CLEAR!ジャーナル四天王|page:48

高度異型腺腫の有無で大腸がんリスクが有意に異なる(解説:上村直実氏)-868

日本で大腸がんは肺がんに次いで2番目に多い死亡原因であり、大腸がんによる死亡リスクを低下するために便潜血による大腸がん検診が施行されている。一方、欧米では、大腸内視鏡検査(CF)を行うことにより大腸がんによる死亡率およびその発症率が低下する研究成果が数多く報告され、最近では死亡リスク低下に必要なCFの間隔が話題になっている。米国のガイドラインでは、10年に1度のCFにより大腸がん死亡リスクが大幅に低下するとされており、大腸がんスクリーニングにCFを取り入れるべきで、ポリープ(腺腫)があれば5~10年後のCFが推奨されている。

新薬と旧薬の絶妙な組み合わせにより費用対効果を高める ~医療技術評価(HTA)の観点から(解説:中澤達氏)-866

股関節および膝関節の人工関節全置換術後にリバーロキサバンの術後5日投与を受けた患者では、その後アスピリンに切り替えても、リバーロキサバンを継続した場合と比較して、症候性静脈血栓塞栓症の予防効果に差はないことが明らかとなった。アスピリンは、安価で、副作用プロファイルが十分に確立されており、医療技術評価(health technology assessment:HTA)の点から大変興味深い結果だ。

これはいける!と思ったのに:ESUSの意外な失敗(解説:後藤信哉氏)-864

薬剤として経口抗Xa薬が開発された当時、標的疾患としては「脳梗塞2次予防がよい」と各社にアドバイスした。冠動脈疾患、心房細動より、脳梗塞中の再発リスクが高く、新規の抗血栓薬が必要と思ったからである。脳梗塞の病態は複雑である。微小血管病と想定されるラクナ梗塞、抗血小板薬が有効なアテローム血栓性閉塞では、抗凝固薬は役立たないのではないかとの意見もあった。心房細動の脳卒中予防試験も、予防対象は「脳卒中・全身塞栓症」で心原性塞栓ではなかった。

FAME2試験の5年追跡結果が発表、安定冠動脈疾患へのPCI施術の妥当性(中川義久 氏)-865

FAME2試験の5年追跡の結果がパリで開催されたPCR2018で発表され、NEJM誌に同時掲載された。FAME2試験は、PCI施行予定の安定冠動脈疾患において、FFR値0.8以下で定義される機能的虚血を有する場合に、PCI+至適薬物治療を行った場合と、至適薬物治療のみの場合をランダマイズし比較した研究である。

24時間自由行動下血圧は外来血圧よりも優れた予後予測指標である(解説:石川讓治氏)-863

24時間自由行動下血圧が、外来血圧や家庭血圧よりも優れた心血管イベントの予測因子であることが多くのコホート研究で報告されてきたが、本研究は、スペインの実地診療の中で測定された6万3,910名にも及ぶ多数の患者登録データを用いて、24時間自由行動下血圧が外来血圧よりも優れた総死亡や心血管死亡の予測因子であったことを追試した。

急性単純性膀胱炎に対するガイドライン推奨治療の比較試験(解説:小金丸博氏)-860

膀胱炎に代表される尿路感染症はとてもありふれた感染症であり、とくに女性では一生涯で半数以上が経験すると言われている。膀胱炎に対して世界中で多くの抗菌薬が処方されることが薬剤耐性菌出現の一因になっていると考えられており、2010年に米国感染症学会(IDSA)と欧州臨床微生物感染症学会(ESCMID)は「女性の急性単純性膀胱炎および腎盂腎炎の治療ガイドライン」を改訂した。このガイドラインでは、急性単純性膀胱炎に対する第1選択薬としてnitrofurantoin monohydrateやfosfomycin trometamolなどを推奨しており、これらの薬剤の使用量が増加してきているが、治療効果を比較したランダム化試験はほとんど存在しなかった。

認知症に対する運動介入の息の根が止められたのか?(解説:岡村毅氏)-859

非常に大規模に、そしてほかの要因が交絡しないように厳密に、運動介入が認知症の人の認知機能に及ぼす効果を調べたら、なんと効果がないどころか通常のケアに負けたという報告である。通常のケアより優位であったのは「一定時間内に歩く距離」というのも微妙だ。1年も激しく運動すれば足は鍛えられるだろう。

ドクターXを探せ?(解説:今中和人氏)-858

この論文はさまざまな科の20術式について、非待期的(入院後3日以内)に手術が行われた症例の手術死亡率(在院死亡+30日以内の死亡)と術者の年齢・性別との関連を検討している。対象は4年間の全米のMedicare受給者の89万例で、49%が整形外科手術、38%が一般外科手術、12%が心臓血管外科手術、1%がその他の手術だった。

