膠原病・リウマチ科の海外論文・最新ニュースアーカイブ|page:4

生物学的製剤未使用の中等症から重症の活動性を有するクローン病患者における寛解導入および維持療法としてのウステキヌマブとアダリムマブの第III相比較試験(解説:上村直実氏)

近年、クローン病の治療において5-アミノサリチル酸塩(5-ASA)、免疫調整薬、ステロイドなどを用いた従来の治療法が無効な場合に、抗TNFα阻害薬(インフリキシマブ、アダリムマブ、ゴリムマブなど)、インターロイキン(IL)阻害薬(ウステキヌマブ)、抗インテグリン抗体薬(ベドリズマブ)といった生物学的薬剤が使用されることが多くなっている。新たに開発された生物学的製剤の有用性と安全性を検証するための臨床試験は薬事承認を目的としたものが多く、既存の治療において有効性に乏しい患者を対象としたプラセボ対照の無作為化比較試験(RCT)が常套手段となっており、実際のクローン病診療現場で治療方針に迷うことのある生物学的製剤同士を直接比較した検討は見当たらなかった。今回、18ヵ国121施設が参加した国際共同研究として、過去に生物学的製剤が使用されていない中等症〜重症活動期のクローン病患者を対象として、世界市場の売上高が第1位のアダリムマブ(ヒュミラ)と第4位のウステキヌマブ(ステラーラ)の単剤療法の有効性を直接比較した二重盲検RCT(SEAVUE試験)の結果が、2022年6月のLancet誌に報告された。結果として、本試験の主要評価項目である試験開始から52週時の臨床的寛解率(クローン病活動指数:CDAIの低下)および、種々の副次的評価項目(内視鏡的有効性、入院率の低下率、ステロイドフリー率、腸管切除の減少率などクローン病の長期的な予後の改善に強く関連する項目)について、アダリムマブ群とウステキヌマブ群の両群間に有意な差は認められなかった。安全性に関しても既知のプロファイルと変化なく、両群間での差はなかった。

中等症~重症クローン病、ウステキヌマブvs.アダリムマブ/Lancet

 生物学的製剤未使用の中等症~重症活動期クローン病患者に対する導入療法および維持療法として、ウステキヌマブ単剤療法とアダリムマブ単剤療法はいずれも高い有効性を示し、主要評価項目に両群で有意差はなかった。米国・マウントサイナイ医科大学のBruce E. Sands氏らが、18ヵ国121施設で実施した無作為化二重盲検並行群間比較第IIIb相試験「SEAVUE試験」の結果を報告した。ヒト型抗ヒトIL-12/23p40モノクローナル抗体ウステキヌマブと、ヒト型抗ヒトTNFαモノクローナル抗体アダリムマブは、いずれもクローン病の治療薬として承認されているが、どちらもプラセボ対照比較試験の結果に基づいており、患者への説明や医師の治療選択にとっては直接比較する実薬対照試験が必要であった。Lancet誌オンライン版2022年6月11日号掲載の報告。

中等症から重症のクローン病の寛解導入に対するリサンキズマブの有用性:第III相試験の結果(解説:上村直実氏)

クローン病や潰瘍性大腸炎など炎症性腸疾患の治療は生物学的製剤の出現により大きく変化している。しかし、中等度以上の活動性を有するクローン病症例の中には、生物学的製剤の効果が得られない患者、時間の経過と共に効果が消失する患者、あるいは副作用により治療が中断される患者が少なくなく、いまだに新たな作用機序を有する治療薬の追加が求められているのが現状である。わが国で乾癬などに対して2019年から承認され使用されている、IL-23p19阻害薬のリサンキズマブのクローン病寛解導入に対する有用性を明らかにした第III相無作為化二重盲検プラセボ対照試験(ADVANCE試験とMOTIVATE試験)の結果が、2022年5月のLancet誌に掲載された。この2つの試験は適格条件の違いがあるものの、従来型の治療ないしは生物学的製剤の効果が不十分であった中等度以上の活動性クローン病患者を対象としたRCTで、12週後のリサンキズマブ群の臨床的寛解率と内視鏡的奏効率がプラセボ群に比して有意に高率であり、一方、有害事象の発生率はプラセボと同等であったと報告されている。この結果は、既存の生物学的製剤を用いても寛解導入に難渋している患者に対する大きな福音と思われる。

