「レッドツェッペリン病」?:やっぱりヘビメタは脳によくない

提供元:ケアネット

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公開日:2009/01/16

 



ヘッドバンギングはヘビーメタルやハードロック音楽の一般的なダンス形式で、ビートにあわせて頭部を激しく振る行為を繰り返す。そのテンポが激しいと頭頸部傷害のリスクが増大することが、オーストラリアNew South Wales大学Risk and Safety ScienceのDeclan Patton氏らの調査で明らかとなった。同氏は、この知見に基づいて、ヘビメタファンが普段ぼんやりしていたり、でたらめなことを口にする原因を説明できるとし、脳傷害のリスクを最小限にする対策を提言している。BMJ誌2008年12月20日号(クリスマス特集号)掲載(オンライン版2008年12月17日号)の報告。

理論モデルを構築、首振り角度とテンポで傷害リスクを評価




ヘッドバンギングの起源は、1968年、イギリスのハードロックバンド・レッドツェッペリンが行った初のアメリカツアーだという。ボストンの会場で最前列の聴衆が音楽に合わせて頭を振ったとき、「ヘッドバンガー」ということばが生まれた。これまでに、ヘッドバンギングが頭頸部傷害の原因となる可能性を示唆する症例がいくつか報告されている。

研究グループは、ヘッドバンギングによる軽度の外傷性脳傷害および頸部傷害のリスクを評価するために、ヘッドバンガーを対象とした観察研究および生体力学的な解析を行った。

頭部傷害度(HIC)および頸部傷害度(NIC)を算定する理論モデルを構築した。ヘッドバンガーに一般的なヘビメタ曲とイージーリスニング曲(対照)を聴いてもらい、首振りの角度別にHIC、NICと首振りのテンポ(ビート/分)によって頭頸部傷害のリスクがどう変化するかを評価した。

AC/DCに“Moon River”をリクエストしよう




ヘッドバンギング曲による首振りのテンポの平均値は146ビート/分であった。モデル解析では、146ビート/分のテンポで首振りの角度が75度以上になると軽度の脳傷害の症状が現れると予測された。頸部傷害は、146ビート/分で首振りの角度が105度以上となった場合に発生することが示唆された。

著者は、「損傷を最小限にするには、ヘッドバングするときは1)首振りの角度を小さくする、2)ヘビメタの代わりにAOR(大人向けロック)などテンポの遅い曲にする、3)1ビート毎ではなく2ビートに1回にする、4)保護具を装着するなどの対策をとるべき」と結論している。

具体的には、代表的なヘビメタバンドであるAC/DCに“Highway to Hell”の代わりに“Moon River”を演奏してもらうという、あまり現実的とは思えない案のほか、タバコのパッケージのようにCDなどにヘッドバンギングの危険性を訴える警告文を載せる案も提言している。

(菅野守:医学ライター)