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1.

乳がん免疫療法中の抗菌薬投与が予後に影響?

 ペムブロリズマブによる術前治療中のHER2陰性高リスク早期乳がん患者において、抗菌薬の投与と高い残存腫瘍量(RCB)との関連が示唆された。これまで、免疫療法中の抗菌薬への曝露が、さまざまな種類のがんにおいて臨床転帰に悪影響を与えることが報告されている。米国・ミネソタ大学のAmit A. Kulkarni氏らは、ISPY-2試験でペムブロリズマブが投与された4群について、抗菌薬への曝露がRCBおよび病理学的完全奏効(pCR)へ与える影響について評価した2次解析の結果を、NPJ Breast Cancer誌2024年3月26日号に報告した。 ISPY-2試験では、ペムブロリズマブの4サイクル投与と同時にパクリタキセルを12週間投与し、その後ドキソルビシンとシクロホスファミドを2~3週間ごとに4サイクル投与した。免疫療法(IO)と同時に少なくとも1回の抗菌薬の全身投与を受けた患者が抗菌薬曝露群に、それ以外のすべての患者が対照群に割り付けられた。 RCBインデックスとpCR率は、t検定とカイ二乗検定、線形回帰モデルとロジスティック回帰モデルを使用してそれぞれ両群間で比較された。 主な結果は以下のとおり。・66例が解析に含まれ、うち18例(27%)が抗菌薬投与を受けていた。・免疫療法中の抗菌薬の投与は、より高い平均RCBスコア(1.80±1.43 vs.1.08±1.41)および低いpCR率(27.8% vs.52.1%)と関連していた。・抗菌薬の投与とRCBスコアについて、多変量線形回帰分析においても有意な関連がみられた(RCBインデックス係数:0.86、95%信頼区間:0.20~1.53、p=0.01)。 著者らは、より大規模なコホートでの検証が必要としている。

2.

日本の乳がんの特性・治療・予後の変化~NCD乳がん登録46万例のデータ

 日本における2004~16年の乳がんの特性・治療・生存の動向について、川崎医科大学の岩本 高行氏らがBreast Cancer誌2024年3月号に報告した。これは、NCD(National Clinical Database)乳がん登録の45万7,878例のデータ(追跡期間中央値5.6年)に基づく日本乳癌学会による予後レポートである。 2004~08年の症例と2013~16年の症例を比較した主な結果は以下のとおり。・治療開始年齢の中央値は、2004~08年では57歳、2013~16年では60歳と上昇した。・Stage0~IIの割合は74.5%から78.3%に増加した。・エストロゲン受容体陽性の割合は74.8%から77.9%、プロゲステロン受容体陽性の割合は60.5%から68.1%に増加した。・(術前)術後補助化学療法は、タキサン(T)またはT-シクロホスファミド(C)レジメンは2.4%から8.2%に増加したが、(フルオロウラシル(F))アドリアマイシン(A)C-T/(F)エピルビシン(E)C-Tは18.6%から15.2%、(F)AC/(F)ECレジメンは13.5%から5.0%に減少した。・術(前)後HER2療法に関しては、トラスツズマブの使用が4.6%から10.5%に増加した。・センチネルリンパ節生検の実施率は37.1%から60.7%に増加し、腋窩リンパ節郭清の実施率は54.5%から22.6%に減少した。・HER2陽性乳がん患者では無病生存期間と全生存期間の改善が認められたが、ホルモン受容体陽性、HER2陰性、トリプルネガティブ乳がん患者では明らかな傾向は認められなかった。

3.

固形がん治療での制吐療法、オランザピン2.5mgが10mgに非劣性/Lancet Oncol

 オランザピンは効果的な制吐薬であるが、日中の傾眠を引き起こす。インド・Tata Memorial CentreのJyoti Bajpai氏らは、固形がん患者における催吐性の高い化学療法後の低用量オランザピン(2.5mg)と標準用量オランザピン(10mg)の有効性を比較することを目的に、単施設無作為化対照非盲検非劣性試験を実施。結果をLancet Oncology誌2024年2月号に報告した。 本試験はインドの3次医療施設で実施され、固形がんに対しドキソルビシン+シクロホスファミドまたは高用量シスプラチン投与を受けているECOG PS 0~2の13~75歳が対象。患者はブロックランダム化法(ブロックサイズ2または4)により2.5mg群(1日1回2.5mgを4日間経口投与)または10mg群(1日1回10mgを4日間経口投与)に1:1の割合で無作為に割り付けられ、性別、年齢(55歳以上または55歳未満)、および化学療法レジメンによって層別化された。研究スタッフは治療の割り当てを知らされていなかったが、患者は認識していた。 主要評価項目は、修正intent-to-treat(mITT)集団における全期間中(0~120時間)の完全制御(催吐エピソードなし、制吐薬追加なし、悪心なしまたは軽度の悪心で定義)。日中の傾眠は関心のある安全性評価項目とされた。非劣性は治療群間における完全制御割合の差の片側95%信頼区間(CI)の上限値が非劣性マージン10%未満の場合と定義された。 主な結果は以下のとおり。・2021年2月9日~2023年5月30日に、356例が適格性について事前スクリーニングを受け、うち275例が登録され、両群に無作為に割り付けられた(2.5mg群:134例、10mg群:141例)。・267例(2.5mg群:132例、10mg群:135例)がmITT集団に含まれ、うち252例(94%)が女性、242例(91%)が乳がん患者であった。・2.5mg群では132例中59例(45%)、10mg群では135例中59例(44%)が全期間において完全制御を示した(群間差:-1.0%、片側95%CI:-100.0~9.0、p=0.87)。・全期間において、2.5mg群では10mg群に比べ、Gradeを問わず日中の傾眠が認められた患者(65% vs.90%、p<0.0001)および1日目に重篤な傾眠が認められた患者(5% vs.40%、p<0.0001)が有意に少なかった。 著者らは、催吐性の高い化学療法を受けている患者においてオランザピン2.5mgは10mgと比較して制吐効果が非劣性で、日中の傾眠を減少させることが示唆されたとし、新たな標準治療として考慮されるべきとしている。

4.

CLLの1次治療、MRDに基づくアプローチが有望/NEJM

 未治療の慢性リンパ性白血病(CLL)の治療において、測定可能残存病変(measurable residual disease:MRD)に基づいて投与期間を最適化するイブルチニブ(ブルトン型チロシンキナーゼ[BTK]阻害薬)+ベネトクラクス(BCL-2阻害薬)療法はフルダラビン+シクロホスファミド+リツキシマブ(FCR)療法と比較して、無増悪生存期間(PFS)が有意に延長し全生存期間(OS)も良好で、感染症のリスクは同程度であるものの心臓の重度有害事象の頻度が高かったことが、英国・Leeds Cancer CentreのTalha Munir氏らが実施した「FLAIR試験」の中間解析で示された。研究の成果は、NEJM誌オンライン版2023年12月10日号で報告された。英国の無作為化第III相試験 FLAIR試験は、英国の96の病院が参加した非盲検無作為化対照比較第III相試験であり、2017年7月~2021年3月に患者の無作為化を行った(Cancer Research UKなどの助成を受けた)。 未治療のCLLまたは小リンパ球性リンパ腫(SLL)で、FCRの適応と判定された患者を1対1対1の割合でイブルチニブ群、イブルチニブ+ベネトクラクス群、FCR群に割り付けた。本中間解析では、イブルチニブ+ベネトクラクス群およびFCR群の523例(年齢中央値62歳[四分位範囲[IQR]:56~67]、男性71.3%、イブルチニブ+ベネトクラクス群260例、FCR群263例)の結果を解析した。 イブルチニブ+ベネトクラクス群では、イブルチニブを単剤で2ヵ月間、1日1回経口投与したのち、ベネトクラクスを加えた併用投与を、アルゴリズムによるMRDに基づく中止基準を満たすか、病勢進行または許容できない毒性作用の発現に至るまで、最長で6年間実施した。FCRは、1サイクルを28日として6サイクル投与した。 主要評価項目はPFS、副次評価項目はOS、奏効率、MRD陰性の割合、安全性などとした。 3年無増悪生存率:97.2% vs.76.8% 追跡期間中央値43.7ヵ月の時点で、病勢進行または死亡した患者は、イブルチニブ+ベネトクラクス群が12例(4.6%)、FCR群は75例(28.5%)であり、3年無増悪生存率はそれぞれ97.2%および76.8%であった。 両群ともPFS中央値には未到達であったが、病勢進行または死亡のハザード比(HR)は0.13(95%信頼区間[CI]:0.07~0.24)とイブルチニブ+ベネトクラクス群で有意に優れた(p<0.001)。また、免疫グロブリン重鎖可変部遺伝子(IGHV)変異陰性例ではイブルチニブ+ベネトクラクス群でPFS中央値が良好であった(HR:0.07、95%CI:0.02~0.19)が、陽性例ではこのような効果を認めなかった(0.54、0.21~1.38)。 OS中央値についても、両群とも未到達であったが、死亡のHRは0.31(95%CI:0.15~0.67)とイブルチニブ+ベネトクラクス群で良好であった。また、IGHV変異陰性例ではイブルチニブ+ベネトクラクス群でOS中央値が良好であった(HR:0.23、95%CI:0.06~0.81)が、陽性例ではこのような差はみられなかった(0.61、0.20~1.82)。 9ヵ月時の全奏効率は、イブルチニブ+ベネトクラクス群が86.5%(225/260例)、FCR群は76.4%(201/263例)であり(補正後オッズ比[OR]:2.00、95%CI:1.26~3.16)、完全奏効率はそれぞれ59.2%(154例)および49.0%(129例)だった(1.51、1.07~2.14)。MRDに基づくアプローチで3年時までに58.0%が投与を中止 3年時までに、イブルチニブ+ベネトクラクス群で、MRD陰性となったために投与を中止した患者の割合は58.0%であった。同群では、5年時に65.9%で骨髄中のMRDが、92.7%で末梢血中のMRDが検出不能であった。また、9ヵ月時に骨髄中のMRD陰性であった患者の割合は、イブルチニブ+ベネトクラクス群が41.5%、FCR群は48.3%だった。 1年以内に発生したGrade3~5の有害事象のうち頻度が最も高かったのは、好中球数減少(イブルチニブ+ベネトクラクス群10.3% vs.FCR群47.3%)、貧血(0.8% vs.15.5%)、血小板減少症(2.0% vs.10.0%)であった。感染症のリスクは両群でほぼ同様であったが、心臓の重度有害事象の割合はイブルチニブ+ベネトクラクス群で高かった(10.7% vs.0.4%)。死亡はイブルチニブ+ベネトクラクス群で8例、FCR群で23例に認め、それぞれ1例および6例が治療関連死の可能性があると判定された。 著者は、「末梢血においてMRD陰性となるまでプラトーはみられず、これはMRDに基づく治療の継続が正当であることを示唆する」としている。

