日本発エビデンス|page:53

オピオイド誘発性便秘わが国の実態(OIC-J)/Cancer Medicine

 オピオイド誘発性便秘(OIC)は、オピオイド疼痛治療で頻繁にみられる副作用だが、その発生率は報告によりさまざまで、十分に確立されているとはいえない。この発生率のばらつきは、臨床試験および横断研究におけるOICの診断基準の複数があることも要因である。  近年、大腸疾患の基準であるRome IVがOICの基準に取り入れられた。そのような中、Rome IV基準を用いた日本人がん性疼痛患者におけるOICの発生率を検討した多施設共同前向き観察研究の結果がCancer Medicine誌8月号で発表された。

高齢者における魚摂取量と認知症発症リスクの関連~大崎コホート2006

 魚類は、認知機能低下を予防する多くの栄養素を含んでいる。したがって、習慣的な魚類の摂取は、認知症発症リスクの低下に寄与する可能性が示唆されている。しかし、認知症発症と魚類の摂取を調査したプロスペクティブコホート研究は少なく、それらの調査結果は一貫していない。東北大学の靏蒔 望氏らは、魚類の摂取量と認知症発症リスクを評価するため、大崎コホート研究のデータを用いて検討を行った。The British Journal of Nutrition誌2019年9月3日号の報告。

ブレクスピプラゾールのリバウンド現象抑制作用

 統合失調症患者に対する抗精神病薬の長期治療は、ドパミンD2受容体感作により引き起こされると考えられる過感受性精神病や遅発性ジスキネジアを誘発する可能性がある。大塚製薬のNaoki Amada氏らは、ラットにおいて亜慢性期治療後のD2受容体感受性に対するブレクスピプラゾールの効果を検討した。また、他の非定型抗精神病薬を投与された亜慢性期ラットでのD2受容体に対する増強作用を、ブレクスピプラゾールが抑制できるかについて評価を行った。Neuropsychopharmacology Reports誌オンライン版2019年9月5日号の報告。

統合失調症に対するブロナンセリン経皮吸収型テープ製剤の有効性と安全性

 ブロナンセリンは、統合失調症に適応を有する第2世代抗精神病薬である。藤田医科大学の岩田 仲生氏らは、急性増悪統合失調症患者におけるブロナンセリン経皮吸収型テープ製剤の有効性、安全性、薬物動態について検討を行った。Schizophrenia Research誌オンライン版2019年8月27日号の報告。  本試験は二重盲検多施設共同第III相臨床試験であり、1週間の観察期間中にプラセボの2つのテープ製剤を使用し、その後6週間の二重盲検期間を設け、患者を1日1回ブロナンセリン40mgテープ(40mg群)、80mgテープ(80mg群)またはプラセボテープ(プラセボ群)を貼付する群にランダムに割り付けた。主要エンドポイントは、PANSSスコアのベースラインからの変化量とした。安全性評価には、治療により発生した有害事象(TEAE)を含めた。

日本人の海藻摂取と脳・心血管リスク

 海藻に含まれるミネラルやビタミン、可溶性食物繊維、フラボノイドは、心血管疾患予防に役立つが、海藻摂取と心血管疾患リスクとの関連は明らかになっていない。今回、わが国の多目的コホート(JPHC)研究で、筑波大学の村井 詩子氏らが海藻摂取と脳卒中および虚血性心疾患リスクとの関連を調査したところ、虚血性心疾患リスクとの逆相関が認められた。一方、脳卒中とは有意な関連はみられなかった。The American Journal of Clinical Nutrition誌オンライン版2019年9月13日号に掲載。

多飲症と抗精神病薬との関連

 山梨県立北病院の桐野 創氏らは、多飲症と抗精神病薬との関連を明らかにするためシステマティック・レビューを行った。Progress in Neuro-psychopharmacology & Biological Psychiatry誌オンライン版2019年8月28日号の報告。  抗精神病薬により誘発または改善された多飲症に関する臨床研究および症例報告を含み、MEDLINE、Embase、PsycINFOよりシステマティックに検索した。  主な結果は以下のとおり。 ・二重盲検ランダム化比較試験(RCT)1件、single-arm試験4件、横断研究1件、ケースシリーズ3件、ケースレポート52件を含む61件が抽出された。

