HFpEFに対するneladenosonの第II相試験結果/JAMA

提供元:ケアネット

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公開日:2019/06/17

 

 左室駆出率が保持された心不全(HFpEF)に対する、アデノシンA1受容体部分作動薬neladenoson bialanateの安全性と有効性を検討した、第IIb相無作為化試験の結果が、米国・ノースウェスタン大学のSanjiv J. Shah氏らにより発表された。5つの用量反応性について検討されたが、ベースラインから20週時点の運動能の変化について、用量間に有意差は認められなかったという。事前に定義した臨床的に意味のある変化差に到達した用量群もなく、著者は、「今回の結果を鑑みると、HFpEF患者の治療薬としてneladenosonのさらなる開発を進めるなら、新たなアプローチが必要と思われる」と述べている。HFpEFに対する効果的な治療法は現在までに確立されていない。neladenoson bialanateは前臨床試験において、心不全関連の心臓性・非心臓性異常を改善する可能性が示唆されたが、HFpEF治療についての評価は行われていなかった。JAMA誌2019年6月4日号掲載の報告。

米国、ヨーロッパ、日本の計76施設で試験
 試験は、neladenosonがHFpEF患者の運動能、身体的活動度、心バイオマーカー値、QOLを改善するのかどうか、また最適用量を見いだすことを目的とし、米国、ヨーロッパ、日本の計76施設で行われた。2017年5月10日~2017年12月7日に、45歳以上、NYHA心機能分類クラスII/IIIのHFpEFでナトリウム利尿ペプチド値上昇を認める患者305例を登録し、2018年6月20日まで追跡調査を行った。

 被験者は、無作為に1対2対2対2対2対3の割合で、neladenoson 5mg群(27例)、10mg群(50例)、20mg群(51例)、30mg群(50例)、40mg群(51例)、適合プラセボ群(76例)の6群に割り付けられた。

 主要評価項目は、ベースラインから20週時点の6分間歩行テストでの歩行距離の変化とした(最低限臨床的に意味のある差を40mと定義)。安全性に関する主要な評価項目として、徐脈性不整脈、有害事象などが含まれた。
 neladenosonの各用量効果を評価するため、5つのモデリング技法(線形法、Emax法、2つのsigmoidal Emax法、quadratic法)を用いて複合的に比較し、用量反応性を評価した。

最適用量の識別に至らず
 無作為化を受けた305例は、平均年齢74歳、女性160例(53%)、6分間歩行テストの平均歩行距離は321.5mであった。261例(86%)が試験を完遂し、主要解析に包含された。

 治療後20週時点の評価における歩行距離の、ベースラインとの絶対差は、プラセボ群0.2m(95%信頼区間[CI]:-12.1~12.4)に対して、neladenoson 5mg群19.4m(95%CI:-10.8~49.7)、10mg群29.4m(3.0~55.8)、20mg群13.8m(-2.3~29.8)、30mg群16.3m(-1.1~33.6)、40mg群13.0m(-5.9~31.9)であった。

 neladenoson投与群はいずれも、臨床的に意味のある歩行延長距離40mを達成せず、neladenosonの最適用量の識別には至らなかった。

 また、5つの異なる用量依存モデルにおいても、有意な用量反応性は認められなかった(Emaxモデルのp=0.05、quadraticモデルのp=0.18、sigmoidal Emax1モデルのp=0.21、線形モデルのp=0.39、sigmoidal Emax2モデルのp=0.52)。

 重篤な有害事象の発生は、neladenoson投与群(61/229例[26.6%])とプラセボ群(21/76例[27.6%])で類似していた。2例超に認められた同事象で最も多かったのは、両群とも心不全による入院であった。

(ケアネット)