5.

高リスクHER2+乳がん、術前療法へのアテゾリズマブ追加でpCR改善は(APTneo)/SABCS2023

 HER2陽性高リスク乳がんに対する術前補助療法として、トラスツズマブ(H)+ペルツズマブ(P)+化学療法は標準治療となっている。また、抗HER2療法に対する免疫系の寄与を示すデータが報告され、免疫チェックポイント阻害薬と抗HER2抗体の組み合わせが裏付けられている。イタリア・Fondazione MichelangeloのLuca Gianni氏らは、HP+化学療法へのアテゾリズマブ(±アントラサイクリン)の追加を評価することを目的として、第III相APTneo試験を実施。サンアントニオ乳がんシンポジウム(SABCS2023)で病理学的完全奏効(pCR)についてのデータを報告した。・対象:HER2陽性の切除可能または局所進行乳がん患者(化学療法未治療)・試験群AC+アテゾリズマブ併用群:AC(ドキソルビシン+シクロホスファミド)+アテゾリズマブ(1,200mg 3週ごと静脈内投与)×3サイクル→HPCT(トラスツズマブ+ペルツズマブ+カルボプラチン+パクリタキセル)+アテゾリズマブ×3サイクル→手術→HP+アテゾリズマブ 218例アテゾリズマブ併用群:HPCT+アテゾリズマブ×6サイクル→手術→HP+アテゾリズマブ 220例・対照群:HPCT×6サイクル→手術→HP 223例・評価項目:[主要評価項目]試験群vs.対照群の無イベント生存期間(EFS)[副次評価項目]pCR、忍容性、予測マーカーの評価など 主な結果は以下のとおり。・ベースラインにおける患者特性は3群でバランスがとれており、年齢中央値は49~50歳、局所進行乳がんは44.1~45.3%、PD-L1陽性は29.8~30.9%、ホルモン受容体陽性は61.0~69.1%であった。・副次評価項目のpCR率は、対照群52.0%に対し試験群57.8%で有意な改善はみられなかった(p=0.091)。AC+アテゾリズマブ併用群のpCR率は61.9%で対照群と比較して有意に改善したが(p=0.022)、アテゾリズマブ併用群のpCR率(53.6%)と比較して有意な差はみられなかった(p=0.089)。・重篤な有害事象(SAE)は、対照群で6.8%、試験群で14.1%に発生した。AC療法による血液毒性のため、アテゾリズマブ併用群(11.6%)よりもAC+アテゾリズマブ併用群(16.7%)で頻度が高かった。・免疫関連のSAEはAC+アテゾリズマブ併用群で4.7%、アテゾリズマブ併用群で7.8%と頻度が高いわけではなく、臨床的にコントロール可能なものであった。 Gianni氏は、「HER2陽性の早期高リスクおよび局所進行乳がん患者において、HP+化学療法へのアテゾリズマブの追加は、数値としてpCR率の5.8%増加が確認されたものの統計学的有意差は得られなかった。探索的解析において、AC+アテゾリズマブ併用群におけるpCR率は統計学的に有意に高いことが示されており、アントラサイクリンの直接効果あるいはアテゾリズマブによるAC療法の機構的増強のいずれかが示唆されるのではないか」と結論付けている。同試験はEFSの解析まで現在も進行中。

6.

早期TN乳がん術後化療にアテゾ追加、iDFSを改善せず中止(ALEXANDRA/IMpassion030)/SABCS2023

 StageII/IIIのトリプルネガティブ乳がん(TNBC)患者の術後補助療法として、標準的なアントラサイクリンおよびタキサンベースの化学療法にアテゾリズマブを追加した第III相ALEXANDRA/ IMpassion030試験の中間解析の結果、アテゾリズマブを上乗せしても無浸潤疾患生存期間(iDFS)を改善せず、Grade3以上の治療関連有害事象(TRAE)は増加したことを、ベルギー・Institut Jules BordetのMichail Ignatiadis氏がサンアントニオ乳がんシンポジウム(SABCS2023)で発表した。・対象:中央病理学検査で手術可能と判断されて手術を受けたStageII/IIIの早期TNBC患者 2,199例・試験群:対照群の化学療法に加え、アテゾリズマブ840mgを2週ごと、10サイクル→アテゾリズマブ1,200mgを3週間ごと、計1年間(アテゾリズマブ群:1,101例)・対照群:パクリタキセル80mg/m2を週1回、12サイクル→アントラサイクリン(エピルビシン90mg/m2またはドキソルビシン60mg/m2)+シクロホスファミド600mg/m2を2週間ごと、4サイクル(化学療法群:1,098例)・評価項目:[主要評価項目]ITT集団におけるiDFS[副次評価項目]PD-L1陽性およびリンパ節陽性のサブグループにおけるiDFS、全生存期間(OS)、安全性など・層別化因子:手術の種類(乳房温存術/乳房切除術)、リンパ節転移(0/1~3/≧4)、PD-L1発現(IC 0/≧1%) 予定症例数は2,300例であったが、2022年11月14日に独立データ監視委員会(IDMC)の勧告に基づき、試験は一時中止された。2023年2月、IDMCが有効性と無益性の早期中間解析を行うため、計画されていたiDFSイベントの解析対象数が下方修正された。無益性の境界のハザード比(HR)は1に設定された。2023年3月15日のIDMC勧告で主要評価項目が無益性の境界を越えたため、試験は中止となった。今回発表されたデータは2023年2月17日のデータカットオフ日に基づくもの。 主な結果は以下のとおり。・2018年8月~2022年11月に2,199例が登録され、両群に1:1に無作為に割り付けられた。アテゾリズマブ群および化学療法群の年齢中央値は53歳/53歳、StageIIは84.9%/85.6%、リンパ節転移陽性は47.6%/47.8%、PD-L1陽性は71.3%/71.2%、乳房切除術施行は52.4%/52.4%で、両群でバランスがとれていた。・追跡期間中央値25ヵ月(範囲:0~53)の時点で、239/2,199例(10.9%)のiDFSイベントが観察された。アテゾリズマブ群では127/1,101例(11.5%)、化学療法群では112/1,098例(10.2%)に発生し、HRは1.12(95%信頼区間[CI]:0.87~1.45、p=0.37)で、事前に規定された無益性の境界を越えた。・PD-L1陽性のサブグループ(1,567例)では、iDFSイベントはアテゾリズマブ群77/785例(9.8%)、化学療法群73/782例(9.3%)に発生し、HRは1.03(95%CI:0.75~1.42)であった。・OSイベントが発生したのは、アテゾリズマブ群61例(5.5%)、化学療法群49例(4.5%)で、HRは1.20(95%CI:0.82~1.75)であった。・Grade3以上のTRAEは、アテゾリズマブ群587例(53.7%)、化学療法群472例(43.5%)に発現し、死亡は2例(0.2%)および1例(<0.1%)であった。何らかの薬剤の中止に至ったのは185例(16.9%)および60例(5.5%)であった。安全性プロファイルとは既知のものと一致していた。 これらの結果より、Ignatiadis氏は「ITT集団におけるiDFSのHRは、事前に規定された無益性の境界を越えるとともに有害事象も増え、早期TNBC患者に対する術後補助化学療法へのアテゾリズマブ追加は支持されないものとなった。試験データは2023年11月17日のカットオフまで更新され、結果を公表する予定である」とまとめた。

7.

