医薬品価格が高すぎて治療を受けられない現実明らかに、低~中所得国

提供元:ケアネット

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公開日:2009/01/29

 



低~中所得国では、先発および後発(ジェネリック)医薬品の価格が国際基準価格に比べかなり高価なことが、A Cameron氏ら世界保健機構(WHO)と国際保健医療活動団体(HAI)の共同研究で明らかとなった。健康関連の支出のうち医薬品が占める割合は、経済協力開発機構(OECD)加盟国の18%に対し開発途上国では20~60%にも達するという。途上国人口の90%が医薬品を自己負担で購入しており、その結果として医薬品は適正価格よりも高価となり、国家予算の大きな負担となっている。Lancet誌2009年1月17日号(オンライン版2008年12月1日号)掲載の報告。

サーベイのデータを医薬品調達の国際基準価格と比較




WHOとHAIは、低~中所得国における医薬品の価格、その利用状況、適正価格化に関する標準化された評価法を開発した。研究グループは、このWHO/HAI法を用いて45の国と地域で実施した医薬品使用状況のサーベイに関する第2回目の解析結果について報告した。

36ヵ国で実施された45のWHO/HAIサーベイのデータを、各地域経済のインフレーション、デフレーションの状況または購買力平価(purchasing power parity)で補正し、15の医薬品について解析した。比較対象には、公開されている後発医薬品の国際的な調達における国際基準価格を用いた。

最安値の後発医薬品でも国際基準価格の9~25倍




WHOの調査地域では、後発医薬品の公費負担の割合は29.4~54.4%であった。15の後発医薬品の政府調達価格(中央値)は、国際基準価格の1.11倍であったが、購入効率には0.09~5.37倍の幅が見られた。

調達価格が低くても患者の購入価格が低いとは限らなかった。WHO調査地域の患者負担分では、最安値の後発医薬品に国際基準価格の9~25倍が支払われており、先発医薬品に至っては20倍以上が支出されていた。

大多数の国では、急性疾患および慢性疾患の治療費用はほとんどが高価で手の届かないものであった。患者負担分では、卸値の価格上乗せ幅が2~380%であったのに対し、小売値の上乗せ幅は10~552%であった。医薬品に課税する国では税率に4~15%の幅が見られた。

著者は、「先発医薬品、後発医薬品の公費負担価格、患者負担価格はともに、調達や流通が効率的に行われ、上乗せ分が適正な場合に見込まれる価格に比べ実質的に高価であった」と結論し、「医薬品の利用状況を向上させ、価格を抑制して購入しやすい適正価格を実現するには、後発医薬品の育成や新たな資金調達の仕組み作りを推進するなどの政策の選択肢が必要」としている。

(菅野守:医学ライター)