米国の外来抗菌薬処方、7例に1例は不適正/BMJ

提供元:ケアネット

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公開日:2019/01/29

 

 2016年の米国の外来診療における0~64歳(民間保険加入者)への抗菌薬処方のうち、23.2%が不適正で、28.5%は最新の診断コードに該当しないことが、米国・ミシガン大学のKao-Ping Chua氏らの調査で明らかとなった。研究の成果は、BMJ誌2019年1月16日号に掲載された。国際疾病分類第9版改編版(ICD-9-CM)の診断コードおよび2015年以前のデータを使用した米国の研究では、外来患者への不適正な抗菌薬処方が広範に及ぶことが示されているが、2015年10月1日に、ICD-9-CMに替わって導入されたICD-10-CMに含まれる包括的な診断コード分類に基づく適正使用の検討は行われていなかった。

約1,920万例のデータを解析
 研究グループは、ICD-10-CMの包括的な診断コード分類を用いて、民間保険に加入する子供(0~17歳)および非高齢成人(18~64歳)の外来患者に処方された抗菌薬の適切性を評価する目的で横断的研究を行った(米国医療研究・品質調査機構[AHRQ]の助成による)。

 解析には、Truven MarketScan Commercial Claims and Encountersのデータベースに登録された2016年の患者データ(0~64歳)を用いた。ICD-10-CMの9万1,738項目の個々の診断コードにつき、抗菌薬の使用が正当化されるかを判定する分類体系を新たに開発した。

 主要アウトカムは、4つの相互排他的なカテゴリー(適正、適正の可能性あり、不適正、該当する診断コードなし)別の処方箋の割合とした。

 1,920万3,264例のコホート参加者のうち、1,457万1,944例(75.9%)が成人、463万1,320例が子供(24.1%)で、993万5,791例(51.7%)が女性であった。

約7例に1例で1つ以上の不適正な処方
 1,545万5,834件(1,000例当たり805件の処方)の外来患者への抗菌薬処方のうち、最も使用頻度が高い抗菌薬はアジスロマイシン(293万1,242件、19.0%)であり、次いでアモキシシリン(281万8,939件、18.2%)、アモキシシリン/クラブラン酸配合剤(178万4,921件、11.6%)であった。また、91万7,140件(5.9%)がリフィル処方箋によるものだった。

 2016年に、抗菌薬は762万5,438例(コホートの39.7%)に処方されていた。このうち399万5,690例(52.4%)が1回、181万5,305例(23.8%)が2回、85万2,979例(11.2%)が3回、96万1,464例(12.6%)は4回以上の処方を受けていた。平均処方数は2.0回だった。

 1,545万5,834件の処方のうち、197万3,873件(12.8%)が適正、548万7,003件(35.5%)は適正の可能性あり、359万2,183件(23.2%)は不適正、440万2,775件(28.5%)は該当する診断コードはないと判定された。

 不適正処方箋(359万2,183件)のうち、254万1,125件(70.7%)が診察室で作成され、22万2,804件(6.2%)は緊急外来診療施設(urgent care center)で、16万8,396件(4.7%)は救急診療部(emergency department)で記載されたものであった。

 2016年に、1,920万3,264例中269万7,918例(14.1%)で1つ以上の不適正処方が行われ、そのうち子供(463万1,320例)が49万475例(10.6%)、成人(1,457万1,944例)は220万7,173例(15.2%)であった。
 著者は、「2016年は、約7例に1例が、1つ以上の不適正な抗菌薬処方を受けたことになる」とまとめ、「ICD-10-CMの診断コード分類体系は、将来的に、米国の外来診療における抗菌薬の適正使用を包括的に評価する取り組みを促進する可能性があり、ICD-10の診断コードを使用する他国にも適用できると考えられる」としている。

(医学ライター 菅野 守)