オバマケア、低出生時体重/早産の転帰を改善/JAMA

提供元:ケアネット

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公開日:2019/05/15

 

 米国の低所得者を対象とする公的医療保険制度であるメディケイドの受給資格の拡大(Medicaid expansion)に関連して、これを導入した州と未導入の州で、新生児の低出生時体重および早産のアウトカムに差はないものの、導入州は未導入州に比べ黒人と白人の新生児の間にみられたアウトカムの相対的な差が改善されたことが、米国・University of Arkansas for Medical SciencesのClare C. Brown氏らの調査で示された。研究の詳細は、JAMA誌2019年4月23日号に掲載された。米国では、低出生時体重および早産は、新生児の死亡や新生児~成人の慢性疾患のリスク増大などの有害な結果をもたらすが、黒人の新生児は白人の新生児よりも早産の可能性が高く、死亡や慢性疾患にも差がみられる。一方、1990年の包括財政調整法(OBRA)下では、メディケイドの適用は妊娠が条件であったため、各州の貧困の基準を満たさない低所得の母親は、産後60日で保険適用を失う場合があったが、医療費負担適正化法(ACA、オバマケア)下では、一部の州でメディケイド拡大が導入され、貧困基準の緩和とともに、妊娠の有無にかかわらず低所得の女性も継続的な医療の利用が可能となり、これによって母親の健康および出産前の早期ケアの受診機会が改善された可能性が示唆されていた。

導入州と未導入州で、出生アウトカムを比較
 研究グループは、メディケイド受給資格の拡大が、全体および人種/民族別の双方において、低出生時体重と早産のアウトカムに変化をもたらすかを評価する目的で検討を行った(Arkansas Center for Health Disparities[ARCHD]などの助成による)。

 2011~16年の米国国立衛生統計センター(National Center for Health Statistics:NCHS)出生データファイルの人口ベースのデータを使用した。メディケイド拡大を導入した州の多くは、2014年1月1日から導入を開始した。

 メディケイド拡大の導入州と未導入州の乳児の出生アウトカムを比較し、19歳以上の女性の単胎生児出産における人種/民族的に少数の集団の相対的な差の変化を評価するために、多変量線形確率回帰(multivariable linear probability regression)を用いて、差分の差分(DID)および差分の差分の差分(DDD)モデルを推定した。

 主要アウトカムは、早産(在胎期間37週未満)、超早産(同32週未満)、低出生時体重(2,500g未満)、超低出生時体重(1,500g未満)とした。

導入州で、4つのアウトカムの人種間の差がいずれも縮小
 1,563万1,174件の出産が解析に含まれ、新生児は白人824万4,924例、黒人220万1,658例、ヒスパニック系394万4,665例であった。このうち、メディケイド拡大の導入州(ワシントンD.C.と18州)が853万751例、未導入州(17州)は710万423例だった。

 DID解析では、メディケイド拡大導入の前後で、導入州と未導入州の間に早産の発生率の変化に有意な差は認められなかった(導入前から導入後の変化:導入州6.80%から6.67%[差:-0.12]vs.未導入州7.86%から7.78%[-0.08]、補正後DID:0.00ポイント、95%信頼区間[CI]:-0.14~0.15、p=0.98)。

 同様に、超早産(導入前から導入後の変化:導入州0.87%から0.83%[差:-0.04]vs.未導入州1.02%から1.03%[0.01]、補正後DID:-0.02ポイント、95%CI:-0.05~0.02、p=0.37)、低出生時体重(5.41%から5.36%[-0.05]vs.6.06%から6.18%[0.11]、-0.08ポイント、-0.20~0.04、p=0.20)、および超低出生時体重(0.76%から0.72%[-0.03]vs.0.88%から0.90%[0.02]、-0.03ポイント、-0.06~0.01、p=0.14)にも有意差はみられなかった。

 一方、白人新生児に比べ黒人新生児で不良であった4つのアウトカムはいずれも、メディケイド拡大未導入州よりも導入州において、その差が有意に小さくなった(早産:負の補正後DDD係数:-0.43ポイント、95%CI:-0.84~-0.02、p=0.05、超早産:-0.14、-0.26~-0.02、p=0.03、低出生時体重:-0.53、-0.96~-0.10、p=0.02、超低出生時体重:-0.13、-0.25~-0.01、p=0.04)。ヒスパニック系におけるアウトカムの相対的な差には、有意な変化はみられなかった。

 著者は、「導入州における、黒人新生児の低出生時体重および早産の、白人新生児との相対的な差の縮小は、黒人の乳児死亡率の大幅な低下の説明となる可能性がある」としている。

(医学ライター 菅野 守)