低侵襲血腫除去+血栓溶解、脳内出血の予後を改善するか/Lancet

提供元:ケアネット

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公開日:2019/03/27

 

 30mL以上の脳内出血の治療において、MISTIEと呼ばれる画像ガイド下経カテーテル血腫除去術後に血栓溶解療法を行うアプローチは、標準治療と比較して1年後の機能的アウトカムを改善しないことが、米国・ジョンズ・ホプキンス大学のDaniel F. Hanley氏らが行ったMISTIE III試験で示された。研究の成果は、Lancet誌2019年3月9日号に掲載された。テント上脳出血による急性脳卒中は、合併症や死亡のリスクが高い。本症への開頭術による血腫除去は有益でないことが、大規模な無作為化試験で示されている。

約500例対象に試験、1年後のmRSスコアを評価
 研究グループは、低侵襲性の経カテーテル血腫除去術後に血栓溶解療法を行うアプローチ(MISTIE)の、脳内出血患者の機能的アウトカムの改善効果を検証する目的で、非盲検エンドポイント盲検無作為化対照比較第III相試験を行った(米国国立神経疾患・脳卒中研究所とGenentech社の助成による)。

 対象は、年齢18歳以上の非外傷性テント上脳内出血(30mL以上)の患者であった。被験者は、血腫の大きさ15mL以下を目標に画像ガイド下MISTIEを施行する群、または標準治療群に無作為に割り付けられた。MISTIEの血栓溶解療法は、アルテプラーゼ1.0mgを8時間ごとに最大9回投与することとした。

 主要アウトカムは良好な機能的アウトカムとし、365日時の修正Rankinスケール(mRS)のスコアが0~3と定義され(事前に規定されたベースラインの共変量で補正)、修正intention to treat(mITT)解析が行われた。

 2013年12月~2017年8月の期間に、北米、欧州、オーストラリア、アジアの78施設で506例が登録され、499例(MISTIE群:250例、標準治療群:249例)がmITT解析に含まれた。

365日mRS 0~3達成率:45% vs.41%
 ベースラインの全体の年齢中央値は62歳(IQR:52~71)、61%が男性であった。血腫の部位は、大脳基底核が307例(62%)、lobar regionが192例(38%)で、脳内の血腫量は41.8mL(IQR:30.8~54.5)であり、グラスゴー昏睡尺度(GCS)スコアは10(8~13)、NIH脳卒中尺度(NIHSS)は19(15~23)だった。

 mITT解析による365日時のmRS 0~3の達成率は、MISTIE群が45%、標準治療群は41%と、両群間に有意な差を認めなかった(補正リスク差:4%、95%信頼区間[CI]:-4~12、p=0.33)。

 7日時の死亡率は、MISTIE群が1%(2/255例)、標準治療群は4%(10/251例)であり(p=0.02)、30日時はそれぞれ9%(24例)、15%(37例)であった(p=0.07)。

 症候性脳出血(MISTIE群2% vs.標準治療群1%、p=0.33)および脳細菌感染(1% vs.0%、p=0.16)の発生はいずれも同等であったが、無症候性脳出血はMISTIE群で有意に多かった(32% vs.8%、p<0.0001)。また、30日時までに1件以上の重篤な有害事象が発現した患者は、それぞれ30%(76例)、33%(84例)であり、件数は126件、142件と、有意な差がみられた(p=0.012)。

 著者は、「これらの知見は、血腫量15mL以下の達成に、より重点を置いたうえで、MISTIE技術のさらなる検討を求めるものである」としている。

(医学ライター 菅野 守)

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コメンテーター : 中川原 譲二( なかがわら じょうじ ) 氏

梅田脳・脊髄・神経クリニック 脳神経外科

J-CLEAR評議員