オープンアクセスだからといって文献引用されるとは限らない

提供元:ケアネット

印刷ボタン

公開日:2008/08/22

 

よく読まれたり、より頻繁に引用される論文は、単に「オープンアクセス」であることが要因ではないようだとする見解が、コーネル大学(アメリカ)コミュニケーション部門のPhilip M Davis氏らによって報告された。BMJ誌2008年7月31日号掲載より。

11雑誌、1,619論文のダウンロード状況と文献引用を調査




Davis氏らは、科学論文のダウンロードと引用の頻度が、フリーアクセスによって影響されるかどうかを無作為化試験によって調査した。対象としたのは、アメリカ生理学会によって発行されている11の雑誌、1,619の研究論文とレビュー。

主要評価項目は論文読者数(全文・PDF・要約のダウンロード件数)、および固有読者数(インターネットプロトコルでカウント)。科学情報研究所の集約による発行後1年間の論文への引用数。

11誌のオンライン論文は無作為に、「オープンアクセス」群と「要加入アクセス」群とに割り付けられた。

引用頻度はオープンアクセス論文のほうが低い




オープンアクセス群の論文のうち、全文ダウンロードされたのは89%、PDFダウンロードされたのは42%だった。また固定読者数の割合が23%を占めていた。要約ダウンロードは24%で、要加入アクセスの論文よりも少なかった。

しかし論文発表後1年間統計で、オープンアクセス群の論文が要加入アクセスの論文よりも引用される頻度が高いという可能性は確認できなかった。オープンアクセス群の発表9~12ヵ月後の引用頻度は59%(146/247論文)、これに対して要加入アクセス群は63%(859 /1,372だった。論文引用回数のロジスティック回帰分析の結果、オープンアクセス群の優位性は確認されなかった。

このため著者は、「オープンアクセスという公表手段は、要加入アクセスよりも多数の読者獲得は実現する。しかし引用の優位性というエビデンスは、公表後1年の統計では確認できなかった。文献引用される論文には別の要因がある可能性が高い」と結論した。