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ERS2008速報

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4年間のチオトロピウム投与は、呼吸機能を継続的に改善し死亡率を低下させる
―大規模臨床試験UPLIFT結果発表!
Understanding Potential Long-term Impacts on Function with Tiotropium

我が国が参加した過去最大規模、しかもreal-worldを反映する大規模臨床試験

UPLIFTは、チオトロピウム(18μg、1日1回投与)を用いた4年間の無作為化二重盲検プラセボ対照試験です。本試験には、きわだった特徴が3つあります。

1つは通常治療(usual care)にチオトロピウムあるいはプラセボを加えて、検討していることです。つまりチオトロピウム群およびコントロール群の双方で、長時間作用型β2刺激薬(LABA)や吸入ステロイド(ICS)、テオフィリンなど、吸入抗コリン薬以外のすべての薬剤使用が許可されていました。つまり「real-world」、実際の臨床現場を反映した試験デザインとなっています。

2つ目の特徴は、これまでのCOPDにおける臨床試験では最大規模の試験であるという点です。1群の患者数が約3,000例、合計で約6,000例です。さらに4年間という長期間の検討ですので統計的な面からも信頼度が高い試験となっています。

3つ目の特徴として、我が国の参加が挙げられます。COPDの臨床試験に関し、初めて日本から参加したグローバル的な試験という意味でも、本試験は注目されていました。

対象者COPD患者の背景

では、UPLIFTの試験結果について紹介しましょう。

UPLIFTの患者背景を解析したところ(表1)、薬物療法が必要な患者すべて(GOLDのステージII〜IV)が組み込まれており、特に、より軽症なステージII(中等症)の患者が45〜46%と多くを占めていました。また、現在も喫煙を続けている患者が対象の約3割を占めていました。こうした患者背景からみても、UPLIFTに参加した患者は、我が国で実際に病院に通うCOPD患者と類似していたと考えられます。

表1. 患者背景

チオトロピウムは呼吸機能を4年間継続して有意に改善

UPLIFTの主要評価項目は、呼吸機能の低下速度(気管支拡張薬投与前ならびに投与後のFEV1 、FVC)の抑制効果で、副次評価項目は患者健康関連QOL、増悪頻度、及び死亡率に対する効果でした。

解析の結果、コントロール群とチオトロピウム群におけるCOPD患者の呼吸機能低下速度に有意差はありませんでした。しかしチオトロピウム群ではコントロール群に比較して、4年間にわたって有意にFEV1 およびFVCの改善が認められました。吸入抗コリン薬以外の薬剤の使用がすべて認められている状況下で、チオトロピウムの使用の有無で気管支拡張薬投与前のFEV1については100mL程度、4年間にわたり常にチオトロピウム群の値が有意に上回っているという結果でした。(図1)。


図1. 気管支拡張薬投与前および投与後のFEV1(各測定時平均値)

また本試験でGOLDステージIIの患者に対するサブ解析を行った結果、こうした患者ではFEV1などが4年間継続してコントロール群より有意に改善したことに加え、呼吸機能の低下速度がチオトロピウム群で有意に改善していたことがわかりました。LABA/ICS非投与患者のみのサブ解析においても、チオトロピウムはFEV1低下を有意に抑制しました。

現在のガイドラインにおいては、薬物治療はGOLDステージIIで息切れなどの症状を有するCOPD患者に行うこととされています。また、実際の臨床現場でも、症状を自ら訴えない患者には治療をしない場合も多いと思われます。しかし今回のUPLIFTの結果を考慮すれば、ステージIIの患者では症状が出現していなくてもチオトロピウムをベースの治療薬として使用した方が疾患進行を抑制する可能性があると言えるでしょう。

有意な死亡率の低下が初めて認められる

UPLIFTでは、健康関連QOLの低下や増悪に関しても、チオトロピウム群で標準的治療の施されているコントロール群に比較し、有意な改善効果が継続的に認められました。これまで、多くの、より短期の試験で同様の結果が報告されていますが、今回はその効果が4年間持続することが明らかになったと言えます。

一方、新たな知見として特に注目すべきなのが、死亡率に関するデータです。これまで死亡率について統計的有意な改善効果を示した薬剤はなかったことから、今回、チオトロピウムが初めて総死亡率を有意に低下させたことは(図2表2)、きわめて重要な意味を持っています。

図2. 試験期間中における全ての理由による死亡(1440日)

表2. 試験期間中における全ての理由による死亡

チオトロピウムは心血管疾患のリスクを増大させない

4年という長期にわたりチオトロピウムを投与した本試験においては、安全性のデータは極めて重要です。最近、抗コリン薬がCOPD患者の心血管系副作用リスクを増加させるとのメタ解析が報告されました。しかし、今回のUPLIFT試験では、心疾患や脳卒中などに関してチオトロピウムによる有意なリスク増大はみられず、むしろ心筋梗塞などに関してはリスクが低下しました(表3)。こういった、副作用に対する懸念が払拭されたことは、大きな情報だったと思います。さらに、チオトロピウムがCOPD患者の管理上最も困難な問題である呼吸不全を30%程度減少させている点も重要です(表3)。

表3. 発現率(100人・年あたり)が1%超となる重篤な有害事象**

COPDの自然歴からも示唆される早期介入の重要性

COPDの自然歴についてはこれまで不明な点が多い状況でした。UPLIFTの結果により、新たな知見が得られました。今回のデータをみると、FEV1の低下速度は重症患者より中等症患者でより大きいという、従来信じられていたのとは逆の結果が示されました。ステージIIの患者でチオトロピウムが呼吸機能低下を有意に抑制したことから考えると、より早期からの薬剤介入がいかに大事か分かります。

COPDにおけるランドマーク研究となったUPLIFT

今回の結果は、通常治療にチオトロピウムを加えることで、4年間という長期にわたり呼吸機能および健康関連QOL、増悪の頻度を改善し、長期間にわたる安全性が証明され、さらに、COPD患者の予後を改善することを示すものでした。こうした点を考慮すれば、UPLIFTはCOPDの治療を考える上でランドマーク的研究と位置づけられるでしょう。

我が国において、GOLDステージII 以上のCOPD患者は300万人程度存在すると考えられます。このため、呼吸器専門医のみならず第一線の実地医家の先生方に少しでも多く介入していただく必要があります。日本の臨床現場においては、これまで患者が高齢であること、吸入療法が必要であることなどから、COPDはずっとundertreatmentの状態でした。早期からの積極的介入の有効性を示したUPLIFTというエビデンスが、COPD治療の大きな推進力になることを期待しています。

出典
  • 1)Tashkin DP et al. N Engl J Med 2008; 359, 1543-54
  • 2)Tashkin DP ERS2008 Symposium
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