僧帽弁閉鎖不全症は予後は必ずしも良好ではなく過小治療の傾向がある(解説:今井靖氏)-857

心臓弁膜症は心臓疾患の中では古くからその病態生理が検討され、心臓外科手術、とくに人工弁置換術の術式が確立することに加えて、心臓超音波検査法の進歩と相まって今日の診療の枠組みが構築された。2014年に国内で6万6,453件の心臓外科手術が行われているが、そのうち2万1,939件が弁膜症であり、大動脈弁狭窄に対する弁置換と僧帽弁閉鎖不全に対する形成術の比率が増えており、それら疾患の増加が読み取れる。最近は大動脈弁狭窄症にTAVIというカテーテル治療が登場し、僧帽弁閉鎖不全にもカテーテルを用いてクリップを僧帽弁にかけるMitraClipという治療法が日本でも始まろうとしている。このような時期において一般集団における僧帽弁閉鎖不全の頻度と外科治療の実施状況、予後などについて必ずしも明らかではなかった。本邦の検討ではないが、米国からのこの論文は示唆に富むものと考えられる。

SGLT2阻害薬は死亡率、心血管イベントの低減に最も有用(解説:吉岡成人氏)-856

糖尿病の治療薬の選択に対して、日本糖尿病学会では患者の病態に応じて薬剤を選択することを推奨しているが、米国糖尿病学会ではメトホルミンを第一選択薬とし、心血管疾患の既往がある患者では、SGLT2阻害薬ないしはGLP-1受容体阻害薬を併用することを推奨している。その背景には、EMPA-REG OUTCOME試験、CANVASプログラム、LEADER試験、SUSUTAIN-6などの臨床試験によって、これらの薬剤が心血管イベントに対して一定の抑制効果を示したことが挙げられる。

線溶薬の種類と役割:脳と心臓は違うのかな?(解説:後藤信哉氏)-853

脳梗塞、心筋梗塞とも臓器灌流血管の血栓性閉塞による。閉塞血栓を溶解し、臓器血流を再開させれば虚血障害は改善されると予想される。心臓ではフィブリン特異性のないストレプトキナーゼによる心筋梗塞急性期死亡率の減少が大規模ランダム化比較試験にて示され、線溶薬は1970~80年代にブームとなった。損傷、修復を繰り返す血管壁に、線溶を過剰作用させると出血する。心筋梗塞急性期の線溶療法では、頭蓋内出血が問題となった。この問題はフィブリン選択性の高いt-PA、さらに理論上フィブリン選択性をもっと向上させて薬剤を使っても解決できなかった。救急車での搬送中に線溶療法をして再開通が起こると、心室細動などの不整脈も起こることがわかって、心臓領域における線溶療法は廃れた。日本のように医療アクセスのよい国では、圧倒的多数の急性心筋梗塞は急性期にカテーテル治療により再灌流を受ける時代となった。

治療前のLDL-コレステロール値でLDL-コレステロール低下治療の効果が変わる?(解説:平山篤志氏)-852

2010年のCTTによるメタ解析(26試験、17万人)でMore intensiveな治療がLess intensiveな治療よりMACE(全死亡、心血管死、脳梗塞、心筋梗塞、不安定狭心症、および血行再建施行)を減少させたことが報告された。ただ、これらはすべてスタチンを用いた治療でLDL-コレステロール値をターゲットとしたものではないこと、MACEの減少も治療前のLDL-コレステロール値に依存しなかったことから、2013年のACC/AHAのガイドラインに“Fire and Forget”として動脈硬化性血管疾患(ASCVD)にはLDL-コレステロールの値にかかわらず、ストロングスタチン使用が勧められる結果になった。

“2008年rosiglitazoneの呪い”は、いつまで続くのか?(解説:石上友章氏)-851

2008年12月18日に、米国食品医薬品局が出した通達によって、以後抗糖尿病薬については、心血管イベントをアウトカムにしたランダム化臨床試験(CVOT)を行うことが、義務付けられた。以来、これまでに抗糖尿病薬については、複数のCVOTが行われて発表されている。従来薬のCVOTの結果が非劣性にとどまることが多かったのに対して、SGLT2阻害薬を対象にしたEMPA-REG OUTCOME試験では、試験薬であるエンパグリフロジン群に、心血管複合エンドポイント(心血管死、心筋梗塞、脳卒中)を有意に抑制する効果が証明された(エンパグリフロジン、心血管死リスクを有意に低下/NEJM)。心血管死については、約40%もの抑制が認められ、一躍脚光を浴びた。言うまでもなく、先行薬であるrosiglitazoneのもたらした教訓が、すべての抗糖尿病薬についてのCVOTを義務化させたと考えられている。

思い込みを正すことは難しい:MRIとペースメーカーの場合(解説:香坂俊氏)-849

あるとき誰かが思った。「MRIは強力な磁場を発生させるから、電子機器であるペースメーカーやICDには当然よくないだろう」。MRIでは磁場を発生させて水素分子の「回転」を計測する。しかし、体内に金属性のペースメーカーがあると、強力な磁場を周囲で発生させて先端のリード部分が熱を持ってしまう。すると「心筋への電気伝導に問題がおきるのではないか?」という危惧は当然出ることになる。また、ペースメーカーやICDのジェネレーターは、実は磁石を上に置くとスイッチオフ(※)できるようになっているので、「ジェネレーター部分のプログラムに異常が発生するのではないか?」という心配もある。