転移乳がんのエリブリン2投2休、後治療のPFSを有意に延長/日本癌治療学会

 転移を有する乳がん患者にエリブリンを標準スケジュールである21日周期(21日ごとに1・8日目に投与:2投1休)で投与する場合と比較して、28日周期(28日ごとに1・8日目に投与:2投2休)の投与は後治療の無増悪生存期間(PFS)を有意に延長し、全生存期間(OS)は有意差はなかったものの延長傾向にあったことを、市立四日市病院の水野 豊氏が第61回日本癌治療学会学術集会(10月19~21日)で発表した。 エリブリンは腫瘍免疫微小環境の改善効果により、後治療の良好な効果が推測されている。しかし、血液毒性などの有害事象のため標準の21日周期では治療の中断・中止を余儀なくされることがある。これまでエリブリンを1・15日目に投与する28日周期の投与スケジュールにおけるPFSはすでに報告されているが、異なる投与スケジュールが後治療の効果に与える影響を調べた研究はなかった。そこで水野氏らは、エリブリンの異なる治療スケジュールと後治療のPFSの関連を評価するために研究を実施した。 エリブリン治療はまず標準スケジュールである21日周期の1・8日目投与で開始し、2サイクル目の1日目に好中球数が1,500mm3以上であれば標準スケジュールを継続し(2投1休群)、1,500mm3未満であった場合は28日周期の1・8日目投与に変更してその後も28日周期を継続した(2投2休群)。3サイクル目以降も同様に1日目の好中球数が1,500mm3以上かどうかでスケジュールを検討した。 対象は、転移を有する乳がん患者81例(うちde novo StageIVが23例[28%])で、年齢中央値は67歳(範囲:39~90歳)であった。主な転移部位は骨(48%)、肝臓(40%)、所属リンパ節(38%)、肺(32%)。ER/PgR陽性が63%、トリプルネガティブが37%。前治療の化学療法歴なしが31%、1ラインが44%、2ライン以上が25%であった。 主な結果は以下のとおり。<エリブリン治療>・奏効率は9%、病勢コントロール率は30%、臨床的有用率は56%であった。・全体のPFS中央値は6.3ヵ月(95%信頼区間[CI]:5.5~8.6)であった。治療スケジュール別のPFS中央値は、2投1休群(49例)が6.1ヵ月(95%CI:3.4~8.4)、2投2休群(32例)が8.6ヵ月(95%CI:5.1~13.0)で有意差は認められなかったものの延長傾向にあった(p=0.149)。・全体のOS中央値は20.6ヵ月(95%CI:14.6~27.1)であった。2投1休群は17.1ヵ月(95%CI:10.2~21.1)、2投2休群は27.1ヵ月(95%CI:14.6~30.9)で、PFSと同様に有意差は認められなかったものの延長傾向にあった(p=0.0833)。<後治療>・後治療を行ったのは47例で、多かったレジメンはパクリタキセル+ベバシズマブ(32%)、AC/EC療法(19%)、カペシタビン±シクロホスファミド(13%)、S-1(11%)、内分泌療法(11%)などであった。・全体のPFS中央値は4.9ヵ月(95%CI:3.0~8.1)であった。2投1休群は3.3ヵ月(95%CI:2.8~5.6)であった一方、2投2休群では10.4ヵ月(95%CI:2.1~14.5)で有意に改善した(p=0.0195)。・OS中央値は2投1休群17.1ヵ月(95%CI:10.9~21.1)、2投2休群28.5ヵ月(95%CI:14.6~53.5)で延長傾向にあった(p=0.0965)。 これらの結果より、水野氏は「エリブリンの標準とは異なる2投2休の投与スケジュールはPFSおよびOSを延長させ、さらに後治療にも好影響をもたらす」とまとめるとともに、質疑応答で「十分に血球を回復させるために2週間休薬することが重要だと考える。好中球数が減少していたとしてもしっかりと回復させる期間が得られ、それによって後治療に好影響をもたらすのではないか」と見解を述べた。

8.

早期TN乳がんの術前・術後ペムブロリズマブによるEFS改善、5年後も持続(KEYNOTE-522)/ESMO2023

 高リスクの早期トリプルネガティブ乳がん(TNBC)に対して、術前および術後補助療法としてペムブロリズマブの追加を検討したKEYNOTE-522試験では、ペムブロリズマブ追加により病理学的完全奏効率(pCR)および無イベント生存期間(EFS)が有意かつ臨床的に意味のある改善を示したことがすでに報告されている。今回、第6回中間解析(追跡期間中央値63.1ヵ月)でのEFSを解析した結果、pCRの結果にかかわらず、術前化学療法単独と比べて臨床的に意味のあるEFS改善が持続していたことを、英国・Barts Cancer Institute, Queen Mary University LondonのPeter Schmid氏が欧州臨床腫瘍学会(ESMO Congress 2023)で発表した。全生存期間(OS)の追跡調査は進行中である。・対象:未治療の転移のないTNBC患者(AJCC/TNM分類でT1c N1-2またはT2-4 N0-2、ECOG PS 0/1)・試験群:術前に化学療法(カルボプラチン+パクリタキセルを4サイクル後、ドキソルビシン/エピルビシン+シクロホスファミドを4サイクル)+ペムブロリズマブ(200mg、3週ごと)、術後にペムブロリズマブ(200mg、3週ごと)を9サイクルあるいは再発または許容できない毒性発現まで投与(ペムブロリズマブ群、784例)・対照群: 術前に化学療法(試験群と同様)+プラセボ、術後にプラセボを投与(プラセボ群、390例)・評価項目:[主要評価項目]pCR(ypT0/Tis ypN0)、EFS[副次評価項目]pCR(ypT0 ypN0およびypT0/Tis)、OS、PD-L1陽性例におけるpCR・EFS・OS、安全性 主な結果は以下のとおり。・今回の解析(データカットオフ:2023年3月23日)において、EFSイベントがペムブロリズマブ群で18.5%、プラセボ群で27.7%に認められた(ハザード比[HR]:0.63、95%信頼区間[CI]:0.49~0.81)。5年EFS率はペムブロリズマブ群81.3%、プラセボ群72.3%だった。・ペムブロリズマブによるEFSベネフィットは、PD-L1発現やリンパ節転移の有無など、事前に規定したサブグループで一貫していた。・事前に規定された非ランダム化探索的解析におけるpCRの結果別の5年EFS率は、pCR例でペムブロリズマブ群92.2% vs.プラセボ群88.2%、非pCR例でペムブロリズマブ群62.6% vs.プラセボ群52.3%であった。・5年遠隔無増悪/遠隔無再発生存率は、ペムブロリズマブ群84.4%、プラセボ群76.8%であった(HR:0.64、95%CI:0.49~0.84)。 Schmid氏は「これらの結果は、ペムブロリズマブとプラチナを含む術前補助療法後、pCRの結果によらずペムブロリズマブによる術後補助療法を行うレジメンを、高リスク早期TNBC患者に対する標準治療としてさらに支持する」と述べた。

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早期発見、早期治療!心アミロイドーシス治療の今とこれから【心不全診療Up to Date】第10回

