適切な抗マラリア薬併用療法はどれか?

提供元:ケアネット

印刷ボタン

公開日:2008/12/24

 



抗マラリア薬併用療法はこれまで「クロロキン」をベースとしたものだったが、耐性が進み、「アーテミシニン」をベースとした新たな治療戦略がWHOによって推進されている。しかし、有効な対策には地域性を考慮した治療戦略が欠かせない。複数種のマラリア原虫が存在し年間を通して深刻な感染が見られるインドネシア・パプアニューギニアでは、どのような抗マラリア薬併用療法が適切か?
 西オーストラリア大学医学・薬理学校のHarin A. Karunajeewa氏らは、従来療法とアーテミシニン系合剤ベースの3つの療法、計4つの療法に関するオープンラベル無作為化並行群間比較試験を行い、適切な治療戦略を検討した。NEJM誌2008年12月11日号(オンライン版2008年12月8日号)より。

従来療法含む4療法を比較検討




比較検討したのは、「クロロキン+スルファドキシン/ピリメタミン」(CQ-SP)従来療法と、「artesunate+スルファドキシン/ピリメタミン」(ARTS-SP)療法、「dihydroartemisinin+piperaquine」(DHA-PQ)療法、「artemether+lumefantrine」(AL)療法の4療法。2005年4月~2007年7月に、熱帯熱マラリア(原虫:Plasmodium falciparum)もしくは三日熱マラリア(原虫:P. vivax)に罹患したパプアニューギニアの生後6ヵ月~5歳児を対象に実行された。

主要エンドポイントは、熱帯熱マラリア患児への治療開始後42日時点の臨床的・寄生虫学的奏効率、副次エンドポイントは三日熱マラリアへの治療開始後42日時点の同奏効率とした。

熱帯熱マラリアにはAL療法、三日熱マラリアにはDHA-PQ療法




発熱が見られスクリーニングを行ったのは2,802例。このうち熱帯熱マラリアは482例、三日熱マラリアは195例だった。

熱帯熱マラリアに対する奏効率が最も高かったのは、AL療法(95.2%)だった。従来療法は81.5%(P=0.003)、ARTS-SP療法は85.4%(P=0.02)、DHA-PQ療法は88.0%(P=0.06)となっている。

三日熱マラリアに対する奏効率が最も高かったのは、DHA-PQ療法(69.4%)で、その奏功率は他の3療法より2倍以上高かった。

安全性の指標である皮疹の発現率については、ARTS-SP療法、DHA-PQ療法で従来療法より高かったことが報告されている(P=0.004)。

(武藤まき:医療ライター)