CLEAR!ジャーナル四天王|page:53

治癒切除不能な進行胃がんや再発胃がんに対するニボルマブの有用性(解説:上村直実氏)-758

話題となっている画期的な免疫チェックポイント阻害薬ニボルマブ(商品名:オプジーボ)は、2014年に悪性黒色腫に対する保険適用を取得し、その後、非小細胞肺がん・腎細胞がん・ホジキンリンパ腫・頭頸部がんおよびこの9月には胃がんに対する適応を取得した。さらに、食道がん・小細胞肺がん・肝細胞がん・子宮がん・卵巣がんなどに対して臨床治験中であり、多くの切除不能がん患者に対して福音を与えてくれる薬剤である。

One dose fit all!の限界(解説:後藤信哉氏)-757

いわゆるNOACs、DOACsの臨床開発に当たって、選択的抗トロンビン薬では有効性、安全性は薬剤の用量依存性と予測していた。開発試験の結果が出るまで、Xa阻害薬では出血合併症には用量依存性が少ないとの期待があった。急性冠症候群を対象とした第II相試験の結果を見て、抗Xa薬でも用量依存性に重篤な出血合併症が増加することを知って失望した。

脳卒中予防の重要性とアスピリンのインパクト!(解説:後藤信哉氏)-755

冠動脈疾患、脳血管疾患、末梢血管疾患は全身の動脈硬化と血栓性が局所臓器にて症状を発現した疾病である。世界から外来通院中の安定した各種動脈硬化、血栓性疾患6万8千例を登録、観察したREACH registry研究では、冠動脈疾患、脳血管疾患、末梢血管疾患ともに年間の脳卒中の発症が最大の問題であることを示した。脳卒中の発症率が最も低い冠動脈疾患でも脳卒中発症率は年間1.6%であり、実臨床における新規に診断された心房細動症例の脳卒中発症率と同程度であった。価格の高い新薬を特許期間内に売り切ろうとするのか、年間3%程度に重篤な出血イベントを惹起することが第III相試験にて確認されている経口抗トロンビン薬、抗Xa薬がNOACs、DOACsなど非科学的なネーミングにより非弁膜症性心房細動に広く使用されているのは筆者の驚くところである。非弁膜症性であっても心房細動を合併すれば近未来の脳卒中リスクは増える。しかし、すでに脳卒中を発症した症例の再発率ほど発症リスクが高くなるわけではない。年間3%という重篤な出血合併症というコストに見合う効果を、非弁膜症性心房細動の脳卒中1次予防にて示した臨床研究は過去に施行されていない。同じく年間3%以上の重篤な出血性合併症を惹起する、INR 2~3を標的とした、現実の医療とは乖離した過去の「仮の標準治療」より出血が少ないといっても、年間3%以上の重篤な出血合併症は1次予防にて受け入れられる水準ではない。

低酸素血症のない脳卒中急性期患者に酸素投与は推奨できない(解説:内山真一郎氏)-754

低酸素は、脳卒中発症後数日間にはよく起こるが、間欠的なことが多く、気づかれないこともある。酸素補給は低酸素や脳卒中症状悪化を予防しうるので、回復を改善する可能性がある。本研究は、通常の予防的な低用量の酸素補給が90日後の死亡と後遺症を減らすかどうか、またもしそうなら低酸素がもっとも多く起こり、酸素投与がリハビリテーションの邪魔をしない、夜間だけの酸素補給が持続的な補給よりいいのかを評価することを目的として行われた。

卵円孔開存は問題か?(解説:後藤信哉氏)-753

胎児循環では心房中隔の一部としての卵円孔は開存している。出生とともに閉じるのが一般的である。剖検例を詳細に検討すると、20%程度の症例には機能的卵円孔開存を認めるとの報告もある。経食道心エコーでは心房の血流の詳細な検討が可能である。バブルを用いたコントラスト法により機能的卵円孔開存の診断精度も向上した。原因不明の脳梗塞の一部は、静脈血栓が開存した卵円孔を介して左房・左室と移動した血栓が原因と考えられた。とくに、出産時、潜水時などに比較的若いヒトに起こる脳塞栓には卵円孔開存を原因とするものが多いと想定された。

既存の抗アレルギー薬が多発性硬化症の慢性脱髄病変を回復させるかもしれない(解説:森本悟氏)-752

多発性硬化症(multiple sclerosis:MS)は若年成人に発症し、重篤な神経障害を来す中枢神経系の慢性炎症性脱髄性疾患である。何らかの機序を介した炎症により脱髄が起こり、軸索変性が進行する。急性炎症による脱髄病変には一部再髄鞘化が起こるが、再髄鞘化がうまくいかないと慢性的な脱髄病変となり、不可逆的な障害につながる。現在MSの治療は急性炎症の抑制、病態進行抑制が中心であり、慢性脱髄病変を回復させる治療はない。これまでの研究で、第一世代の抗ヒスタミン薬であるクレマスチンフマル酸(clemastine fumarate:CF)が、前駆細胞(oligodendrocyte precursor cell:OPC)からオリゴデンドロサイトへの分化促進、髄鞘膜の伸展、マイクロピラーの被覆、を介した再髄鞘化効果を有することが、疾患動物モデルにより証明されている。

