに小切手や現金を使い、調べ物には百科事典や図書館のカード目録を利用し、初めての場所を訪れる際には紙の地図に頼り、郵便局を通じた手書きの手紙のやり取りに数日を要していた。「こうした人たちが今や80代を迎えつつあり、クレジットカードによるネットショッピング、検索エンジンを使った情報入手、自動リマインダー付きのデジタルカレンダーによるスケジュール管理、車やスマートフォンに搭載されたGPSによるナビゲーション、メールやビデオ通話を通じた世界中の人との即座のコミュニケーションが当たり前の時代に生きている」と研究グループは述べている。 研究データを統合して解析した結果、日常的にデジタル機器を使用している人では認知機能低下のリスクが58%低く(オッズ比0.42、95%信頼区間0.35〜0.52)、認知機能低下のペースが26%緩やかなことが明らかになった(同0.74、0.66〜0.84)。研究グループによると、過去の研究では、認知症のリスクは、血圧を低下させることで13%、日常的な身体活動で35%、高い教育レベルで47〜62%、脳トレのゲームなど脳に刺激を与える余暇活動で31%低下する可能性のあることが示唆されているという。Benge氏らは、「一般的かつ自然な形でのデジタルテクノロジーの使用の結果として、『brain drain(デジタル機器を使い過ぎることで生じる脳の疲弊)』や『デジタル認知症』に至ることを示す、信頼できるエビデンスはなかった」と結論付けている。 研究グループは、デジタルテクノロジーが認知機能の低下をより緩徐にする理由として、次の3点を挙げている。1)デジタル機器が、思考力や問題解決スキルの強化を促している可能性、2)デジタルテクノロジーが、認知症予防に役立つとされる社会的なつながりを強化する、3)加齢に伴い脳が衰え始めても、デジタル機器が「デジタルの足場」となって日常生活を支え、より長く自立した生活を送るための助けとなる可能性。 ただし研究グループは、「高齢者の脳にとってテクノロジーが『常に良い』、あるいは『常に悪い』といった単純な答えは存在しない」と指摘。例えば、スクリーンタイムの増加とともに座位時間も増加すれば脳の健康に悪影響が及ぶ可能性や、ソーシャルメディアを通じて高齢者が誤った情報にさらされる可能性も考えられるとしている。 また、今回の解析結果は、あくまでも成人期にコンピューターやインターネット、スマートフォンといったデジタル機器に初めて触れた「デジタル先駆者」の中高年層を対象とした研究から得られたものである。そのため研究グループは、「子どもの頃からデジタルテクノロジーに触れてきた世代にもこの結果が当てはまるかどうか、また今後、一般的なデジタルテクノロジーのあり方が変化しても同じ結果が得られるかどうかについては不明」としている。

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がん診療に携わるすべての人のレベルアップ目指しセミナー開催/TCOG

 東京がん化学療法研究会(TCOG)は、第25回臨床腫瘍夏期セミナーをオンラインで開催する。 同セミナーは、がん診療に携わる医師、薬剤師、看護師、臨床研究関係者、製薬会社、CROなどを対象に、治療の最新情報、臨床研究論文を理解するための医学統計などさまざまな悪性腫瘍の基礎知識から最新情報まで幅広く習得できるよう企画している。セミナー概要・日時:2025年7月18日(金)~19日(土)・開催形式:オンライン(ライブ配信、後日オンデマンド配信を予定)・定員:500人・参加費:15,000円(2日間)・主催・企画:特定非営利活動法人 東京がん化学療法研究会・後援:日本医師会、東京都医師会、東京都病院薬剤師会、日本薬剤師研修センター、日本癌治療学会、日本臨床腫瘍学会、日本産科婦人科学会、日本医療薬学会、日本がん看護学会、西日本がん研究機構、North East Japan Study Group・交付単位(予定):日本薬剤師研修センターによる単位(1日受講:3単位、2日受講:6単位)、日本医療薬学会 認定がん専門薬剤師・がん指導薬剤師認定単位(7/18受講:2単位、7/19受講:2単位)、日本看護協会 認定看護師・専門看護師:「研修プログラムへの参加」(参加証発行)、日本臨床腫瘍薬学会 外来がん治療認定薬剤師講習(研修)認定単位(1日受講:3単位、2日受講:6単位)プログラム(要約)7月18日(金)9:30~16:509:30~10:55【がん薬物療法 TOPICS】 胃がん化学療法、ASCOにおける肺癌最新の話題11:05~12:30【医学統計】 臨床研究のための統計学の基本知識、臨床に生かすために知っておきたい医学統計13:50~15:15【最新のがん薬物療法I】 膵がん・胆道がん、大腸がん化学療法 ガイドライン改定を踏まえて15:25~16:50【妊孕性と家族性腫瘍】 遺伝性腫瘍~遺伝学的診断と遺伝カウンセリング、CAYAがん患者等に対する妊孕性温存/がん・生殖医療の現状と課題7月19日(土)9:30~16:509:30~10:55【がんにおける新規抗体医薬】 二重特異性抗体(バイスペシフィック抗体)の特徴と臨床成績、抗体薬物複合体(ADC)11:05~12:30【TOPICS 2】 MRDが拓く癌治療の新しいストラテジー、ctDNAによるがん種横断的なMRD検査の時代へ13:50~15:15【最新のがん薬物療法II】 子宮頸がん・子宮体がん薬物療法のトピックス、泌尿器がんに対する薬物療法UpDate202515:15~16:50【緩和医療と支持療法】 骨転移の緩和ケア、コミュニケーション/遺族ケア/気持ちのつらさガイドラインのエッセンス申し込みはTCOG「臨床腫瘍夏期セミナー」ページから「臨床腫瘍夏期セミナー」プログラム