第10回 早期発見、早期治療!心アミロイドーシス治療の今とこれからKey Points早期発見がなぜ重要か?心アミロイドーシスに対して今できる治療は?心アミロイドーシス治療のこれから早期発見がなぜ重要か?〜心アミロイドーシス治療の今とこれから〜前回は心アミロイドーシスの種類や特徴、有病率などに触れた。今回は早期発見の意義について触れていこう。早速だが、心アミロイドーシスの早期発見がなぜ必要なのだろうか。その理由はただ一つ、早期に治療を開始すればするほど、治療のメリットが大きいからである。ではなぜ早期治療のメリットが大きいかというと、アミロイドが沈着する過程を治療するには、『アミロイド前駆蛋白の産生やアミロイド線維の集積を阻害するか』『臓器に一旦沈着したアミロイドの除去を促すか』が標的となるが、現在われわれができる治療は前者のみで、後者は最近ようやく第I相試験の結果が出たところで1)、まだ日常診療には使用できない。つまり、今できる治療は今以上にアミロイドを沈着させないようにするしかないため、まだ臓器へのアミロイド沈着が少ない早期から治療を開始したほうが、予後改善効果が高いというわけである。それでは、具体的な治療法をみていこう。心アミロイドーシスの治療は、(1)合併症の治療と予防、(2)特異的な治療によるアミロイド沈着の停止または遅延、の2つに大きく分けられる。心アミロイドーシスの合併症への対策は、心不全以外にも、不整脈、伝導障害、血栓塞栓症、重度大動脈狭窄症に対する治療など、注意すべきものがさまざまあり、詳細は図5をご覧いただきたい。(図5)心アミロイドーシスの心臓合併症と併存疾患の治療画像を拡大するとくに、心不全を伴う場合、『心不全予後改善薬の投与をどうするか』はとても重要なポイントである。実臨床において、どの薬剤がどのように使用され、予後との関連はどうであるか、という点について、最近イギリスから興味深い報告があった2)。この研究は、2000~22年にNational Amyloidosis CentreでATTR心アミロイドーシスと診断された2,371例(平均年齢:78歳、男性:90%、ATTRwt:78%、平均LVEF:48%)を対象に、心不全予後改善薬(β遮断薬、RAS阻害薬[ACEi/ARB]、MR拮抗薬)の処方パターン、用量、中断率と予後との関連を調べたものである。その結果は図6の通りであるが、とくに予後との関連が興味深い。それぞれの処方率は、β遮断薬が55%、RAS阻害薬が57%、MR拮抗薬が39%で、β遮断薬とRAS阻害薬はしばしば中断されていたが、低用量のβ遮断薬は、HFrEF(EF≦40%)患者の死亡リスク軽減と関連していた。一方、MR拮抗薬はほとんどの症例で継続されており、すべての心不全症例(とくにEF>40%)に対して死亡リスク軽減と関連していた。もちろん、前向きRCTで確認する必要があるが、とても重要な報告であると考える。(図6)ATTR心アミロイドーシスに対する心不全従来治療と予後の関連画像を拡大するそして、近年の医学の進歩により、心アミロイドーシスに対する特異的な治療も出てきている。その治療法は心アミロイドーシスの病型により異なるため、病型ごとに説明していく。ALアミロイドーシスまず、ALアミロイドーシスに対する特異的な治療の基本は、アミロイド前駆蛋白であるFLC(free light chain)の産生を抑制することであり、基礎となる血液疾患に対する治療法に大きく依存している3,4)。具体的には、骨髄でモノクローナルに増殖しているCD38陽性形質細胞を選択的に攻撃する抗体薬であるダラツムマブ、プロテアソームを阻害する分子標的薬であるボルテゾミブ、シクロホスファミド、デキサメタゾン、メルファランなどの薬剤や自己末梢血幹細胞移植も治療の選択肢になるが、さらなる詳細は成書に譲ることとする。ATTRアミロイドーシス次に、ATTRアミロイドーシスに対する治療について、TTRの歴史とTTRアミロイド線維生成経路を見ながら考えていこう(図7)。(図7)ATTR心アミロイドーシス治療の今とこれから画像を拡大するTTRは127アミノ酸残基からなる血漿タンパク質で、ホモ四量体として肝臓で産生され、血液中においても四量体として存在する。1940年代後半から1950年代前半にかけて発見されたTTRは、栄養状態の指標として用いられていたことから、以前はプレアルブミンと呼ばれていた。この名前は、ゲル電気泳動でアルブミンよりも先に移動することに由来する。プレアルブミンはサイロキシンとレチノール結合タンパク質の輸送を行うことがその後にわかり、1980年にTTRという名称が正式に採用された5)。TTRがアミロイドを形成するには、自然構造である四量体から単量体への解離と単量体の変性が必要であることから、ATTRアミロイドーシスに対する特異的な治療としては、変異型および野生型TTRの産生を特異的に抑制する薬剤(TTR silencers)と、TTRの四量体を安定化し、単量体への解離を抑制する薬剤(TTR stabilizers)がある。なお、アミロイド線維を除去し、組織浸潤を回復させる薬剤(抗TTR抗体製剤)は現在第I相試験が終了1)したところで、まだ実用化には至っていないが、画期的な薬剤であり、今後の展開が大変期待されている(図7)。ちなみに、従来のTTR(プレアルブミン)測定法は、四量体のみを測定するものであるため、ATTRアミロイドーシス症例では血中TTR濃度は低下し、後で述べるTTR安定化薬投与後は上昇することになり、早期診断や予後予測に有用となる可能性があるという報告もある6,7)。これらの薬剤のなかで、RCTで効果が検証された最初の薬剤がタファミジスであり、現在本邦でも生存期間が十分に見込まれるATTR心アミロイドーシス患者に対して2019年3月から保険適用されている。タファミジスは、TTR四量体の2つのサイロキシン結合部位に結合し、その四量体構造を安定化させ、アミロイド形成を抑制するTTR安定化薬(TTR stabilizers)である。第III相ATTR-ACT試験(年齢中央値:75歳、男性:90%)では、ATTRvまたはATTRwt心筋症患者(ATTRwt:76%)において、プラセボと比較して、治療30ヵ月後に全死亡および心血管関連入院が30%減少し、QOL低下が緩やかになることが示された9)。つまり、ATTR-ACT試験は、(1)HFpEFにおける死亡率および心不全入院の減少が初めて示された薬物療法(2)ATTRアミロイドーシスにおける死亡率と病的状態の減少が初めて示された薬物療法(3)末梢性や神経ホルモン調節ではなく心筋に対して中心的に作用してハードエンドポイントへの効果を実証した初めての心不全治療薬これら“3つの初めて”を成し遂げた試験と言える8)。ただし、タファミジスはかなり高額な薬剤(2020年当時、1カプセル43,672.8円、年間の薬剤費は1人あたり6,376万円)であり、米国からも費用対効果に関する論文が発表9)され、費用対効果を高めるためには、92.6%(ビックリ!)の薬価引き下げが必要との報告もあるくらいであり、費用対効果もしっかり考えて処方すべき薬剤であろう。なお、同じTTR安定化薬であるAG10についても、症候性ATTR心筋症患者を対象に、第III相試験(ATTRibute-CM)が現在進行中である。また、TTR silencersとしては、TTR mRNAを選択的に分解して、遺伝子レベルでTTRの産生を特異的に抑制するsiRNA製剤(核酸医薬)であるパチシランが、ATTRvアミロイドーシスの治療薬として本邦でも2019年6月から保険適用されている。そして、現在ATTRwtも含めたATTR心筋症患者に対するパチシランの有効性を検証する第III相試験(APOLLO-B)が進行中である。そして、冒頭でも少し述べた通り、最も切望されている図7の(3)に相当する治療、つまり、抗体を介したATTR線維の貪食と組織からのATTR沈着物の除去を誘導することにより、ATTRを消失させる画期的な治療薬(遺伝子組換えヒト抗ATTRモノクローナルIgG1抗体)の研究も進みつつあり、今年5月に第I相試験(first-in-human)の結果がなんとNEJM誌に掲載され、安全性が確認された1)。その論文には実際に薬剤を使用した患者の画像所見が掲載されているが、沈着したアミロイドが除去されていることを示唆する所見が認められており、今後の第II相、第III相試験の結果が期待される。以上、今回は、早期診断、早期治療がきわめて重要な心アミロイドーシスを取り上げてみた。ぜひ明日からの診療に活かしていただければ幸いである。1)Garcia-Pavia P, et al. N Engl J Med. 2023 May 20.[Epub ahead of print]2)Ioannou A, et al. Eur Heart J. 2023 May 22. [Epub ahead of print]3)Palladini G, et al. Blood. 2016;128:159-168.4)Garcia-Pavia P, et al. Eur Heart J. 2021;42:1554-1568.5)Robbins J, et al.Clin Chem Lab Med. 2002;40:1183-1190.6)Hanson JLS, et al. Circ Heart Fail. 2018;11:e004000.7)Greve AM, et al. JAMA Cardiol. 2021;6:258-266.8)Maurer MS, et al. N Engl J Med. 2018;379:1007-1016.9)Kazi DS, et al. Circulation. 2020;141:1214-1224.

