第12回 僧侶の医師【Dr.倉原の“俺の本棚”】

  • 公開日:2018/12/11
企画・制作ケアネット

ほかのドクターがどんな本を読んでいるのか、気になりませんか?CareNet.com “おどろき”医学論文が好評の呼吸器内科医 倉原優氏が、自身の本棚から「これは!」とウナる本を毎月1冊ピックアップ。思わず読みたくなる“医書”を紹介します。

※紹介する書籍は倉原氏個人の選書です。ケアネットが推薦するものではありません。

【第12回】僧侶の医師

私は、実は元仏教徒です。中高ともに天台宗の延暦寺学園に通っていました。とはいえ、私自身、深い信仰心があるワケではなく、学校生活の中で何となく仏の教えを受け入れていたにすぎません※1

食事の前に食前観※2を唱え、毎年1~2回比叡山の寺を巡って恐ろしい距離を歩き、イタズラをして怒られたら地獄の写経タイムが待っていました。大学に入ってからは仏教から遠い生活を送っていましたが、それでも旧友の中にはリアル僧侶がチラホラいるため、私の人生の大半に仏教が関わっているのです。

※1 週に1回「宗教」という授業がありました。実際のお坊さんが教えに来てくれたことも!

※2 天台宗で用いる、食に関する感謝の言葉。

『病室で念仏を唱えないでください』

こやす 珠世/著. 小学館. 2013-(連載中)

そんな私、お風呂に入っているときに鼻歌交じりで「摩訶般若~♪」と般若心経を唱えることがあるのですが、長男いわく「お父さん気持ち悪い」とのこと。チッチッチッ、般若心経の本当の意味はね、かくかくしかじかなんだよ、と説明するのですが、やはりお経というのは不気味に聞こえるようで、なかなか子供の心には響きません。

「病院と宗教」といえば、私が初期研修病院の有力候補にしていた天理よろづ相談所病院では、天理教の法被を着た信者さんたちが、奉仕活動で忙しく働いていたのを覚えています。異質な空間でしたが、妙にしっくりきたのは私が仏教を学んできたからかもしれません。

さてこの漫画。主人公は、驚くべきことに僧侶の救急医です(僧医)。「どう考えてもこれコメディでしょ」と思いながら開いてみてください。本編はいたって真面目なので、いい意味で裏切られるはずです。医療と仏教の2つの視点から生命観を捉えた、面白い着眼点の作品です。絵は、かなり上手です。

ただ、元仏教徒からすると、ちょっと仏教の部分で話の流れがよどむような印象を受けます。また、医療を何でもかんでも仏教と結びつけなくてもよいのですが、まぁこういうテーマの漫画ですし、強引さも必要なのは否めない。医師としては優秀なのだと思いますが、仏の教えを説く人間としてはちょっと力不足感が目立ちます。そこも今後の成長に期待したいところです。

スーパードクターが登場するわけではないので、『ブラックジャック』や『医龍』のような華々しさはありません。ただ、綿密な取材をしてから描かれた漫画であることは医師であれば一目瞭然なので、当直室で読む医療マンガの候補にぜひ入れてみてください。

『病室で念仏を唱えないでください』 既刊5巻(ビッグコミックス)

こやす 珠世/著
出版社名
小学館
定価
本体552円+税(1~4巻)、本体591円+税(5巻)
サイズ
B6判
刊行年
2013年~2018年(1~5巻)

倉原 優 ( くらはら ゆう ) 氏近畿中央呼吸器センター

[略歴]

2006年滋賀医大卒業。洛和会音羽病院を経て08年から現職。

自身のブログ「呼吸器内科医」では医学論文の和訳や医療エッセーを執筆。

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