2型糖尿病の強化血糖コントロールのベネフィットは10年間持続:UKPDS

提供元:ケアネット

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公開日:2008/10/22

 



英国糖尿病前向き研究(UKPDS)では、試験期間中に登録患者を従来の食事療法群と強化血糖療法群に割り付けた結果、強化療法群のほうが血糖値は改善されることが示された。この効果と差異が試験終了後も維持されるかどうか、長期間追跡調査し検証していたオックスフォード大学チャーチル病院の糖尿病研究班Rury R. Holman氏らは「血糖値の差異は1年で消失する。しかし微小血管のリスク低下は10年後も継続しており、心筋梗塞と全死因死亡のリスク低下をもたらしている」と報告した。NEJM誌2008年10月9日号(オンライン版2008年9月10日号)より。

食事療法群と強化療法群に無作為割付された3,277例を10年間追跡




新たに2型糖尿病と診断されたUKPDS登録患者5,102例のうち、4,209例を、血糖コントロールのために、従来治療群(食事制限)と、強化治療群(SU剤またはインスリン投与、肥満患者にはメトホルミン投与)へ無作為に割り付けた。試験終了後、患者3,277例を10年間モニタリングした。患者は試験終了から5年間、UKPDSで通った病院に毎年通院するよう指示されたが、試験で割り付けられた治療は継続されていない。また当初5年の間に通院できなかった患者は、患者と一般医による年1回の記述式アンケートで経過観察し、6年目から10年までは、すべての患者に年1回のアンケート調査を行った。その結果を踏まえて事前規定した7つの複合臨床エンドポイントを、厳格治療群、緩やかな治療群に分け、intention-to-treat解析を行った。

血糖値の差は1年で消失するが関連リスク低下は10年間持続




糖化ヘモグロビン値の群間差は、試験終了後1年間で消失した。しかし、SU剤・インスリン治療群では、すべての糖尿病関連転帰(9%、P = 0.04)および微小血管障害(24%、P = 0.001)とも、相対リスク低下が10年後の時点でも維持されていた。そして心筋梗塞(15%、P = 0.01)、全死因死亡(13%、P = 0.007)のリスク低下は、イベント発生数の増加とともに経時的に現れた。メトホルミン治療群では、すべての糖尿病関連転帰(21%、P = 0.01)、心筋梗塞(33%、P = 0.005)、全死因死亡(27%、P = 0.002)の有意なリスク低下が持続した。

こうした結果から、Holman氏は「血糖値の差異が早期に失われたにもかかわらず、微小血管のリスク低下は維持され、心筋梗塞と全死因死亡のリスク低下が発現することが、10年間の追跡調査で観察された。肥満患者では、メトホルミン治療後のベネフィット継続が明白だった」と結論している。

(武藤まき:医療ライター)