悪性神経膠腫に関するゲノムワイド変異解析

提供元:ケアネット

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公開日:2009/03/04

 



原発性脳腫瘍で最も多い神経膠腫(グリオーマ)について、ゲノムワイド変異解析によって、特定の遺伝子変異が腫瘍の進行に関わっていることが明らかにされた。米国デューク大学メディカルセンターのHai Yan氏らによる報告は、NEJM誌2009年2月19日号で掲載されている。

膠芽腫の一部遺伝子(IDH1、IDH2)変異について調査




Yan氏らは先に、世界保健機関(WHO)準拠のグレードⅣの神経膠腫(膠芽腫)に関するゲノムワイド変異解析の結果、膠芽腫の一部でイソクエン酸デヒドロゲナーゼ1型遺伝子(IDH1)の変異が見られること、それら変異は、2次性膠芽腫(悪性度が低いものから進行した神経膠腫)で最も高頻度に認められることを報告している。本試験は、さまざまなタイプの多数の神経膠腫を分析することによって、IDH1変異の関わりについて明らかにすることを目的に行われた。

試験方法は、IDH1および関連遺伝子であるIDH2の配列を、中枢神経系(CNS)腫瘍445個とCNS以外の腫瘍494個にて決定。それら遺伝子を導入し培養した神経膠腫細胞を用いて、正常なIDH1とIDH2、および変異IDH1とIDH2の産生蛋白の酵素活性を調べた。

遺伝的特性と臨床的特性があることを確認




その結果、WHO準拠のグレードⅡとⅢに類する星細胞腫と乏突起細胞膠腫、およびより悪性度が低い病変から進行した膠芽腫の70%超で、IDH1のアミノ酸132番に影響を及ぼした突然変異が確認された。

一方、IDH1の変異が見られない腫瘍ではしばしば、IDH2のアミノ酸類似体(R172)に影響を及ぼした突然変異が確認された。

またIDH1、IDH2のどちらかが変異した腫瘍には、遺伝的特性と臨床的特性があること、それらの腫瘍を有する患者は、野生型IDHを有する患者よりも、転帰が優れることも確認されている。

さらに、試験が行われた4種類のIDH1、IDH2変異いずれにおいても、コードしている蛋白の酵素活性は低下しており、検討した数種類の悪性神経膠腫で変異が生じていることが確認された。

(武藤まき:医療ライター)