救急ヘリ搬送中の出血性ショックの外傷患者、血漿輸血は有効か/NEJM

提供元:ケアネット

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公開日:2018/08/03

 

 外傷による出血性ショックのリスクがある患者に対し、病院到着前に解凍した血漿輸血をすることで標準蘇生処置と比較し、安全性の問題を伴うことなく病院到着時のプロトロンビン時間比が改善し、30日死亡率も低下した。米国・ピッツバーグ大学医療センターのJason L. Sperry氏らが、救急搬送中の解凍血漿輸血の有効性と安全性を検証した第III相優越性試験「PAMPer(Prehospital Air Medical Plasma)試験」の結果を報告した。外傷患者では、病院到着前に標準的な蘇生処置に加え血漿を輸血することで、出血やショックによる合併症リスクを軽減できる可能性がある。しかし、これまで大規模臨床試験による検討は行われていなかった。NEJM誌2018年7月26日号掲載の報告。

救急ヘリコプターで搬送中の血漿輸血の有効性を30日死亡率で評価
 PAMPer試験は、出血性ショックのリスクがある外傷患者を対象に、病院到着前の解凍血漿輸血の有効性と安全性を検証する、第III相の多施設共同プラグマティッククラスター無作為化優越性試験であった。航空医療基地を、ブロックランダム化法を用いて1ヵ月ごとに解凍血漿輸血群と対照群に割り付け、それぞれ救急ヘリコプターで外傷センターへ患者を搬送中に、解凍しておいた血漿を輸血または標準的な蘇生処置を行った。主要評価項目は、30日死亡率であった。

 2014年5月~2017年10月に登録され解析対象となった患者は501例で、230例が解凍血漿輸血を、271例が標準的な蘇生処置を受けた。

30日死亡率は血漿群23%、対照群33%で、血漿群で有意に低下
 30日死亡率は、解凍血漿輸血群が対照群より有意に低かった(23.2% vs.33.0%、群間差:-9.8ポイント、95%信頼区間[CI]:-18.6~-1.0%、p=0.03)。事前に規定した9つのサブグループで同様の治療効果が確認された(異質性のχ2検定:12.21、p=0.79)。Kaplan-Meier曲線では、無作為化3時間後という早期に両群が分離しはじめ、無作為化30日後まで持続した(log-rank χ2検定:5.70、p=0.02)。

 外傷センター到着後の患者のプロトロンビン時間比中央値は、解凍血漿輸血群が対照群より低値であった(1.2[四分位範囲:1.1~1.4] vs.1.3[同:1.1~1.6]、p<0.001)。多臓器不全、急性肺損傷・急性呼吸窮迫症候群(ARDS)、院内感染、アレルギー/輸血関連反応については、両群間で有意差はなかった。

 なお、著者は研究の限界として、解凍血漿の保存可能期間が短く利用に制限があり盲検化できないこと、外傷センター到着前に受けた治療の違いによってバイアスが生じる可能性があることなどを挙げている。

(医学ライター 吉尾 幸恵)