赤身肉の大量摂取は血圧上昇を招く

提供元:ケアネット

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公開日:2008/08/08

 



1981年に提示された「iron-heart」仮説では、男性と女性(閉経前)と冠疾患リスクの差は、鉄分蓄積量の差によって説明できるとされたが、その後の研究からその裏づけとなる結果は、得られていない。ロンドン大学疫学・公衆衛生部門Ioanna Tzoulaki氏らの研究グループは、食事による鉄分(総鉄、ならびにヘム鉄、非ヘム鉄)の摂取、サプリメントなどによる補足的な鉄分摂取、さらに赤身肉の摂取と血圧との関連を調査する横断的疫学研究を行った。BMJ誌2008年7月15日号より。

鉄分摂取と血圧変動の関係を疫学調査




収縮期血圧が120~130mmHgの正常高値血圧でも、心血管系疾患や死亡リスクが高いことは知られている。薬物療法以外の食事療法などで正常高値血圧を下げる要因を見いだそうと1997年に開始されたのが、栄養と血圧に関する国際共同研究INTERMAP(International study of Macro- and micronutrients and blood Pressure)と呼ばれる4ヵ国共同疫学研究である。

今回の研究もINTERMAPに参加する日本、中国、イギリス、アメリカの、40歳から59歳までの17集団4,680例を対象に、食事による鉄分の摂取、サプリメントなどの補助的手段による摂取、さらに鉄分が最も効率的に摂取できる赤身肉による摂取――の3つの方法に分けて、鉄分摂取量が血圧の変動に与える影響について疫学調査が行われた。

主要評価項目は、2日の連続受診時に各2回、およそ3週間後にも2日連続受診時に各2回の、計8回の血圧測定記録の平均値とした。

赤身肉102.6g/24時間摂取で収縮期血圧1.25mmHg高まる




重回帰分析によって、食事による全鉄と非ヘム鉄の摂取は血圧を下げることがわかった。摂取熱量1,000Kcal(4.2MJ)当たりの鉄摂取量の平均値は、アメリカと中国が7.8mg/4.2MJ、イギリス6.2mg/4.2MJ、日本5.3mg/4.2MJだった。総鉄の摂取量が、4.20mg/4.2 MJで標準偏差の2倍(2SD)多い場合は収縮期血圧を1.39mm Hg(P<0.01)下げ、非ヘム鉄の摂取が4.13mg/4.2 MJ(2SD)多い場合は同じく収縮期血圧が1.45mm Hg(P<0.001)下がった。この効果は、拡張期血圧に関しては小さかった。

また、ヘム鉄の主な供給源となる赤身肉の摂取は、血圧と正の相関がみられた。赤身肉の多量摂取102.6g/24時間(2SD)の場合、収縮期血圧が1.25mmHg高くなった。

一方、非ヘム鉄には、血圧レベルの悪化予防とコントロールにおいて積極的な役割が認められた。血圧に関しては、ヘム鉄を多量に含む赤身肉が好ましくない影響を及ぼすことが確認された。

研究グループはこれらの結果について、可能なかぎり実証的な前向き研究と臨床試験に基づきエビデンスを確認する必要があるとしている。