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進行CLLの1次治療、ベネトクラクス併用療法vs.免疫化学療法/NEJM

 進行慢性リンパ性白血病(CLL)で全身状態が良好な患者(すなわち併存病態の負担が少ない患者:fit patient)の1次治療として、ベネトクラクス+抗CD20抗体オビヌツズマブの併用療法は、イブルチニブ併用の有無にかかわらず、免疫化学療法よりも優れることが、ドイツ・ケルン大学のBarbara Eichhorst氏らによる第III相非盲検無作為化試験で示された。これまでに、同患者への1次治療としてのベネトクラクスと抗CD20抗体の併用について評価した無作為化試験は行われていなかった。NEJM誌2023年5月11日号掲載の報告。15ヵ月時点の微小残存病変陰性とPFSを評価 試験はGerman CLL Study Group、HOVON CLL Study Group、Nordic CLL Study Groupによって行われ、欧州9ヵ国とイスラエルの159ヵ所で実施された。 研究グループは、TP53変異陰性の全身状態が良好なCLL患者を1対1対1対1の割合で無作為に4群に割り付け、(1)6サイクル免疫化学療法(フルダラビン+シクロホスファミド+リツキシマブ、またはベンダムスチン+リツキシマブ)、(2)12サイクルのベネトクラクス+リツキシマブの投与、(3)ベネトクラクス+オビヌツズマブの投与、(4)ベネトクラクス+オビヌツズマブ+イブルチニブの投与をそれぞれ行った。イブルチニブは、微小残存病変が2回連続して検出不能(陰性)後は中止し、そうでない場合は延長可能とした。 主要評価項目は、15ヵ月時点でのフローサイトメトリーで評価した微小残存病変の陰性(感度が<10-4[すなわちCLL細胞が1万個中1未満])および無増悪生存期間(PFS)であった。微小残存病変陰性、免疫化学療法群52.0%、ベネトクラクス+オビヌツズマブ群86.5% 2016年12月13日~2019年10月13日に、合計926例が4群に無作為化された(免疫化学療法群229例、ベネトクラクス+リツキシマブ群237例、ベネトクラクス+オビヌツズマブ群229例、ベネトクラクス+オビヌツズマブ+イブルチニブ群231例)。 15ヵ月時点で、微小残存病変陰性であった患者の割合は、免疫化学療法群(52.0%、97.5%信頼区間[CI]:44.4~59.5)と比べて、ベネトクラクス+オビヌツズマブ群(86.5%、80.6~91.1)、ベネトクラクス+オビヌツズマブ+イブルチニブ群(92.2%、87.3~95.7)の両群で、統計学的に有意に高率であった(両群比較のp<0.001)。ベネトクラクス+リツキシマブ群は高率であったが有意ではなかった(57.0%、49.5~64.2、p=0.32)。 3年PFS率は、ベネトクラクス+オビヌツズマブ+イブルチニブ群90.5%、免疫化学療法群75.5%であった(病勢進行または死亡に関するハザード比[HR]:0.32、97.5%CI:0.19~0.54、p<0.001)。また、3年時のPFSはベネトクラクス+オビヌツズマブ群でも有意に高率であった(87.7%、HR:0.42[97.5%CI:0.26~0.68]、p<0.001)が、ベネトクラクス+リツキシマブ群は高率ではあったが有意ではなかった(80.8%、0.79[0.53~1.18]、p=0.18)。 Grade3/4の感染症が、免疫化学療法群(18.5%)およびベネトクラクス+オビヌツズマブ+イブルチニブ群(21.2%)で、ベネトクラクス+リツキシマブ群(10.5%)やベネトクラクス+オビヌツズマブ群(13.2%)よりも多くみられた。

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早期TN乳がん、術前後のアテゾリズマブ追加でEFS・DFS・OS改善(IMpassion031)/ESMO BREAST 2023

 未治療の早期トリプルネガティブ(TN)乳がんにおける術前化学療法へのアテゾリズマブ追加および術後のアテゾリズマブ投与の有用性を検討した第III相IMpassion031試験の最終解析で、副次評価項目である無イベント生存期間(EFS)、無病生存期間(DFS)、全生存期間(OS)の改善が示された。また探索的解析から、手術時に病理学的完全奏効(pCR)が得られた患者は予後良好なこと、pCRが得られず血中循環腫瘍DNA(ctDNA)が残存していた患者は予後不良なことが示された。ブラジル・Hospital Sao Lucas da PUCRSのCarlos H. Barrios氏が欧州臨床腫瘍学会乳がん(ESMO Breast Cancer 2023、5月11~13日)で報告した。 本試験の主要評価項目であるpCR率については、PD-L1の有無(SP142によるIC:1%未満vs.1%以上)にかかわらず、アテゾリズマブ群が57.6%とプラセボ群(41.1%)に比べて有意に(p=0.0044)改善したことが報告されている。今回は、副次評価項目であるEFS、DFS、OS、安全性について最後の患者登録から3年後の最終解析と探索的バイオマーカー解析について報告された。・対象:原発巣が2cmを超える未治療のStageII~IIIの早期TN乳がん患者333例・試験群(アテゾリズマブ群、165例):術前にアテゾリズマブ(840mg、2週ごと)+nab-パクリタキセル(毎週)12週間投与後、アテゾリズマブ+ドキソルビシン+シクロホスファミド(2週ごと)8週間投与。術後、アテゾリズマブ(1,200mg、3週ごと)を11サイクル実施・対照群(プラセボ群、168例):術前にプラセボ+nab-パクリタキセル12週間投与後、プラセボ+ドキソルビシン+シクロホスファミド8週間投与し手術を実施(両群ともpCR未達の患者は、術後補助化学療法を許容) 主な結果は以下のとおり。・追跡期間中央値40ヵ月前後(アテゾリズマブ群40.3ヵ月、プラセボ群39.4ヵ月)における最終解析において、pCRが得られず術後補助化学療法を受けたのは、アテゾリズマブ群70例中14例(20%)、プラセボ群99例中33例(33%)であった。・ITT集団におけるEFSのハザード比(HR)は0.76(95%信頼区間[CI]:0.47~1.21)で、PD-L1陽性(IC 1%以上)の患者では0.56(同:0.26~1.20)であった。・DFSのHRは0.76(95%CI:0.44~1.30)で、PD-L1患者では0.57(同:0.23~1.43)であった。・OSのHRは0.56(95%CI:0.30~1.04)で、PD-L1陽性患者では0.71(同:0.26~1.91)であった。・pCR状況別のEFSの探索的解析では、pCRが得られた患者では両群共に長期のEFSが良好であったが、pCRが得られなかった患者では両群共にEFSが不良で、pCRが長期予後を大きく左右していた。・アテゾリズマブにおける新たな安全性シグナルや治療関連死はみられなかった。・ctDNAにおける探索的解析によると、ctDNA陽性率はベースラインの94%から手術時に12%と減少し、ctDNA消失率はアテゾリズマブ群89%、プラセボ群86%と両群で同様だった。消失しなかった患者はpCRが得られなかった。・手術時にpCRが得られずctDNAが陽性だった患者はDFS、OSが不良だったが、アテゾリズマブ群でOSの数値的な改善がみられた(HR:0.31、95%CI:0.03~2.67)。 Barrios氏は「早期TN乳がんに対して、術前化学療法へのアテゾリズマブ追加で有意なpCRベネフィットが得られ、EFS、DFS、OSの改善につながった」とした。

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KMT2A-r ALL乳児、化学療法+ブリナツモマブでDFS改善/NEJM