中等症以上のクローン病に対する維持療法におけるリサンキズマブの有用性:第III相試験の結果 (解説:上村直実氏)

クローン病の治療においては、病気の活動性をコントロールして患者の寛解状態をできるだけ長く保持し、日常生活のQOLに影響する狭窄や瘻孔形成などの合併症の治療や予防が非常に重要である。最近、活動性とくに中等症から重症のクローン病に対しては、生物学的製剤により寛解導入したのち、引き続いて同じ薬剤で寛解維持に対する有用性を検証する臨床試験が多い。今回、アジアも含めた44ヵ国で行われた国際共同試験でIL-23 p19阻害薬であるリサンキズマブの静脈内投与によりクローン病の寛解導入に有用性を示す結果を得たADVANCE試験とMOTIVATE試験において臨床効果が認められた患者を対象としてリサンキズマブ皮下投与の52週間維持療法の有効性と安全性を検証した第III相無作為化二重盲検プラセボ対照試験(FORTIFY試験)の結果が2022年5月のLancet誌に掲載された。

リサンキズマブ、クローン病の寛解維持療法に有効/Lancet

 インターロイキン(IL)-23のp19サブユニットを標的とするヒト化モノクローナル抗体リサンキズマブの静脈内投与による寛解導入療法で臨床的奏効が得られた中等症~重症の活動期クローン病患者の寛解維持療法において、リサンキズマブ皮下投与はプラセボ(休薬)と比較して、52週の時点での臨床的寛解率および内視鏡的改善率が高く、忍容性も良好で、有害事象の頻度には差がないことが、ベルギー・ルーヴェン大学病院のMarc Ferrante氏らが実施した「FORTIFY substudy 1(SS1)試験」で示された。研究の成果は、Lancet誌2022年5月28日号に掲載された。

中等~重症のクローン病、リサンキズマブ導入療法が有効/Lancet

 中等症~重症の活動期クローン病患者において、IL-23 p19阻害薬リサンキズマブは導入療法として有効であり忍容性も良好であることが示された。オランダ・アムステルダム大学医療センターのGreet D'Haens氏らが、第III相無作為化二重盲検プラセボ対照試験「ADVANCE試験」および「MOTIVATE試験」の結果を報告した。Lancet誌2022年5月28日号掲載の報告。  両試験の対象は16~80歳の中等症から重症の活動期クローン病患者で、ADVANCE試験では既存治療または生物学的製剤で効果不十分または不耐容の患者、MOTIVATE試験では生物学的製剤で効果不十分または不耐容の患者を適格とした。適格患者をリサンキズマブ600mg群、1,200mg群、またはプラセボ群(いずれも0、4および8週目に単回静脈内投与)に、ADVANCE試験では2対2対1の割合で、MOTIVATE試験では1対1対1の割合で無作為に割り付けた。