血小板機能検査に基づく抗血小板療法の調節は意味がない?(解説:上田恭敬氏)-751

本試験(TROPICAL-ACS)は、急性冠症候群(ACS)に対してPCIを施行した症例(2,610症例)を対象として、抗血小板薬2剤併用療法(DAPT)の2剤目の薬剤を、プラスグレル(添付文書およびガイドラインに従って10mgまたは5mg/日)12ヵ月間とする対照群(control group)と、プラスグレル1週間、その後クロピドグレル(75mg/日)1週間、さらにその後は血小板機能検査の結果に基づいてプラスグレルかクロピドグレルを選択する調節群(PFT-guided de-escalation group)に無作為に割り付け、12ヵ月間の心血管死亡、心筋梗塞、脳卒中、BARC分類class 2以上の出血を主要評価項目として比較して、調節群の非劣性を検討している多施設試験である。

Z0011試験長期観察データ-腋窩非郭清でも10年全生存率は変わらない(解説:矢形寛氏)-750

ACOSOG Z0011試験の約5年のデータは、すでに2010年、2011年に論文報告されており、乳房温存療法で術後放射線治療および全身治療を行うことを前提とした場合、センチネルリンパ節生検で1~2個の転移があっても、郭清した場合と非郭清の場合で領域再発率、全生存率ともまったく変わらなかった。この試験結果からASCOおよびNCCNガイドラインともに腋窩郭清をすべきではないという推奨となっている。

郵送による受診推奨が大腸がんスクリーニングの完遂率を向上する(解説:上村直実氏)-749

本研究は、米国において大腸がん検診の完遂率を高める方法を比較検討したものである。50~64歳の検診未受診者を、検便キット郵送群(便潜血検査キットと返送用封筒を郵送し、2週以内に返送がなければスタッフが電話する方法)、郵送型大腸内視鏡検査群(大腸内視鏡検査の予約電話番号を記載した案内状を郵送し、2週以内に電話がなければスタッフが直接電話する方法)、および通常ケア群(外来受診時に推奨された検査を受ける方法)の3群に無作為に割り付け、3年間追跡した結果、検診の完遂率は、通常ケア群(10.7%)、検便キット郵送群(28%)、郵送型内視鏡検査群(38.4%)の順に高率であり、病変の発見率も同様であった。すなわち、内視鏡検査の案内状の郵送が検診の完遂率や病変の発見に寄与する結果であった。

複合血管スクリーニングで死亡リスク7%低下:VIVA試験(解説:中澤達氏)-747

デンマークの中央ユラン地域に在住する65~74歳のすべての男性約5万例を対象とした無作為化比較試験「VIVA試験(Vibrog Vascular trial)」で腹部大動脈瘤、末梢動脈疾患および高血圧に関する複合血管スクリーニングは、5年全死因死亡率を7%有意に低下させることが明らかになった(ハザード比:0.93[95%信頼区間:0.88~0.98、p=0.01])。これまで地域住民を対象とした集団スクリーニングに関する文献で死亡リスクの低下が確認されたことはない。特筆すべきことは、糖尿病、脳内出血、腎不全、がんの発症、または心血管外科手術後30日死亡が両群で有意差は確認されず、喫煙者を除外した事後解析でも結果はほぼ同じで薬物療法開始の効果と推測されることである。

血尿よ、お前もか!-抗血栓薬は慎重に(解説:桑島巖氏)-748

最近、循環器領域の疾患では、直接作用型経口抗凝固薬(DOAC)や抗血小板薬を処方する傾向が顕著になっている。確かに脳卒中や心筋梗塞予防効果はあることはあるが、そのウラ側にある有害事象のことも考えてほしいというのが本研究のメッセージである。抗血栓薬処方の爆発的な増加には企業の激しい宣伝合戦も影響しているかもしれないが、ここで一歩立ち止まって考える必要がありそうだ。言うまでもないことではあるが、抗血栓薬は血栓を予防して梗塞性イベントを防ぐ一方で、大出血という重大な有害事象を発生することも、あらためて認識する必要がある。

リバーロキサバンの安定型冠動脈疾患に対する効果(解説:高月誠司氏)-745

本研究は、抗Xa薬リバーロキサバンの冠動脈疾患患者に対する心血管イベントの2次予防効果を検証した二重盲検試験である。2万7,395例の安定した冠動脈疾患患者を対象とし、リバーロキサバン2.5mg 1日2回+アスピリン100mgの併用群、リバーロキサバン5mg 1日2回単剤群、アスピリン100mg単剤群の3群に無作為割り付けした。主要評価項目は心血管死、脳卒中、心筋梗塞の複合エンドポイントで、平均23ヵ月の追跡期間である。