心房細動合併安定CAD、リバーロキサバン単剤 vs.2剤併用/NEJM

 血行再建術後1年以上が経過した心房細動を合併する安定冠動脈疾患患者の治療において、リバーロキサバン単剤による抗血栓療法は、心血管イベントおよび全死因死亡に関してリバーロキサバン+抗血小板薬の2剤併用療法に対し非劣性であり、大出血のリスクは有意に低いことが、国立循環器病研究センターの安田 聡氏らが行ったAFIRE試験で示された。研究の成果は2019年9月2日、欧州心臓病学会(ESC)で報告され、同日のNEJM誌オンライン版に掲載された。心房細動と安定冠動脈疾患が併存する患者における最も効果的な抗血栓治療の選択は、個々の患者の虚血と出血のリスクの注意深い評価が求められる臨床的な課題とされている。

デキサメタゾン1日投与の制吐効果は?/Oncologist

 化学療法誘発性悪心・嘔吐(CINV)の予防に用いられるデキサメタゾンについて、投与日短縮法の制吐効果が明らかにされた。松下記念病院の岡田優基氏らは、パロノセトロン併用下でのデキサメタゾンの適切な投与期間について、個々の患者データに基づいたメタ解析を行った。Oncologist誌オンライン版2019年6月19日掲載の報告。  研究グループは、中等度催吐性リスク化学療法またはアントラサイクリン+シクロホスファミドを含む化学療法を受ける化学療法未治療の成人患者を対象に、パロノセトロン+デキサメタゾンday1(d1群)とパロノセトロン+デキサメタゾンday1~3(d3群)のCINVに対する効果を比較検討した無作為化臨床試験について、PubMedおよびMEDLINEを用いて検索するとともに手作業でも検索し、システマティックレビューを行った。

2004年新潟県中越地震後の心理的苦痛と認知症リスクとの関連

 大地震は極度のストレスを引き起こし、認知機能に悪影響を及ぼす可能性がある。新潟大学の中村 和利氏らは、2004年新潟県中越地震後の心理的苦痛と認知症との関連について検討を行った。Journal of Affective Disorders誌オンライン版2019年8月19日号の報告。  本研究は、10~12年フォローアップを行ったレトロスペクティブコホート研究である。対象者は、2004年新潟県中越地震後に年次健康診断を行った40歳以上の小千谷市民(2005年6,012人、2006年5,424人、2007年5,687人)。Kessler Psychological Distress Scale(K10)を用いて心理的苦痛を評価し、K10スコアが10以上を心理的苦痛ありと定義した。

日本人NAFLD患者の種々のがん予測に亜鉛測定が有用

 血清亜鉛(Zn)濃度の低下は肝性脳症や味覚異常など、さまざまな疾患に影響することが報告されている。しかしながら、非アルコール性脂肪肝疾患(NAFLD)患者における関連はほとんど報告されていない。今回、名古屋大学消化器内科学の伊藤 隆徳氏らは、血清中のZn濃度と総分岐鎖アミノ酸/チロシンモル比(BTR:molar ratio of total branched-chain amino acid to tyrosine)が、NAFLD患者の予後と関係することを明らかにした。著者らは、「血清中のBTRおよびZn濃度が、それぞれNAFLD患者の肝細胞がん(HCC)および他臓器がんの発生予測に有用」とコメントしている。Nutrition&Cancer誌オンライン版2019年8月21日号掲載の報告。

