アンドロゲン枯渇療法は局所前立腺癌の生存率を改善しない

提供元:ケアネット

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公開日:2008/07/22

 



データが不十分にもかかわらず、手術や放射線、従来治療に替わる局所前立腺癌の治療として、一次的アンドロゲン枯渇療法(PADT)を受ける患者が増えている。ロバート・ウッド・ジョンソン医科大学(米国ニュージャージー州)のGrace L. Lu-Yao氏らには、局所前立腺癌の高齢男性におけるPADTと生存率との関連を評価。「従来治療と比べ生存率を改善しない」と報告した。JAMA誌2008年7月9日号より。

66歳以上メディケア受給者約2万例を追跡調査




臨床病期T1‐T2の前立腺癌で、限定的な局所治療を受けなかった66歳以上のメディケア受給者1万9,271人を対象としたコホート研究。対象者は、あらかじめ設定した米国内の地域に居住している者で、1992~2002年に前立腺癌と診断され、前立腺癌の特異的死亡率(~2004年12月31日)、全死因死亡率(~2006年12月31日)を追跡調査された。

主要評価項目は、前立腺癌の特異的生存率と全生存率。

未分化癌患者の生存率は改善されたが




局所前立腺癌を有する患者(年齢中央値77歳)のうち、7,867例(41%)がPADTを、残る11,404例はPADTを含まない従来治療の対象だった。

追跡調査期間中の全死因死亡は1万1,045例。うち1,560例が前立腺癌。

前立腺癌の特異的10年生存率(PADT vs. 従来治療)は、80.1% vs. 82.6%(ハザード比:1.17、95%信頼区間:1.03~1.33)、10年全生存率は30.2% vs. 30.3%(HR:1.00; 95%CI:0.96~1.05)で、PADTの有意性を示す結果は得られなかった。

ただし未分化癌の患者に限定してみた場合は、特異的10年生存率が59.8% vs. 54.3%(HR:0.84、95%信頼区間:0.70~1.00、P=0.049)、全生存率は17.3% vs. 15.3%(0.92、0.84~1.01)で、PADTによる改善がみられた。

以上からLu-Yao氏らは、「PADTが在来治療と比較して、局所前立腺癌を有する大部分の高齢男性の生存率を改善はしない」と結論付けている。

(朝田哲明:医療ライター)