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単純性淋菌感染症、新規抗菌薬gepotidacinが有効/Lancet

 gepotidacinは、細菌のDNA複製を阻害するファーストインクラスの殺菌作用を持つトリアザアセナフチレン系抗菌薬。英国・Birmingham University Hospitals NHS Foundation TrustのJonathan D. C. Ross氏らは「EAGLE-1試験」において、泌尿生殖器の単純性淋菌(Neisseria gonorrhoeae)感染症の治療では、細菌学的治療成功に関して本薬はセフトリアキソン+アジスロマイシン併用療法に対し非劣性で、新たな安全性の懸念は認めないことを示した。研究の成果は、Lancet誌2025年5月3日号で報告された。6ヵ国の第III相無作為化実薬対照非劣性試験 EAGLE-1試験は、泌尿生殖器の単純性淋菌感染症の治療における経口gepotidacinの有効性と安全性の評価を目的とする第III相非盲検無作為化実薬対照非劣性試験であり、2019年10月~2023年10月に6ヵ国(オーストラリア、ドイツ、メキシコ、スペイン、英国、米国)の49施設で患者を登録した(GSKなどの助成を受けた)。 年齢12歳以上、体重45kg以上で、臨床的に泌尿生殖器の単純性淋菌感染症が疑われるか淋菌検査陽性、あるいはこれら両方の患者を対象とした。被験者を、gepotidacin 3,000mg経口投与(10~12時間間隔で2回)を受ける群(314例)、またはセフトリアキソン500mg筋肉内投与+アジスロマイシン1g経口投与を受ける群(併用群、314例)に無作為に割り付けた。 有効性の主要エンドポイントは細菌学的治療成功とし、治癒判定(test-of-cure:TOC)時(4~8日目)の培養で確定された泌尿生殖器部位からのN. gonorrhoeaeの消失と定義した。非劣性マージンは-10%に設定し、細菌学的ITT(micro-ITT)集団で解析した。両群とも淋菌の持続生残は認めない 628例(ITT集団)を登録し、gepotidacin群に314例(平均年齢33.9歳、女性11%)、併用群に314例(33.7歳、11%)を割り付けた。micro-ITT集団は406例で、それぞれ202例(33.2歳、8%)および204例(33.0歳、8%)であり、372例の男性のうち82例(20%)が女性と性交渉する男性(MSW)であったのに対し、290例(71%)は男性間性交渉者(MSM)だった。人種は、白人が74%、黒人またはアフリカ系が15%であった。 micro-ITT集団におけるTOC時の細菌学的治療成功の割合は、gepotidacin群が92.6%(187/202例、95%信頼区間[CI]:88.0~95.8)、併用群は91.2%(186/204例、86.4~94.7)であった(補正後治療群間差:-0.1%[95%CI:-5.6~5.5])。両側95%CIの下限値が非劣性マージン(-10%)を上回ったため、gepotidacin群の併用群に対する非劣性が示された。 また、両群とも、TOC時の泌尿生殖器における淋菌の持続生残(bacterial persistence)は認めなかった。治療関連の重度または重篤な有害事象はない gepotidacin群では、有害事象(74%vs.33%)および薬剤関連有害事象(68%vs.14%)の頻度が高く、主に消化器系の有害事象(67%vs.16%)であった。これらのほとんどが軽度または中等度だった。治療関連の重度または重篤な有害事象は、両群とも発現しなかった。 著者は、「これらの知見は、単純性泌尿生殖器淋菌感染症に対する新たな経口薬治療の選択肢を提供するものである」としている。