自分の脂肪を注入する治療法、手指の変形性関節症を改善

 患者の体から吸引した脂肪を使った治療が手指の変形性関節症に有用であることが、リューデンシャイト・クリニック(ドイツ)のMax Meyer-Marcotty氏らの研究で示唆された。吸引した脂肪を痛みのある手指の関節に注入する「自家脂肪注入」と呼ばれる治療を行ったところ、手の機能の有意かつ持続的な改善と痛みの緩和が認められたという。この研究結果は、「Plastic and Reconstructive Surgery」5月号に発表された。  手指の変形性関節症は通常、加齢に伴い関節の軟骨がすり減ることで生じる。軟骨がすり減ると骨と骨が直接接触するようになり、痛みやこわばりが生じる。  Meyer-Marcotty氏らは2014年から変形性関節症に対して自家脂肪注入を始めたという。自家脂肪注入は、患者の大腿や臀部から吸引した脂肪組織を遠心分離機にかけて水分や油分、血液を取り除き、得られた純度の高い脂肪を患者の関節の病変部位に注入するという治療法だ。同氏によると、自家脂肪注入は縫合が不要で、患部に絆創膏を貼り、スプリントで1週間固定しておく必要があるだけだという。固定から1週間後にスプリントを外せる状態かどうかを確認し、その後、2〜3週間は患部に力をかけないように注意しながら指を使う。治療から4週間後には、治療した指を通常通り動かせるようになる。

免疫抑制が強い患者ほど接種後の抗体価に差、モデルナ製vs.ファイザー製

 免疫抑制治療を受けている固形臓器移植患者やリウマチ性・筋骨格系疾患患者において、モデルナ製の新型コロナワクチンがファイザー製ワクチンより強い液性免疫原性を誘導しやすく、この効果は免疫抑制が強いほど顕著だったことが、米国・Johns Hopkins University School of MedicineのJonathan Mitchell氏らの研究で示された。JAMA Network Open誌2022年5月16日号に掲載。  臓器移植患者やリウマチ性・筋骨格系疾患患者などの免疫抑制患者は、新型コロナワクチンに対する免疫応答が低下している。したがって、ワクチンの免疫原性の差は、免疫正常者での差より臨床的に重要である。本コホート研究では、免疫抑制の強さの異なる患者群ごとにファイザー製およびモデルナ製ワクチン2回接種後の抗スパイク抗体価を比較した。

バリシチニブ、円形脱毛症の毛髪再生に有効か/NEJM

 円形脱毛症は、頭髪、眉毛、睫毛の急速な脱毛を特徴とする自己免疫疾患であるが、治療法は限定的である。米国・イェール大学医学大学院のBrett King氏らは、重症円形脱毛症の治療におけるヤヌスキナーゼ(JAK)1とJAK2の阻害薬バリシチニブの有用性を検討し、本薬はプラセボと比較して、36週時に臨床的に意義のある毛髪再生を達成した患者の割合が高く、安全性も劣らないことを「BRAVE-AA試験」で示した。研究の成果は、NEJM誌オンライン版2022年3月26日号で報告された。  本研究は、日本を含む10ヵ国169施設が参加した2つの二重盲検プラセボ対照無作為化試験(BRAVE-AA1試験、BRAVE-AA2試験)である(Incyteのライセンスの下でEli Lillyの助成を受けた)。  この試験では、BRAVE-AA1試験の第III相部分(参加者登録期間:2019年3月~2020年6月)とBRAVE-AA2試験(同:2019年7月~2020年5月)のデータが用いられた。  対象は、年齢18~60歳の男性と18~70歳の女性で、Severity of Alopecia Tool(SALT)のスコア(0[頭髪の脱毛なし]~100[頭髪の完全脱毛]点)が50点以上の患者であった。

5年間のビタミンD補給により自己免疫疾患のリスク低減/BMJ

 5年間のビタミンD補給により、オメガ3脂肪酸の追加の有無を問わず、自己免疫疾患の発生が22%減少し、オメガ3脂肪酸の補給では、ビタミンD追加の有無にかかわらず、統計学的有意差はないものの同疾患が15%減少することが、米国・ハーバード大学公衆衛生大学院のJill Hahn氏らが行った「VITAL試験」で示された。研究の成果は、BMJ誌2022年1月26日号で報告された。  研究グループは、ビタミンDと海産動物由来の長鎖オメガ3脂肪酸は自己免疫疾患のリスクを低減するかを検証する目的で、2×2ファクトリアルデザインを用いた二重盲検プラセボ対照無作為化試験を行った(米国国立衛生研究所[NIH]の助成による)。