 新規に診断されたKMT2A再構成陽性急性リンパ芽球性白血病(KMT2A-r ALL)の乳児において、Interfant-06試験の化学療法へのブリナツモマブ追加投与は、Interfant-06試験のヒストリカルコントロールと比較し安全で有効性も高いことが確認された。オランダ・Princess Maxima Center for Pediatric OncologyのInge M. van der Sluis氏らが、多施設共同前向き単群第II相試験の結果を報告した。乳児のKMT2A-r ALLは、3年無イベント生存率が40%未満の進行性疾患で、多くが治療中に再発する。その再発率は、診断後1年以内で3分の2、2年以内では90%である。化学療法が強化されたにもかかわらず、この20数年、アウトカムは改善されていなかった。NEJM誌2023年4月27日号掲載の報告。1歳未満児を対象に、導入療法後ブリナツモマブを4週間投与 研究グループは、2018年7月~2021年7月に9ヵ国12施設にて、新たにKMT2A-r ALLと診断された1歳未満の乳児30例を登録し、Interfant-06試験で用いた導入療法を1ヵ月行った後、1コースのブリナツモマブ(体表面積1m2当たり15μg/日、4週間持続注入)を追加し、その後、Interfant-06プロトコールに従ってプロトコールIB(シクロホスファミド、シタラビン、メルカプトプリン)、MARMA(高用量シタラビン、高用量メトトレキサート、メルカプトプリン、アスパラギナーゼ)、OCTADAD(ビンクリスチン、デキサメタゾン、アスパラギナーゼ、ダウノルビシン、thioguanine、シタラビン、シクロホスファミド)、および維持療法(メルカプトプリン、メトトレキサート)を連続して行った。 主要評価項目は、臨床的に意義のある毒性(ブリナツモマブに起因する可能性のある、または確実に起因する毒性、およびブリナツモマブ投与中止または死亡に至った毒性と定義)、副次評価項目は微小残存病変(MRD)反応を含む抗白血病活性などであった。有害事象について評価し、有害事象のデータはブリナツモマブ注入開始から次のプロトコールIBの開始まで収集した。アウトカムに関するデータは、Interfant-06試験のヒストリカルコントロールと比較した。ブリナツモマブ投与終了時93%がMRD陰性または低値、2年全生存率は93.3% 追跡調査期間中央値は26.3ヵ月(範囲:3.9~48.2)で、30例全例がブリナツモマブ4週間投与を完了した。 主要評価項目の毒性イベントは発現しなかった。重篤な有害事象は9例に10件報告された(発熱4件、感染症4件、高血圧1件、嘔吐1件)。毒性プロファイルは、より年齢の高い患者で報告されたものと類似していた。 ブリナツモマブ投与終了時、30例中28例(93%)がMRD陰性(16例)またはMRD低値(<5×10-4、正常細胞1万個当たり白血病細胞5個未満)であった。化学療法を継続した全例が、その後の治療期間中にMRD陰性となった。 2年無病生存率は81.6%(95%信頼区間[CI]:60.8~92.0)、2年全生存率は93.3%(95%CI:75.9~98.3)であった。Interfant-06試験のヒストリカルコントロール(本試験の適格基準を満たし、導入療法終了時のMRDに関するデータが得られた214例)における2年無病生存率および2年全生存率は、49.4%(95%CI:42.5~56.0)および65.8%(95%CI:58.9~71.8)であった。

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早期乳がん、アントラサイクリン+タキサン併用が最も有効~メタ解析/Lancet

 乳がんの再発と死亡の減少にはアントラサイクリン系+タキサン系併用療法が最も有効であり、とくにアントラサイクリン系+タキサン系の累積投与量が多いレジメンで最大の効果を得られることが、英国・オックスフォード大学のJeremy Braybrooke氏らEarly Breast Cancer Trialists' Collaborative Group(EBCTCG)が行ったメタ解析で明らかにされた。早期乳がんに対するアントラサイクリン系+タキサン系併用療法は、化学療法を行わない場合と比較して生存を著明に改善するが、アントラサイクリン系薬剤の短期および長期の副作用に対する懸念から、アントラサイクリン系薬剤を含まないタキサン系レジメンの使用が増加しており、有効性が損なわれる可能性があった。 著者は、「示された結果は、臨床診療やガイドラインにおける最近のトレンドである非アントラサイクリン系化学療法、とくにドセタキセル+シクロホスファミドの4サイクルなどの短期レジメンに対して挑戦的である」と述べ、「本検討は、関連するほぼすべての臨床試験のデータをまとめており、個々の治療の決定、臨床ガイドライン、および将来の臨床試験のデザインに役立つ確かなエビデンスを提供するものである」とまとめている。Lancet誌2023年4月15日号掲載の報告。アントラサイクリン系およびタキサン系レジメンを評価した無作為化試験86件が対象 研究グループは、MEDLINE、Embase、Cochrane Library、学会抄録を含むデータベースを用いて、アントラサイクリン系およびタキサン系レジメンを評価したあらゆる言語の無作為化試験86件を特定(最終検索は2022年9月)。タキサン系レジメンとアントラサイクリン系レジメンを比較した無作為化試験の患者個人レベルのメタ解析を行い、本研究グループによる前回のメタ解析を更新するとともに、6つの関連比較に関して解析した。術後または術前補助療法の臨床試験は、2012年1月1日以前に開始されたものであれば対象とした。 主要アウトカムは、浸潤性乳がんの再発(遠隔、局所、対側乳房の新規原発)、乳がん死、再発を伴わない死亡、全死亡とし、log-rank解析により初回イベント率比(RR)と信頼区間(CI)を算出した。アントラサイクリン系+タキサン系同時併用が最も再発率が低い アントラサイクリン系を含むタキサン系レジメンとアントラサイクリン系を含まないタキサン系レジメンを比較した28件の臨床試験を特定し、23件を適格とした。そのうち15件について、計1万8,103例の女性の個人データが提供された。この15件すべてにおいて、アントラサイクリン系を含むタキサン系レジメンは、アントラサイクリン系を含まないタキサン系レジメンより、再発率が平均14%低かった(RR:0.86、95%CI:0.79~0.93、p=0.0004)。非乳がん死は増加しなかったが、治療を受けた女性700例当たり1例に急性骨髄性白血病の発症が認められた。 再発率が最も低かったのは、ドセタキセル+シクロホスファミドにアントラサイクリン系の同時併用と、同量のドセタキセル+シクロホスファミドを比較した場合であった(10年再発リスク:12.3% vs.21.0%、リスク差:8.7%[95%CI:4.5~12.9]、RR:0.58[95%CI:0.47~0.73]、p<0.0001)。このグループにおける10年乳がん死亡率は4.2%減少した(95%CI:0.4~8.1、p=0.0034)。 アントラサイクリン系+タキサン系の順次投与は、ドセタキセル+シクロホスファミドと比較して、再発リスクの有意な低下は認められなかった(RR:0.94、95%CI:0.83~1.06、p=0.30)。 アントラサイクリン系レジメンとタキサン系レジメンを比較した臨床試験については、44件の適格試験を特定し、このうち35件について計5万2,976例の女性の個人データが提供された。 アントラサイクリン系レジメンへのタキサン系薬剤の上乗せは、タキサン系薬剤を含まないアントラサイクリン系レジメン(アントラサイクリン系薬剤の累積投与量が同じ)と比較した場合は再発を有意に抑制したが(RR:0.87、95%CI:0.82~0.93、p<0.0001、1万1,167例)、対照群の非タキサン系薬剤の累積投与量をタキサン系薬剤の2倍量にした場合と比較すると再発率の有意な低下は認められなかった(RR:0.96、95%CI:0.90~1.03、p=0.27、1万4,620例)。 アントラサイクリン系レジメンとタキサン系レジメンの直接比較では、累積投与量が多く、投与強度が高いレジメンがより効果的であることが示された。アントラサイクリン系+タキサン系併用療法の再発抑制効果は、エストロゲン受容体陽性集団とエストロゲン受容体陰性集団で同様であり、年齢、リンパ節転移状態、腫瘍のサイズまたはグレードによって差は認められなかった。

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術前AC抵抗性TN乳がん、アテゾリズマブ+nab-PTXが有望/第II相試験

 トリプルネガティブ乳がん(TNBC)では、抗PD-(L)1抗体による術前療法で病理学的完全奏効(pCR)率が改善されるが、免疫関連有害事象(irAE)の長期持続リスクのためリスク・ベネフィット比の最適化が重要である。最初の術前療法で臨床効果が不十分な場合はpCR率が低い(2~5%)ことから、免疫チェックポイント阻害薬が選択可能かもしれない。今回、米国・テキサス大学MDアンダーソンがんセンターのClinton Yam氏らは、術前ドキソルビシン+シクロホスファミド(AC)抵抗性のTNBC患者に対して、第2の術前療法としてアテゾリズマブ+nab-パクリタキセルを投与する単群第II相試験を実施し、有望な結果が得られた。Breast Cancer Research and Treatment誌オンライン版2023年4月15日号に掲載。 本試験の対象は、StageI~IIIのAC抵抗性(AC 4サイクル後に病勢進行もしくは腫瘍体積の80%未満の減少)のTNBCで、第2の術前療法としてアテゾリズマブ(1,200mg、3週ごと4回)+nab-パクリタキセル(100mg/m2、1週ごと12回)を投与後、アテゾリズマブ(1,200mg、3週ごと4回)を投与した。 主な結果は以下のとおり。・2016年2月15日~2021年1月29日にAC抵抗性TNBCを37例登録した。・pCR/residual cancer burden(RCB)-I率は46%だった(ヒストリカルコントロール群:5%)。・新たな安全性シグナルは観察されなかった。・7例(19%)がirAEによりアテゾリズマブを中止した。