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好酸球数高値COPD、メポリズマブで中等度/重度の増悪低減/NEJM

 インターロイキン-5(IL-5)は好酸球性炎症において中心的な役割を担うサイトカインであり、慢性閉塞性肺疾患(COPD)患者の20~40%に好酸球性炎症を認める。メポリズマブはIL-5を標的とするヒト化モノクローナル抗体である。米国・ピッツバーグ大学のFrank C. Sciurba氏らMATINEE Study Investigatorsは、「MATINEE試験」において、好酸球数が高値のCOPD患者では、3剤併用吸入療法による基礎治療にプラセボを併用した場合と比較してメポリズマブの追加は、中等度または重度の増悪の年間発生率を有意に低下させ、増悪発生までの期間が長く、有害事象の発現率は同程度であることを示した。研究の成果は、NEJM誌2025年5月1日号に掲載された。25ヵ国の無作為化プラセボ対照第III相試験 MATINEE試験は、血中好酸球数が高値で、増悪リスクのあるCOPD患者における3剤吸入療法へのメポリズマブ追加の有効性と安全性の評価を目的とする二重盲検無作為化プラセボ対照第III相試験であり、2019年10月~2023年8月に25ヵ国344施設で患者を募集した(新型コロナウイルス感染症のため2020年3月23日~6月9日まで募集を中断)(GSKの助成を受けた)。 スクリーニング時に年齢40歳以上で、少なくとも1年前にCOPDの診断を受け、増悪の既往歴を有し、3剤吸入療法(吸入ステロイド薬、長時間作用型β2刺激薬、長時間作用型抗コリン薬)を3ヵ月以上受け、血中好酸球数≧300/μLの患者804例(平均[±SD]年齢66.2[±8.0]歳、女性31%)を修正ITT集団として登録した。 被験者を、4週ごとにメポリズマブ(100mg)を皮下投与する群(403例)、またはプラセボ群(401例)に無作為に割り付け、52~104週間投与した。 主要エンドポイントは、中等度または重度の増悪の年間発生率であった。治療への反応性には差がない 重度増悪の既往歴はメポリズマブ群で22%、プラセボ群で19%の患者に認めた。全体の25%の患者が過去または現在、心疾患の診断を受けており、72%が心血管疾患のリスク因子を有していた。平均曝露期間は両群とも約15ヵ月だった。 中等度または重度の増悪の年間発生率は、プラセボ群が1.01件/年であったのに対し、メポリズマブ群は0.80件/年と有意に低かった(率比:0.79[95%信頼区間[CI]:0.66~0.94]、p=0.01)。 また、副次エンドポイントである中等度または重度の増悪の初回発生までの期間中央値(Kaplan-Meier法)は、プラセボ群の321日と比較して、メポリズマブ群は419日であり有意に長かった(ハザード比:0.77[95%CI:0.64~0.93]、p=0.009)。 治療への反応性(QOLの指標としてのCOPDアセスメントテスト[CAT:0~40点、高スコアほど健康状態が不良であることを示す]のスコアが、ベースラインから52週目までに2点以上低下した場合)を認めた患者の割合は、メポリズマブ群が41%、プラセボ群は46%であり(オッズ比:0.81[95%CI:0.60~1.09])、両群間に有意な差はなかったため、階層的検定に基づきこれ以降の副次エンドポイントの評価に関して統計学的検定を行わなかった。MACEは両群とも3例に発現 投与期間中およびその後に発現した有害事象の割合は、メポリズマブ群で75%、プラセボ群で77%であった。投与期間中に発生した重篤な有害事象・死亡の割合はそれぞれの群で25%および28%であり、投与期間中およびその後の死亡の割合は両群とも11%(3例)だった。投与期間中およびその後に発生した主要有害心血管イベント(MACE:心血管死、非致死性の心筋梗塞・脳卒中、致死性または非致死性の心筋梗塞・脳卒中)は、両群とも11%(3例)に認めた。 著者は、「これらの知見は、ガイドラインに基づく維持療法のみを受けている患者に対して、メポリズマブ治療は付加的な有益性をもたらすことを示している」「先行研究と本試験の結果を統合すると、選択されたCOPD患者における2型炎症を標的とする個別化治療の妥当性が支持される」「増悪関連のエンドポイントはメポリズマブ群で良好であったが、CAT、St. George's Respiratory Questionnaire(SGRQ)、Evaluating Respiratory Symptoms in COPD(E-RS-COPD)、気管支拡張薬投与前のFEV1検査で評価した治療反応性は両群間に実質的な差を認めなかったことから、これらの原因を解明するための調査を要する」としている。