食道がん発症における喫煙と飲酒の相互作用~プール解析

 食道がん発症の危険因子である喫煙と飲酒に有意な相加的相互作用が認められることが、愛知県がんセンター研究所の尾瀬 功氏らによる日本人集団ベースの大規模コホート研究のプール解析で示された。Cancer Medicine誌オンライン版2019年9月1日号に掲載。  本研究は、8つのコホート研究における被験者である16万2,826人の男性が対象。喫煙および飲酒状況については喫煙歴・飲酒歴の有無で分類し、喫煙量と飲酒量についてはpack-yearと1日飲酒量で3つに分類した。各研究における喫煙と飲酒の影響をCox回帰モデルで推定した。研究ごとの結果をメタ解析により結合させ、ハザード比(HR)の統合効果と、加法的および乗法的スケールによる相互作用を検討した。喫煙と飲酒の人口寄与割合(PAF)をこれらの曝露の分布と完全調整HRを用いて算出した。

日本初、RNAi治療薬オンパットロ発売

 トランスサイレチン型家族性アミロイドポリニューロパチーの治療薬として、日本における初のRNAi(RNA interference:RNA干渉)治療薬である、オンパットロ点滴静注2mg/mL(一般名:パチシランナトリウム)が9月9日に発売された。オンパットロは、Alnylam Japan(以下、アルナイラム)が国内で上市・販売する最初の製品である。  トランスサイレチン型家族性アミロイドポリニューロパチーは、トランスサイレチンというタンパク質(TTRタンパク質)を作る TTR遺伝子の変異が原因で生じる進行性の難治性疾患である。TTR遺伝子変異によりTTRタンパク質由来のアミロイド線維が形成され、末梢神経や心臓など全身の臓器・組織に蓄積して、治療困難な神経障害や心機能障害、自律神経障害等の多様な症状が現れる。

NT-proBNP高いと認知症リスクが2.5倍~久山町研究

 心疾患と認知症の関連が疫学研究で示唆されているが、血清NT-proBNP(N末端プロB型ナトリウム利尿ペプチド)値と認知症の関連を評価した前向き研究はほとんどない。今回、九州大学の永田 拓也氏らが久山町研究で調べたところ、血清NT-proBNPが300pg/mL以上では54pg/mL以下に比べて認知症リスクが2.5倍高いことが示された。Journal of the American Heart Association誌2019年9月3日号に掲載。  本研究の対象は、地域在住の認知症ではない60歳以上の日本人高齢者1,635人(女性57%、平均年齢±SD:70.8±7.7歳)で、10年間追跡調査した。

抗精神病薬持効性注射剤の治療継続に影響を及ぼす因子の検討

 抗精神病薬持効性注射剤(LAI)は、統合失調症患者の症状を軽減し、再発・再燃を防ぐための薬物治療として用いられる。藤田医科大学の谷口 美紘氏らは、LAIの治療継続に影響を及ぼす因子について検討を行った。Biological & Pharmaceutical Bulletin誌2019年第7号の報告。  対象は、2009年10月~2017年6月までに藤田保健衛生大学(現、藤田医科大学)においてリスペリドン、パリペリドン、アリピプラゾールを含むLAI治療を受けている統合失調症患者。6ヵ月間のLAI治療継続率を評価し、患者背景や投薬歴などの特徴を収集した。さらに、これまでの研究に基づき、LAI導入理由により、対象患者を2つのクラスターに分類した。

本邦初、心房細動による脳卒中を予防する「WATCHMAN左心耳閉鎖システム」発売

 ボストン・サイエンティフィック ジャパンは、本邦初となる左心耳閉鎖システム「WATCHMAN左心耳閉鎖システム」を2019年9月2日に発売した。本製品は、非弁膜症性心房細動による血栓形成の主な原因とされる「左心耳」を閉鎖し、脳卒中を予防する医療機器である。非弁膜症性心房細動で長期間の抗凝固薬の服用ができない患者に対して、1回の手技で心房細動による脳卒中を予防するという、新しい治療の選択肢を提供する。

2次予防のアスピリン、投与すべき患者は?~MAGIC試験

 心血管イベントの再発予防のための低用量アスピリンの使用は、リスク-ベネフィットのバランスに基づくべきである。今回、国際医療福祉大学臨床医学研究センター/山王病院・山王メディカルセンター脳血管センターの内山 真一郎氏らが、わが国の全国規模の多施設共同前向き研究であるMAGIC試験において、心血管疾患の既往のある患者のアスピリン長期使用による心血管イベントと出血イベントの発生率を調査した。その結果、虚血性脳卒中または一過性脳虚血発作、冠動脈疾患、複数の心血管疾患の既往のある患者ではベネフィットがリスクを上回っていたが、心房細動または静脈血栓塞栓症の既往のある患者ではリスクとベネフィットが同等であった。

