英国の心不全診断後の生存、改善はわずか/BMJ

提供元:ケアネット

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公開日:2019/02/22

 

 21世紀に入り、心不全と診断された後の生存期間は、わずかに改善しているのみで、がんなど他の重篤な疾患と比べると遅れをとっており、貧困の度合いによる生存期間の格差も広がっていることが示された。英国・オックスフォード大学のClare J. Taylor氏らが、英国のプライマリケアにおける地域住民を対象としたコホート研究の結果を報告した。心不全患者は増加の傾向にあり、英国では92万人が患っているとされる。心不全患者の生存率は低いが、長期にわたる生存傾向を調べた研究では一貫した結果が得られていなかった。BMJ誌2019年2月13日号掲載の報告。

心不全患者約5万6,000例と対照者約28万例で生存率を推定
 研究グループは、心不全患者の短期/長期生存率の信頼できる推定値を報告し、診断された年・入院・社会経済的集団ごとの経時的な傾向を評価する目的で、英国のプライマリケアの電子診療録を含むデータベース(Clinical Practice Research Datalink:CPRD)を用い、2000年1月1日~2017年12月31日に新たに心不全と診断された45歳以上の患者5万5,959例、ならびに患者と年齢・性別をマッチさせた対照者27万8,679例を特定し解析した。入院記録はHospital Episode Statistics、死因については国家統計局とリンクしたデータを使用した。

 主要評価項目は全死因死亡で、1年・5年・10年時点の生存率と死因を検証し、診断された年・入院・社会経済的集団ごとの時間的傾向を評価した。

心不全診断後の生存率の改善はわずか、貧困度が生存期間に影響
 1年・5年・10年時点の生存率は、それぞれ6.6%(2000年74.2%→2016年80.8%)、7.2%(2000年41.0%→2012年48.2%)、および6.4%(2000年19.8%→2007年26.2%)上昇していた。

 研究期間中に、心不全患者群では3万906例の死亡が確認され、これらのうち死亡診断書に心不全と記載されていたのは1万3,093例(42.4%)、うち2,237例(7.2%)は心不全が主要死因であった。

 心不全と診断された時期に入院を必要としなかった患者において、生存期間が延長した(群間差中央値:2.4年、5.3年vs.2.9年、p<0.001)。貧困度が最も低い人々と最も高い人々の間では、生存期間中央値で2.4年の差があることが確認された(11.1年vs. 8.7年、p<0.001)。

 著者は、心不全患者の生存期間に対する薬剤・医療機器・移植の影響を検証できていないことや、さまざまな併存症が心不全の診断を難しくしている可能性があることなど、研究の限界を挙げたうえで、「すべての社会経済的集団に対して、プライマリケアにおいて適時な診断と治療開始を成し遂げる新しい戦略を、将来的な研究と政策の優先事項とすべきである」とまとめている。

(医学ライター 吉尾 幸恵)