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大惨事はがんの診断数を減少させる

 自然災害やパンデミックなどの大惨事は、がんによる死者数の増加につながるかもしれない。新たな研究で、ハリケーン・イルマとハリケーン・マリアが2週間間隔でプエルトリコを襲った際に、同国での大腸がんの診断数が減少していたことが明らかになった。このような診断数の低下は、新型コロナウイルス感染症(COVID-19)パンデミックの発生直後にも認められたという。プエルトリコ大学総合がんセンターのTonatiuh Suarez-Ramos氏らによるこの研究結果は、「Cancer」に4月14日掲載された。 米国領プエルトリコでは、2017年9月初旬に超大型ハリケーン・イルマが島の北を通過したわずか2週間後に、カテゴリー5の最強ハリケーン・マリアが上陸し、甚大な被害を出した。当時、稼働していた病院はほとんどなく、高い貧困率などが原因ですでに制限されていた医療へのアクセスがさらに悪化した。さらに2020年にはCOVID-19パンデミックが発生した。政府が実施した厳格なロックダウン政策は、感染の抑制には効果的だったが、医療サービスの利用低下につながった。 Suarez-Ramos氏らは、このような大規模イベント発生による医療システムの混乱により、プエルトリコで2番目に多いがんである大腸がんの検診へのアクセスが制限され、それががんの早期発見の妨げとなった可能性があるのではないかと考えた。それを調べるために同氏らは、プエルトリコ中央がん登録簿の2012年1月1日から2021年12月31日までのデータを入手し、ハリケーン・イルマとハリケーン・マリアおよびCOVID-19パンデミックの発生直後および発生期間中に大腸がんの診断数がどのように変化したかを調査した。 その結果、2つのハリケーンがプエルトリコを襲った2017年9月の大腸がんの診断数は82件だったことが明らかになった。ハリケーンがなかった場合に想定された診断数は161.4件であり、統計モデルにより、ハリケーンによる即時の影響として診断数が28.3件減少したと推定された(17.5%の減少に相当)。 一方、パンデミック発生に伴うロックダウン後(2020年4月)の大腸がん診断数は50件であった。ロックダウンがなかった場合に想定された診断数は162.5件であり、統計モデルにより、ロックダウンにより診断数は即時的に39.4件減少したと推定された(24.2%の減少に相当)。 2021年12月の研究終了時点でも、早期大腸がんの診断数と50~75歳での診断数は、想定される診断数に達していなかった。また、末期大腸がんの診断数と、50歳未満および76歳以上の診断数は、想定される診断数を上回っていた。 論文の筆頭著者であるSuarez-Ramos氏は、「これらの調査結果は、ハリケーンの襲来やパンデミックの発生により医療へのアクセスが制限されたことが原因でがんの発見が遅れ、患者の健康状態が悪化した可能性があることを示唆している」とニュースリリースの中で述べている。研究グループは、このようなスクリーニング検査の混乱により、「将来的には、大腸がんが進行してから検出される患者が増え、生存率が低下する可能性がある」と危惧を示している。 米国地質調査所によると、気候変動による気温上昇により、より激しい嵐や壊滅的な山火事の発生が増え、海面上昇も進んでいるという。論文の上席著者であるプエルトリコ大学のKaren Ortiz-Ortiz氏は、「医療制度はこうした災害下でも人々が必要ながんの検査を受けられる方法を見つけておく必要がある。われわれの最終的な目標は、危機的状況下でも医療システムの回復力とアクセス性を高めること、また、人々がより長くより健康的な生活を送れるように支援することだ」とニュースリリースの中で語っている。

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