健康高齢者への低用量アスピリン、無障害生存期間を延長せず/NEJM

提供元:ケアネット

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公開日:2018/10/05

 

 健康な高齢者に対する低用量アスピリン投与は、プラセボ投与と比較して、無障害生存期間を延長することはなく、大出血の頻度を増加することが示された。オーストラリア・モナシュ大学のJohn J. McNeil氏らが、米国およびオーストラリアの計50施設にて約2万例を対象に実施した無作為化二重盲検プラセボ対照比較試験「ASPREE試験」の結果を報告した。本試験は、主要評価項目に関してアスピリンの使用継続が有益ではないことが認められたため、追跡期間中央値4.7年で早期終了となっている。アスピリンの医学的適応がない高齢者において、低用量アスピリンの使用が増加しているが、健康な高齢者の健康寿命を延ばすためのアスピリン使用に関する情報は限定的であった。NEJM誌オンライン版2018年9月16日号掲載の報告。

健康な高齢者約2万例を対象に検討
 研究グループは、2010年3月~2014年12月の期間に、心血管疾患、認知症、身体障害のない70歳以上(米国のアフリカ系とヒスパニック系は65歳以上)の地域住民を登録し、アスピリン群(アスピリン腸溶錠1日100mg)またはプラセボ群に無作為に割り付けた。

 主要評価項目は、死亡・認知症・持続的身体障害(6ヵ月以上持続するADL障害)の複合エンドポイント。副次評価項目は、主要評価項目の各構成要素(全死因死亡、認知症、持続的身体障害)ならびに大出血(臨床的に明らかな出血と出血性脳卒中)などであった。intention-to-treat集団にてCox比例ハザードモデルを用いて解析した。

 計1万9,114例が登録され(アスピリン群9,525例、プラセボ群9,589例)、参加者の背景は年齢中央値74歳、56.4%が女性、非白人が8.7%、アスピリン定期使用歴ありが11.0%であった。

アスピリン群で無障害生存期間は延長せず、大出血リスクは増加
 死亡・認知症・持続的身体障害の複合エンドポイントのイベント発生頻度は、アスピリン群21.5件/1,000人年、プラセボ群21.2件/1,000人年であった(ハザード比[HR]:1.01、95%信頼区間[CI]:0.92~1.11、p=0.79)。割り付けられた治療法の順守率は、試験参加最終年において、アスピリン群62.1%、プラセボ群64.1%であった。

 全死因死亡の発生頻度は、アスピリン群12.7件/1,000人年、プラセボ群11.1件/1,000人年であり、そのほかの副次評価項目である認知症ならびに持続的身体障害についても、アスピリン群とプラセボ群に有意な群間差は認められなかった。一方、大出血の発現頻度は、アスピリン群3.8%、プラセボ群2.8%であり、アスピリン群が有意に高率であった(HR:1.38、95%CI:1.18~1.62、p<0.001)。

(医学ライター 吉尾 幸恵)

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コメンテーター : 後藤 信哉( ごとう しんや ) 氏

東海大学医学部内科学系循環器内科学 教授

J-CLEAR理事