急性心筋梗塞、発症後早期のウエアラブル除細動器の効果/NEJM

提供元:ケアネット

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公開日:2018/10/11

 

 心筋梗塞(MI)を発症してから間もない駆出分画率35%以下の患者において、着用型自動除細動器(wearable cardioverter-defibrillator:WCD)の使用は、非使用者と比較して主要評価項目の90日時点の不整脈死リスクは有意に低下しなかった。米国・カリフォルニア大学サンフランシスコ校のJeffrey E. Olgin氏らが、2,302例の患者を対象に行った無作為化比較試験の結果で、NEJM誌2018年9月27日号で発表した。駆出分画率が低下したMI後の患者において突然死は高率に認められるが、植込み型除細動器は、発症後40~90日間は禁忌とされている。研究グループは、このハイリスク期間中の突然死発生をWCDが低減するのか検討した。

ガイドライン推奨治療のみ、ガイドライン推奨治療+着用型自動除細動器を比較
 研究グループは2008年7月~2017年4月に、米国(76地点)、ポーランド(24)、ドイツ(6)、ハンガリー(2)で、急性MIを発症し、駆出分画率が35%以下の患者2,302例を登録・包含した。退院7日後に無作為に2対1の割合で2群に分け、一方にはWCD+ガイドライン推奨治療を(デバイス群、1,524例)、もう一方にはガイドライン推奨治療のみを行った(対照群、778例)。

 主要評価項目は、90日時点の突然死または心室頻脈性不整脈による死亡(不整脈死)とした。副次評価項目は、全死因死亡、非不整脈死などだった。

不整脈死発生率、デバイス群1.6%、対照群2.4%で有意差なし
 被験者の平均年齢はデバイス群60.9±12.6歳、対照群61.4±12.3歳、男性の割合はそれぞれ72.8%、74.7%、直近の入院前の喫煙者36.9%、35.5%だった。被験者全体において、平均駆出分画率は28%、83.6%が指標入院中に経皮的冠動脈インターベンション(PCI)を受けていた。

 平均フォローアップ期間は84.3±15.6日。デバイス群10例、対照群12例が追跡不能となり、90日時点のバイタル状況が不明だった。

 デバイス群のWCD装着時間中央値は、1日当たり18.0時間(四分位範囲:3.8~22.7)だった。

 不整脈死の発生率は、デバイス群1.6%、対照群2.4%だった(相対リスク[RR]:0.67、95%信頼区間[CI]:0.37~1.21、p=0.18)。

 全死因死亡の発生率は、デバイス群3.1%、対照群4.9%だった(同:0.64、0.43~0.98、補正前p=0.04)。非不整脈死の発生率はそれぞれ1.4%、2.2%だった(同:0.63、0.33~1.19、補正前p=0.15)。

 デバイス群で死亡した48例のうち、死亡時にデバイスを装着していたのは12例だった。また、デバイス群で適切な電気ショックを受けたのは20例(1.3%)、不適切な電気ショックを受けたのは9例(0.6%)だった。

(医療ジャーナリスト 當麻 あづさ)

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コメンテーター : 香坂 俊( こうさか しゅん ) 氏

慶應義塾大学 循環器内科 専任講師

J-CLEAR評議員