流行性耳下腺炎アウトブレイク時のMMRワクチン追加接種の有効性(解説:小金丸博氏)-744

流行性耳下腺炎(ムンプス)は、ワクチンで予防可能なウイルス疾患である。米国では麻疹・ムンプス・風疹混合ワクチン(MMRワクチン)の2回接種がワクチンプログラムに組み込まれており、ムンプス症例は2005年までに99%減少したが、近年も数千人規模のアウトブレイク事例が報告されている。ムンプスのアウトブレイクは、90%以上がきちんとワクチンの2回接種を済ましている大学生の間でも、たびたび報告されている。アウトブレイクを制御するための手段の1つにMMRワクチン3回目の追加接種が挙げられるが、この方法の有効性は明確になっていなかった。

エキセナチドの週1回製剤とリラグルチドの週1回製剤は異なる作用を持つのだろうか…?(解説:吉岡成人 氏)-743

GLP-1受容体作動薬であるリラグルチドとリラグルチドの週1回製剤であるセマグルチドは、LEADER(Liraglutide Effect and Action in Diabetes: Evaluation of Cardiovascular Outcome Results)、SUSTAIN-6(Trial to Evaluate Cardiovascular and other Long-Term Outcomes with Semaglutide in Subjects with Type2 Diabetes)の2つの臨床試験により、心血管イベントに対して一定の抑制効果があることが示されている。「GLP-1受容体作動薬」そのものにGLP-1を介した心血管イベント抑制の効果があるのではないかと考えられていたのだが、エキセナチド徐放剤(商品名:ビデュリオン、エキセナチドをマイクロスフェアに包埋し持続的に放出する製剤)の週1回投与では心血管死、心筋梗塞、脳卒中を抑止する効果が認められなかったとする報告がなされた。

エイズ治療薬:横綱同士の優勝決定戦(解説:岡慎一氏)-742

先に報告したGS-US-380-1489試験は、ともに1日1回1錠で治療できる合剤同士(bictegravir/エムトリシタビン/テノホビル・アラフェナミド vs.ドルテグラビル/アバカビル/ラミブジン)のRCTであったが、今回の試験は、bictegravirの合剤とドルテグラビル+エムトリシタビン/テノホビル・アラフェナミドの2剤の治療を比較するRCTである。

エイズ治療薬:横綱同士のQD本割り決戦(解説:岡慎一氏)-741

2000年以降のエイズ治療薬の進歩は著しく、いまや1日1回1錠を飲めば、HIV感染者の余命は、一般人とほぼ同じである。先進国で、この10年間の治療薬の変遷をみると、当時はプロテアーゼ阻害薬(PI)が治療の中心であった。しかし、PIは他剤との相互作用が問題になることや、副作用として脂質や糖代謝異常が起こり、それが原因での心筋梗塞が増加することが明らかになり、この数年は今回の試験薬であるインテグラーゼ阻害薬(INSTI)がよく用いられている。

炭水化物過剰摂取は全死亡を増やすが心血管病発症に影響せず(解説:島田俊夫氏)-740

生活習慣病は文字通り生活の悪習が原因で発症する病気で、発症を抑えるためには生活習慣の改善が必要不可欠である。生活習慣の基本は食および運動習慣の改善に尽きる。その中でも、食習慣は健康維持に最も重要である。食に関しては多くの論文報告があるが、その多くが欧米のデータに基づいており、食習慣の異なる国・地域に対して、これまでの成果を短絡的に敷衍できるか不明な点も多い。とくに、欧米に比べて全食事カロリーに占める炭水化物の比率が高いアジア諸国の人々に対して、これまでの成果を適用しうるか否かは疑問の多いところである。Lancet誌の2017年8月29日号で、カナダ・マックマスター大学のMahshid Dehghan氏らが、5大陸18ヵ国の全死亡・心血管疾患への食の影響を検討した大規模前向きコホート研究(PURE)の成果を報告した。本論文は幅広い国・地域集団をカバーするデータ解析に基づく興味深い論文であり、私見をコメントする。

米国で経鼻弱毒生インフルエンザワクチンが非推奨へ変更された理由(解説:小金丸博氏)-739

米国では2003年より、経鼻タイプの弱毒生インフルエンザワクチンが導入された。経鼻弱毒生ワクチンは一般的な不活化ワクチンと比べて予防効果が高いとされ、とくに小児領域で高い評価を受けてきた。日本でも2016年に承認申請が出され、国内での流通開始が待ち望まれていたワクチンだったが、米国予防接種諮問委員会(ACIP)は一転「2016-17年シーズンの弱毒生インフルエンザワクチンの接種を推奨しない」と勧告した。本論文を読むことで、経鼻弱毒生ワクチンが非推奨へ変わった理由を知ることができる。