日本の医療現場におけるリスペリドンLAIとジェネリックの選択モデリング

 日本では、統合失調症で入院する患者に対し、早期退院と地域ケアの提供を国として推奨している。ヤンセンファーマの中村 祐輔氏らは、日本の精神科病院における異なる退院計画の臨床的および経済的アウトカムについて分析を行った。Neurology and Therapy誌オンライン版2019年8月10日号の報告。  さまざまな退院計画について、患者の再発と病院の収入を比較するためシミュレーションを行った。4つの異なる退院計画(1、2、3ヵ月または4ヵ月以上)と病院の収入をモデル化する、異なるマルコフ連鎖からなる決定木を構築した。退院計画の一環としての外来患者に対する治療レジメンの変動もシミュレーションに含めた。とくに、リスペリドン持効性注射剤(RLAI)とリスペリドンのジェネリック医薬品(RIS GE)について検討を行った。

日本人てんかん患者に対するレベチラセタムの有効性と安全性

 レベチラセタムは、焦点性てんかんおよびてんかん重積状態の急性期治療に使用される忍容性の高い抗てんかん薬であり、随伴症状を伴う患者において第1選択薬として使用される。しかし、日本人てんかん患者におけるレベチラセタムの有効性および安全性に、血中レベチラセタム濃度がどのような影響を及ぼすかはよくわかっていない。神戸医療センターの関本 裕美氏らは、日本人てんかん患者におけるレベチラセタムの有効性と安全性に対する血中濃度の影響について分析を行った。Journal of Clinical Pharmacy and Therapeutics誌オンライン版2019年8月10日号の報告。

日本の小中学生におけるインフル予防接種の有効性

 インフルエンザワクチンの接種は、インフルエンザの発症予防や発症後の重症化の予防に一定の効果があるとされている。今回、東北大学の國吉 保孝氏らが、地域の小中学生における季節性不活化インフルエンザワクチン接種(IIV)の有効性について2シーズンで評価した結果が報告された。Human Vaccines & Immunotherapeutics誌オンライン版2019年8月19日号に掲載。  本研究は、公立小中学校の生徒における2012/13年および2014/15年シーズンのデータでの横断調査。調査地域における対象学年の全員にアンケートを配布し、得られた7,945人の回答を分析した。予防接種状況とインフルエンザ発症は、両親または保護者による自己申告式アンケートにより判断した。一般化線形混合モデルを用いて、学校および個人の共変量におけるクラスタリングを調整し、予防接種状況とインフルエンザ発症との関連についてオッズ比および95%信頼区間(CI)を計算した。

小児抑うつ尺度-日本語版の信頼性と妥当性

 うつ病は、個人だけでなく社会に大きな悪影響を及ぼす疾患であり、早期発見のための心理学的な評価ツールが求められる。久留米大学の大園 秀一氏らは、アップデートされた小児抑うつ尺度-日本語版(CDI-J)の信頼性および妥当性を評価し、うつ病検出のカットオフ値を設定するため検討を行った。Pediatrics international誌オンライン版2019年7月25日号の報告。  対象は、7~17歳の子供・青年465人。小・中学校の生徒および病院スタッフの子供たちより集められた群を対照群、小児心身外来および思春期精神科外来患者を外来患者群とした。両群のCDI-Jスコアを、バリマックス回転を用いた因子分析の対象とし、その後、測定不変性分析を行った。妥当性を評価するため、Youth Self Report(YSR)を実施した。外来患者群には、現在の抑うつ症状を診断するため、精神疾患簡易構造化面接法を実施した。うつ病発見のパフォーマンスを評価し、うつ病検出のカットオフ値を設定するため、ROC解析を実施した。