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化学療法、女性は午後に受けると効果が高い

 体内時計機能を勘案し、投薬時間を調節するクロノセラピー(時間治療)の考え方は以前より提唱されており、大腸がんなどにおいて一定の効果が報告されている1)。しかし、その後の試験に一貫性がないため、日常臨床を変えるには至っていない。今回、造血器腫瘍の成人患者におけるクロノセラピーの効果を検討した、韓国科学技術院のDae Wook Kim氏らによる研究結果がJCI Insight誌2022年12月号に掲載された。 研究者らは、びまん性大細胞型B細胞リンパ腫(DLBCL)患者を2つのコホートに分け、午前または午後に化学療法を行った。DLBCLを対象としたのは、1)リツキシマブ+シクロホスファミド、ドキソルビシン、ビンクリスチン、プレドニゾロン(R-CHOP療法)が唯一の治療選択肢であるために交絡因子が無視でき、治療結果はほとんど免疫化学療法の有効性と毒性に依存する、2)患者の3割が再発しており、より優れた治療戦術が必要、3)ヒトまたは動物実験においてシクロホスファミド、ドキソルビシン、ビンクリスチンの忍容性および抗腫瘍効果に概日変化があるとの報告がある、などの理由による。 2015年1月~2017年8月の間にソウル大学病院およびソウル大学盆唐病院の化学療法センターでR-CHOP療法を受けた成人337例を対象とし、午前または午後にR-CHOP療法を行った。その後、治療終了時に完全寛解を達成した生存コホート129例を対象に有害事象の解析を行った。 主な結果は以下のとおり。・ECOG performance-status(PS)、R-IPIスコア、診断時年齢中央値(61歳[四分位範囲:27~77])に群間差はなかった。全例がPS<2の比較的良好な状態に分類され、約半数がStageIII~IVで、その構成も各群同様であった。・無増悪生存期間(PFS)は、女性患者において、午前投与群は午後投与群に比べ有意に短かった(ハザード比[HR]:0.357、p=0.033)。女性患者において、午前投与群は午後投与群に比べ病勢進行の頻度が高かった(33.3% vs.13.9%、p=0.040)。・同様に、女性患者において、午前投与群では午後投与群より多くの死亡が認められた(19.6% vs.2.8%、p=0.020)。最も一般的な死因は病勢進行であった。その結果、午前投与群は午後投与群と比較して全生存期間(OS)が短かった(HR:0.141、p=0.032)。・午前群の女性患者では、投与量が減少した(シクロホスファミド10%、p=0.002、ドキソルビシン8%、p=0.002、リツキシマブ7%、p=0.003)。これは主に感染症と好中球減少症に起因するもので、午前群は午後群と比較して、感染症(16.7% vs.2.4%)と発熱性好中球減少症(20.8% vs.9.8%)の発生率が高かった。 研究者らは「クロノセラピーの効果に性差があることは、循環白血球と好中球の日内変動が男性より女性のほうが大きいことで説明できる」としている。

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二重抗体薬glofitamab、再発難治DLBCLの39%が完全寛解/NEJM

 CD20/CD3二重特異性モノクローナル抗体のglofitamabは、びまん性大細胞型B細胞リンパ腫(DLBCL)に有効性を示したものの、患者の半数以上にGrade3以上の有害事象が発現したことが、オーストラリア・メルボルン大学のMichael J. Dickinson氏らによる第II相試験で示された。DLBCLの標準的な1次治療はR-CHOP療法(リツキシマブ+シクロホスファミド+ドキソルビシン+ビンクリスチン+prednisone)であるが、同患者の35~40%は再発/難治性で、その予後は不良であった。NEJM誌2022年12月15日号掲載の報告。glofitamab12サイクル投与の有効性を検証 研究グループは、2ライン以上の治療歴のある18歳以上の再発/難治性DLBCL患者を登録し、サイトカイン放出症候群軽減のためオビヌツズマブ(1,000mg)による前治療後、glofitamabを1サイクルの8日目に2.5mg、15日目に10mg、2~12サイクルの1日目に30mgを投与した(1サイクル21日間)。 主要評価項目は独立評価委員会(IRC)判定による完全奏効。主な副次評価項目は奏効期間、全生存期間、安全性などとし、intention-to-treat解析を実施した。 2020年1月~2021年9月に計155例が登録され、このうち154例が少なくとも1回の治験薬(オビヌツズマブまたはglofitamab)投与を受けた。完全奏効率は39%、ただしGrade3以上の有害事象の発現率が62% 追跡期間中央値12.6ヵ月時点で、IRC判定による完全奏効率は39%(95%信頼区間[CI]:32~48)であった。キメラ抗原受容体(CAR)-T細胞療法の治療歴がある52例においても、完全奏効率は35%であり、結果は一貫していた。 完全奏効までの期間の中央値は42日(95%CI:42~44)で、完全奏効が得られた患者の78%は12ヵ月時点で完全奏効が継続していた。12ヵ月無増悪生存率は、37%(95%CI:28~46)であった。 glofitamabの投与中止に至った有害事象は、14例(9%)に認められた。最も発現率が高かった有害事象は、サイトカイン放出症候群(ASTCT基準)(63%)であった。Grade3以上の有害事象は62%に認められ、Grade5(死亡)は8例報告された。なお、死亡例はいずれもglofitamabと関連はないと判断された。Grade3以上の主な有害事象は好中球減少症(27%)であり、Grade3以上のサイトカイン放出症候群は4%、Grade3以上の神経学的イベントは3%であった。

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進行悪性黒色腫、TIL療法でPFSが延長/NEJM

 進行悪性黒色腫の治療において、腫瘍浸潤リンパ球(TIL)を用いた養子免疫細胞療法は、抗細胞傷害性Tリンパ球抗原-4(CTLA-4)抗体であるイピリムマブと比較して、無増悪生存期間(PFS)を有意に延長させ、病勢進行と死亡のリスクが半減したとの研究結果が、オランダがん研究所(NKI)のMaartje W. Rohaan氏らによって報告された。研究の成果は、NEJM誌2022年12月8日号に掲載された。欧州2施設の無作為化第III相試験 本研究は、進行悪性黒色腫の1次または2次治療におけるTILとイピリムマブの有用性の比較を目的とする非盲検無作為化第III相試験であり、2014年9月~2022年3月の期間に、2施設(NKI、デンマーク国立がん免疫療法センター[CCIT-DK])で参加者の登録が行われた(Dutch Cancer Societyなどの助成を受けた)。 対象は、年齢18~75歳、StageIIICまたはIVの切除不能または転移を有する悪性黒色腫の患者であった。被験者は、TILまたはイピリムマブ(3mg/kg[体重]、3週ごと、最大4回、静脈内)の投与を受ける群に、1対1の割合で無作為に割り付けられた。 TIL群は、骨髄非破壊的リンパ球除去化学療法(シクロホスファミド+フルダラビン)を施行された後、5×109~2×1011個のTILを1回注入され、次いで高用量インターロイキン-2(60万IU/kg/回、8時間ごと、最大15回)の投与が行われた。 主要評価項目は、PFSであった。PFS、奏効割合が2倍以上に 168例が登録され、TIL群に84例、イピリムマブ群にも84例が割り付けられた。全体の年齢中央値は59歳(範囲26~77)、男性が100例(60%)であった。前治療歴のある患者は89%で、残りの11%は未治療だった。149例(89%)は、全身療法(術後抗PD-1療法が40例[24%]、抗PD-1療法による1次治療が105例[62%])を受けたのち病勢が進行した患者であった。追跡期間中央値は33.0ヵ月。 PFS中央値は、TIL群が7.2ヵ月(95%信頼区間[CI]:4.2~13.1)と、イピリムマブ群の3.1ヵ月(3.0~4.3)に比べ有意に延長した(病勢進行と死亡のハザード比[HR]:0.50、95%CI:0.35~0.72、p<0.001)。6ヵ月時のPFS率は、それぞれ52.7%(95%CI:42.9~64.7)および21.4%(14.2~32.2)であった。 客観的奏効の割合は、TIL群が49%(95%CI:38~60)、イピリムマブ群は21%(13~32)であった。このうち、完全奏効がそれぞれ20%および7%、部分奏効は29%および14%であった。 全生存期間(OS)中央値は、TIL群が25.8ヵ月(95%CI:18.2~未到達)、イピリムマブ群は18.9ヵ月(13.8~32.6)であった(死亡のHR:0.83、95%CI:0.54~1.27)。2年OS率は、それぞれ54.3%および44.1%だった。 Grade3以上の治療関連有害事象は、TIL群が全例、イピリムマブ群は57%で発現し、TIL群は主に化学療法関連の骨髄抑制であった。重篤な治療関連有害事象は、それぞれ15%および27%で認められた。TIL群では、前処置としてのリンパ球除去化学療法によるGrade 3以上の好中球数減少が全例で、インターロイキン-2関連の毛細血管漏出症候群(全Grade)が30%で発現した。 著者は、「本試験では、前治療歴のない集団、術後補助療法として抗PD-1療法を受けた集団、1次治療で抗PD-1療法を受けた集団において、無増悪生存期間中央値に大きな差はなかった。これは、TIL療法の1次治療としての可能性を示唆するが、治療法の選択では、患者や疾患の特性(脳転移、血清乳酸脱水素酵素の高値、全身状態不良)、潜在的な毒性などが重要な役割を担う」としている。

