PCIは非急性冠動脈疾患の死亡率を改善しない

提供元:ケアネット

印刷ボタン

公開日:2009/03/26

 



非急性冠動脈疾患の治療では、カテーテルベースの治療法による死亡や心筋梗塞の抑制効果が薬物療法よりも優れることを示すエビデンスはないことが、アメリカTufts医療センター臨床試験・健康政策研究所のThomas A Trikalinos氏らが行ったメタ解析で明らかとなった。1977年、Andreas Gruntzig が経皮的冠動脈インターベンション(PCI)の開発によって冠動脈疾患の治療に革命的な進歩をもたらして以来、アメリカでは毎年100万人以上の患者がPCI治療を受けているが、この中には非急性期の患者も多く含まれるという。急性冠症候群やST上昇心筋梗塞ではPCIの有用性が確立されているが、非急性期に対する効果については議論が続いている。Lancet誌2009年3月14日号掲載の報告。

インターベンション治療と薬物療法の無作為化試験の系統的オーバービュー




研究グループは、非急性冠動脈疾患を対象に経皮的冠動脈形成術(PTCA)、ベアメタルステント(BMS)、薬剤溶出性ステント(DES)、薬物療法を比較した無作為化試験について系統的オーバービューを行った。

4つの治療法のうち2つ以上について比較した試験をMedlineで検索した。解析の対象は、死亡、心筋梗塞、冠動脈バイパス移植術、標的病変あるいは標的血管の再血行再建術(TLR/TVR)、あらゆる再血行再建術をアウトカムとする試験とした。変量効果メタ解析でhead-to-head比較試験を評価し、ネットワークメタ解析で直接的エビデンスと間接的エビデンスの統合解析を行った。

非急性期の初回治療は薬物療法とすべき




4つの治療法のうち2つを比較した4種類の組み合わせ(PTCA vs. 薬物療法:7試験、BMS vs. PTCA:34試験、BMS vs. 薬物療法:4試験、DES vs. BMS:18試験)について検討した63の試験(2万5,388例)が適格基準を満たした。DESと薬物療法、DESとPTCAを直接比較した試験はなかった。

すべての直接比較、間接比較において、PCIの進歩は死亡や心筋梗塞の改善には結びついていなかった。DESと薬物療法の間接比較では、死亡のリスク比は0.96(95%信頼区間:0.60~1.52)、心筋梗塞のリスク比は1.15(同:0.73~1.82)であり、いずれも有意差を認めなかった。対照的に、直接比較におけるTLR/TVRのリスク低減効果は、BMSがPTCA に比べ有意に優れ(リスク比:0.68)、DESはBMSよりも有意に優れた(同:0.44)。また、間接比較では、DES がPTCAよりもTLR/TVRのリスク低減効果が有意に優れた(同:0.30)。

著者は、「非急性期冠動脈疾患においては、カテーテルベースの治療の技術革新が、薬物療法と比較して死亡や心筋梗塞の抑制効果に優れるとのエビデンスはない」と結論し、「今回の結果は、非急性期の初回治療戦略は至適な薬物療法とする現在の勧告を支持するもの」としている。

(菅野守:医学ライター)