褐色細胞腫の最初の記述所見について考察

提供元:ケアネット

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公開日:2007/10/10

 


NEJM誌9月27日号に掲載された本論文は、ドイツのフライブルグ大学医療センター腎臓病学Hartmut P.H. Neumann氏らによる、褐色細胞腫の最初の記述所見について検証したもの。
 褐色細胞種を最初に報告したのはFelix Frankelであるという解釈が正しいのか、報告された患者は遺伝性疾患を有していたのではないか、という2点を明らかにすることがNeumann氏らの目的である。
 Frankel報告を精査し、現在のテクノロジーを駆使してその記述の所見を更新するため症例患者の親戚にアプローチし評価を行った。

親戚子孫を探し出しDNA分析




褐色細胞種の最初の記述は1886年、Felix Frankelによるものとされている。彼はその報告で褐色細胞種という用語は用いていないが、褐色細胞種の教科書や、最初の国際的な褐色細胞種に関するシンポジウムでも“最初の記述者”として彼に敬意を表する言葉が述べられており、このことは規定の事実とされてきた。

Frankelが記した報告では患者とその所見について、「18歳女性で両側副腎に“肉腫と血管肉腫を有していた”」と記述されている。その点についてNeumann氏らは、「患者が非常に若いということ、さらに両側副腎に有していたということから遺伝性疾患を有していたのではないか」と仮定し、彼女の親戚を探し出して病歴聴取と、提供を受けることができた存命4家族の血液のDNA分析を行った。

存命する親戚4家族からRET突然変異の存在確認




DNA分析の結果では4家族からRET突然変異の存在が認められた。

Neumann氏らは、「このことは、最初の患者とその家族に多発性内分泌腫瘍2型(MEN-2)があることを示すものであり、患者が褐色細胞腫であったことを分子レベルで証明するものである。我々の詳細なレビューによって、組織病理学的な所見と褐色細胞腫との整合性を図ることができた」と報告した。

(武藤まき:医療ライター)