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ドキソルビシン、乳がん併用療法での休薬期間短縮可能に/サンドファーマ

 サンドファーマ株式会社は2022年11月24日、ドキソルビシン(一般名:アドリアシン注用10、同注用50)について、乳癌(手術可能例における術前、あるいは術後化学療法)に対する他の抗悪性腫瘍薬との併用療法の場合、シクロホスファミド水和物との併用において、用法及び用量の医薬品製造販売承認事項一部変更承認を受けたことを発表した。<製品概要>・販売名:アドリアシン注用10アドリアシン注用50・一般名:ドキソルビシン塩酸塩・効能・効果:変更なし・用法及び用量:<乳癌(手術可能例における術前、あるいは術後化学療法)に対する他の抗悪性腫瘍剤との併用療法>シクロホスファミド水和物との併用において、標準的なドキソルビシン塩酸塩の投与量及び投与方法は、1日量、ドキソルビシン塩酸塩として60mg(力価)/m2(体表面積)を日局注射用水又は日局生理食塩液に溶解し、1日1回静脈内投与後、13日間又は20日間休薬する。この方法を1クールとし、4クール繰り返す。なお、年齢、症状により適宜減量する。またドキソルビシン塩酸塩の総投与量は500mg(力価)/m2(体表面積)以下とする。・用法及び用量に関連する注意:<乳癌(手術可能例における術前、あるいは術後化学療法)に対する他の抗悪性腫瘍剤との併用療法>本剤の投与スケジュールの選択、G-CSF製剤の使用等について、国内外の最新のガイドライン等を参考にすること。・承認取得日:2022年11月24日

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閉経前乳がんへの2年の術後補助内分泌療法による20年間の有用性/JCO

 閉経前のエストロゲン受容体陽性乳がんにおいて、2年間の術後補助内分泌療法による20年間のベネフィットが示唆された。STO-5試験(Stockholm tamoxifen randomized trial)の2次解析結果について、スウェーデン・Karolinska InstitutetのAnnelie Johansson氏らがJournal of Clinical Oncology誌オンライン版2022年7月21日号に報告した。今回の解析では、長期にわたって一定の遠隔再発リスクを有する遺伝学的低リスク患者はタモキシフェンで長期にわたるベネフィットが得られ、早期のリスクを有する遺伝学的高リスク患者はゴセレリンからベネフィットが得られることも示された。なお、ゴセレリンとタモキシフェンの併用は、単剤療法を超える有用性は示されなかったという。 STO-5試験は、1990~97年に閉経前乳がん924例を2年間、ゴセレリン(4週間ごと3.6mg皮下投与)、タモキシフェン(1日1回40mg経口投与)、ゴセレリンとタモキシフェンの併用、補助内分泌療法なし(対照)に割り付けた無作為化比較試験で、今回は2次解析が実施された。無作為化割り付けはリンパ節転移の有無で層別化し、リンパ節転移陽性の459例は標準化学療法(シクロホスファミド、メトトレキサート、フルオロウラシル)に割り付けた。2020年に、原発腫瘍の免疫組織化学的検査(731例)および遺伝子発現プロファイリング(586例)を実施した。また70遺伝子シグネチャーにより、遺伝学的低リスク患者と高リスク患者を同定した。カプランマイヤー解析、多変量Cox比例ハザード回帰、多変量時間変動柔軟パラメトリックモデリングにより、無遠隔再発期間(DRFI)を評価した。 主な結果は以下のとおり。・エストロゲン受容体陽性乳がん584例(年齢中央値47歳)において、ゴセレリン(HR:0.49、95%CI:0.32~0.75)、タモキシフェン(HR:0.57、95%CI:0.38~0.87)、およびその併用(HR:0.63、95%CI:0.42~0.94)は、対照と比較してDRFIを有意に改善した。・ゴセレリンとタモキシフェンの有意な相互作用がみられた(p=0.016)。・遺伝学的低リスク患者(305例)はタモキシフェンで有意なベネフィットが示され(HR:0.24、95%CI:0.10~0.60)、高リスク患者(158例)はゴセレリンのベネフィットが示された(HR:0.24、95%CI:0.10~0.54)。・遺伝学的高リスク患者において、ゴセレリンにタモキシフェンを追加することによるリスク増加がみられた(HR:3.36、95%CI:1.39〜8.07)。

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高リスク早期TN乳がんへの術前・術後ペムブロリズマブ追加、日本人解析結果(KEYNOTE-522)/日本乳癌学会

 高リスクの早期トリプルネガティブ乳がん(TNBC)に対し、術前補助療法として化学療法+ペムブロリズマブ、術後補助療法としてペムブロリズマブの投与が、化学療法のみの術前補助療法と比較して病理学的完全奏効率(pCR)および無イベント生存期間(EFS)を有意に改善することがKEYNOTE-522試験で示され、米国・FDAではすでに承認されている。今回、同試験の日本人解析結果を、国立がん研究センター東病院の向井 博文氏が第30回日本乳癌学会学術総会で発表した。高リスク早期トリプルネガティブ乳がんの術前・術後補助療法におけるペムブロリズマブ追加の有効性・対象:T1c、N1~2またはT2~4、N0~2で、治療歴のないECOG PS 0/1の高リスク早期トリプルネガティブ乳がん患者・試験群:ペムブロリズマブ(200mg、3週ごと)+パクリタキセル(80mg/m2、週1回)+カルボプラチン(AUC 1.5、週1回またはAUC 5、3週ごと)を4サイクル投与後、ペムブロリズマブ+シクロホスファミド(600mg/m2)+ドキソルビシン(60mg/m2)またはエピルビシン(90mg/m2)を3週ごとに4サイクル投与し、術後補助療法としてペムブロリズマブを3週ごとに最長9サイクル投与(ペムブロリズマブ群)・対照群: 術前に化学療法+プラセボ、術後にプラセボを投与(プラセボ群)・評価項目:[主要評価項目]pCR(ypT0/Tis ypN0)、EFS[副次評価項目]全生存期間(OS)、安全性など 高リスク早期トリプルネガティブ乳がんの術前・術後補助療法におけるペムブロリズマブ追加を検証した試験の日本人集団における主な解析結果は以下のとおり。・76例の日本人の高リスクの早期トリプルネガティブ乳がん患者が2:1の割合で無作為化され、ペムブロリズマブ群に45例、プラセボ群に31例が割り付けられた。・年齢中央値は49歳、75例がPS 0で、全体集団と比較してPSが良好な患者が若干多かった。・あらかじめ計画されていた第4回中間解析(データカットオフ日:2021年3月23日)における追跡期間中央値は40.3ヵ月(範囲:30.1~45.8)で、pCRはペムブロリズマブ群53.3% vs.プラセボ群48.4%となり、全体集団同様ペムブロリズマブ群で向上していた。・EFSのイベントはペムブロリズマブ群で6例(13.3%)、プラセボ群で8例(25.3%)に認められ(ハザード比[HR]:0.47、95%信頼区間[CI]:0.16~1.36)、36ヵ月時点のEFS率は89% vs.77%となり、全体集団同様ペムブロリズマブ群で良好だった。・36ヵ月時点のOSはペムブロリズマブ群93.3% vs.プラセボ群89.3%(HR:0.67、95%CI:0.14~3.33)だった。・Grade3以上の治療関連有害事象は、ペムブロリズマブ群82.2% vs.プラセボ群76.7%で、全体集団同様両群で大きな差は認められなかった。・Grade3以上の免疫関連有害事象はペムブロリズマブ群20.0% vs.プラセボ群3.3%とペムブロリズマブ群で多くみられたが、安全性プロファイルはこれまでの報告と同様であった。 向井氏は、全体集団同様日本人集団においても、同療法の有効性が示されたと結論づけている。

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