第15回 追憶の研修医時代が手の中でよみがえる本【Dr.倉原の“俺の本棚”】

  • 公開日:2019/03/19
企画・制作ケアネット

ほかのドクターがどんな本を読んでいるのか、気になりませんか?CareNet.com “おどろき”医学論文が好評の呼吸器内科医 倉原優氏が、自身の本棚から「これは!」とウナる本を毎月1冊ピックアップ。思わず読みたくなる“医書”を紹介します。

※紹介する書籍は倉原氏個人の選書です。ケアネットが推薦するものではありません。

【第15回】追憶の研修医時代が手の中でよみがえる本

Yahoo!ニュース個人で2015年12月、2016年8月、2017年6月、2018年6月のMVA賞を受賞し、『医者の本音』(SBクリエイティブ)で10万部を超える爆発的ヒットをたたき出した外科医の中山 祐次郎先生。一時期、福島県の高野病院院長として赴任したことでも知られています。私は、中山先生にTwitterでたまにちょっかいを出しているのですが(笑)、何といきなり彼が処女小説を発表しました。おいおい、ちょっと聞いてないよ!これは読まずにはいられないと思い、発売日に本屋さんへGOしました。

同じ執筆ドクターとしては10万部超えにジェラシーを感じるのである!キーッ!

『泣くな研修医』

中山 祐次郎/著. 幻冬舎. 2019

「直木賞や芥川賞を取ったワケじゃないんだから、期待し過ぎじゃないの?」と思われるかもしれませんが、吐きそうなくらいリアルな医療小説でビックリしました。

バラエティ番組を横で流しながら読むつもりだったのですが、とうの昔に番組が切り替わっていることにすら気付かず、時が経つのも忘れて読み終えてしまいました。研修医の時って、みんなものすごくキラキラしていますよね。疾患や命と真正面からぶつかって、はじき返されて、涙して、立ち直って、笑って。でもちょっと自信がなくて、主人公の雨野のようにどこか暗いカゲを持っている研修医もいる。私みたいな中堅医師になると、研修医時代の思い出って希薄になり色あせてしまいます。どんな色だったのかなぁって思い出せないくらい、医療に慣れちゃう。この本は、読んでいる人の懐旧の情が膨らんでくる感覚と、最終章で明らかになる雨野の原体験がうまい具合に混ざり合う、独特の読了感があります。

それにしても、1つ1つの症例に、まるで現場を横からビデオカメラで撮影しているような臨場感があります。さすが外科医だなぁと思ったのは手術シーン。外科医でないと、ここまで見事に書けない。ちなみに、この本で私が一番共感した文章は、「患者さんを乗せたベッドを押して病院内を進むのはかなりの技術を要した」です。そこかよ!と思われそうですが、ストレッチャーをスムーズに移動させるのって結構難しいじゃないですか。研修医にいたっては、ギャッジアップさせる操作すら知らなくて白い目で見られちゃったりして。こういう研修医時代の小さな失敗体験が随所に散りばめられていて、読者を飽きさせません。

映画化とドラマ化を早々に期待しています。

ヤバイぜ、中山先生!

『泣くな研修医』

中山 祐次郎/著
出版社名
幻冬舎
定価
本体1,300円+税
サイズ
B6判
刊行年
2019年

倉原 優 ( くらはら ゆう ) 氏近畿中央呼吸器センター

[略歴]

2006年滋賀医大卒業。洛和会音羽病院を経て08年から現職。

自身のブログ「呼吸器内科医」では医学論文の和訳や医療エッセーを執筆。

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