ヘロイン依存症の治療にブプレノルフィン維持療法が有効

提供元:ケアネット

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公開日:2008/07/10

 

 ヘロイン依存症の治療では、ナルトレキソンよりもブプレノルフィン(商品名:レペタン)の維持療法が有効なことが、イエール大学医学部精神科のRichard S Schottenfeld氏らがマレーシアで行った無作為化試験によって明らかとなった。ヘロイン依存症の効果的な治療法へのアクセス拡大は、HIV感染の低減の面からも医療上の世界的な優先課題とされる。Lancet誌2008年6月28日号掲載の報告。

ナルトレキソン、ブプレノルフィン、プラセボを比較する無作為化試験




研究グループは、ヘロイン離脱の維持、ヘロイン依存の再発予防、HIV感染リスク行動の低減に向けて解毒治療および薬物カウンセリングを受けているマレーシア人の患者を対象に、ナルトレキソン、ブプレノルフィン、追加治療なしの群の効果を比較する二重盲検プラセボ対照無作為化試験を実施した。

ヘロイン依存症患者126例が、24週のマニュアルによる薬物カウンセリングに加えナルトレキソン維持療法を施行する群(43例)、ブプレノルフィンを投与する群(44例)、プラセボ群(39例)に無作為に割り付けられた。薬剤は二重盲検、二重ダミーバイアス法に基づいて投与された。

主要評価項目は、治療6ヵ月における初回ヘロイン使用までの日数、ヘロイン再使用(尿検査で3回連続陽性)までの日数、ヘロイン離脱の最長継続日数、HIV感染リスク行動の低減とし、週3回の尿検査が行われた。

本試験は、中間解析の安全性評価でブプレノルフィン群の有意な有用性が確認されたため、22ヵ月で登録が中止された。

ブプレノルフィン維持療法は優れた公衆衛生学的アプローチ




初回ヘロイン使用までの日数(p=0.0009)、ヘロイン再使用までの日数(p=0.009)、最長ヘロイン離脱継続日数(p=0.0007)はブプレノルフィン群が最も優れ、プラセボ群が最も劣っていた。ブプレノルフィン群は、初回ヘロイン使用までの日数がナルトレキソン群(ハザード比:1.87、95%信頼区間:1.21~2.88)およびプラセボ群(ハザード比:2.02、95%信頼区間:1.29~3.16)よりも有意に長かった。

ブプレノルフィン群は、ヘロイン再使用までの日数(ハザード比:2.17、95%信頼区間:1.38~3.42)、最長ヘロイン離脱継続日数(平均日数:59日 vs. 24日、p=0.003)がプラセボ群よりも有意に長かったが、ナルトレキソン群との間には有意差を認めなかった。

ナルトレキソン群とプラセボ群の間には、いずれの項目にも有意な差は見られなかった。HIV感染リスク行動は3群ともがベースラインに比べ有意に低下した(p=0.003)が、3群間に有意な差は認めなかった。

「これらの知見は、ヘロイン依存症に関連する問題を効果的に低減させる公衆衛生学的なアプローチとして、ブプレノルフィン維持療法を広く普及させるのに役立つ」と、著者は結論している。

(菅野守:医学ライター)