アスピリンは、健康な高齢者の死亡を抑制しない?/NEJM

提供元:ケアネット

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公開日:2018/10/03

 

 毎日アスピリンの投与を受けた健康な高齢者の死亡率は、プラセボと比較してむしろ高く、しかも主な死因はがん関連死であるとする予想外の研究結果が示された。オーストラリア・モナシュ大学のJohn J. McNeil氏らASPREE試験の研究グループが、NEJM誌オンライン版2018年9月16日号で報告した。本研究の初回解析では、アスピリンの毎日使用は、主要エンドポイントである無障害生存(disability-free survival)に関して便益をもたらさなかった。また、アスピリン使用者は、副次エンドポイントである全死因死亡率も高かったという。

原因別の死亡率を探索的に解析
 ASPREE試験では、2010年3月~2014年12月の期間に、オーストラリアと米国において参加者の登録が行われた(米国国立老化研究所[NIA]などの助成による)。2017年6月12日、介入を継続しても主要エンドポイントに関して便益が得られる可能性はきわめて低いことが示されたため、NIAの要請で試験は中止となった。

 今回は、原因別の死亡について、事後的に探索的解析が行われた。対象は、年齢70歳以上(米国のアフリカ系およびヒスパニック系は65歳以上)で、心血管疾患、認知症、身体障害のない地域住民であった。

 被験者は、アスピリン腸溶性製剤(100mg)またはプラセボを毎日投与する群に無作為に割り付けられた。割り付け情報を知らされていない研究者が、死亡を原因別に分類した。

 登録された1万9,114例(オーストラリア:1万6,703例、米国:2,411例[52.7%がアフリカ系またはヒスパニック系])のうち、9,525例がアスピリン群に、9,589例はプラセボ群に割り付けられた。

全死因死亡率:5.9 vs.5.2%、がん関連死亡率:3.1 vs.2.3%、解釈には注意を
 フォローアップ期間中央値は4.7年であり、この間に1,052例(5.5%)が死亡した(アスピリン群5.9% vs.プラセボ群5.2%)。全体の死亡の根本原因のうち、がん(原発、転移)は49.6%(522例)であり、心血管疾患(心筋梗塞、その他の冠動脈性心疾患、心臓突然死、虚血性脳卒中)は19.3%(203例)、大出血(出血性脳卒中、症候性頭蓋内出血、消化管の大出血、その他の頭蓋外出血)は5.0%(53例)だった。

 全死因死亡の発生率は、アスピリン群が12.7件/1,000人年と、プラセボ群の11.1件/1,000人年に比べて高く(差:1.6件/1,000人年)、有意差が認められた(HR:1.14、95%信頼区間[CI]:1.01~1.29)。この死亡率の差には、がんによる死亡の寄与が大きく、アスピリン群はがん死の発生率が有意に高かった(3.1 vs.2.3%、HR:1.31、95%CI:1.10~1.56)。

 心血管疾患による死亡(アスピリン群:1.0% vs.プラセボ群:1.2%、HR:0.82、95%CI:0.62~1.08)、大出血による死亡(0.3 vs.0.3%、1.13、0.66~1.94)、その他の疾患(敗血症、慢性肺疾患、認知症、心不全)による死亡(1.5 vs.1.3%、1.16、0.91~1.48)の発生率は、両群でほぼ同等であった。

 がんによる累積死亡率の推移をみると、3年目あたりから両群の差が開き始めていた。また、個々のがん種に関連した死亡数は少なかったが、部位や病理学的タイプにかかわらず、アスピリン群で死亡率が高い傾向がみられた。

 サブグループ解析では、事前規定の項目か否かにかかわらず、全死因死亡に及ぼすアスピリンの影響は全般的に一致していた。

 著者は、「他のアスピリンの1次予防の研究では、このような結果は得られていないことから、今回の死亡率の結果は注意して解釈すべきである」と指摘している。

(医学ライター 菅野 守)

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コメンテーター : 今井 靖( いまい やすし ) 氏

自治医科大学 臨床薬理学部門・循環器内科学部門 教授 附属病院 薬剤部長

J-CLEAR評議員