副作用の強い分子標的薬の開始用量は?【忙しい医師のための肺がんササッと解説】第6回

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ドクター赤松 肺がん最新ジャーナル解説

常に進化する肺がん研究。その進化の波に乗り遅れないために、押さえておきたい最新論文を和歌山県立医科大学 赤松弘朗氏がピックアップし紹介する。

第6回 副作用の強い分子標的薬の開始用量は?

EGFR・ALK陽性例など、1つのドライバー変異に対して複数の分子標的治療薬が承認されている状況は珍しくなくなりつつある。選択肢が広がった一方で、なかには有害事象が思ったより強い薬剤も散見される。支持療法の強化でマネジメントできれば言うことないのだが、それでも減量を強いられる症例は少なくない。ましてや事前に有害事象のデータがわかっていれば、なおさら最初から減量して開始したほうがよいのでは、という考えが生じるが、これまで成功例は少なかった。

ALK阻害剤であるセリチニブは消化器毒性の発現が多く、当初の開始量では約8割が用量調整を要する薬剤として知られている(Soria JC, et al. Lancet. 2017;389:917-929.)。今回、セリチニブの投与法を工夫することで、減量しても同等の有効性・毒性の軽減を示すことに成功した臨床試験を紹介する。

  • ASCEND-8試験は前向き・非盲検の3群試験。
  • 残念ながら日本は参加していないが、韓国・台湾などのアジア人患者が参加している。
  • 本試験は3群試験であり、従来の開始量である750mg/日・空腹時群に対して450mg/日・食後群、600mg/日・食後群が設定された。
  • この試験の重要なポイントとして、PK解析が行われている点が挙げられる。2017年のJournal of Thoracic Oncology(JTO)誌に137例を対象にしたpart Iの結果が報告されているが、450mg/日・食後群のPKは750mg/日・空腹時群と同等で、消化器毒性が少ない可能性が示唆されていた。
  • 今回報告されたのは306例まで患者数を増して行ったpart 2の結果で、有効性・安全性を中心とした結果となっている(注:有効性は198例の未治療例に限ったデータ)。
  • ORRは750mg/日・空腹時群:75.7%に対して、450mg/日・600mg/日の食後群では78.1%、72.5%であった。
  • PFS中央値は750mg/日・空腹時群:12.2ヵ月に対して、450mg/日および600mg/日の食後群では未到達、17.0ヵ月であった。18ヵ月時点の無増悪生存率は同様に36.7%に対して52.9%、61.1%となっている。
  • dose intensityは450mg/日・食後群が100%と最も優れていた。
  • 消化器毒性を呈した患者の割合は750mg/日・空腹時群の91.8%に対して、450mg/日および600mg/日・食後群では75.9%、82.6%であった。

解説

連日内服する分子標的薬の有害事象は、投与後、徐々に回復してくる細胞傷害性薬剤のそれとは異なり、持続してしまうことが厄介である。なので、患者の実際のしんどさは最悪時点のgradeのみでは測りにくく、減量率や休止率なども重要な指標となる。

過去にこのような有害事象頻度の高い薬剤については、(1)減量した患者群でも有効性が同等である可能性を後方視的に検討したり(アファチニブ:Yang JC, et al. Ann Oncol. 2016;27:2103-2110.)、(2)減量開始による前向き試験(エルロチニブ:Yamada K, et al. Eur J Cancer. 2015;51:1904-1910.)が検討されてきた。ただしあくまで後付けであったり、後者のように主要評価項目にmetしなかった試験も報告されており、原則は「可能な限り、承認された開始用量で始める」というコンセンサスがあった。今回の試験が新しかったのは、きちんとPKを行い、これを基に投与時期の変更と用量調整を行っている点である。実際、本邦・海外において、この新しい用量設定が承認されていることは大変重要な成果だと思う。

この試験の弱点を強いて言えば、300例超という大きな試験であるにもかかわらず、「この人数の設定には統計学的根拠がない」と記載されていることだろうか。また、非盲検試験であるため、dose intensityや毒性評価のデータはこれらを差し引いて読む必要があるかもしれない。

前述したように、連日経口投与する分子標的薬の場合、従来の毒性評価は不十分かもしれず、今後検討の価値がある。一方そのような場合でも、いたずらな減量開始には注意が必要である。科学的根拠に基づいて用量の再設定をした本試験は非常に重要な意義を持つ。

講師紹介

赤松 弘朗 ( あかまつ ひろあき ) 氏和歌山県立医科大学医学部 内科学第三講座

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